東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

かわいい子には旅をさせよ: ラガヴーリン25年200周年ボトルを抱えてフィンランドとエストニアを行ったり来たりの巻

今年の夏休みはフィンランドエストニア。いつもはギリギリの時間にしか空港に行かないが、お盆で家族づれということで念のためフライトの3時間半前に家を出た。しかし高速も空いていて駐車場もあっけなく止められ、フライト2時間前にはラウンジで551の豚まんとビールをまた楽しんでいた

というのはもちろん嘘で、ラフロイグソーダを飲みながらのカレー。流石に誰からも声をかけられることはない。

仕事行く日と変わらない時間に起きて朝10時45分の成田からのフライトに乗ること10時間。東京時間の午後9時、ヘルシンキに午後3時着。ヘルシンキの気温は20度。そもそもお盆ど真ん中に東京を発つのに家族分の空席があるだけでもありがたいのに、時差的にも気候的にも身体に優しく、本場のサウナと美味い食べ物でリフレッシュして、基本的に英語が通じるので何か困ったことがあってもどうにかなるという安心感。消耗せずにフル充電できる夏休みにぴったり。結果的にはまさにそうなった。

ヘルシンキ市内へは空港から小一時間。ヘルシンキ中央駅前にある建物もサービスもソビエト社会主義共和国連邦風味のホテルにに夕方チェックインした後軽く市内をうろつき、一番大きなデパートでウイスキー冷やかしヘルシンキ大聖堂を見る。お上りさんが三越行って浅草寺行くようなものか。

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f:id:KodomoGinko:20190829152647j:plainオフィシャルボトルの相場に明るくないので安いか高いかわからない。いずれにせよここには最終日に戻ってこられるので本日は偵察のみ。アードベッグドラムはまた飲みたい、と思っていたので在庫があってちょっとうれしい。値段も普通だし。

店から出てきて午後9時、まだ薄明るい。

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出発前に目星をつけていたEMOというレストランに飛び込みで入ってみる。結果は大成功、めちゃクオリティ高い。ミシュランビブグルマン。東京と変わらないお値段。

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旅の2日目は午後5時過ぎのエストニアの首都タリン行きのフェリーに乗る前に朝からプールに行ってサウナ入ったりベタな観光をしたり。ヘルシンキもタリンも港が中心部にある上、船で僅か2時間ほどしかかからないので日帰りもできる。

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ホテルをチェックアウトした後独特の何となく時間を持て余した感じの1日だわい、と思っていたらいきなり激しくやらかした。

フェリーは早めに出発することもあるから1時間ほど前に着かないと、と聞かされていたので1時間半前にフェリーターミナルに行ってみた。どういう訳か人がほとんどいない。おかしい。

ふと掲示板を見ると今日のフェリーは全て出航済み、となっている。私の乗るはずだった17:15発の便はどうなったのだ?と頭がはてなマークで一杯になる。今日のEckero Line最終便は15:15発で、それが私の乗るべき便だったらしい。

どうやらフェリーの予約確認のEメールをiPhoneカレンダーが自動で読み込むときに時差を間違えたらしく、その間違ったiPhoneカレンダーの情報を私がうのみにしていたのが原因と判明。ちなみにタリンはロンドンと2時間差なのでそのせいだと思われる。アホすぎる。慌てて予約を取ったdirectferriesのウェブで調べると他の会社の便も含めもう明日の便しかない。

マジか。ショック大。そして一瞬パニック。

今晩泊まるはずだったタリンのホテルキャンセルしてヘルシンキで宿を取り直さなければ。そして明日一番早いタリン行きの便を予約しないと。

ダメもとで別のフェリー会社のカウンターまでてくてく歩いて行って今日中にタリンに行く方法はあるか?と聞くと本当の最終便、19時半の便に乗れるという。一も二もなく90ユーロを払う。

