東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

クライヌリッシュ14年を信濃屋本店で買う

バランタイン12年のバッティッドモルトを飲み終わってしまい、我が家のバラエティが一つなくなってしまった。1本ぐらいなくなったところで、口開けしてあるボトルは10本近くあるので本当は困りはしない、のだが、それを言い訳にウイスキー飲みにとって日本で最も危険な場所の2か所のうちの一つ、信濃屋本店までてくてくと小一時間ほどかけて歩いて出かけた。

 

信濃屋をご存じない方のために簡単に説明すると、イメージ、明治屋紀伊国屋のような輸入食品に強みを持つスーパーマーケットだが、信濃屋だけに向けたボトルをボトラーが用意したりするぐらいの高い信頼を得ているウイスキーのインポーター。ウイスキーのリテイラーとして世界のトップ3に選ばれたこともある。プロの料飲食店のみなさんも買い出しに来られるようなところ。本店は下北沢と三軒茶屋の間にあり、ウイスキーだけでなくワインやその他洋酒だけを扱う大きな店舗がある。

ちなみに信濃屋以外にもう一店日本で超危険な場所は目白の田中屋。

 

散歩を兼ねて家人たちと来たので、バランタインの値段よりも大幅に高いものを買うのは気が引けた。そこでそこそこの値段でいいものを選ぶことに。カリラ12年やグレンファークラス12年のリッターボトル、ベンネヴィスなどなど迷って仕方がない。「おとーさん余市あるよ余市」などと8歳の娘も何かと口をはさみたがる。まあアイラ島に連れて行ったせいで変な教養がついてしまったのだが。

 

せっかくなのでいつもあまり飲まないものにチャレンジしてみようと思い、前から飲みたかったクライヌリッシュの14年をチョイス。どういう訳かこれまでお店で積極的に勧められる機会がこれまであまりなかった気がする。

 

早く家で口開けして試してみたいところだが、夕食の買い出しもしなければならない。突然牡蠣入りのお好み焼きが食べたくなり、嫁と娘に意見を聞くと声を揃えて「いーねー」という。早速買い物して帰宅。

豚バラ肉をカリッと焼いて、牡蠣とキャベツのたっぷり入ったタネを焼き上げておたふくソース、青のり、鰹節。うまい。そしてクライヌリッシュ。

 

アルコール度数が46%と少し高いこともあってアタックは若干強めで辛め。その後フローラルの優しい香りと少しワックスのような香りが立ち上がってすっと直線的に消えていく。最後にわずかにピートを感じる。素直でいい子。やはり協調性があって誰とでも仲良くやっていかれる子なのだ。さすが。

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ふと思い立ってクライヌリッシュの歴史を簡単に調べてみた。

 

スタットフォード侯爵、のちのサザーランド公爵が1819年に蒸留所を設立した後、様々なオーナーの手を経たのちにScottish Malt Distilleriesが所有者に。1931年に大恐慌の影響を受けて一時閉鎖されるが、1938年に操業再開。だが第二次世界大戦の影響により大麦が配給制になったことで1941年に再び閉鎖。1945年11月に操業再開。

1967年に蒸留所の南側に新蒸留所の建設が始まり、1968年5月に旧蒸留所が閉鎖。その翌月から新蒸留所がクライネリッシュ蒸留所を名乗り、操業が開始される。新蒸留所は旧蒸留所の味を再現するよう蒸留器の形をコピーして作られた。

しかし1969年には旧蒸留所はブロラ蒸留所と名前を変えて再開。というのもアイラ島で干ばつが起き、当時人気が急上昇していたジョニーウォーカーで用いられるアイラ島のピートの効いたモルトが不足したため、使われていなかった旧蒸留所でピーティなモルトを作ることとなった。

しかしブロラ蒸留所は14年後の1983年に閉鎖され、その後復活することはなかった。

ジョニーウォーカーのブレンド用に使われていたことから「ブレンディッドウイスキーの水増し用のモルト」という不本意なイメージがあったが、2002年に14年物のオフィシャルシングルモルトをリリース。2005年にはダイアジオの「クラシックモルトウイスキー」のシリーズに加えられるまでになった。2008年にはステンレス製のウォッシュ・バック(発酵槽)が2つ増設され、1週間で7日の操業が可能となった。

ラベルのヤマネコはサザーランドの紋章に由来する。

 

参考:

http://www.maltmadness.com/whisky/clynelish.html

http://www.discovering-distilleries.com/clynelish/history.php

 

 

最近はピートのきつい雄弁なウイスキーよりも、気持ちの落ち着く大人の会話ができる酒を飲みたい気分なので、いいタイミングでの出会いだった。一度インヴァネスから北上して蒸留所に行ってみたいものだ。