東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

豊島区のコロナ対策担当にバー向け融資について電話で聞いてみた

知り合いのバーの経営者に代わって豊島区の中小企業をサポートする部署である「としまビジネスサポートセンター」に電話してみた。電話窓口の混雑緩和のためにも、役所に電話する前に一読をおすすめします。

加えて前回書いた記事の最後の部分にある公的金融支援の受け方を読んでいただければ、概要は理解できるはずです。

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電話での問い合わせ方

バーの方は金融機関や役所に話すことはあまりないので緊張したり躊躇するかもしれないが、電話するのはタダだし基本的に皆さんめちゃくちゃ親切。電話してどう切り出していいかわからないときは以下のセリフを棒読みしてください。
 
「コロナの影響を直接受ける飲食業、バーの個人事業主(もしくは法人)なのですが制度融資や保証、利子補給制度について教えてください」 

 

以下の表が豊島区のあっせん融資(お金を貸してくれる金融機関を区が紹介してくれ、保証料や利子を補助してくれる制度)のメニュー一覧だが、結論から言うと下の表のオレンジ色の「小企業資金」を借りるようにといわれ、実質自己負担の金利が年率0.25%とのこと。
 
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年0.25%の利息だから、100万円借りても一年の利息はたったの2500円。
 
質問したのは2、3月で意外と売上が好調だったのでコロナで顕著に売り上げが下がったとはまだ言えないかもしれず、コロナ対策の融資の対象になるかどうか。それについては 
 
4月の売上の試算表を作っていただき、確定申告書で昨年4月の売上と比較して10%以上売上が減少する見込みであれば融資対象となります 
 
とのこと。
 
昨年は営業できた週末が今年は営業できない上、客単価・客数ともに落ちているのだから売上が10%以上下がった試算表を作るのは難しくないだろう。残念なことに。
 
ちなみに「試算表」ってどんなの?という方はこちらの一番上の表をご覧いただきたい。
 


借入にあたって必要なもの

個人事業主の借入にあたって必要なものは以下の通り。
 
借入申込書 (豊島区の分はこちらでダウンロード可能)
個人事業主の直近の住民税納税証明書のコピー (区の税務課で入手、ただし入手しなくても区が自分で確認するので大丈夫)
直近の個人事業税の納税証明書のコピー(都税事務所で入手)
直近の所得税確定申告書のコピー (税務署の受付印が押された控え)
直近の決算書、収支内訳書
 
詳しくはこちらの豊島区のリーフレットをご覧いただきたい。これらに加えて実印と印鑑証明が恐らく必要になる。バーの方は営業許可証も念のため改めて手元に用意しておいた方がいいかもしれない。 


借入の流れ

 
お金を借りる際の手続きは以下の通りになる。豊島区だけでなく全国どこでも基本一緒。
 

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こちらの事前相談申し込み用紙をとしまビジネスサポートセンターに郵送し、面談アポを取って役所に行って紹介状書いてもらい、金融機関に行くだけ。
 
ただし融資実行までには1カ月ほどかかるので、早く動いたほうがいいのは間違いない。時間がたてばたつほど制度を利用する人が増えて、窓口も混雑するし、そうなると感染リスクも高まるので。
 
 
取り急ぎまとめました。以上。
 
 
 

【緊急アピール】全ての誇り高きバーマンへ: 進むべきか退くべきかの考え方のヒント

最近一番気になっていることは、自粛要請と売上減のせいで一部のバーテンダーの方が「もう何をやっても無駄かも」と気持ちが折れつつあること。リーマンショックなどの修羅場を乗り越えたバーを愛する社会人の一人として、「学習的無力感」から脱し、建設的に考えるヒントを整理・提供したいと思います。

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はじめに

犬を檻に入れて逃げられないようにし電気ショックを与え続けると、犬はなぜそのような罰を理不尽に与えられているのか理解できず諦めることしかできなくなり、檻が取りはらわれて逃げられるようになってもそのまま電気ショックを受け続ける。酷い実験だが、これが「学習的無力感」。

 

Wikipedia「学習的無力感」より
学習性無力感とは、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象。
なぜ罰されるのか分からない刺激が与えられる環境によって、「何をやっても無駄だ」という認知を形成した場合に、学習に基づく無力感が生じ、それはうつ病に類似した症状を呈する。

 

大変失礼な言い方だとは承知しているが、SNSでは憔悴しきっているバーマンの弱音を目にすることが増え、一部には「何をやっても無駄かも」という「学習的無力感」が出てきているような気がする。

そもそも消費税増税後のコロナ感染拡大で夜の人出が減ってしまっているのに、さらにバーを名指しで自粛要請出ればノーゲストの夜も増えてさらに辛い精神状態になると思うので仕方のないことだと思う。長期化すると売上を上回る固定費支払いで手元から現金がなくなっていくわけだから。

私が許せないのが不安感を煽るように「政府は無策だ!このままでは我々は絶望だ!」とSNSなどでしつこく言い続ける人たち。助けが来ることはない、と誤解させて心の弱った人を追い詰める。

本来慎重かつ冷静に今後の対処策を検討すべき最も重要な時に、人々の恐怖心を意図的に煽って感情的に絶望させ、理性に基づいた冷静な判断から遠ざけるよう仕向けている連中を見ると、私は腹が立って仕方がない。


 

バーマンがセーフティネットを自力で調べられない弱者だとは私は全く思わないが、救いの手がそこにある。頭の整理のためお役に立ちたく、以下書いていきます。

 

まず考えるべきこと:この状況がいつまで続くのか

それが分かればだれも苦労しない、という質問であることは百も承知だが、「この状況がいつまで続くのか」の予測が一番肝心。

データポイントがなかなかない中で参考にできるのが真っ先に感染を封じ込めた中国の例。以下がざっくりとしたタイムライン。

 

2月初旬: 新規感染者の増加がピークアウトし減少に転じる
2月末:  ホテルの8割が再開
3月中旬: レストランの7割以上が再開

 

つまり中国では感染拡大がピークアウトしてから1か月半ほどである程度サービス業が正常化した

日本で感染拡大のピークはいつ来るのか、まず推測してみてほしい。それに1か月半から2か月ほど足せばどのタイミングで飲食業が(ある程度)正常化するかの予想ができる。

ただし感染爆発により医療崩壊で大量の死者を出している海外と異なり、日本は患者数のピークの高さを極力低くする代わりに収束まで時間をかける戦略をとっていることを考慮する必要があるかもしれない。

仮に6月ごろに日本での感染拡大のピークが来るとすると、8月ぐらいから通常に近い営業が可能になると考えることができる。違う言い方をすると今から4か月は苦しい時期が続くということになる。

もちろん感染拡大のピークが4月末、5月にも来ると考える人がいても反論するつもりはない。念のため。

また通常の風邪やインフルエンザ同様、秋から冬にかけて再流行し、感染拡大の第二波が来ると考える慎重な人もいるかもしれない。感染拡大のピークアウトが遅れて冬に近づけば近づくほど第一波と第二波が近づいてしまう恐れはある。

 

店を続けるべきか否か考える際の頭の整理

釈迦に説法ではあるものの究極的には以下の二択となる。

選択肢1
持久戦で目先赤字を出しながらも営業をこのまま続けていく

OR

選択肢2
一度撤退して収束後に再起を図る

 

1か2かどちらがいいか考えるにあたって重要な点は以下の2つ。

 

A. 事態収束までいくら手元からお金が出ていくか
= ( 事態収束までの長さ(月) x ひと月当たりの赤字額)
ただし重要なことはこの額は (手元資金 + 借入可能額) を上回ることはできない

 

B. 店を閉めるにはいくらかかるのか
= (店の原状回復費用 + 賃貸契約の違約金 - 保証金・敷金返還額) + その他費用 
(+復活するときにかかる再出店費用)

 

AがBを(大幅に)上回る、すなわち「事態が収束するまでに出ていくと思われるお金の合計額」が「閉店のための費用」を明らかに大幅に上回る可能性が高ければ、一度撤退するのも一つの判断になるだろう

当たり前だが選択肢1の持久戦を永遠に続けられる人はいない。

「バーの灯りを消さない」という矜持は尊敬に値するけれど、長期化して赤字が広がり再起不能なダメージを負ってしまうよりも、事態が収束した時にまたそのバーマンに違う場所ででもお会いできた方がバーを愛する客の一人としては嬉しい。

ではAとBを計算していくためにさらに整理していく。

 

事態収束までに出ていくお金の合計額(A)の考え方

 

先ほども書いたように、

 

事態収束までに出ていくお金の合計額(A)
= ( 事態収束までの長さ(月) x ひと月当たりの赤字額)

 

となる。

 

繰り返すが非常に重要なことは、この額は (手元で保有する自己資金 + 借入可能額) を上回ることはできない。上回ってしまうと資金繰り破綻でゲームオーバーとなってしまう。

