東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

アイラ島 2日目

アイラ島2日目、旅に出て5日目。朝7時半からジムとキャロラインが作ってくれたイングリッシュブレックファストを食べ、娘とアーチーは食後に庭でニワトリの餌付け。雑事を済ませてから散歩にでる。しばらくしたら大粒の雨が降ってきたので宿に戻り、車で出かける。雨はすぐ止み、日差しが出ると、綺麗な虹があらわれる。

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ボウモアの街から海沿いに流す。途中で砂浜があったので車を止めて遊ぶ。道には羊が歩く。

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車はすれ違うとみんな挨拶する。たまに通る車の音と、牧草を刈る音が遠くから聴こえる以外はとても静か。さっきまでの雨は嘘のように晴れ上がり、波のない遠浅の海がきらきらと輝く。魂の浄化にはぴったりの島だ。

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ポートシャーロットまでドライブし、Kilchomanへ。ここは自分の車がないと厳しい。というのもこの蒸留所だけかなりの内陸にあるから。ここは2005年に始めたスタートアップの蒸留所。伝統を守りながら小規模にウイスキーを作っている。フロアモルティング。まだ新しいため、10年物も作れない。ウイスキー作りは初期投資を回収するまでに相当の時間がかかる、かなりリスクの高いビジネスであることを改めて思い知る。昨日のArdbegでも苦労話を聞いた。


その後Finlagganというアイラ島の聖地を訪れた後Caol Ilaへ。翌日オーバンに向かうフェリーに乗るポートアスケイグのすぐ近く。島の北側。ボウモア、ポートエレンに近い蒸留所と違って訪問客があまり多くない。

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どこの蒸留所でも大抵そうだが、ビジターセンターでは自分のところで作っているスタンダードなウイスキーを3種類ほど試飲させてくれる。ただCaol Ilaで気になったウイスキーは蒸留所でしか買えないもので、美味しかったら買うけど味が分からないしどうしようかな、と悩んでいたらおばさんが「出してあげるわよ」とフェスティバル(Feis Ile)の2013年と2014年を注いでくれた。

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2013年の方がアタックが強く、2014年は柔らかい。どちらも99ポンド。あとはUnpeatedのものもあり、どれにしようか悩む。アイラ島なのにピート使ってない、というのもなかなかひねくれていて良いのではなかろうか。パスポート持ってこずに免税の書類が作れない上に何れにせよ明日の昼にフェリー乗りに近くまで来るので、また明日来る旨伝えて礼をいって辞去。

私がウイスキー選んでいる間に、家人たちはビジターセンターで我々を出迎えてくれた黒猫と随分仲良くなっていた。蒸留所の人たちが笑って見ている。名前はスシ、というらしい。おそらく生魚が好きな猫なのだろう。というか猫としては普通な気がするが。飼い主がいなくなった、と言っていたのでもしかすると蒸留所に勤めていた誰かに飼われていて、その人が他界したのか。

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昔は麦を扱う蒸留所ではネズミよけのために猫をたくさん飼っていたというが、その名残なのかもしれない。

 

Caol Ilaのツアーには参加できなかったが、蒸留所の中をうろうろと。裏に行ってみると仕込み水らしき滝が。

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島の北の外れから、再び中心地のボウモアまで戻る。およそ25分ほど。のどかに草を食む牛や羊を眺めながら、手元不如意にならないように気を引き締めて。
Bowmoreの隣のカフェで遅めの食事。さすがにここで飲む気はあまりしない。どうやら前日食事をしたHarbour Innの人たちが食事作っているのではないか、という気がする。
3時前に店にいた人たちがぞろぞろといなくなるので、おそらく3時からツアーがあるのだろうな、と想像する。Bowmoreではフロアモルティングやっていて、樽からそのままカスクストレングスで試飲させてくれる、と聞いていたので行きたいところだったが、娘がそろそろ飽きてきているので諦める。後で聞いたら工場見学自身は好きなのだが、発酵して蒸留する前のマッシュの匂いが苦手らしい。
そこでビジターセンターの2階にあるバーで試飲させてもらうことに。Bowmoreは作っている種類が非常に多いので、いろんな種類を試せるのが嬉しい。バーにはすでに先客が20人ほどいて、カウンターはすでにいっぱい。おばさんが説明をしながら4種類ほどの試飲をしているのが見える。バーに背中を向けて、海を眺められる別のカウンターがあり、そこで飲ませてもらうことに。Caolilaでもそうだったが、若い人に頼むと聞き入れてもらえないことも、お年を召した女性に頼むとフレキシブルに対応してもらえる。
どれを飲むかメニューを見ながら悩んでいたら、「12年は無料なので、それを飲みながら考えたら?」と言ってくれる。さっきカウンターで若い方のおばさんがテイスティングの説明を行っている途中に日本人のおじさんが一杯注文して、「ちょっと待ってもらえる?」と言われていた。その後彼は我々のいるカウンターの端で一人飲んでいたが、彼のところには12年は来なかった。ジムも言っていたが、島ではゆっくりと時間が流れているので、人を急がせてもあまりいいことはないような気がする。
12年はスタンダードでくせがなく美味しい。そしてMashmen'sという限定品、一杯10ポンド、というのとGold Reef、White SandsとBlack Rochという3種類のテイスティングセット、12ポンドというのを家人と二人で飲むことに。

