東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

ニューヨーク、ニューヨーク

久しぶりのニューヨーク。朝到着したJFKからのタクシーの窓の外は美しい初夏の景色が広がる。ごま塩頭のカリブ訛りの運転手に最近商売はどう?と聞いたら、Uberとの競争もひどくなるばかりで、減税あったけど大して関係なく、景気いいのは金持ちだけなのでは?とのこと。

マンハッタンは相変わらずやかましい。先が詰まっていると分かっている交差点で無理やり車の鼻先を渋滞の列に押し込み、信号が赤に変わって他の車の邪魔になって、盛大な抗議のクラクションが鳴り響く。クラクション鳴らしたところでどうなるわけでもないと分かっているはずなのに、まるで今権利を主張しないと今後二度と主張できなくなる、とでもいうような無慈悲さ加減。その神経が私にはわからない。そして多種多様なサイレンの音。まあ渋谷のスクランブル交差点の猥雑なうるささも冷静に考えると異常なので、慣れの問題だけかもしれない。

常宿にアーリーチェックインしたらなぜかスイートルームにアップグレード。100㎡超える部屋もらっても、一人で一泊するだけなのであまりうれしくない。でもトランプタワーが目の前。

午後から出社、翌日のプレゼンの最終調整にどれだけ時間がかかるか分からなかったのでディナーは予約しておらず、どこで食事してどこで酒飲むかは出たとこ勝負。とはいえ随分昔だがマンハッタンに都合1年弱ほど住んでいたことがあるので、土地鑑がないわけではない。

結局カジュアルにWollensky's Grillでさくっとフィレミニョンを食べた。クラシック。本当はPeter Lugerに行きたかった。終わってからせっかくなのでバーボンを飲みにいこうと思い、タクシー乗ってイーストヴィレッジへ。

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カジュアルな日本食レストランがたくさん集まる一角に「横丁」と漢字のネオンが出ていて、そこの建物の階段を上がっていくと看板も何もないAngel’s Shareというバーがある。初めて行ったのだが勘でここだろうと思いドアを押したらやはりバーだった。カウンターが10席ほど、テーブルもたくさんあって割と大箱でほぼ満員、にぎやかだ。

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たまたまカウンターが2席あいていて、そのうちの1つに陣取る。周りを見るとカクテルを注文している人が多い。そして客はアジア人が6割ぐらいか。バーテンダーからAre you ready to order?といわれ、では最初はカクテルにしよう、と思ってメニューのSmoke in your eyesを頼む。

シナモンとスパイスをバーナーで炙って燃やしたところにワイングラスをかぶせて煙を閉じ込め、そこにバーボンベースのカクテルを注ぎ込む、という手の込んだ少し甘めの一杯。

バーテンダーは2人いて、恐らくどちらも日本の方なんだろうな、と思ったので日本語でお話しするとやはりそうだった。流行っている上にカクテル頼む人ばかりなので忙しそうなことこの上ない。私は全然バーボンには詳しくないので、2杯目は珍しいバーボンがあれば、と言って出してもらった。

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気が付くといつの間にか隣に女性が座っていてモヒートを飲んでいた。何飲んでるの?と聞かれ、バーボンなんだけど実はよく知らないんだ、と答える。深圳出身でNYに住んでいて、直近もパリに行って帰ってきた、という。

このモヒート美味しいから飲んでみて、と言われて一口いただく。この時期のミントは美味しいね、と話す。単刀直入に「あなた何歳?40ぐらい?」と聞かれていやいやもっと上だよ、「じゃあ45?」いやもうちょっと上、みたいな会話があり、「じゃあ私何歳に見える?」とお約束の質問が来る。こういう場合は多分見た目よりも若目に言うのが大人の品格なので23歳?と言わされて彼女は26歳と判明。「しばらく前に彼氏と別れて」などと言い始め、林真理子の日経連載小説の登場人物か、というような展開。こっちはじっくりバーボン飲みたかったのに全然集中できない。

かつて取引先の会社の人が中国でハニートラップに引っかかってお部屋にお持ち帰りしたところに官憲に踏み込まれてしばらく娑婆に出てこられなくなった話を聞いたことがあり、よく考えると香港資本のホテルの部屋がなぜかスイートにアップグレードされているところから実はハニートラップが始まっていたのでは、という気もしなくもなく、聞かれてもいない娘の話などをこちらからしてお引き取りいただいた。まあ相手が単にプロだったのかもしれず、私の自意識過剰もしくは被害妄想だけかもしれず、答えは闇の中だが。