予想されるひと月あたりの赤字額についてはこれはお店をやっていらっしゃる方が一番よく分かっているはずなのでここでは語らない。

現金流出額をいかに小さくしていくのか、すでに皆様様々工夫されていると思いますが念のために考えられる対策の例を以下に整理する。

 

仕入れ額を減らす
(家にあるボトルを持ってきて新しく買わない、ビールサーバーを止めて缶・瓶ビールにする、アルコールスプレーとペーパータオルを置いておしぼりレンタルを止めるなど)

● 賃料の減免、支払い猶予を不動産オーナーと交渉する
(国土交通省も業界団体に要請を行っているため無茶苦茶な話ではないし、今テナントが廃業して出て行っても新しいテナントは今後しばらくは見つからない可能性が高いので家賃下げても入居し続けてもらった方がオーナーにしても得で交渉の余地あり)

雇用調整助成金の申請 (スタッフを使っている場合)
(従業員を休業させるが給料を出すとき、雇用を継続するときに国から出る助成金、休業手当もしくは雇用を維持する場合は賃金の8-9割が一日当たり上限8330円まで助成され返還の必要はない、詳細は最後にまとめてありますのでご覧ください)

● 自分もしくはスタッフの給与支払い時に納めている社会保険料の支払い猶予の要請
(厚生年金など、詳細はこちらのP.34をご覧ください)

● 昨年分の所得税・消費税の納付期日4月16日(再延長される可能性あるが)を口座振替の納税にすることで納付期限を5月16日、19日まで延長
(詳細はこちらのP.35)
もしくは納税の1年猶予の申請 P.36、37
税務署も税金支払う意思はあるけれど支払えない人には親身に相談に乗ってくれる)

● 電気・ガス料金の支払い猶予申請 
(上記リンク P.38)

 

 

実際に事態収束までに出ていくお金の合計額(A)を計算してみる


ではより具体的に以下のケースを考える。

 

12坪程度の広さのバー、オーナーバーテンダーが一人で営業
店の家賃:        月坪当たり1万5千円として月18万
水道光熱費その他費用:  月7万
月の仕入れ費用:     月10万円
ローン返済額:      月5.25万円
(開店費用が600万円、その半分の300万円を5年のローンで2%の金利で均等返済していると想定)
自分への給料:      月20万

通常時のひと月当たり費用合計 約60万円 

 

まず上に書いた経費削減策を実行。

家賃が3割免除もしくは1年後から1年間3割増しで支払う猶予の交渉。
仕入れを半分に。
水道光熱費の猶予。
銀行に返済猶予を求める。毎月2.25万円の返済にリスケジュールしてもらって3万円支払い削減。

これで約18万円コスト削減でき、費用は月42万円。仮に苦しい中でも1日あたり4000円の売上げがあるとすると月25日の営業で売上10万円、赤字額は月32万円。

なお上記の支払い猶予などすべてトライしたうえで店を一時休業にするという選択もある。その場合は仕入れが基本ゼロ、水道光熱費も基本料金程度。

何もしない場合、コスト削減実施後、休業のそれぞれのケースにおいていくらお金が出ていくのかをまとまると以下の通り。

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それぞれの場合について、現在の状況がいつまで続くとお金は合計でいくら必要になるかをまとめたのが以下の表。

 

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上の表をグラフにすると以下の通り。手元資金(自己資金と借入)が250万ある場合は黄色の点線、400万円ある場合はオレンジの点線で、点線と斜めの線がぶつかるところが資金繰りに行き詰まるタイミングを示す。

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手元現金は現状減ることはあっても増えることは残念ながら考えにくいので、どれだけお金を借り入れられるのかというのが重要。当たり前だがお金が借りられれば資金繰りがつかなくなるタイミングが先送りされる。

据置期間の長い(=お金を返し始めるタイミングが先)の実質無利子の融資がセーフティネット融資として借りられる(後程細かく実際に借入ができたバーの例も含めて説明します)。

日々状況は変わっていて融資基準はどんどん緩和されているので、昨日融資を断られたからもう全然借りられない、とあきらめないことが非常に重要。

また忘れてはいけないのが減免・猶予はあくまでも「今すぐ返さなくてもいい借金」であって借金には変わりなく、いつか返さないといけないということ。上記の例では月に18万円ずつ借金が増えていくことになるので、念のため。ただしこれもセーフティーネット借入で将来のキャッシュフローで賄える可能性がある。

 

店を閉めるための費用(B)の考え方

縁起でもない、というのはよくわかっているが、名誉ある撤退を必要とされるケースもあるだろう。深手を負って再起不能になるよりは一度損切りしてコロナのワクチンが出来て混乱が終息してから復活するというのも一つの考え方だし、それはバーを愛している客に対するバーマンの様々ある誠実なチョイスの中の一つかもしれない。

撤退にあたって手元から出ていくお金の額はざっくり以下の通り。

 

店を閉める際に手元から出ていくお金の合計額(B)
= (店の原状回復費用 + 賃貸契約の違約金(もしあれば) - 保証金・敷金返還額) + その他費用(什器搬出・ボトル搬出保管など))

(+ 金融機関借入の即時弁済を求められる可能性(もし借入があれば、ただし可能性は低い)) 

 

大家さんも急に退去されてもこれから1年以上はテナント見つからない可能性が高いので、空き家になるよりは賃料下げても現在のテナントにいてもらった方がいいと考えるかもしれない。だからいきなり退去届出すよりも不動産管理会社にまず賃料の減免・猶予の相談をしてみたらいかがだろうか。そして上記Aのシミュレーションを改めてしてみてから、撤退の決断をしても遅くない。

まず不動産の賃貸借契約書を確認し、原状回復についての取り決めがどうなっているか確認してほしい。前賃借人の内装をそのまま使って開業した場合、つまりいわゆる「居抜き」で開業した場合でも、退去するときにスケルトン渡しにする原状回復義務がある場合がある。
現状の内装をそのまま残すことができれば費用を安く抑えることができる。

また退去予告が通常3-6カ月前になっている場合はすぐに退去する場合その分の家賃(例えば6か月分)は大家さんに前払いをする必要があり、実質違約金となる
恐らく敷金・保証金の月数と退去予告の月数が同じになっているケースが多いと思われるので、敷金・保証金の返還と相殺されてゼロになるケースが多いのではないだろうか。

つまりネットでの撤退費用は内装撤去にかかる原状回復費用とその他費用になるだろう。
一般的には内装撤去には坪数 × 10-15万円程度かかるといわれているので、先ほどの12坪の店のケースでいえば120-180万円程度。

その他費用は什器の搬出(製氷機や冷蔵庫、グラスなどは売却できる可能性も)、ボトル撤去と保管費用などが見込まれる。バー好きとしてはグラスやボトルは手元に置いておけることを心よりお祈りしている。

あと気を付けないといけないのは金融機関からのローンの返済義務。開店時に金融機関からお金を借りてまだ残高がある場合は、廃業すると期限の利益を喪失する可能性がある。平たく言うと商売やめるなら借金の残額を今すぐ全額返せ、といわれる可能性があるということ。

ローンの契約書(金銭消費貸借契約書)を見ると、通常は「著しい信用力の悪化が見られるときに期限の利益の喪失とみなす」と書かれている。廃業は「著しい信用力の悪化」に普通は該当する。

ただし金融機関は今回のコロナ感染拡大に関しては貸しはがしをするなと強く指導されているので、突然「今すぐ全額借金返せ」といわれる可能性は極めて低い。

ローンが残っているバーの経営者の方は廃業するしないにかかわらず金融機関担当者とは密にコミュニケーションをとることを強くお勧めする(まともな金融機関の担当者はすでに連絡を密にしていると思いますが)。またローンがない方でも、地元の信用金庫にとりあえず相談を始めるのがいい。信用金庫は地元の中小企業の味方で親身に相談に乗ってくれる。地元の商店街や商工会に相談するのもあり。

また見えない費用としては復活するときにかかる再出店費用がある。
敷金・保証金を払い、什器をそろえ、内装をまた一から始めないといけない。これは開店したときにいくらかかったのか覚えていらっしゃるであろうから割愛するが、一度撤退してから新たに開店するには原状回復費用と開店用の内装費、退去にあたっての違約金と新規開店にあたっての敷金保証金の2つについては往復ビンタ、二度払いになることは頭に置いておいた方がいいだろう。

仮に原状回復義務があり、営業を続けて赤字を出すのを回避するためにすぐに廃業するとすると上記のバーの例では120-200万円程度の廃業費用がかかると考えられる。また開店するにあたって借り入れているローンが残っていれば廃業していったん仕事・収入がなくなったのにそれを返済していく必要もある。

 

