東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

郡山へ

ふと思い立って、郡山に出かけた。

ゴールデンウイーク谷間の二日の平日、初日はしっかり仕事をしたが二日目の予定がキャンセルされたので急遽休暇を取得。初日の仕事の後そそくさと帰宅し、バイクで夜の東北自動車道を北上。

風もなく寒くもなく、穏やかな朧月夜。一応ゴールデンウイークではあるものの、交通量は少ない。宇都宮を過ぎ、車がさらに少なくなると道は真っ暗。バイクのライトだけでは心もとないけれど、どこまで走ってもオレンジに鈍く光る月が追いかけて来てくれる。7時に家を出、10時前には郡山にいた。自宅から250㎞。

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全く土地鑑がないので街を徘徊してみたかったが、夜10時を廻って何も食べていないこともあり、とりあえず福島の地酒が置いてある居酒屋「しのや」へ。
ウドの天ぷら、アスパラのマヨネーズ酒盗和えを注文。一杯目はハイボールを飲んだが、せっかくなので福島の酒を飲みたく、会津の酒「天明」の飲み比べセットを注文。

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純米と純米大吟醸、火入れと生酒、の4通り。最近私は複雑な酸味の日本酒にはまっているのだが天明は王道を行く日本酒。どれも綺麗な味で、敢えて言うと生酒の純米大吟醸が一番好きだった。アスパラのマヨネーズ酒盗和えが日本酒によく合って驚いた。

折角知らない街に来たので郡山では名の通ったモルトバーに行ってみる。すぐ近く。ふらっと入ったらカウンターは空いているように見えたが予約で満席、ということでその真上の階にある姉妹店に案内される。とりあえず目に付いたBenriachのオフィシャルを頼み、それを飲み終えて「何かアイラで珍しいものがあれば」とお願いする。出てきたのはCaol IlaのDistillers Edition。ラベルの黒いやつ。東京を離れると高いウイスキーを頼む人が少ないので隠し玉があることが多く、今回もそれを期待したのだが空振り。

二杯飲んで勘定をもらい、バーテンダーに「いつもウイスキー飲まれるんですか」と聞かれ「そうなんです」と答える。「うち、アイラの珍しいのもあるんですけど大体一杯で2000円超えちゃうんですよ、Ardbegとかだと最近の限定のやつはほぼあるんですけど」と言われ、いやそれ出して欲しかったんだけど、という話になる。Perpetuum、Dark Cove、Ardbogなどがあって、Ardbogをいただいて帰る。

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よくよく考えると、一軒目は席が空いていたように見えたのに満席と言われ、二軒目では高い酒は勧められなかったのは自分がとっても貧乏臭く見えたせいかもしれない、と気が付いた。高速道路のサービスエリアでバイク乗りが髪の毛くちゃくちゃで訳の分からない日本語英語が書かれた薄汚れたレザージャケットとぶかぶかのパンツ履いているの見ると「なんだかなー」と思うけど、多分五十歩百歩だったのだと思う。

翌朝は平日なので間違っていつも通り6時前にアラームが鳴って目が覚めた。那須高原のサービスエリアから予約した東横イントライアスロンの試合の時のように一人で贅沢しても意味のないときに泊まるが、実は意外と悪くない。6000円の部屋とは思えぬクオリティ。まだバイク運転するには血中アルコール濃度が高すぎるかも、という目覚め。味噌汁飲んだり風呂入ったりしてアルコール抜いて8時に出発、目指すは磐梯吾妻スカイライン

実は今のバイク、確か2007年に買ったのだがあと1か月程でお別れ。名残惜しくていい道を走りたく、日本とは思えない景色の磐梯吾妻スカイラインにツーリングに行きたかったのだ。だから郡山に前泊した、というわけだ。

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最高標高1600mなので雪が残っていて、5月というのにかなりひんやり。バイクは体が固まると曲がらないのだが、寒くて身体が動かない。この前の日光みたいに転ぶと飛んでもないことになるので慎重に走る。身体がリズムを思い出すとカーブが迫るたびに楽しくなる。加速してコーナー手前でブレーキ掛けて、フロントブレーキリリースしてバイク傾けると勝手に前輪がイン側に切れ込み、引きずっていたリアブレーキをリリースしてアクセルオンするとトルクステアできれいに曲がる。コーナリングスピードが高くなるとバンク角が深くなりリアタイヤの端から端まで使えていることが分かって楽しい。フロントブレーキの右手、リアブレーキの右足、シフトチェンジの左足とクラッチの左手、そして前後左右への荷重移動と全身でスピードを楽しむ。

自分で別れようと決めたのに、いざ別れるとなると名残惜しくなって別れたくなくなる、というのは本当にダメな男以外の何物でもないわ、と自嘲する。もういいおっさんなのに。

吾妻小富士を一周し、山を降りて高湯温泉のあったか湯に浸かる。いろんな温泉行ったけど、ここが日本で一番好きかも。Ph2.7の硫黄泉。硫黄の粒子が細かくて、肌をさするとクリーム塗っているような感触のお湯。そして露天風呂の温度がちょうどよく、ほっとかれれば永遠に入っていられそうな気がする。これが250円なんて本当に安すぎる。今度改めて高湯温泉泊まりたい。このためだけに来てもいい。

高湯温泉 福島|共同浴場あったか湯 日帰り温泉 日帰り入浴施設

そして福島市内に近づき、一度行き過ぎたのだが何だか美味そうな店だとセンサーが反応したのでUターンして入ってみた蕎麦屋が大当たり。胡々里庵。せいろ2枚食べちゃった。

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素晴らしい景色とバイクが楽しいワインディングロード、最高の温泉と旨いそば食ったら本当に満足して東京に戻った。帰宅してバイクのタイヤを見るとショルダーの方がささくれ立っていて少し嬉しい。久しぶりに心の底から楽しいと思える休日だった。何のオチもないけれど。