東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

松山にて

のんびりしに松山に行ってみた。8時半に我が家を出て、9時45分に機上の人となり、12時前には松山市内にいた。近い。
宿と飛行機を予約した以外は無鉄砲な旅、とりあえず松山市民のソウルフードとやらを食べに行ってみる。

f:id:KodomoGinko:20170411220228j:plain昭和好きな私にはかなりグッとくる店構え。メニューはこれだけ。

f:id:KodomoGinko:20170411221926j:plainちゃぶ台が置かれた畳敷きの座敷にあがり、鍋焼き玉子うどんとお稲荷さんを頼む。四国はうどんとお稲荷さんが大体セットだ。 

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そしてしばらく待ってやってきたのがこちら。アルミの蓋を開けるといりこ出汁の香りがふわっと立ち上る。食べてみると、あ、甘い…。出汁もそもそも甘いし、結構な量の牛肉を煮付けたのが入っていてその味付けがとても甘く、時間を置くとその味が染み出てただでさえ甘い出汁をさらに甘くしていく。そしてうどんはやわやわ。同じ四国でも香川のうどんとどれだけ違うねん、といいたくなる。文化が違うのだろう。
でもなんだか癖になる味で、小さめの鍋に入った一人前がペロッと食べられる。

店を出るときに見た貼り紙が秀逸だった。

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アサヒを堪能した後で松山城へ。ロープウェーに乗り天守閣に近づくとソメイヨシノが満開。東京の桜と違って、花がぼんぼり状になっている丸い形がすごくしっかりしているのと、一本の木についている花の量が多いのと、ピンク色が濃いので驚く。

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そして東京よりも圧倒的に人が少ないのもいい。春と秋は京都に行くことが多かったのだがいいじゃん松山。満開の桜を堪能。
下りは歩いて古町方面へ降り、お堀端を散歩、てくてく松山市駅まで歩いて市内電車、というかちんちん電車で道後温泉へ。そして宿でゆっくりお湯に浸かり、修学旅行で食べるようなご飯を食べ、夜の街へ。夜10時過ぎでも道後温泉本館からは煌々と灯りが漏れる。

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一軒目のバーは「ゆめまぼろし」。階段を上がって店に入ると、箱の大きさに少しびっくりする。スタッフが3人以上のバーに行くことが最近あまりないのですごく新鮮。居酒屋的に盛り上がっている団体さんもいれば、長くて広い一枚板のカウンターの端で静かに飲む二人連れなどがいて、大きな店ならではの雰囲気。

こちらは店の世界観が名前から想像がつくように織田信長一色。オリジナルカクテルは直径30㎝はあろうかという朱塗りの杯や瀬戸黒のような茶器に入っていたりする。

モルトバーではなくカクテルを中心としたお店なので、色々悩んだ挙句スタンダードにマンハッタンを注文。きりりと冷えて美味い。バーでカクテルを頼むのが好きな人が多いのもよくわかる。

二杯目は泡盛と黒糖ベースのオリジナルのカクテルをいただく。店の方も気を遣って話しかけてくれ、地元の人は道後温泉ではなく少し離れたところにある銭湯で夜中まで空いているところがあるのでそこに行くのだとか、お鮨は太平寿司が間違いないとか、実は松山は焼き鳥を結構食べるのだとか、地元の人しか知らない話を親切に教えてもらう。バーテンダーの腕はコンテスト入賞で幾度となく証明されている雰囲気のよいバーで2杯飲んで3000円ちょっと、というのは中々なものだ。

そして二軒目はどこに行こうか悩んだ挙句にEpitaphという比較的新しいバーを見つけ、昔のロックが好きな人間としては反応せざるを得ない店名でつい行ってみたくなる。賑わっている界隈の新しいビルの4階、暗証番号を入れないと開かないドアのように見えたが押してみるとすんなり開く。

ここも大箱だがそれなりの客の入り、L字型のカウンターの角に陣取る。目の前にはMcIntoshの古い真空管アンプとそれとは対照的にハイテクの塊のLynnのアンプとプレイヤーが。そして店にはアナログレコードがたくさん飾ってある。

実は私はウイスキーも好きだが音楽もジャンルを問わず大好きで、音楽を聴きにロックバーにもちょくちょく行くのだが、そういうところの酒はあんまりこだわりがないところが多くて残念だった。旨いウイスキーの種類が多くて好きな音楽が会話を邪魔しないがしっかり聴こえるボリュームで流れているバーというのがあれば最高だ、と思っている。そのためにはある程度の店の大きさが必要となるので、東京だとなかなか難しい。

いくつか珍しいものを、と言って選んでもらって飲んだのが以下の3本。

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店の名前はやはりKing Crimsonから来ている、ということを教えていただき、だったら久しぶりにRedを聴きたいな、と思ったが置いていなかった。残念。

知らない街でバーを選ぶのはなかなか難しい。後からアイリッシュウイスキー専門のバーがある、というのを地元の雑誌を見て知って、また今度来た時に行かなければ、と思った。また昔からあるバーで忘れ去られてしまったようなボトルを見つけて飲むのも普段来ない街に来た時ならではの楽しみだ。四国で最大の街である松山はバーがたくさんある。今度は古めの店にも行ってみようと思う。

翌朝、宿の風呂にもまた入ったがどうしても改めて道後温泉本館に行きたくなり、3階の個室へ。宿の湯はここから引いてきているので、ここで入る温泉が一番新鮮なのだ。

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3階の客専用の風呂は空いていて、そしてかけ流しの湯量が半端ない。玉のような滑らかなお湯なのだが、風呂につかった途端に手足の先がピリピリするぐらい温泉成分が強い。宿の風呂とは全く違う。ゆっくりと風呂の中で体を伸ばして、最近の疲れを流し落とす。風呂上がりにいただく坊ちゃん団子も、風情のある建物も大好きで、ずっとこのままの形を残してほしいと強く願う。

松山は食べ物も旨いし、飲み屋も多いし、桜もお城もきれいで温泉も最高、温暖で土地が豊かなので人も優しく温かい。そして街で子供を見かけることが多くて活気があってよい。地方都市に行くとまともな本屋がないところ、すなわち文化が廃れてしまっているようなところが多いのに、ここはそんなこともなく、引退したらこの街に住みたいかも、と正直思った。いいところだと改めて思い知らされた。