店を続けるべきか、閉めるべきかの判断

仮に保守的に見積もって10月から正常化すると考えた場合、これから半年間でいくらお金が出ていくかを確認。先ほどのシミュレーションでは大体200万円ぐらい。ただし各種減免分の18万円 x 6ヶ月分、108万円分は将来返済が必要なので借金が増えている形になる。

廃業するとするとすんなりいって120-200万円程度。だが仕事がすぐに見つかるとは限らない。失業保険を受給することもできるが、20万円の給与だったとするとその5-8割程度の支給となる。そして復活したときに開店するための費用を仕事を新たに見つけて稼がないといけない。

これのどちらがいいかという究極の選択。

バーに行きつけている客の見方からすると、コロナ感染拡大が起きる前、損益分岐点をしっかり超えて売上が上がっていて固定客もついているようなバーであれば、店を続けても踏ん張っていかれる可能性は比較的高いと思う

逆にコロナ前からあんまり儲かっていなくて損益分岐点をなかなか超えられなかったようなお店だと、コロナ収束後もしばらく景気は悪くこれまで以上に客の財布の紐はきつく締まったままで損益は悪化すると思われるので、その点を考慮したほうがいいかもしれない。

ただしテレワーク/自宅勤務などで勤務形態が大きく変わってきており今後もある程度継続するはずなので、自宅で働いて家の近くの店で夜飲む人が増え、かつて立地の悪さに悩まされた住宅地から近い地元密着型の店が再評価される可能性もあり、これまで儲かりにくかったから今後も絶対だめだ、というわけではないことをお含みおきください。

凄く酷な言い方だが、ずるずる無理に続けると、負けると薄々分かっている勝負なのにどんどん賭け金をテーブルに積み上げていくという展開になる可能性がある。

その意味でこのタイミングでこうなれば/ならなければ思い切って撤退する、というプランを持っておくことが重要と考える。そう考えれば逆算して今のうちにこれをやっておくべき、これを試しておこうという気にもなる。

学習的無力感で打ちひしがれ、何も考えず「手なり」で現状維持バイアス(変化によって得られるリターンよりもそれにより失う可能性のある損失に過剰に反応してしまうこと)や損失回避バイアス(いったん払ってしまって戻ってこないコストにこだわって損切りが遅れて損失を広げること)によりだらだら続けて傷口を広げることだけは避けてもらえれば、と思う。まだまだ再起のチャンスはあるのだから。

 

 

参考: コロナ対策での雇用調整助成金の概要

 

休業するが従業員に給料を出す、あるいは本当は休業させたいが雇用を維持して従業員に働きに来てもらう、という時に国からもらえるお金が雇用調整助成金。会社都合で休業させる場合は従業員に給与の6割以上の休業手当を支払う義務があるが、その休業手当の8-9割、雇用を維持するときは賃金の8-9割が一日当たり上限8330円まで助成され返還の必要なし。

自粛要請を受けた業種つまりバーはお金をもらえる対象となるとこちらのQ&Aに明記されている(Q&A問10)が、「助成対象は雇用保険適用事業所、支給対象労働者は雇用保険被保険者」となっている(問16)ためお金をもらえるのはこれまで雇用保険に加入して保険料を納めてきたお店に限られる。

でもあきらめる必要は必ずしもない。

先ほど(4月4日土曜日午後)コールセンターに電凸して確認(ホットライン0120-60-3999、土日も受付)、とても丁寧に教えてもらえた。

「コロナによる自粛要請を受けている飲食業を営む個人事業主が自分に給与を支払っている場合、雇用調整助成金の対象となるか」と聞いたら答えは「現時点では対象にならない」とのこと。

また「現在雇用保険に加入しているか定かでないが、従業員使っている場合雇用調整助成金を受け取れるのか」という質問。
答えは「今からでも事業主として事業所が雇用保険加入を申請して認められ、雇用保険料を納付すれば、従業員が雇用保険を払っていなくても雇用調整助成金を受けられる」とのこと。

雇用保険料は月額従業員負担が給与に対して0.3%、雇用主負担が0.6%。給与20万円とすると従業員負担600円、雇用主負担は1200円。それで従業員一人一日当たり8330円を上限として助成してもらえるのは悪くない。もちろん所得そのものを「何らかの理由」で捕捉されたくない人もいるかとは思いますが。これだと家族や友人雇ったことにすれば以下ry)

詳細はこちらのリンクこちらのリンクをご覧ください。

 

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https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf 27ページ

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参考: 日本政策金融公庫からの公的融資その他の資金繰りの支援、借入/保証について

ざっくり言ってコロナの影響を受けたお店がお金を安く借りるには2つの方法がある。一つは日本政策金融公庫からお金を借りる方法。もう一つは「信用保証協会」から保証を受けて地元金融機関からお金を借り、利子補給を地元の区から受ける方法。

昔は中小企業金融公庫というのがあったが、2008年に統合されて日本政策金融公庫になった。まさに困った中小企業を助けるためにお金を貸してくれる公的な金融機関で強い味方。

信用保証協会というのは実質国のようなもので、地元の金融機関からバーがお金を借りて仮にお店がつぶれてしまって融資を回収できなかった時は、バーに代わって信用保証協会が金融機関にお金を返済する。だから金融機関からしてみれば信用保証協会の保証付きでバーにお金を貸すというのは国にお金を貸すのと同じリスクになるので、安い金利でお金が借りられる。

保証を受けるにあたっては保証料を払う必要があり、また実質国に貸しているのと同様のリスクの融資とはいえ利息を払う必要があるが、地元の自治体が保証料や利息に対して補助金をくれるケースが多く、その場合は実質無利子もしくは超低金利でお金を借りられる。

こちらのパンフレット7ページをまず見てほしい。バーの方(個人事業主も含む)はほぼ100%融資の対象になる。据置期間というのはお金を返し始めるタイミングで、最長5年とあるがその場合は5年たつまで元本の返済は不要。

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さらにこちらをみると今後利子補給を受けることができるとある。

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3年分の利息は一度払った後で払い戻されるため、実質3年間はタダでお金が借りられる(すでに公庫からの借入があって有利子で借りている人も再申請すれば無利子化される)ということだ。

日本政策金融公庫の「借入に必要な書類」というリンクの一部には「直近2期もしくは3期分の決算書」などと書かれているが、あきらめてはいけない。

実際に創業から日が浅くても借りられた、というオーナーバーテンダーからの報告もあった(据置期間は1年弱、金利も1%弱)。

こちらの「はじめてご利用いただく方」というところを見れば、直近2期分もいらないことがわかるだろう。創業から3カ月たっていれば大丈夫。あきらめないでほしい。

 

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またそれなりに業歴が長いバーのオーナーバーテンダーからは、希望額プラスアルファを公庫から借りられた、という話も聞いた。

あきらめることなく日本政策金融公庫の相談窓口に相談してほしい(窓口は相当混雑しているそうだが)。

www.jfc.go.jp

 

日本政策金融公庫だけでなく、付き合いのある金融機関からの融資に信用保証協会から100%保証をもらって融資を受けられる、セーフティーネット保証4号・5号融資というのもある。これはわかりにくいのだけれど、あなたのお店がつぶれても金融機関は貸し倒れにならず、信用保証協会がお店に代わって返済するもので、信用保証協会は実質国と同じなので金を貸してくれる金融機関は基本リスクを全くとっていない(のでどんどんあなたのお店に金貸してくれる)、というもの。

 

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一部の地方自治体では利子と信用保証料を全額補助してくれるので実質無利子。すげえ。自分のお住いの、もしくはお店のあるところの地方自治体名に「コロナ対策」「補助」などのキーワードを入れてググってみてください。

www.city.shinjuku.lg.jp

www.city.minato.tokyo.jp

www.city.shibuya.tokyo.jp

 

ろが申請したら、2019年3月末の決算書と今年度の試算表があればセーフティーネット保証の融資を受けられたとのこと。もちろん納税証明その他の融資に必要な書類は備えた上でですが、業歴短くてもあきらめないで。

港区の場合据置期間1年、貸付期間7年以内、借入上限500万円かつ信用保証料は区が補助ということなので、仮に利息が実質ゼロで7年間500万円借りたとすると今後1年間は何の返済もいらず、1年後から6年かけて元本の500万円返せばいいということになる。月7万円程度。
もちろん審査があるので希望条件通りに行くとは限らないが、利息かからないのであれば借りておいて損はない。間違ってウイスキーのボトル買いまくったりしない限り。

いろんな形で公的なサポートはあるのだから、あきらめないでほしい。自分のためにも、あなたのバーが好きで通ってくれていた客のためにも。

 

(4月6日追記: こちらで実際に豊島区のあっせん融資について電話で聞いてみましたので是非ご覧ください)

 

islaywhiskey.hatenablog.com

 

 

