東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

よい子はロックバーでQueenを見境いなくリクエストしない

私のこれまでのストレス解消法といえば、ランニングしてお風呂で汗を流しサウナで瞑想し水風呂入ってととのったあと(マッサージが受けられればなお良い)、さっぱりとした格好に着替えて美味いもの食べていつものモルトバーで美味い酒飲んで少しおしゃべりする、というもの。これを全てしっかりこなすには結構時間がかかるけれど、コンプリートするとココロもカラダも仕上がって数え役満上がった状態。

だが好事魔多し。ランニングとサウナと飲酒のコンボで脱水状態となり脈拍下がらず寝つきが悪くなり、食べ過ぎて苦しく、夜更かしして飲み過ぎて眠りの質も低下した上に起きても酒が残っていて、自己嫌悪も含めて翌日ストレスたまりまくりの状況でスタート、なんてことはよくある。なにせもうおっさんだから。数え役満和了って調子乗ってたら2分後に親に役満放銃したようなもので、差し引きマイナス1万6000点逆転不能。現に今がそうだ。いつも土曜の朝は子供を車で習い事に送ることになっているのに全く起きられず、起きてきても完全に酒気帯び状態で使い物にならず、子供は寒い中一人で電車に乗って出かけたと嫁にやや棘を含んだ声で聞かされる。絵に描いたようなダメ親父。

そういうわけで上記のコンボとは違う何かをずっと見つけたかったのだが、最近ようやく新しいストレス解消法を発見した。

先日立ち飲みのパブで会社の飲み会があり、たまたまそこで昔よく聴いたLed ZeppelinのKashmirが流れていた。ハードロックの授業が存在したならこれ必ず試験に出るよと言われそうな、演歌でいうと与作みたいな曲。耳にはうるさくないけれど腹が震える大きなスピーカー独特の音を聴くと、何故だか不思議とリラックス。ああこれいいわととのう。身体全体で音楽を受け止める感じ。ヘッドフォンで耳だけで聴くのとはだいぶ違う。心の奥の硬い何かがマヨネーズのような固体と液体の間に変わる。そうだった、ロックバーに行けばいいのか。昔よく行ったけど忘れてた。でかいスピーカーで腹に響く音楽掛けてくれるところ。出来れば美味い酒があればなおいい。

そういうわけでウイスキーが充実していて大きめのスピーカーから70-80年代のロックが流れるバーを探してみることにした。

ウェブを眺めていて一つかなりイメージに近いところを発見。新橋の行きつけのサウナからほど近い、雑居ビルの地下にあるカウンターだけのロックバー。6人も入れば閉所恐怖症の人なら思わず出口を目で追って探してしまうような店。照明は暗く、入り口の横にはLed ZeppelinDeep Purpleが来日した時のコンサートのポスターが貼ってある。

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Led Zeppelinの来日公演ポスター

換気が行き届いていてそれほどタバコ臭くない。焼酎の品揃えが豊富なのが売りだがスタンダードなアイラやイチローズのホワイトラベルなども置いてある。私にとっては理想的なバーだ。

店の中ではWishbone AshのThe King will Comeが流れている。レコードではなくCDで。普通の声で話ができるぐらいのボリュームで音はすごくいいのだが残念ながら小さめのスピーカーで腹には響かない。一杯目はアードベッグソーダをお願いする。

奥に座っているおじさんはタバコをふかしながら一人静かにウイスキーロックをゆっくり飲む。最近Wishbone Ashが来日したらしく、隣のおばさんはずっとその話をマスターにしている。その言葉の弾幕をかいくぐりながら二杯目を注文するのに一苦労。

カウンターにMotörheadというバンドが出しているウイスキーがあったのでそれを注文。中身はスウェーデンシングルモルトらしい。単にボトルが気になっただけなのだが、気を遣ってバンドの代表曲、OverkillAce of Spadesを立て続けにかけてくれた。埃っぽいド直球の男のロックで改めて聴くとカッコ良い。

そのあとRolling StonesのSympathy for the Devil、悪魔を憐れむ歌、が流れる。久しぶりに聴くがこれまたクール。そりゃそうだ、昔からStonesといえばカッコ良いバンドの代表、そのバンドの代表曲なんだからクールに決まってる。

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数曲心地よく聞いた後、マスターが何か掛けましょうか、と聴いてくれる。少し悩んで、Uriah HeepのJuly Morningをお願いする。1971年発表のアルバムに収録。そういや西城秀樹もカバーしてた(今聞くと日本語の歌詞がかなり寒い)。ハードロックでギターよりもオルガンの方が印象的かつカッコいいというのは珍しい。今週はUriah Heepのリクエスト多かったなあ、とマスターと奥に座っているおじさんが話している。70年代のマイナーバンドどんだけみんな好きで聴きたがるんだよ。

思い起こすと昔はエンドルフィン、というレコードでロック聴かせてくれる神泉のバーに多い時には週に2回は行っていた。いい店だった。そこで色々見てきたのだが、ロックバーの難しいところは音楽が途切れてはいけないところ。レコードで音楽掛ける店では、客が聴きたい曲をリクエストすると、以下の一連の作業が発生する。それも薄暗い照明のもと。

沢山のアルバムのストックの中から目当てのアルバムを見つけ出す(ちゃんとどこに何があるか覚えていないと至難の業) → リクエストされた曲がアルバムのA面かB面どちらの何曲目に収録されているかを調べる(店が暗いと意外と難しい) → ターンテーブルにレコードをセットし埃を払う → 曲の頭からちゃんと流れるようにヘッドフォンを使ってレコード針を落とすところを調整(これも慣れないと難しい) → 今掛かっている曲が終わるのと同じタイミングで再生のスイッチを入れる → かけ終わったレコードをジャケットに入れ、棚に片づける

書き出すだけでも大変だ。長い曲ならまだしも、短い曲ばかりだととても慌ただしい。これに加えてドリンクの注文を受けたり、カクテル作ったり、つまみを用意したり、お勘定したりするといったバーの基本動作が加わる。だから一人でレコードから音楽流す店でやたらと自分勝手にリクエストするのは大顰蹙。

そんなことを思い出しながら、Led ZeppelinのAchliles Last Standをリクエスト。新橋の店はレコードを掛けているわけではないが、それでもリクエストした曲数と同じだけの飲み物注文しないと申し訳ないのでは、と勝手に思って都合5杯ほど飲んでしまった。さっきのおばさん見ていて店に気を遣わせた挙句大して金を落としていかない、他の客や店に気が利かない客にはならないようにしよう、と改めて心に誓ったせいもある。そういうわけで新しいストレス解消法を発見したどころかなぜか、というかやはり飲み過ぎて結局のところは逆効果、という展開になった。まあ最初から何となくわかっていたけれど。だが後悔は全くない。

Bohemian Rhapsody見てQueenに目覚めた若い人は、ロックバー探して行ってみれば新たな発見があるのではないでしょうか。ただしよい子のみなさんは、店に入っていきなりQueenの曲をリクエストするのはやめましょう!あなたが来るまでの1時間にBohemian RhapsodyWe will rock youとWe are the championが3回ずつぐらい掛かっている可能性が最近マジで普通にあります。あとおじさんがQueenの蘊蓄語るのはみんな聞き飽きている可能性があるので気を付けてください!