東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

焚き火を眺めると心が落ち着く理由を(飲みながら)考える

台風に直撃された9月の3連休、焚き火を囲みながら外で夜ウイスキーを飲むという人生初の体験をした。残念ながら星空の下で、という訳にはいかなかったが。

キャンプ上級者の友人家族と山梨県北杜市のキャンプ場へ。バンガローの横に雨よけのタープを男二人で張って、炭をおこして薪と一緒に焚き火台に置く。台風が接近している割には雨風共に強くない。飯盒で米を炊き、七輪でサンマを焼き、ダッチオーブンローストチキンを作り、クラムチャウダーで暖を取りながらふた家族で楽しい夕ご飯。ついでにつまみの燻製も作る。ちびっ子たちはたらふく食べて幸せそうだ。食事が終わると家人たちは屋根の下に引っ込むが、我々二人はタープに落ちる雨音を聞きながら焚火に当たってウイスキーを啜る。 つまみに作ったチーズとかまぼこの燻製はおかずとして食べられてしまった。

焚火は薪の下から沢山の青い炎の筋が伸び、その先端が輝きながら赤く細く揺れ、まるでたくさんの蛇がこちらに向かって舌をちらちら揺らしているようで、ぼおっと眺めていても全く飽きない。

ほんのり立ち上る煙に燻されながら気の置けない友人とウイスキーをゆっくり飲みつつ話をしていると、こんなに幸せなことはあまりないかもしれない、という気がしてくる。

普段は焼酎を飲む友人も、G&M Macphail's CollectionのPulteney 2005を美味い美味い、と言って飲んでくれる。舌の上でバーボン樽ファーストフィル独特の南国の花や黄桃を思わせる甘い香りがフレッシュグレープフルーツの味に置き換えられていく。

人間が文化的な生活を送るようになったのは人類の歴史の中でほんのつい最近、ここ数百年ぐらいで、それより前の二千年ぐらいは暗くなったら焚き火を囲んで野生動物から身を守り、暖を取りながら群れでくつろぎさまざまな会話をしていたはず。闇の中でも焚き火があれば大丈夫、と太古の記憶がDNAに刷り込まれているから、揺れる炎を見ているとそれが蘇って心から寛げるのではないか、というのが私の勝手な仮説。

蛇のような細長くて動くものが大嫌いな人は大脳の中の理性が及ばない古い皮質が真っ先に反応して反射的に怖がるというが、それも人間としての本能が世代を超えてDNAに刷り込まれているわけだから、焚き火でほっとするのは動物として正しい反応なのかもしれない。

口切りしたボトルを二人で三分の二ぐらい飲んでしまい、火の始末をしてから就寝。翌日は朝7時から近所のパン屋がキャンプ場にパンを売りに来るのの整理券をもらうために並び、その間に七輪に再び火を起こしてお湯を沸かし、コーヒー豆をミルで挽いてハンドドリップ。朝からまた至福の時間。

至福の時間を再現できればと、家のベランダや屋上でも焚き火ができるように焚火台を買い、また同じPulteneyを手に入れた。寒くなったらまた火を囲みながら、友と語らいたいと思う。
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