最後に

全てのご相談に乗ることはできないけれど、フォローしていただいているバーの経営者の方で本当に困ったときはあきらめるのではなく私のTwitterまでDMください。何かお手伝いできることがあるかもしれません。ただし私の本業もこの時期忙しいのでお含みおきください。この記事に紹介したリンクについてはご覧いただいてからご相談ください。

手放したらいつ再び手に入るかわからないボトルがあるけれど、止むにやまれずヤフオクなどに出そうかな、でもそれも本当は絶対に嫌なんだけど、などとお考えの方(私がお会いしたことある方が望ましいですが)もご相談に乗ります。

 

 

 

 

 

 

想像力と共感力のないフリーライダーになるな: そこにバーがあることの価値

あなたの好きなバーはずっとそこにあり続けるわけではありません。何もしないで「あの店なくなったら困るなー」と言うのは実はとても身勝手なことかもしれません。
またこの時期にバーに顔を出したときに気を付けた方がいいことがある気がしています。読んでみてください。

 

そこにお店があることの価値

以前住んでいた街の書店が閉店になってしまった時に感じたことを、かつて書いたことがある。

駅前の歴史ある書店で、某有名女流作家の行きつけの店でもあった。
私はふらりと立ち寄って文芸書のコーナーを見るのが好きだった。
「いつでもそこにある店」だと勝手に思っていたが、おととし40年の歴史を突然閉じてしまった。
そのお店がそこにあったことは私にとっても地元の人にとってもありがたいことで、それは地元への貢献と言ってもよかったかもしれない。
だがそれに対して我々がちゃんとお返しができていなかった結果、店はなくなってしまった。

「閉店します」。その突然のニュースによって、その店があったことがどんなにありがたかったかということを私を含め人々が初めてはっきり認識することとなった。

「閉店が地元の人に惜しまれていますが?」と取材で聞かれたそこの店主が「実は言うのも恥ずかしいぐらいの給料しかもらっていませんでした」と答えた。それを聞き、私は自分勝手に「お店がなくなって残念だ」と思った自分を恥じた。私は1か月に一度ぐらいしかその書店にお金を落とさない、アマゾンの便利さに甘えていたフリーライダーだった。店主の使命感、義務感、そういったものに多くの人がフリーライドしていた。悪気は全くないままに。

 

あなたは想像力や共感力に欠けるフリーライダーになりたいですか?

以下は今週発表された内閣府の景気ウォッチャー調査の中の2月の飲食業の先行き見通しのチャート。

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調査対象者全員が「今後よくなる」と答えれば100、全員が「今後悪くなる」と答えれば0になる数字。

見てお分かりの通り、今回のコロナショックのインパクトは大きく、2月の時点での先行き見通しは過去最低の12.9。
東日本大震災の時の19.7を下回り、リーマンショックの時の25.4のおよそ半分程度となっている。

今回はもしかすると震災の時よりも夜の街に人が少ないかも、と思った肌感覚は間違っていなかった。

2月はそもそも飲食業にとって8月とともに厳しい月で、その分3月に歓送迎会などで取り返す、というのが毎年のパターン。だが2月26、27日からのイベント自粛要請、学校休校措置などの影響をもろに食らい、3月は取り返すどころか2月以上に厳しい状況になっているはず。

だから自分の好きなお店があるのなら、そこに行ってしっかりお金を落とさないといけないと強く思う。

先の自省も込めて身もふたもない言い方をする。

お店がなくなってからでないとその店があったことのありがたみが分からない、というのはぶっちゃけ「あなたが想像力や共感力に欠けるフリーライダーである」ということだ。「私じゃなくて誰か他の人が行って(お金を落として)くれるはずだし」というのもフリーライダーの希望的観測に過ぎない。

 

この時期バーに行った人、「せっかく来てやったのに」って思ってません?

そんな思いもあり、前回自分の好きなバーがあるならそのバーに是非行こうという記事を書いた。

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でも少し言い足りなかったことがある。

 

この時期大変かもしれないから、少し遠回りになるけどちょっとあのバーに寄って帰るか。そう思って以前行って気に入ったお店にわざわざ足を運んだら混んでいて入れなかった。

この前行ったお店では自分以外にお客さん来なくて、ずっとバーテンダーが話してくれてとても良くしてもらった。だから改めてまた来てみたけれど、今回は忙しくて全然構ってもらえなかった。

バーあるある、ではあるけれどそんなことあった時にあなたはどう思います?

「せっかく来たのに」、と思うかもしれない。
「それだったらしばらく来なくてもいいか」、と思うかもしれない。

「せっかく来たのに」というのは自然な感情だが、もしかしてそれが「せっかく来てやったのに」になってません?

そう思ったということは「俺はわざわざ来てやってるんだぞ」っていう気持ちがあったということだ。それを口に出すか出さないかは別として。
それは「大変な時にわざわざ来てやったのだから何かあってもいいんじゃないの?」と変に期待する気持ちがあることに他ならない。

でもそれ、バーに良くいる「イヤな常連客」、つまり他の客を差し置いて自分に対してだけ店からの特別扱いを要求し、それが満たされないとへそ曲げる客、への道まっしぐらってやつじゃないですか?自分よりも頻繁に来ている客もいるかもしれないのに。

そういう常連客がいると他のお客さんの居心地が悪くなる。百歩譲ってその人が他のお客さんよりも圧倒的にお金落として帰る、というのなら別だけど。でもそういう人はたいてい大したお金を落としていかない。

そして上から目線つまり「お客様は神様です」って客である自分で言ってしまうようなタイプの謎のオーラを漂わせた人が「店の常連」になんてなると、お店にとって今後も含め色々とよろしくないことこの上ない。

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加えて、サービス業は需要があった時にサービスが提供できないとダメというタイミングが重要な業態。

例えばパソコン古くて調子悪くなったけど、今はコロナもあって人ごみ行きたくないので落ち着いてから買い物しよう、というのはよくある普通の話。タイミングがうまく行かなくてもその需要はなくならない。

だけどサービス業では「その時失われた需要」は復活しない。

「先週コロナのせいで酒飲みに出かけられなかったから今週はそれ取り返すためにいつもの店で2倍飲む」とか「先週この店満席で飲めなかったから、今週その店行って前回の分と合わせて2倍飲もう」とは普通ならない(といいながらそれに近いことをやっている私が通りますよwww)。

だから需要がある時にできるだけその需要をお金に変えておかないといけない、という因果な水商売、それがバー。

それが分かっていれば、カウンターからバーテンダーが出てきて「満席ですみません」と謝ることができないぐらい忙しかったときでも「たまたま今日は運が悪かった、でもお店上手く行っててよかった。水商売だから明日は混んでいるとは限らないしまた来よう」って思えますよね?

客は店が自分に媚びることを期待すべきではない。なぜなら客が店に媚びる必要はないのと同様に、店が客に媚びる必要はないから。バーでお酒を飲むという行為は、店がお酒と時間と空間といったサービス、体験を提供して、それと引き換えにそれに見合った金額を客が払う、という本来イーブンでフェアな商取引であるはず。

手間暇かけて丁寧に作った野菜を普通のものよりも高く売り、それがいいもので価格に見合うと思えばその価格を払って買う人がいる。バーでの体験にお金を払うのは、それと基本的に何も変わらない。だけどモノを買うときは「買ってやったのに」とあまり言わないのに、コトというか体験を買うとき、サービスにお金払うときに偉そうなこと言う人が増えるのは一体どうしてなのだろう。

 

この時期来てくれた客を特別扱いしすぎるべきではない理由

また逆の視点から。店はいくら暇な時に来てくれたからと言って、お客さんに対して再現性の低い過剰なサービスをする必要はない。異論は認める。

なぜか。客の期待値を高め過ぎるような、常に必ず再現できるとは限らないようなレベルのサービスをしてしまうと、次回その客が店を訪れた時にがっかりさせかねないから。結果として長い目で見た時のその客とお店との関係が、スタンダードなサービスを提供していた時に比べて短くなってしまうかもしれないから。そういう意味でも店は客に媚びる必要はない、と思う。

ただし、お客さんもお店も一定以上のスタンダードとリスペクトを持ってお互いに接するということがこの議論の前提となる。

私は客として、お店が他の客に対して変に媚びることなく毅然とした態度で接することを期待したいし、私も店に対して常にいい意味での距離感と緊張感を保ち、変に馴れ合うことのない客でありたい、と思う。

 

「その」バーに行く理由を増やしたい

最後に。あなたに推しのバーがあれば、その店のことに加えて周りにあるお気に入りのレストランやラーメン屋、その他オススメのスポットについても積極的に情報発信してほしい。推しの店が立地のあまりよくない場合は特に。

そのバーのためだけに足を運ぶのはちょっとしんどいかな、というときでも、「東池袋の瞠の本店の油そばがめちゃ美味い」とか「西川口のザムザムの泉まで行かなくても西池袋の火焔山蘭州拉麺が超美味い」とか 「奥渋のアヒルストアやフグレンだけじゃなくてさらに先のアイリッシュパブのタラモアのフィッシュアンドチップス一度食べてみて!」とか「東中野の阿波や壱兆の温かいそうめんやもつ焼きの丸松もめっちゃ美味いけど山手通りはさんで反対側のうなぎ串焼きのくりからがサイコー」とかあれば、「それだったらあの店寄ってからバー行こうか」、ってなる人も必ずいるだろうから。

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バーのカウンターで「あの店美味しいね!」「そうなんですよ、地元でも有名で…」って話していれば他のお客さんも「今度自分もその店行ってみよう、そのあとまたこのバー来よう」と思うだろう。

飲食店で「あのバーのカクテル、この料理の後の食後酒にぴったりじゃない?そのあとベンネヴィス飲んだら優勝でしょ」とか話しているのが聞こえれば、他のお客さんもバーに行く気になってしまうかもしれない。

実は自分の店だけでなく、地元全体が盛り上がれるようなネタがあれば回りまわって自分の得にもなるかも。誰にも迷惑掛からないWin-Winなのでお客さんもバーテンダーの方もバーが開いている時間の前後で楽しめそうなお店周辺情報の発信よろしくお願いします!

