東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

浅草サンボアにて

年末にランニングで浅草に行き、前から行きたかった温泉銭湯の蛇骨湯で汗を流した。流石かつての東洋一の歓楽街、大好きな昭和の居酒屋も含めたくさん惹かれる店があったが、年の暮れに家人をほったらかしにして街をふらふらしている訳にもいかず、後ろ髪を引かれる思いで帰宅。

そして新年を大して意識しないままに私の2018年は始まり、4日から出社、翌日金曜日の夕方には流石に手持ち無沙汰になり、早く切り上げる。さあどうする、そうだ浅草行こう、と思い立ち地下鉄に。

私は銀座線が好きだ。そして丸ノ内線も。古いだけあって浅い地下に作られていてすぐ乗れ、バスのような温かみを感じる。昔は銀座線は終点直前に一瞬停電して車内が真っ暗になっていたような気がするが、それはいつまでだったのだろうか。あるいは記憶違いなのだろうかと訝しみながら構内で反対側のホームに通り抜けできない古い造りの田原町で降り、国際通りを上がる。

いつもの金曜の夜だともっと賑やかなのだろう、ようやく築地の河岸も始まったばかり、まだ休みの人も多いのだろうか、と思いながら路地をぶらつくが、ホッピー通りに辿り着くと楽しそうに飲んでいる人たちが沢山いた。ぼっちだとちょっと入りにくいところもあり、一人で静かに飲める店はないかと探して結局水口食堂に落ち着く。

壁一面に貼られた木札がお品書き、おそらく100以上あるのだろう、なかなかに悩ましい。冷えた体を温めるべく麦焼酎のお湯割りを注文。頼んだカキフライも名物のいり豚も下町の食堂というか居酒屋としてはお上品な量だったので物足りず、肉豆腐を追加したらこれが豆腐ほぼ一丁分が入っているという特大サイズ、最後にぶちのめされる。一人で大テーブルの端に座って皿をつついていたら、松方弘樹を思い起こさせる、貫禄のあるがっしりした体つきをした常連客が入ってきた。藤井、と名前が大きく胸に書かれた外套を着ている。コートではなく、ゴム引きの外套。その下には和服を着ていても全くおかしくない。こういう街にはこういう人がふさわしい、と妙に感心しながら店を出た。

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最後に暴力的に腹が満たされ、寒空の下でまた街をふらつきバーを探す。そういえば浅草にはサンボアがあった。

街が意外とコンパクトなのですぐに店は見つかり、バーにしては明るいライトに店内が照らされているのが通りから見える。もっと古めかしいのかと思ったが店に入るとイメージが覆され、まだ新しいカウンターが肘に気持ちいい。だが寺町サンボアを思い出す。

何を頼もうか、ここでも悩むがバックバーにWolfburnを見つけたのでお願いする。私の好きなCaperdonich蒸留所(閉鎖)のウォッシュ槽が仕込み水のタンクとして使われている、スコットランドで最も北にある蒸留所。2013年1月25日に復興後初めての蒸留が行われた新しいブランド。ラベルに描かれているオオカミはスコットランドの北にはかつて沢山生息していて、言い伝えでは海面を歩くことのできる海狼がいると信じられていた。そしてそれを見ることができた人には幸運が訪れるとされた。

アメリカンオーク樽熟成のまだ若い薄飴色の液体がショットグラスになみなみと注がれる。この店は常にダブルショット。カウンターの上に置かれたコースターのユニオンジャックがチョコレート色のカウンターに映える。そしてあては薄皮つきの落花生。サンボアに来た、と思わせられる瞬間。

f:id:KodomoGinko:20180105202751j:plainコースターには100th anniversary renewed in 2018と書かれていた。落花生の薄皮を乱雑に床に落とすのはためらわれるぐらいの新しさ。

Wolfburn Northlandを少しずつ味わいながら店の中を眺める。どう聞いてもみずほ銀行の管理職のおじさんとしか思えない会話をしている二人連れ以外は若者ばかり、なのにやはり、というか夕刊が置いてあった。読売とスポーツ新聞。当たり前だが寺町サンボアではないので京都新聞はない。今どきの若い人たちは紙の新聞なんて読んだりしないだろう、やはり新聞は綺麗に折り畳まれたままの姿でカウンターの端にあった。

「次は何にしますか?」白いバーテンダーコートを着た若いバーテンダーが聞く。ぐるっと見渡して、季の美のマティーニを頼む。作ってもらっているうちに、若い客が店に入ってきてバーテンダーと新年の挨拶を交わした後、バーテンダーがその客に何か小さく囁き、彼はすぐに照れたように帽子を取った。

店の中では帽子を取る。昔はそれが普通だった気がするが、最近はそんなことを注意する店などほとんどないだろう。新聞にしろ、脱帽のルールにしろ、浅草にはまだ大人の店が残っていた。


外に出るとまだスーパームーンの名残が残っていて、月明かりが街を明るく照らしていた。何かに祝福されているような気分になって家路に着いた。

 

 

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浅草サンボア

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