東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

代々木上原 Milestone にて

仕事を終えた後、家に帰る前にどこかで時間を過ごしたくなることがある。まっすぐ帰宅して食事を摂ってゆっくり風呂につかり、その後お気に入りのグラスで家に何本もあるボトルのどれかを飲めば安上がりなのに。

冷静に考えればその通りだと思うのだが、大抵理性がうまく働かずバーに寄ってしまう。家の中に昼間とりつかれた禍々しい何かを持ち込まない、という無意識が動物の本能として働いているのかと思ってしまう。バーに寄ろう、と決めるとその前に一人飯を食べる。ウイスキーに響かなさそうなものを選んで。酒に失礼のないように。

そこまでして外すと悲しいので、わざわざ行くべきバーは厳選せざるを得ない。バーマン、置いてある酒、その時の自分の心持ちの3つがどこに行くかを考える時の一番大きなポイント。客筋がイシューになるときもある。いいバーマンがいる店は客筋もいいことが多く、よほど運が悪い時ぐらいしか例外はない。

バーマンは好きだけど優しいウイスキーの品揃えが多くて今晩はガツンとしたのを飲みたいんだけどどうしよう、とか、前訪れた際に飲みたいと思った酒があったけど居心地が微妙でどうしよう、とか、バーとお酒は完璧だけどあの常連さんが話しかけてくるかと思うと今はその気分じゃない、とか様々な想いが巡る。そして一軒目で外してしまったときは大抵損切りして帰宅。

店でのバーマンや居合わせたお客さんとの会話が楽しみな時もあるが、背負っている何かをしばし忘れ酒を愉しんでいる時に、その意図はないのはわかっているとはいえあれこれ話しかけられて結果的に色々詮索されると酔いが醒めてしまう時もある。自分の抽斗は人に開けられるより開けたくなった時に自分から開ける方がいい。

先日まさに真っ直ぐ帰らずにいつもと少し違ったところで落ち着いた感じで飲みたい、それもできれば外れがないように知っている店で、という心持ちになった。そんな時に思い出したのが代々木上原のMilestone。駅から少し離れた井ノ頭通り沿いにある。

気をつけないと通り過ぎてしまいそうな控えめなファサード。風除けのためのドアを二つ開けるとライトに薄く照らされた静かな空間が広がる。私とあまり歳の変わらない西川さんという方がやっているお店。

静かで時間がゆっくり流れる。最初はSpringbankのオフィシャル15年からお願いした。
この店は酒も旨いが、実はとても上等なフルーツを用意してくれている。この晩はお願いしてラフランスを切ってもらった。
たかが洋ナシ1個、と思っていたら結構な量で、白い大皿がねっとりとしたラフランスで埋まる。まるで一人しゃぶしゃぶみたいだな、と思いながらそれをつまみ、官能的な甘みとわずかな酸味に合うように選んでいただいた加水のClynelish、1993年蒸留G&Mの14年を頂く。

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お店を一人で切り回す西川さんは接客のプロ。やはりわざわざ立ち寄るわけだから、落ち着いた気分にならないバーだと意味がなく、そういう意味でとても安心。

最後にSpringbankのLocal Barleyをいただく。もうお目にかかることはほとんどなくなってしまった貴重なもの。他のお客さんも帰られて、男2人で毒にも薬にもならない話をしながら、「実はこんなのもあるんですよ」と店のBGMがジャズからロックに変わる。なんかこの感じ、覚えがあるな、と思ったら学生時代に友達の下宿で好きな音楽聞きながら無駄話していたことを思い出した。こういう息抜きできる場所があると、いろんな意味で大変助かる。

近くの住宅街の中にセララバード、という有名なレストランがあるけれど、そこに寄られた後にでも、あるいは代々木上原で降りてわざわざ足を運んでもいいかもしれない。ただし、大人の方だけで。

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