 

 

islaywhiskey.hatenablog.com

 

islaywhiskey.hatenablog.com

 

 

バーに行け、今すぐ今晩行け。いつまでもあると思うな親と行きつけのバー

最近夜の街では東日本大震災の時よりも人が少ない気がします。昨年からバーを含む飲食店の倒産は過去最高になると言われていたところにこのコロナ騒ぎ。
最近関西方面で「えーあのバー閉店しちゃうの!?」というびっくりニュースもありバー難民になったらどうしようと想像して恐怖に震える機会もありましたが(実は移転だそうです)、自粛が過ぎると「年末行って素敵だったあのバー、いつの間にかなくなっちゃった」なんてこと、普通に起きますよ?

だから無理しすぎない程度でいいのでバーに行かないと実は結構ヤバい、というのが今回の記事です。

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<目次>

 

 

驚くほどバーにゲストが来ない

渋谷のレコードで音楽掛けてくれるロックバー、海外のウェブメディアにも取り上げられるぐらいで国内外からのゲストでいつもにぎわっている。

punchdrink.com

だが昨晩は行ったらノーゲスト、他のお客さん来るまでいろんな曲レコードで聞かせてもらい、誰か来たら帰ろうと思ってたら全然人が来ない。45mlのジガーサイズを5、6ショット飲んで結局23時過ぎまでいて帰宅。酔っぱらった。

どうなってるんだ世の中は。

islaywhiskey.hatenablog.com

私もたまにお邪魔する銀座の有名なバーに行った友人曰く、昨晩はゲストが2組5名、先週の土曜日は2人だけだったとのこと。

渋谷や銀座でこれだったら世の中どうなっているのか。データはないが肌感覚では明らかに震災の時よりもひどい。

震災の時は地震津波で人がたくさん亡くなっていたし、東京も原発事故が終息せず被ばくのリスクをリアルに感じていたので飲みに行きにくい雰囲気はあったが、夜の街にはもっと人がいた気がする。

 

実はコロナの前から「飲食店の倒産は過去最多へ」と予測されていた

帝国データバンクによると、今回のコロナ騒動の前から「2019年の飲食店の倒産は過去最多へ」と予測されていた。

 

特別企画:飲食店の倒産動向調査(2019 年)飲食店の倒産、過去最多へ
~「酒場・ビヤホール」、「西洋料理店」が過去最多を更新~ 

 

原因としては以下の3点が指摘されている。

  • 節約志向で外出が控えられた
  • イートインが10%の税率となったことで持ち帰りや内食を選ぶ消費者が増えた
  • 人手不足

 

中でも「酒場・ビヤホール」は11年連続で倒産件数最多の業態。2019年1-11月で飲食店の倒産件数668件のうち143件、21.4%を占める。

逆に倒産が少ないのは「日本料理店」「すし店」など新規参入が少なく消費者の嗜好やトレンドに左右されにくい業態。

確かにバーは新規参入のハードルが低く、トレンドに左右されやすいかもしれない。

この状況でコロナ騒ぎがやってきた。自宅勤務によりそもそも人が街に出てこないし、早朝出勤・早帰りという時差通勤の人も多いだろうし、感染リスクを恐れている人たちも多く、会社の飲み会や接待は基本中止になっているはずなので2次会もなく、飲みに行こうとはあまり思わない状況になってしまっている。

 

東日本大震災の時との比較

当時は原発がすべて止まって電力が足りず、大停電が東京を襲って病院や金融システムが完全にマヒするリスクがあった。だからネオンサインなどが全部消されていて、渋谷の夜も真っ暗。原発事故も収束しておらず被ばくのリスクがリアルにある中では飲みに出る雰囲気ではなかった。

私は当時子供がまだ小さかったので、家族は関西に送り東京で一人で暮らしていた。当然毎晩外食し、酒を飲んでいた。飲みに行ってもお客さんがあまりいない。日持ちのしない食材があればそれ使って何か食べさせて、というとどこの店でも喜んでもらえた。高級魚を扱う築地の仲買が店を畳んだという話も多く聞いた。

その時よりも今回の方がオフィス街や夜の街に人が少ない気がする。当時はまだみんな出勤したからか。

震災関連の倒産情報を見ていると、企業の倒産は3月の地震から3か月後の6月がピークになっている。昨年秋の消費増税と自然災害もボディーブローのように効いているし、やはり今回も今から2、3か月が最も厳しい時期になってくるかもしれない。

 

バーは感染リスク高いのか?

以下の2条件が同時に満たされる空間にいるとコロナウイルスの感染リスクが高いと言われるが、バーのカウンターは少なくとも一つ目の条件は満たさないので高リスクとは思えない。もちろんリスクがゼロとは言わないけれど。

 

  • 「手を伸ばせば届くくらいの近い距離に人がたくさんいて、絶えずしゃべったり、歌ったり、叫んだりしている」
  • 「風通しが悪い」

 

新型コロナ、満員電車や映画館は危なくないの?専門家に聞きました

 

いつまでもあると思うな親と行きつけのバー

都内で8席のカウンターだけの12坪程度の広さのバーのランニングコストを考えてみる。店の家賃は月坪当たり1万5千円としても月18万。水道光熱費その他加えて月の費用が25万。

生ビール出すなら樽も在庫しないといけないし、カクテル出すならフルーツ買わなきゃいけないし、ソーダやミネラルウォーターも買わなければいけない。新しく出たウイスキー仕入れないと客も呼びにくい。仮に月の仕入れが10万円だとしよう。

そして開店費用が600万円、その半分の300万円を5年のローンで2%の金利で均等返済しているとすると毎月5.25万円の返済。

自分に給料20万払うと全部足すと月60万円ちょっと。月に25日営業するとして1日当たり2万4千円売上げてキャッシュフローとんとん。客単価3千円だと一晩に最低8人来ないと回らない。

客が平均2人しか来ない日が1か月続くと売上15万円、月45万円の赤字。
3か月続けば135万円の赤字。
自分の給料返上しても月に25万円の赤字。3か月で75万円。

(バーの経営者の皆さんへ、困ったら日本政策金融公庫に相談してください、緊急融資制度等紹介してもらえます)

その上に所得税(と消費税)を納付する確定申告の期限、コロナウイルスのせいで1か月延長されたが4月15日にやってくる。もちろん納税資金は運転資金とは別に用意してあるとは思うが、昨年儲かっていたのであれば昨年の儲けの分の所得税を払わなければならない(だから毎年3月はバーは売上立てなければいけないので高額のボトルが開くのだよ、知ってましたか?)。

特にキャッシュフローが厳しいのが内装にお金をかけている最近できたバー。開業費用が高くついていてローンの支払いが厳しい上に、高騰したタイミングでお酒買っているので儲けが薄い。そしてゲストの財布のひもが固くなると真っ先に客足が遠のき、常連の数がまだ少ないので売り上げが安定しにくいからリスクが高い。

毎月45万円も赤字出すような客が来ない状況が長く続くと、当然ながらどこかのタイミングで自己資金が尽きて、自分が好きだったバーがなくなってしまうリスクが高まります。わかります?