そういうわけで3杯目にいただいたバーボンも、少し枯れた感じが美味しかったということしか記憶に残っていない。折角いいものを出してもらったはずなのに。

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季節もいいしどこかのルーフトップバーで飲みなおそうかと思ったけれど、時差ぼけもあり酔いも回り、素直にホテルに帰った。念のためしっかり施錠した自分に少し可笑しくなった。

朝早く目が覚めアルコールが抜けていないことを自覚し、セントラルパークを軽く走ってから出社。会社で酒臭い汗をかくわけにもいかない。今回の出張のハイライトのミーティングは3時に終了予定。その後すぐに空港に向かい東京に夜9時15分に着くはずが、到着機材の遅れで5時間遅れ、夜11時25分発、羽田に朝2時25分着との不幸な知らせ。

仕方がないのでデスクを借りて溜まった仕事をやっつけた後、昔の同僚に電話して飲みに行こうぜ、と言ってみたが「ごめん今日具合悪い」とのこと。仕方がないのでヘルズキッチンクラフトビールバーまで一人歩く。ブロードウェイ沿いは巨大なコンクリートブロックが歩道におかれている。ソフトターゲットテロ対策、昔はなかった。

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54と9の南西角にあるバー、Valhalla。タップが20種類ぐらい並んでいる。スコッチもバーボンもあるがスタンダードしかないのでエールのお勧めを頼んだら、大好きなSam Adamsが出てきた。まあこれもスタンダードだけれど。

カウンターの一番端で暗い中NY Timesを熟読しながらパイントを飲んでいる若者、立ちながら仕事の話をしている同業者と思しきグループ、30代半ばの女性2人連れなどで6分の入り。

突き放すでもなく、構いたてるわけでもない適度な店と客との間の距離感が気持ちいい。万国共通のいいバーの重要な条件だと思う。グラスが空いてしばらくすると黙っていても寄ってきてくれて、一言二言喋り注文を受け、チップに短くお礼を言って離れて行き、また少しすると目くばせが来る。美味いよ、と軽くうなずくと向こうもうなずく。アメリカのヘヴィなIPA飲みたいんだけど、と言って出てきたのがこちら。

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小腹が減ったのでホットドッグを頼み、ついてきた手作りのフレンチフライをつまみにIPAを飲む。苦い中にも柑橘系の甘みが隠れていていくらでも飲めそうだ。だが念のため少し早めにJFKに行くことにし、サーブしてくれた店のTシャツ着たスタッフと握手を交わして店を出る。

慌ただしいNY訪問だった。そもそも最近慌ただしい。前の週末も会社のイベントで軽井沢に出かけて土日丸つぶれ。出張前日の月曜日は週末納車予定だったのに取りに行けなかったバイクを夕方引き取り、会社のビルの駐車場に停めて出張の準備の仕事を続ける。さあ帰ろうと思ったら、駐車場の営業が夜10時で終了していてバイクを出せない。NYから帰ってくるまで置いておくか、とも思ったが、1時間600円の駐車料金で金曜日まで停めておいたら6万円以上かかるということに気づく。結局駐車場の人に泣きを入れて無理やり出してもらった。

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新しいバイクがうれしく、少し遠回りして家に帰ったのが1時過ぎ。すぐ爆睡して朝パッキングして羽田からNY便に乗った。そして帰宅は金曜早朝にずれ込み、金曜はたまった仕事をやっつけ、土曜の早朝から徳之島トライアスロンに行く、という超強行スケジュールの予定。

結局家に帰ったのは金曜日の朝3時前。書斎の机の上にはGWに行ったニッカの余市工場から工場見学のお礼状が。年間何万人が訪れるのだろうか、綺麗な字で書かれたまったくやっつけ仕事感のないお礼状をご丁寧にいただくと、今後もニッカを応援したくなるというものだ。笠木さんありがとう。

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どこに行っても生きていかれる気もしなくはないが、やはり日本が好きだ。帰ってきて東京タワーを見るとホッとする。日本に生まれてきてよかった。

 

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