東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

竹鶴政孝著「ウイスキーと私」を読みながら飲むブラックニッカクロスオーバー

先週末にトライアスロンがあったのでレースまでしばらく禁酒していた。その間少しでも気分を紛らわせるため、こんな本を買った。ウイスキーにまつわる小説のアンソロジー。

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今宵もウイスキー (新潮文庫)

今宵もウイスキー (新潮文庫)

 

 竹鶴政孝山口瞳開高健伊集院静などの手による短編が17編収められている。その中でも開高健の文章が他のどの書き手のものとも違う圧倒的な熱量を発していることを再確認し、二十年ぶりぐらいに読んでみたくなって「輝ける闇」「ベトナム戦記」などをAmazonで発注。そして竹鶴政孝の「ウイスキーと私」も。
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ウイスキーと私」には事実と異なる点が多いという批判もあるが、明治25年の生まれの方が昭和40年代後半、すなわち80歳近くなって60年近く前の自分の来た道を振り返れば多少の記憶違いや美化もあろう。

ウイスキーと私

ウイスキーと私

 

届いたばかりのブラックニッカクロスオーバーを飲みながら読む「ウイスキーと私」。あっという間に読めてしまう。「坂の上の雲」のように坂は上るのみ、天は近づくのみ、と皆が信じ切っていて実際に誰もが成長を享受できた時代があり、二回の大戦があり、平和になってからのウイスキーブームとその終焉があり、そして直近のリバイバルがあると思うととてつもない時間の重みを感じる。その一方でウイスキーという酒は人類の歴史の中では相当新しい酒の部類に入ることも再確認。そして平和な世界が来て寿屋、昔のサントリーの宣伝部員ながら芥川賞も受賞したにもかかわらず、自ら望んでベトナム戦争に従軍して戦記を書くために200人の部隊と行動を共にするものの、ベトコンに包囲されて17人しか生き残らなかった戦闘の生き残りのうちの1人となった開高健の自伝的小説「輝ける闇」を読む。

輝ける闇 (新潮文庫)

輝ける闇 (新潮文庫)

 

最初はクロスオーバーよりもブレンダーズスピリットの方が好きかもしれない、と思ったが時間を置くにつれクロスオーバーの尖ったアルコールの辛味がふくよかな味に変わっていく。

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一度にたくさんグラスに注ぐより、少しだけ注いで体積に対して空気に触れる面積の割合を大きくしてやると旨みが引き出される。もう少し時間が経つと本領がより発揮されるのだろう。
香りは明らかにブレンダーズスピリットの方が甘い。クロスオーバーは若干サルフェリーでニューポットのような金属っぽい感じが残る。クロスオーバーはグラスの壁にへばりつくがブレンダーズスピリットはさらさら。口に含むと力強さはクロスオーバーが圧勝。麦の感触を骨太に残しながら鼻腔をかるいピートの香りを伴い力強く揺らしていく。だが意外と癖はない。ブレンダーズスピリットはとても綺麗で気品を保ちながら喉に消える。
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どちらもよくできたウイスキーで、これが一本2000円程度で楽しめるというのは素晴らしいことだ。クロスオーバーの方が長く楽しめるかもしれない予感がして、しばらく買った事実そのものを忘れてしまって数年後に思い出して飲んだほうがいいのではないかと考えた。