 

今あえてバーに行くメリット

今バーに行けば、確実にバーテンダーにあなたの顔を覚えてもらえる。
そして忙しいときには聞けない話をバーテンダーから教えてもらえる可能性が高い。
バー初心者の人でも、いつも以上に歓迎してもらえて敷居が低くなる。
店としては売上上げないといけないので、いい酒が安く飲めるチャンスかもしれない。
店が苦しい時によく顔を出してくれていたゲストのことは、ちゃんとしたバーテンダーならいつまでも忘れない。

 

まとめ

私は自分の行きつけのバーがなくなったら困る。
そこそこ歳を重ねたとはいえ自分がまだまだ知らないことがたくさんあることを改めて教えてもらえる、謙虚になれる場所だから。
仕事でささくれて昂った自分のままで家に帰るのではなく、ワンクッションはさんで落ち着きを取り戻すための大事な場所だから。世の中には落ち着きを取り戻せる場所はそんなに存在しない。

だからできる限り自分の好きなバーが長く続いてほしいと思っている。

皆さんも行き過ぎた自粛をせず、無理ない範囲でいいので意識してバーに行って売り上げに貢献しましょう。年末行ってすごくよかった最近できたあのバー、好きだったのに気がついたらなくなっちゃってた、なんてこと、普通に起きますよ?このままだと。

今晩バー寄って帰りません?

 

 

 

 

ドン引きされるぐらい自腹で買った私がウイスキーの個人輸入の方法まとめてみました

最近欲しいボトルが酒屋やオンラインでは手に入らないことが増えているので個人輸入する機会が増えています。先日のキルケラン8年のように日本向けに数百本しか入らないけど前評判が高い、などとなると普通に買うのは至難の業。そういう時は個人輸入も一つのチョイス。

ハードルが高いと思われがちな個人輸入ですが意外と簡単。どこ使えばいいか分からない人も多いと思うので私が人柱となって色々試したことをまとめておきます(さっき過去1年間で自分がどれぐらい個人輸入したのか調べてちょっと震えました)。

なおトラブルその他が起きた際にご自身で対応できない方にはお勧めしません。自己責任でお願いします。

 

目次 

 

個人輸入の基礎知識

欲しいボトルを国内で買える機会が本当にないかまず調べてみよう。楽天や有名酒販店のウェブサイト、ヤフオクなど。トラブルあったときなどのリスクが低いので少々海外サイトの値段よりも高くても国内で買うのがお勧め。

国内ではプレミアム付き過ぎている、とか複数本買いたいのにどうしても買えない、ということが分かって初めて海外からの個人輸入を検討しましょう。

まずチェックしたいのがwhiskybase.com。
例えば直近話題になったキルケラン8年をwhiskybase.comで見てみよう

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左側にボトルのスペック、右側に89.03というレビュアーの評価とその下に10店のオンラインショップからの価格登録があるのが分かる(上の写真をクリックすると当該ページにリンクされています)。そこの価格が海外での価格。一番安い店では88スイスフラン、現時点での為替で10,000円ちょい。

大事なことはこのウイスキーの値段に加え日本向けの配送料金と関税と内国消費税と通関・関税立替手数料その他の手数料がかかるということだ。

送料は店によって異なる
が注文をチェックアウトするときに確認できる。相場は1本あたり1500-2000円ぐらい。それより高いときは他のショップを見てみよう。ウイスキー安くても送料高いと出来上がりは高くつく可能性がある。

税金は関税、内国消費税、酒税がかかる。ただし ウイスキーの関税はゼロ
個人用輸入だと内国消費税は6.6%(課税価格×0.6*1×消費税率10%)。

酒税は1リットル当たりアルコール度数×10円(37度以上の場合)。

例えばキルケランを6本頼んで送料込みで600ユーロだとすると、
  内国消費税 600ユーロ x 為替レート120円 x 10% x 0.6 = 4,320円
  酒税    0.7リットル x 6本 x 57度 x 10円 = 2,394円
合計6,700円となる(100円以下切り捨て)。
つまり600ユーロ、72,000円に対して9.3%程度。

なお海外で払う総額が20万円相当を超える国際郵便物は輸入申告の必要があることに注意(通常は国際郵便ではなく国際宅配便なので問題ないはず)。


国際宅配便(DHLやUPSなど)は通関手数料、関税立替手数料を払う必要がある。



税金、手数料のトータルが(ボトル価格+送料・保険料)x10%程度のイメージ。それを配達時に代引きで払うことになる。あとクレジットカード会社が取る為替手数料も1.5~2%ぐらいあるかも。

 
つまりウェブで買い物したボトル代・送料保険料の110%程度が支払総額になる。


ヤフオク見ると直近では11,000円で落札されているのが分かるが、残念ながら今オークションに出ているボトルはない。本当に買いたいときは個人輸入するしかない。

auctions.yahoo.co.jp

 

先ほどの80スイスフランで出している店はスイスのケイデンヘッドのショップだが、残念ながら日本には輸出してくれない。送り先の国のリストに日本が入っていないときは素直にあきらめるしかない。経験則だがドイツとスイスのショップは日本に輸出できず、イギリスとオランダ、イタリアのショップだと輸出してくれる傾向がある。

少しばかりの英語の能力とクレジットカードさえあれば、日本でAmazon楽天使っている人であれば普通に買い物できるはず。

私はキルケラン8年、日本で2本入手できたがあと2本程欲しくなり、イタリアから輸入することにした(ちなみにすでに売り切れ)。詳細は以下ご参照。


イタリア Enoteca Parlapa 

キルケラン8年買うのに使ったのはEnoteca Parlapaというイタリアの酒屋のオンラインショップ。レストランも併設されているトリノでは有名なお店のよう。

お店のHPはこちら。
(他のサイトでもそうですが、英語以外でHPが表示されるときは通常画面の上の方に言語を変更できるスイッチ(よく国旗が貼ってある)がありますので念のため)


http://www.parlapa.com/store/index.php?route=product/category&path=237&sort=p.price&order=DESC&limit=100

ワイン中心だがウイスキーもそこそこ充実、特にケイデンヘッド、スプリングバンク、アランに強い。80ユーロから100ユーロ台前半当たりのリーズナブルなボトルが充実。

私はキルケラン8年、スプリングバンクローカルバーレイ10年ラムウッド15年をまとめて買えるサイトを探していて、whiskybase.comからこのオンラインショップにたどり着いた。

キルケランは2本、上記の2つにケイデンのグレンロセス1994年24年熟成シェリーカスク47.0%(加水)リンクウッド1997年21年熟成オーセンティックコレクション55.0%、計6本を注文。

2月6日に注文、DHLでの発送ですぐ来るかと思ったらなかなか届かず、2月12日にDHLの荷物追跡サイトをチェックしたら「輸出書類に不備がありトリノの税関で荷物が留置されています、発送人は連絡ください」、と書かれているのに気付く。全然日本に向かってないじゃん。

DHLも直接発送元の酒屋に連絡してくれればいいのに、と思いながら「そんなメッセージが来ていますけど連絡してもらえませんか?」とEnoteca Parlapaにメール。

Hi,

I got a message from DHL that there is an issue at Italian Custom in Torino, it says:

The Clearance process for this shipment is pending till such time that some additional details required for clearance are provided to the regulatory authorities

If you are the shipper who prepared the documentation, please contact DHL Customer Service for further details

So please contact DHL and solve the issue ASAP.   DHL’s tracking number is xxxxxx.

Grazie Mille,   

結局2月17日に東京に荷物は到着、不在にしていたので2月18日に無事受け取ることができた。注文してから12日間。まあ急いでいたわけでもないので問題ない。

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ヨーロッパからの酒の輸入は日欧EPAのおかげで関税ゼロ。通関手数料と消費税をDHLに払うのだが今回は3300円で済んだ。経験則的には代金の10%近く取られるイメージだったのだが。

結局出来上がりの値段は以下の通り、下の画像をクリックして拡大してみてもらいたい。f:id:KodomoGinko:20200219152048p:plain

キルケランスプリングバンクヤフオクで落とした方が安かったかもしれないが、まとめて一度に買う方が楽なので全く後悔していない。グレンロセスリンクウッドも売値は安いのだが送料手数料入れるとそこそこの出来上がりになってしまった。


梱包がめちゃくちゃしっかりしていてちょっとびっくりした。イタリア人いい仕事するじゃん。

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段ボールを開けるとその中には発泡スチロール製の防護容器が。
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さらにその中にエアキャップ巻いてボトルが入っているうえに、紙の箱まで丁寧に同梱してくれている。
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これだと割れるリスクは相当少ない。さすが送料高かっただけのことはあるわ。ちなみにキルケランは紙筒の容器に入っていたけれど、中のボトルまでエアキャップで保護されていた。いい仕事してますね。
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イタリアからのボトルは関税用の紙の封印がついてくるのが趣き深い。
一番左のグレンマッスルも同日に届き、嫁の顔色が少し気になったけどとりあえず何も言われなかった。
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評価: DHLでトラブルがあったもののお店はきちんと英語で対応してくれて問題なし。梱包はこれまで頼んだ中で一番丁寧。送料が6本で200ユーロと高いのが玉にきず。でもHP眺めていると割安なボトルが見つかって楽しい。

総合評価  8.0/10

 