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写真を見てもらえればわかるが、かなりゴージャスに注いでくれる。蒸留所巡っていると、当たり前だがかなりの量を飲むことになることにご注意を。というかこの一日でウイスキー飲んだ量が自分史上最大だった。
家人と4種類飲み比べ、ブラインドテイスティングして遊ぶ。Mashmen'sはアタックが強くわかりやすく、White Sandsと同系統(記憶が諸事情により曖昧になっているかもしれないが)、残りの二つは柔らかめで、とかやっているうちに娘は酒のあてで置いてあるショートブレッドとチョコレートをボリボリ食べている。チョコレートは苦めで味が濃く、とても美味しい。よく見るとBowmoreの刻印が入っていた。

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ラストオーダーが3時半、と黒板に書かれていて、若い方のおばさんに何時に閉まるのか、と聞いたら4時だとのこと。それなら結構な量を短い時間で飲まないと、と思っていたら、年を召した方の女性が「5時まで開けているからゆっくり飲めばいいわよ。ウイスキーは慌てて飲んでも美味しくないから」と言ってくれる。優しい。ウイスキーへの愛情が感じられてぐっと来る。
お言葉に甘えて少しゆったり飲み、件の女性にお礼を言って辞去。


かなりの量を飲んだことを自覚しながら、謎の交通手段で宿に戻る。街から車で5分程度。運が悪いと狭い道で対向車が来て200mぐらいバックしなければならない、なんてことも余裕で有り得るので、それが出来る自信を無くさない程度で切り上げる自制心が求められる。ちなみに一台の車ともすれ違うことすらなかったが。


宿に戻って、昨日挨拶した同宿のドイツから来たウイスキー好きのメラニーとディナーをどこで食べるか情報交換。昨日我々が食べたレストランの感想を言い、彼女はジムがオーナーと知り合いだというBowmore Hotelで食べて、とても美味しかったとのこと。見た目は全然イケてなくて最初はびっくりした、と言っていたが我々は美味しければ見た目は気にしない。
ジムに頼んでオーナーの息子に連絡を取ってもらい、「日本から来た大事なゲストだからよろしくね」と言ってもらって、流石に自分で運転せずにジムに店まで送ってもらった。


ボウモアの中心から一本丘を登った道にあるBowmore Hotelは、安っぽいB&Bにしか見えず、ドアを押して中に入ってもビリヤード台が置いてあって地元のおじさんたちがエール飲んでるただのパブがあるだけのように見えるのだが、裏に案内されると落ち着いて食事ができるテーブル席が並んでいる。

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カウンターには地元のウイスキーがぎっしりと。ウイスキーのメニューは10ページ以上ある。島の蒸留所でしか飲めないものもだいたい置いてあったので、訪れることができなかったところの酒や、試飲したものを復習したいのならここで飲むのがお勧めだ。Harbour Innの隣にあったバーよりももしかしたら種類が多いかもしれない。私は両方行ったわけではないのでなんとも言えないが。

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ずっとカキが食べたくてしょうがなかったのだが、メニューを見ても載っていない。オーナーの息子のピーターに聞くと、「3ピースだけだったらあるよ」とのこと。もちろんお願いする。
それとムール貝とクラブケーキ。それにCaol Ilaで気になって仕方のなかったUnpeated 12年を合わせていただく。
カキはこれまで食べた中で最もクリーミーで味が濃い。本当は1ダースぐらい食べたかった。家人と子供に取られて一人1ピースずつ。残念。ムール貝は普通は白ワインの透明なスープでいただくことが多いが、スコットランドでは生クリームの濃厚なスープでとても美味。娘が気に入ってずっとパンをつけて食べている。クラブケーキもウイスキーにあって美味い。Unpeatedは、そうと言われないと意識しないぐらいどっしりとした強い味。その後Caol Ilaフェスティバル2014をいただく。本当にたくさんウイスキー飲んだ一日だった。


ジムに電話して迎えに来てもらっても良かったのだが、歩いて帰ることに。8時半過ぎでもまだ明るい。街の中心に背を向けてメインストリートを教会に向かって登っていく。

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振り返ると夕焼けに海が光っているのが見える。教会を右に折れて、ポートエレンに向かう道から左にそれて宿に向かう。また上り坂。遠くで通り雨が降っているらしく、虹が見える。

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雲の合間からオレンジ色の光が海に降り注ぎ、神の啓示ってのはこんな感じでもたらされるのかもしれない、と妙に人間臭いヤギの鳴き声を聞きながら酔っ払った頭で考える。

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宿に戻ると娘は「アーチーと遊びたい」という。ジムは「アーチーは街へ映画見に行ったよ」とのこと。トレーラーがやって来て映画を上映してくれるのだという。島では映画館もないだろうし、子供にとっては大事件なのだろう。

 

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