自分の馬鹿さ加減にイライラしながら2時間時間をつぶし、無事タリン行きの大型フェリーに乗り込んだ。Tallinkというオペレーター。待ちくたびれ、腹が減ったしプチヤケ酒で船内のバーでビールを2パイント飲んでクリスプス、というかポテチを食べて晩飯の代わりとする。
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自国での酒の税金が高いのでエストニアに行ってフィンランド人は酒を買うのだ、と聞いていたのでフェリー内のスーパーマーケットを冷やかしに行く。酒のバラエティーがすごい。ウイスキーはまあ普通のオフィシャルボトルが種類だけはたくさん並んでいるけれど、どれもそそられないわーと思いながら見ていると、ガラスケースの中にハイエンドのボトルが並んでいた。結構いいのあるじゃん。

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値段を見てみると、タリスカー30年339ユーロ、2017年リリースのラフロイグ25年329ユーロ、バルヴェニー25年トリプルカスク349ユーロの横にラガヴーリン25年蒸留所設立200周年記念、769ユーロというのがあった。1ユーロ120円としても9万円強。あれーもっと高くなかったっけ?と思いながら席に戻る。

席に戻ってスマホで日本での価格を調べると15-18万円ぐらいが相場。渋谷ポットスティルと新橋キャパドニックで二度飲み軽く感動した記憶も新しく、うーんこれは買うべきかも、どうしたものか、とうっすら酔いが回ってきた頭で悩む。
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そしてしばらく悩んだのちに結局後悔しないために購入。世の中に8000本しかなく、ウェブでもあまり見かけないので。フェリーの上では免税なのかと思っていたら実は24%の消費税込みで、レジに行ったら「タックスフリーショッピングの書類、受付行ったらもらえるよ」と言われてここからさらに安くなるのかと驚く。
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東京で買うと15万円だとすると税還付込みで8万円ぐらいで買えたから7万円得した!というアホな考えが湧き出してくるが多分軽く酔っ払っているせいだ。カネ使えば使うほど儲かる訳がない。
だがフェリー乗り遅れたせいで90ユーロの無駄金使ったのがチャラになった、と少し気が楽になった。

ちなみにタリンからの帰路、乗り遅れていなければ乗るはずだったフェリー会社(Eckero)の船の中ではウイスキーは売っているもののハイエンドの商品はなく、乗り遅れていなければラガヴーリン200周年記念ボトル8000本限定、というレアな一本を手に入れられなかったというのも事実。けがの功名。

EckeroのフェリーではGame of Thronesのシリーズが売られていた。

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クライヌリッシュ、タリスカーラガヴーリン、シングルトン、ジョニーウォーカーが売れ残っていてロイヤルロッホナガー、オーバン、カーデュ、ダルウィニーが売り切れているという超変態な売れ行きで笑ってしまった。日本人だと普通最初の3つから買うよね。

そして手元に高価なボトルを抱えたまま9日間旅を続けることになった。
しっかりとした紙の箱に入っているものの、エアキャップ(いわゆるプチプチ)などで保護しているわけでもなく、割ってしまえば9万円のブツがパー。荷物を預ける時に何かあっても嫌なのでボトルを持ち歩いたまま観光してかなり消耗。ラフロイグ25年のように木のめちゃくちゃごっつい重い箱だったら間違いなく爆死していたところだった。

結果的にこのラガヴーリンはタリンから車で2時間ほど南下したところにあるリゾート地パルヌに旅をし、

f:id:KodomoGinko:20190829160046j:plainまた世界遺産のタリンに戻ってきて、

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フィンランド湾を再び渡り、

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フィンランド公式訪問中のプーチン大統領の車列とニアミスし、

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そこから350kmほど離れたフィンランド北東部の湖水地方にあるフィンランド最大の湖サイマー湖まで運ばれ、

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そしてまたヘルシンキに戻ってきた。かわいい子には旅をさせよ。

10日間の旅を終えて東京に戻るときにもまた一悶着。免税手続きには実物を提示する必要がありチェックインする荷物の中に先に入れるわけにいかず、スーツケースをJALカウンターでチェックインしてから免税カウンターへ。 

ヘルシンキからアジアに向かう便が夕方に集中しているせいで中国・香港人の爆買いの人たちの長蛇の列に巻き込まれる。セルフでできるマシンにもトライしてみたのだが「この商品はセルフ手続できません」的なメッセージが出てしまうので結局長蛇の列に加わることに。みんな飛行機の時間が迫ってイライラしてくるのが分かる。