オランダ Best of Wines

年初にオランダのBest of Winesを初めて使ってみた。ここはHP見ているだけでも相当楽しい。なぜなら現行のものだけでなく、オールドのボトルが結構あるから。そして思ったよりも安い。日本人にとっていいのは、日本向けに送ってもらえばVATすなわち付加価値税を免税にしてくれるところ。


お店のHPはこちら。
https://bestofwines.com/whisky/single-malt/?type=7&view=grid&price_min=%E2%82%AC%2010%2C-&price_max=%E2%82%AC%2040.000%2C-&order_dir=desc&order_by=price
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6本で保険、送料は合計90ユーロ、1万円強。1本あたり1800円程度。

結局送料手数料税金込みでの出来上がりは以下の通り。

グレンファークラス1980 21yo:  41,220円
ラガヴーリン2017 ジャズフェスティバル 23,480円
グレングラッサ1986 31yo:  56,190円
ボウモア1991 24yo:  31,930円

ちなみに正規輸入だとグレングラッサは72000円超えラガヴーリンボウモアとかもすごいお買い得だった気がする。


1月8日に頼んで14日到着。目立ったトラブルなし。梱包完璧。

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木箱もしっかり同梱されてきた。

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ここは今となってはオークションでしか買えないようなボトルが普通に売っているのがいい。

評価

本来ならオールドボトルのグレンファークラス開けてテイスティングしてから評価すべきなのであくまで暫定評価だが、VATを引いて請求してくれること、そもそも値段が安いこと、送料も安いこと、梱包完璧なことが美しい。ただし最近出た人気のボトルを複数本買うことには向いていない。

総合評価 9.0/10

 

 

イギリス The Whisky Exchange

こちらは日本でもおなじみの有名サイト。VATも払う必要なくそしてデリバリーが安くてめちゃくちゃ早い。

サイトへのリンクはこちら。
https://www.thewhiskyexchange.com/

私が先日使ったのはディアジオの2019リミテッドリリースのカーデュとクラガンモアに加え、The Whisky AgencyとThe Whisky Exchangeのダブルネームのグレンスコシア1992、25yo。6本で送料保険料が60ポンド、8500円程度。1本換算で1500円行かない。

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以下がDHLの伝票、消費税7500円、手数料1100円の計8600円。

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出来上がりは以下の通り。

カーデュ14年 19,230円
クラガンモア12年 13,610円
グレンスコシア25年 21,630円

 

ここは梱包の丁寧さがヤバい。病的と言っては言い過ぎかもしれないがそれに近く、思わずツイートしてしまうレベル。

 

1月9日金曜日の昼に発注して、14日火曜日の朝には自宅に到着。ここのデリバリーはめちゃくちゃ手際いいので評判高い。

 

評価

下手な日本の通販よりも配達早く、梱包も丁寧すぎるほど丁寧。箱付きのウイスキーだとボトルにエアキャップ巻いている上に箱とボトルの隙間にも緑色の発泡スチロール詰め込んで送ってくる。ここんちのボトルが事故で割れるところが想像つかない。
玉に瑕なのは人気のボトルに関して本数制限かかることが多いこと。それを除けばVATなし、値段も送料も安くほぼ完璧。
ラフロイグ10年バッチ011まだ1万円ほどで売っていますよ!

総合評価 9.5/10

 

イギリス Master of Malt

ここもThe Whisky Exchangeと並んで仕事がしっかりしていることで有名。
サイトへのリンクはこちら。
https://www.masterofmalt.com/

 

昨年12月にリトルミルとグレンオードのディアジオリミテッドエディション2019を買ってみた。
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これはなぜか税金がいつもより高く、出来上がりが高くなってしまった。たまに安いこともあるので仕方がない。でもこのリトルミルもシングルトンも出来が良かったし日本では買えないので、全く後悔していない。

リトルミル27年:  41,900円
グレンオード18年:  18,800円


ここんちの梱包は、The Whisky Exchangeと並んでパラノイアかと思うぐらいしっかりしている。
下の写真は家にあったボトルを適当に突っ込んで撮った写真だが、ご覧の通りごっつい緩衝材にくるまれてボトルがやってくる。ミシュランのビバンタムやひらけ!ポンキッキガチャピンみたいな着ぐるみ着てたらクルマにはねられても全然大丈夫、的なやつ。ほぼエアバッグ

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ここも配送作業が極めてスムース、12月2日に発注したら12月7日の夕方には到着してた。
Master of Maltの注意点は、注文した後にEmailで「あなたが払う関税や酒税・消費税の金額については自己責任でお願いします、その点了承したとメールで返信ください」という趣旨の連絡が来るので返信しないといけないこと。

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このメールが来た後にしばらく返答しないと登録した電話番号にイギリス人のお姉さんからラブコールがかかってくる。「私の送ったメールにお返事いただけるかしら?」

このメールには、「Confirmed and acknowledged, please dispatch my items.  Thank you!」(確認し認識しました、荷物送ってください!)とでも一言書いて送っておけばOK。

評価

ここもHPは充実していて買い物しやすい。配送も早いし梱包も丁寧。VATも払わなくていい。送料も安い。メールに返信する手間はあるが大した手間ではない。ホームページにある「Special Offer」のところにかつてラフロイグ25年の2018年バージョンが4万円を切る値段で売っていたことがあった。最近はさすがにそんなことも少なくなったが。
まだキルホーマンの100%アイラ、9th Editionが9000円以下で売ってるよ。そろそろなくなると思いますが。(※紹介した後売り切れました悪しからず)

総合評価 9.5/10

 

まとめ

  • まず日本でいくらで買えるか確認、海外通販は日本で買えないものを買う、あるいは大幅に安く買う手段であってそれをすること自体が目的ではない
  • whiskybase.comで大体の相場をつかみ、安く売っていて日本に発送してくれるところを探そう
  • 使いやすくて安心なのはイギリス系サイトThe Whisky ExchangeMaster of Malt、送料も安く初心者にはこちらがおすすめ
    (先方も相当日本に送り慣れている模様)
  • ボトル代+送料・保険料の合計の10%程度を着払いで払う必要があるので準備が必要、ただしたまに安くなったり高くなったりすることがあるのであくまでも目安
    (あと7本以上買うとDHLのハンドリングチャージが高くなったり商業輸入とみなされるリスクがあるのでとりあえず6本までにしておく方が無難といわれている)

 

 

なお私は使ったことがありませんが、以下の海外通販サイトを使われた方はトラブルなく使えたとのこと。どのサイトも見ていると楽しいです。

 

Whisky International
The Whisky Shop
Prestige Whisky
Maison Du Whisky (梱包がちょっと心配との声あり)

 

以上、リスク取ってがっつり身銭を切っていろいろやってみた行動力旺盛な人柱からのご報告でした!
私は上記のサイトから一円もお金をもらっていないです!

「この記事役に立った!」と思っていただける方は私をバーで見かけたときにハイボールかマンハッタンでもおごっていただけると泣いて喜びます。

「この記事役に立った!(けどお金は一銭も払いたくない!)」、という普通の感覚をお持ちの方は、この下のリンク踏んでからAmazon楽天で買い物していただけると(紹介している商品を買っていただく必要はないです)私の懐に若干の皆様の感謝の気持ちが入りますのでよろしくお願いします!

 

 

楽天市場 信濃屋 新着商品の部屋

 

 


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islaywhiskey.hatenablog.com

 

 


念のためですが本ブログの記載内容の正確性に関して筆者は何らの表明も行いません。本ブログの内容につき、あるいはその内容に基づいて第三者が取るいかなる行為につき、道義上、法律上も含め筆者はいかなる責任も負いません。外部リンクや記事の引用を行っている部分もありますが、筆者はそれらの正確性につき何らの保証も行いません。

*1:「個人的な使用に供される輸入貨物」についての特別な取扱いによる、詳細はこちら https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kanzeihyouka/yougoshu.htm#0903

彼はもう二度とこのバーに戻って来ない

先日は初めてのバーに行ってまた来ようと思う客の心理を書いてみましたが、今回はせっかく初めてのバーに来たのにもう来なくなってしまうであろう例について書きました。パッと見何も起きていないようにしか見えない、バーでの出来事。

 

ある晩のバーのカウンターにて。


私の隣、カウンターの端で20代前半と思しき若者が一人ウイスキーを飲んでいた。私が一杯目のカクテルをオーダーしたときにはすでにグラスいくつかが目の前に置かれていた。若いのに綺麗な飲み方だった。雰囲気からこの店初めてなんだな、とわかった。

 

カウンターにはオーナーバーテンダーではない若いバーテンダーが立っていた。「次の一杯はどうしましょう?」と彼に聞く。若者は「今まで飲んだお勘定いくらですか?」と確認。「では何かおすすめを」と言ってあと何杯か飲み、カード使えることを確認してカードで払い、一言二言バーテンダーと話して帰っていった。


