東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

京都・大阪にて:案ずるより産むが易し

今年もまた友人の墓参りに行ってきた。先日の地震震源に近かったこともあり、友人の実家と彼のお墓のあるお寺が気に掛かっていた。京都から在来線に乗り換えて最寄り駅が近づくにつれ、ブルーシートが被せられている家の数が増える。

7時過ぎの新幹線に乗ったときから、そしてこれまでも毎年ずっと思い悩んで来た。墓参りだけではなく彼のご両親にご挨拶しに参上するべきかどうか。彼だけ先立ち自分がのほほんと生きていることの後ろめたさや、自分が親だったら目の前のこの子ではなく何故自分の息子だけそんな目に遭わなければならないのか、と思うだろうなどいろんな感情が渦巻いて、正直答えを出すことから逃げてしまい、十数年前に意を決して一度お会いして以来ご無沙汰してしまっていた。その時も一番仲良くしてもらっていてありがとう、とお母様がおっしゃられ、彼が亡くなる前につまらない行き違いをし、仲直りする前に先立たれたことを改めて想い起こし、また後悔の念に打たれた。

だがもう四半世紀以上も前のこと、むしろ顔をお見せしたら喜んでいただけるかもしれないという気持ちが少しずつ強くなり、お寺の最寄り駅に着いたときにはiPhoneでご実家の番号を押していた。大変お久しぶりですがN君には仲良くしていただいていたものです、と申し上げたらすぐに思い出していただき、お墓参りを済ませて小一時間ほど後にご挨拶に上がる旨をお伝えして電話を切る。

駅前で供花を買い、阪急電車の踏切を渡り寺までしばらく歩く。この辺りは地震の影響は全く感じられない。境内の樹齢200年ほどと思われる立派な黒松も無事、お墓も倒れているような形跡は見られずほっとする。お墓を清め、花を供え、近況を報告。念のためお墓に新しい名前が刻まれたり赤い字が黒くなっていたりしないか確かめる。何も変わっていない。良かった。

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一駅電車に乗り、駅から数分歩き、Nの実家に着く。呼び鈴を鳴らすとお母様が出てこられ、大変ご無沙汰しておりますとご挨拶。中に招かれると応接間までの間に仏間があり、Nが使っていたギターが2本置かれていた。わざわざ出してきてくださったのだろう。AerosmithとGuns n' Rosesのステッカーが貼られた、ヤマハのSFX。そしてMorrisのアコギ。長い指で上手にギターを弾いていたことを思い出す。

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自分やNとの共通の友人の近況を報告し、彼の弟さんと妹さん、そしてその子供たちの写真を見せてもらい、結局1時間ほどの滞在となった。私は仕事は忙しいが小学生の娘とは朝一緒に家を出て、同じ電車で通学・通勤するので毎日2、30分は一緒にいられるという話をしたら、お父様はそれはいいね、とおっしゃった。彼が亡くなる前の数年間は仕事も忙しかったそうで、あまり息子との時間が取れないままに息子を亡くしてしまったことへの後悔の念が伝わってきた。彼のことを忘れないでいることが最大の供養だと思っているのだとお伝えした。お二人とも突然の訪問にもかかわらず喜んでくださって何よりだった。やはり顔を出してよかった。そう思えてホッとした。

炎天下墓参りをして汗をたっぷりかいたので塩っ気のあるものが食べたくなり、十三まで出てやまもとでねぎ焼きと焼きそばをつまみに瓶ビールを手酌で飲む。暑い日なのに意外と混んでいた。そして当たり前だが鉄板が熱く、冷房の効いた店の中でも膝の裏からアキレス腱まで汗が流れ落ちるのが分かる。

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食べ終わってもまだ2時、外は死ぬほど熱い。とりあえず京都にまた戻る。三十三間堂の裏のかき氷屋にタクシーで行ってみたけれど長蛇の列、これは文字通り死んでしまうかも、と思い京都駅に戻ってイノダコーヒーでコーヒーフロートを時間をかけて飲み、観光する気も全く湧かないので祇園のサウナで大相撲を見ながら時間を潰す。

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いいぞサウナ。汗まみれの体がリフレッシュ。17℃の水風呂に入って、屋上で風に吹かれれば超ととのう。着替えてさっぱりしてから、四条通の反対側の居酒屋、遊亀へ。

土曜日の7時を過ぎ、混んでいて待たされるかと思ったらすぐに座れてラッキーだった。神田や赤羽にある昔からの居酒屋のように、カウンターの中を店員さんが歩き回れるレイアウト。お品書きを見るだけでワクワクする。とりあえず中ジョッキと白魚の天ぷら、お造り盛り合わせと万願寺とうがらしの焼きびたしを注文。

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ジョッキが空いて、にごり酒をお願いする。コップになみなみと注がれた酒が受け皿に落ちる。コップの酒が少なくなって受け皿の酒をコップに移して飲んでいると、隣のドイツ人夫婦の旦那さんが「なんでそうやって飲むの?」と聞く。皿から飲むのは行儀が悪いから、と答える。なんでドイツ人と分かったかというと、大ジョッキを頼んで店員が持ってきたのを見て、「これが大?マジで大なの?」と英語で何度も確かめていたのをみてちょっと笑いそうになり、この人たち絶対ドイツ人に違いない、と思った。その後夫婦の会話もドイツ語に聞こえ、やはりフランクフルトから来たとのこと。その夫婦の隣には妙齢の女子3人連れがいて、エイヒレをドイツ人に無理やり食べさせようとしたりして中々のチャレンジャーぶり。エイの写真見せたりしたらどう考えても逆効果のようにしか思えない。そのうちの1人がかなりのクールビューティーな感じだったのでドイツ人よりも彼女と仲良くなりたいわ、と思うものの当然かなわず、もう一杯酒を飲み、つまみのミックス南蛮漬けを頼んで美味しくいただき、店を後にした。

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汗をたくさんかいた後の居酒屋での酒も料理も旨いに決まっている。そして勘定も控えめで最高。前日も飲み会があり、今朝も6時起きだったこともあって帰りの新幹線では熟睡。夜半前に家に着き、改めてほっとして直近届いたソサエティの若いGlendronach、2007年蒸留9年もの「リスのように生き生きと」をワンショット飲むと、一仕事終えた充実感と眠気が襲ってきて長かった一日が終わった。

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案ずるより産むが易し、とは恐らく今日のようなことを言うのだろう。

 

 

 

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