「騎士団長殺し」とイチローズモルト秩父ウイスキー祭2017(ネタバレしませんのでご安心を)
最近酒の量を控えていた。そして飲みに行っても11時前には帰宅するようにしていた。なぜならば家でゆっくり「騎士団長殺し」を読みたかったからだ。
ウイスキー飲みながら家のソファーに寝そべって好きな小説を読むのは最高の贅沢だ。本を読みながら寝てしまう、というのはさらに贅沢。というのも本の世界に自分を閉じ込めたまま現実に引き戻されずに済むから。そして好きな本を読んでから寝るほうが熟睡できる。
だが適量を守らなければならない。飲み過ぎるとそもそもすぐに眠くなってしまったり、折角味わって読みたい物語の咀嚼が不十分になるので。「これはあそこからつながっているのか」「そういえばこのフレーズは以前ねじまき鳥で読んだな」「このモチーフは壁と卵からだな」などというのが分からなくなってしまう。
美味しい酒を厳選しながら少しずつ啜り、静かに読書できるバーがあれば最高だが、やはりそれはなかなか難しい。そういえば突然思い出したが南青山のBar Radioは図書館っぽいインテリアだった。たまに行きつけのお店が空いていると、「今日は本読みたいのでカウンターじゃなくてテーブル一人で使っていいですか?」と言ってみるときはあるけれど、やはりガヤガヤしたりタバコの煙が気になったりで集中できない。
そういうわけで、最近は仕事の後だらだらと飲むのではなく、美味しい酒をささっと飲んで帰宅するという健全(?)な生活を送っていた。例えばこんな酒。
お店の売上を考えるとどこでいただいたのか書いた方がいいのかもしれないが、パラフィルム巻いてしばらく置いておきたい、とオーナーがおっしゃっていたのでバーの名前は差し控える。イチローズモルトの秩父ウイスキー祭2017記念ボトル。小さなシェリー樽で熟成させたとのことで、6年物とはとても思えない熟成感と厚みを感じさせる一本。最後にシェリーの香りが強く立ち上がる。これは気合入った造りですね、と男二人で盛り上がる。
このボトルはインターナショナル・スピリッツ・チャレンジのような世界的コンテストに出品されるらしい。この出来だと山崎シェリーカスクのようにかなりいい評価になるのではないだろうか。そもそも二百数十本限定なので、受賞しなくても飲むことは中々叶わないし、受賞したらとんでもないことになるだろう。
そのお店を再訪して別の酒を飲んでいたら、カウンターの端に座った男性二人連れがこちらとOn the wayをオーダー。どうやらあまり限定バージョンはお気に召さなかったらしい。自分の好みを人に押し付けたりすることはしないが、自分が気に入った酒を人に気に入ってもらえないと少し淋しい気持ちになることが改めて分かった。
お気に入りのウイスキーを時間をかけてちびちび飲むように、立ち止まっては考え、味わいながら少しずつ読み進めていた「騎士団長殺し」もついに読了。出張中の新幹線の中で最後のページに辿り着いてしまった。最後に話が大きく動いて、夜まで待てなかったので。ある意味勿体ないことをした、のかもしれない。だが今晩から思う存分酒が飲める。
小説の中にはシーバスリーガルやタリスカー、アイラの話もちらっと出てきます。ぜひご一読を。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/02/24
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