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結局小一時間ほどかかって免税手続きを終わらせ、ラガヴーリンの買値が100ユーロほど安くなった。

しかしその後またトラブル。免税品で密封されており未開封なので手荷物検査を通過して機内持ち込みできるかと思っていたら(JALのカウンターでもそう言っていた)、タリン行のフェリーで買ったものだから機内持ち込み不可、もう一度出てカウンターで荷物預けて来いと言われる。

JALのカウンターに再び行くと箱とエアキャップをくれ、こわれもの扱いをしてくれるものの箱単体では破損のリスクはそれなりにあるという。そして免責書類への署名を求められた。割れても補償ないよ、ってこと。結局プチプチでぐるぐる巻きにしたラガヴーリンの箱を段ボール箱でさらに補強し、機内に持ち込む予定だったリュックサックの中に無理やり押し込んで服でクッションを作り、しっかりFragileのタグをつけてもらったことを確認したあとは運を天に祈るだけ。

免税手続きで並び、手荷物検査で並んだら一度弾かれて再びJALカウンターへ、そしてまた手荷物検査やってその後の出国審査も大渋滞。時間に余裕を持ってきていてよかった。

こんなに手続大変なんだったら空港の免税店で酒買えばいいじゃん、というご意見もあるかとは思いますが、種類はそろっているもののあまり面白いウイスキーは売っておらず。唯一目を引いたのがマキロップスチョイスのボウモア98年というヘルシンキ空港限定ボトルがあったこと。珍しいし2万8千円ほどなので買おうかどうか一瞬悩んだが、ボウモアにはそこまで思い入れないのでパス。

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結局昼食を空港で取ろうという目論見は外れ、ぎりぎりの時間に飛行機に乗り込んだ。

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10日の旅行だったがフィンランドエストニアは本当に気持ちがよかった。やさしい人が多く、日本人に対してリスペクトがある気がする。食べ物が口に合う。トナカイ美味い。サケマス系の魚も。タリンのロシア料理レストラン「チャイコフスキー」はわざわざそのためだけに再訪してもいいくらいだった。本場のサウナも。また機会があればいろいろ書いてみたい。


手続き長引いたせいで昼食が食べられず、機上の人となってすきっ腹抱え久しぶりの和食が楽しみ。食中酒何飲むか聞かれたので「本日の日本のウイスキーってなんですか?」と聞いたら白州とのこと。久しぶりの白州もいいな、ストレートでソーダを添えて持ってきてください、とお願いした。そしたらしばらく経ってからCAさんがやってきて、せっかくのお綺麗な顔の眉根にしわを寄せて「大変申し訳ございません、本日は山﨑しかございませんでした」と詫びられる。いやそこ謝るところじゃないし。

そしてやってきたのがこちら。うーん。おそらく100㏄、あるいはもっとかも。

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これは普段ウイスキー飲まない人がついでくれる時のあるある、なのかそれとも何度もお代わり注ぎに来させられるぐらいなら最初からがっつり注いじゃえ、ということだったのか、あるいは「お店じゃないんだからそんなケチケチしないでがっつり注いでくれ」的なことを言いそうな柄の悪い乗客と思われたのか。正解はどれ?

ウエルカムドリンクのスパークリングワイン飲んで、食事の前にロゼワインを飲み、そしてこれ飲んでしまうと9時間後ぐらいに成田から自宅まで運転するんだけど大丈夫か俺?と思いながら久しぶりに飲む山崎が美味い。この量でも飲み干してしまう。その後はおとなしくアルコールの分解に励みながら、お酒の神様に「ボトルが割れないようお願いします」と祈りを捧げつつ眠りに落ちる。

普段の行いがいいせいで神様が私の願いを聞き入れてくださり、成田で無事に荷物を引き上げ、長旅を共にしたラガヴーリンが我が家にやってきた。長旅をしたかわいい子。

10年か20年かぐらい経って何かめでたいことがあった時に、この文章を見て旅の想い出を思い返しつつ味わってみることにしたい。

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