東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

西天満 Rosebank、北新地 Tarlogie Sonaにて

久しぶりの大阪。夕方まで仕事があり、その後東京に帰ってくる便を押さえてあったのだが、当日の朝になって気が変わって一泊することに。三連休前の金曜日だから、というのもあるが、友人の命日が二週間ほどでやってくるのでとんぼ返りするのではなく、翌朝少し早めに大阪の郊外にある彼の墓を参ることにした。

それにしても暑い。荷物が増えるのが嫌で下着の着替えだけ持ったのでシャツとスーツはそのまま翌日も着なければならず、汗かきたくないな、と思っていたが無理な話。大阪は暑いでしょう、とお客さんに言われたが、今年の東京は実はあまり変わらないぐらいかむしろ東京の方が暑いぐらいだ、というとなぜか納得いかなさそうな顔をされた。そんなところで張り合っても何もいいことないのに、だけどそこが大阪らしい、とちょっと可笑しくなった。

チェックインし部屋で仕事の続きを終えたのが7時半。さあどこに行こうか、と思うがあまりの暑さにビールの誘惑にボロ負け、というより惨敗。宿の近くのサッポロビールの直営らしい洒落乙な店に吸い込まれ、カウンターに座ってとても上手にタップから注がれる蒸留されていない麦汁でのどの渇きをいやし、正面のスクリーンに映る私以外誰一人興味を示していない自転車のイタリア選手権を身を乗り出してがっつり見入っていると、2時間ほどが過ぎていた。

いかんいかん、せっかくの大阪なので2軒はバーを廻りたい。ここで酔っぱらってしまうわけにはいかない。2軒目はRosebank。西天満まで歩いていくとまた文字通り汗びっしょり。もう10時前だというのに。

以前伺ったのはいつのことだったろう。そう思いながらドアを押す。カウンターの両端に女性が2人。真ん中に陣取る。「鴨川のカップルみたいですね」と右端の女性が誰に言うともなくつぶやく。いやそりゃそうでしょ、いきなりどちらかの女性の隣に座るわけにもいかない。もしかすると「じゃあお隣に失礼しますので一緒に飲みましょう」というのが正解だったとすると、難易度高すぎ。

カウンターの上にBowmore、Lagavulin、Laphroaigの2017年のアイラフェスボトルが3本並んでいる。どれを飲むか悩んだが、初めて飲んで感動する旨さだったのでおととい渋谷Caol Ilaで改めて頼もうとしたら目の前で売り切れたLagavulinをお願いすることに。

だがよく考えたらRosebankに来たのならここでしか飲めないオールドのボトルをお願いすべきだと思いLongmorn。常連さんとその連れが現れ、マスターとバー業界の話をする。それも西日本各地のモルトバーの情報をよくご存じで。大体そういう話は嫌味っぽく聞こえることが多いものの、全然そんなことがない。どこかの若旦那かな、と思ってお話を伺うと高校の先生とおっしゃるのでびっくり。お連れの方は同じく先生だが教え子、だそうで二度びっくり。

その後お勧めいただいたRoyal Bracklaのハイプルーフがとても美味かったが、正直ウイスキーについて語るには酔っぱらい過ぎ。最後にこれ飲んで帰れ、というのはありますか、と聞いて出てきたGlen Grant飲み終わってお勘定をお願いした後に、東京のバーの話になってそこからまた長くなった。

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そこからまた北新地へ向かう。途中にある酒屋でウイスキー売っている値段を確かめると、ちょっと異常。イチローモルトのオフィシャルが3倍の値段で売られていたりして、アジア人向け価格なのか、本気で売っているのか。

新地の店がはねる時間。帰るお客さんもいれば、おねえさんとアフター行くおじさんたちもいて。そんな人たちを見ながらTarlogie Sonaへの階段を上がる。店に入ると「お久しぶりです、でもFacebookで見ているのであまり久しぶりの気がしませんね」と榊原さん。

お店はおじさんたちが二組いるので結構混んでいる。二組目のお客さんが出ていくところでHighland Parkの硝子製の盾のようなものが落下して割れてしまう。自分が店をやっていたら気に入っていたグラスが割れたり物が壊れたりすると辛いだろうな、と思う。

他にお客さんがいなくなり、二人でたわいない世間話をしながら時間を気にせず飲むのは楽しい。明日は6時半に起きればいいし、飛行機の中でも寝ることができるだろう。私は平日は朝が早いのでいつもは1時を過ぎて飲むことはほとんどないが、今日は関係ない。

今日は泊りなんですよね?ええそうなんです。本当は日帰りのはずだったのだけど、明日の朝墓参りしてから帰ることにしたので。中学、高校の時の親友の墓なんです。大学入ったばかりの時に交通事故で死んでしまったので、もう25年以上毎年来ているんですが。親御さんには挨拶されるんですか?いえ、お葬式の時に自分が親だったら「なんでこの子じゃなくてうちの子なの?」と思うだろうな、ととても強く思って、なんだか申し訳なく感じてそれ以来あまりちゃんとできていません。

それははるか昔、平成3年の夏のことで、もはや自分の感情が動くとはまさか思っていなかったのだが、ずっと仲が良かった二人の間につまらない諍いごとがあって、なかなか仲直りのきっかけが見つからずしばらく疎遠になってしまったときにその出来事が起こり、永遠に仲直りできなくなってしまったことが改めて悔やまれ、不意に涙が落ちそうになった。

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翌朝は自然と目が覚め、久しぶりの阪急電車に乗って大阪郊外へ。涼しかったことは過去一度もない。お墓はきれいに手入れされていて、前日にも誰かお参りした人が来た形跡が残っていた。朝早かったので花屋が開いていなくて手ぶらで来てしまったことを詫びながら、近況を手短に報告する。おそらく来年の今頃も、似たような話を書くのだろう。かつても似たようなことを書いた気がするが、それでいいのだ。一番の供養はいなくなった人のことを忘れないでいることなのだから。

 

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