東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

「ヤクザと憲法」と琴奨菊と渋谷Caol Ila

先週日曜日の昼、「ヤクザと憲法」という映画を見に行ってきた。家族でランチを食べて散歩していたら、ふと思い出して私だけタクシー捕まえて東中野へ。

ポレポレ東中野、という人を食ったような名前の映画館で14時40分の回を観ようと思って20分前についたらすでにチケット完売。パイプ椅子の補助席でないと座れない、とのこと。運よく普通の席に座れたが、通路に補助席を置き、階段に座布団まで敷いての超満員。消防法はどうなっているのか。
隣に座った兄ちゃんがLINEのメッセージをチェックしているのをチラ見してしまったのだが、SEALDS RyukyuというLINEグループのメンバーだった。なんだかな。

「実録じゃなくてこれは本物」。ヤクザに長期間密着取材して、ヤクザにはなぜ憲法14条が適用されないのか、という視点で撮られたドキュメンタリー。以下、公式HPから引用。

 

「脅威」を排除するためなら、ちょっとくらい憲法に触れたって…。あれ??どこかで聞いた話じゃないか!

 

銀行口座がつくれず子どもの給食費が引き落とせないと悩むヤクザ。金を手持ちすると親がヤクザだとバレるのだ。自動車保険の交渉がこじれたら詐欺や恐喝で逮捕される。しかし、弁護士はほとんどが「ヤクザお断り」…。日本最大の暴力団山口組の顧問弁護士が、自ら被告になった裁判やバッシングに疲れ果て引退を考えている。「怖いものは排除したい」。気持ちはわかる。けれど、このやり方でOKなのだろうか? 社会と反社会、権力と暴力、強者と弱者…。こんな映像、見たことない!? 強面たちの知られざる日常から、どろりとしたニッポンの淵が見えてくる。

 

指定暴力団として警察庁に登録されている21団体のうちの一つ、大阪西成に本拠を構える東組の二次団体、堺の清勇会の事務所にカメラが入る。
二次団体といっても、清勇会の川口和秀会長は本家の副組長。そして1985年に敵対勢力との抗争の際にスナックで流れ弾に当たって19歳の女子専門学校生(スナックに置いてあったドラムセットでバンドの練習をしていた、とのこと)が死亡した事件で実行犯に発砲を指示したとして22年服役した筋金入り。だが実行犯は一度は会長からの指示があったと認めたが、のちにそれは破門された恨みで偽証した、と裁判所に手紙を送っている。つまり会長自ら冤罪の被害に遭っていて、ヤクザ者は最低限の人権もない、ということをカメラの前で主張するという映画。

youtu.be

細かいことはネタバレになるので割愛するが、大阪府警の家宅捜索の際のマル暴担当刑事と思しき人間がカメラを前にして吐くセリフを聞くと、ヤクザ相手であれば法律なんか関係ない、というのがひしひしと伝わってくる。
東京と大阪の2つの独立系映画館でしか現時点では上映されていないが、DVD化もされない可能性が高いし上映そのものも公権力の圧力によって終わってしまう可能性もあるので、興味がある方は急いで見に行ったほうがいいかも。

川口会長もパッと見は渡世の人には見えない。分かりやすい人には我々も近づかないが、見た目は普通の人、というのは本当に危険。その会長を追ってカメラが飛田新地で回ったり(普段は絶対にありえない)、上部団体の会長の葬儀の模様が映し出されたり、選挙の投票依頼の電話が極道の携帯に掛かってきたりなど見どころ満載。来ている人の観察も含めて大変面白かった。

映画が終わって、大相撲千秋楽を見逃さないために慌ててまたタクシーで帰ってきて、琴奨菊の優勝シーンを生で見ることに成功。そして家族と一緒に夕食をとり、ストレッチした後に2月末の東京マラソンに向けてランの練習へ。

山手通りを池袋まで上がり、10㎞ちょっとのラン。平和湯で汗を流して着替え、日曜日の夜も空いている渋谷のCaol Ilaさんへ。

渋谷の駅から少し坂を上がり、雑居ビルの外階段を3階まで上がらないとたどり着かないのだが、キロ5分前半で走った後はちょっと辛い。ドアを開けると一人飲みの人が二人。日曜日の夜にバーで一人でウイスキー飲んでいるというのはなかなかハードコアだ。よく見ると奥に座っている方は一年で100本以上Caol Ila12年のボトルを開ける方。ご挨拶して昨年は何本飲んだのか聞くと、123本とのこと。全部一人で飲んでいるのではなく、元永さんとご一緒しているそうなのだが、それでもあり得ないぐらいすごい。

喉が渇いているのでとりあえずArdbegのソーダ割。そして次は敬意を表してCaol Ila12年、三杯目は同じく15年のUnpeat。元永さんいわく「今日はのんびり営業しています」とのことで、珍しくテレビがついている。そのテレビで「堤真一さんがウイスキーの産地を巡る番組の録画見ましょうよ」、ということになって店の4人全員でまったりとテレビ鑑賞。

四杯目はMortlach、SMWSの76.106。元永さんチョイスなのだが私の好みが完全にバレてしまっていて照れる。そして大阪のターロギーソナさんにお邪魔したこともすでに榊原さんから連絡が回っていた。

堤真一さんがLaphroaigBowmoreを見学している映像を見ながら、アイラ島がどうだったか、と水を向けられたので思い出話をする。何もなくて夏でも寒い。ピートを焚いている上に手をかざしても熱くない。Bowmoreでフロアモルティングやっているところは道から覗ける。

そして「これも好みと違いますか?」といってDuncan TaylorのAultmore21年。89年蒸留。確かにMortlachに通じる果実味の強さ。Aultmore初めて飲んだが、やはり人に勧めてもらうのが一番だ。
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そして堤さんがケンタッキーでJim Beamを訪問、というめちゃめちゃサントリー一社提供的な流れになり、元永さんが「これ日本に数本しかないんですよ」といってFour Rosesの手詰めのSingle Barrelを出してきてくれた。バーボンいつもは飲まないのですごく新鮮。樽の若い香りが強く効いているのに柔らかくて甘い。バニラ香の強いシャルドネのようだ。
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結局番組を最後まで見終わったころには、走った後にもかかわらず6杯も飲んでしまっていて、カロリー的にはもしかすると走らないで家にいたほうが良かったのでは、という展開。でも日曜日の夜に気の置けないバーでふらっと飲めるなんて、本当に恵まれている。