表面的にはバーでの日常の風景にしか見えない。私は一人で飲んでいて、彼とは何の会話も交わしていない。だが、彼はもう二度とこの店に来ることはないと確信した。そして私もいたたまれなくなってお勘定をもらって早めに切り上げた。

なぜか。実際に起こっていたことはこんなことだった。
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(写真は本文とは全く関係ありません)

 

振り返ってみよう。私が来た直後、数杯飲み終わった時点で彼は今までいくら分飲んだか確認してからバーテンダーのおすすめをさらに3杯ほど飲んだ。

それまで飲んだ値段を確認した時に彼は「じゃあもうちょっとだけいただこうかな」と小さな声で言った、気がした。

おすすめのボトルを数本見せてもらって彼が注文する時の注文の仕方も「説明聞いてどう聞いても一番よさそうなのはそっちだけれど、やっぱりそれは高そうだからこっちにしよう」というような頼み方だったように感じた。
おすすめされていたのは蒸留所限定のレアなボトルなど割と良いもの。おすすめされた一杯を飲み終わったら間髪置かずにその次何飲むか聞かれていた。
そして彼が最後にもらったお勘定は最初確認した額の倍以上だった。聞くつもりではなかったが聞こえてしまった。

その店は早い時間から飲み始めると安く飲めると知っていた彼は、その仕組みについてバーテンダーに質問したが、答えは彼のその晩の飲み方だと適用にならない、だった。

多分彼のその晩のご予算を大きく超えていたのだと思う。顔を曇らせていたように私には見受けられた。財布を開けて一瞬キャッシュで払おうとした後カードで払い、彼は何も言わずに帰っていった。

彼の気持ちを推察するに、途中で値段を確認したのだから当然バーテンダーはそんなに高い酒をおすすめしてこないだろう、という漠然とした信頼があったはず。そして割安に飲めるシステムがあることを知っていたからそれにも幾分か期待していたはず。

だが結果としてその信頼や期待はかなわなかった。

財布と相談しながら飲んでいることが分かっていたのだから、おすすめのボトルを出すときにどんなボトルなのか説明すると同時に一杯おいくらか教えてくれてもよかったのに。あるいは「ご予算だいたいどれぐらいですかね?」と聞いてくれてもよかったのに。そして「こう注文すれば割引になりますよ」という説明をしてくれてもよかったのに。お勘定お願いした後で「その飲み方だと割引にはなりません」と言われても。

飲み物だけで1万円弱というのは20代の普通の若者にとっては結構な額。彼にとってのこの店のデビューは苦いものに感じられたに違いない。だから彼はこの店にもう二度と来ることはないだろう。私はそう思った。

途中彼が飲んでいるボトルを見て「ん?」と思ったが口を出さなかった私も悪かったのかもしれない。「あーそのボトル私も次にもらいたいな、でもそれちょっとお値段張るんじゃなかったでしたっけ?」とでも言ってあげられれば良かったのか。

私も何かできることがあったのではないか、と考えたら飲んでいたウイスキーが苦くなった。そして私も予定より早く家路についた。

先日渋谷のエリックサウスに家族で行き、帰りに娘が「おとーさんカレーおいしかったねー!また連れてきてねー!」と興奮気味に言った時の3人分のお勘定と、今日バーで一人飲みしたお勘定がたまたまぴったり同じ値段だったことに気が付き、再び気持ちが揺れた。

 

 

一つ経験的に言えることがある。

グラスを飲み干してから次の一杯を聞かれるタイミングが早すぎて、あ、何だか急かされてるみたいだ、と同じバーで一晩に二度思った時は、バーテンダーにおすすめをもらうときには値段を確認するか、それがしにくいようであれば早めに切り上げた方がいい。そのまま飲み続けると、大抵自分が予想していたよりも大きなお勘定がやってくる。

そもそもバーで飲むペースはこちらで決めるものだ。時間をかけて開くまで待ってから飲みたいウイスキーもある。ボトルによっては3杯目に飲むものを1杯目の注文と同時に頼み、グラスをカウンターに置いたままにしておいて空気に触れされておく、というようなことをやるぐらいなので(もちろんその旨はバーテンダーには伝えるが)、頼んだウイスキーを時間をかけて楽しむこと、そして飲み終わった後グラスから立ち上がる香りの余韻や変化を楽しむこともショットのお値段に含まれている。サウナの後の水風呂の後の「ととのい」タイムみたいなものだ。

(ただし目の前のグラスが空いているのに無意味にオーダーせず長話したり、勘定を締めた後でだらだら長居するのは歓迎されないので念のため。)

自分にとって気持ちのいいペースで飲ませてもらえない時点でその店での居心地はよくないはず。飲みたいボトルがその店でしか飲めない、といったよほどの事情がない限りは深追いしないほうがいい。旅先でのバーでもない限り、お勘定貰って思った通りだったらまた来ればいいのだから。

ボトルをおすすめしてもらった時にたいてい値の張るものが出てくるバーもあれば、「これすごくないですか?」って安ウマボトルを持ってきてくれる店もある。「今日はあんまりいい日じゃなかったんですよ」とボソリというと何も言わずに私が好きそうなボトルを選んできてくれるバーもある。一見の客よりも常連を大事にしそれで喜ぶ常連客が多いバーもあれば、初めてのお客さんへのサービスを見て別の客が萎えてしまうようなバーもある。


仕事の帰り、家にたどり着く前のサードプレイスとしてのバーに期待するのは、お酒を介してリラックスして心地いい時間を過ごし、家に不機嫌を持ち帰らないこと。だがこの晩はそれが叶わなかった。

値段は聞かれなかったから言いませんでした。割引のシステムは当然分かっているものだと思ってました。予算言われなかったのでわかりませんでした。いくらでも言い訳はあるかもしれないけれど。

私にはニコニコ話してくれるけれど出入りの酒屋さんにはきつく当たるようなバーテンダーを見ると、部下に感情的にダメ出ししている自分の姿をビデオ再生して見せられているような気がして辛い。そしてこの人が私に良くしてくれているのは多分お金のためだけなんだろうな、と再確認してしまった気がして寂しい。

バーテンダーも自分が店に立っているときの売上が少ないとオーナーに詰められるのかもしれない。
その日の売上がその日の給料に直結しているのかもしれない。
その若者は一見の客でもう来ることはない、と思ったかもしれない。
その日の売上を数千円増やすためにやったことが、長い目で見れば店の評判を落として結局売上の面でもネガティブかもしれない。
若者にとっては授業料が高すぎてしばらくバーに行こうとは思わなくなったかもしれない。
そしてその若者だけではなく、隣にいた私のような客も居心地が悪くなって足が遠のいてしまうかもしれない。
「雇われ」だからそんなの関係ない、と言い切ってしまえばそうなのかもしれない。
そもそもそんなことは起きておらず、彼は満足して帰っていて酔っ払った私のただの勘違いだけかもしれない。


何が真実なのかは私にはわからない。

ただ一つはっきりしていることは、大抵の勤め人はそういう生々しくて心がザワつくようなことは昼間山ほど目にしているので、仕事の後にわざわざ金を払ってまでそんな光景は見たいと全然思わない、ということだ。こういうことに出くわすと、私にとってバーはサードプレイスではなく、世の中はやはり世知辛いのだと再確認する場所になってしまう。

 

バーでは見えないところでいろんなことが起きている。私は一人静かに飲むことが多いので、他のゲストが気にならないことまで拾ってしまっているだけかもしれないが。

普段はこういうことはあまり書きたくないし書かないのだけれど、あの晩彼の隣にいて私は何もできなかったことを後悔し、罪滅ぼしとしてこれを書いている。

あの日隣り合わせた彼にはまたバーに戻ってきてもらいたい。本当はバーはそんな世知辛い場所ではないのだから。

 

 

 

 

 

 

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都道府県別成人1人当たりの酒消費量データから読み取る県民性

最近のウイスキーの消費動向はどうなっているのかな、と思って総務省家計調査のウイスキー消費量のデータを見てみた。2018年のデータでは、県庁所在地・政令指定都市の中でウイスキーに最も多く金使った街はぶっちぎりでなんと山形市がトップ、次いで奈良市福島市

ちょっとこのデータ面白すぎるだろ、と思って時系列で見てみたら、残念なことに信頼性に欠けることが分かった。そういえば去年の今頃は厚労省の毎月勤労統計を始めとする国の機関統計データが捏造に近いものだったと大騒ぎになっていたことを思い出した。


より信頼性の高いデータを探して国税庁のHP見ていたら、酒税の課税関係等状況表(平成29年度)都道府県別成人1人当たりの酒の種類別消費量を発見。現在入手可能な最新のデータ(沖縄のデータについては沖縄国税事務所統計情報)をまとめ、そして参考までに都道府県別の飲酒運転検挙率もつけてみたら色々面白い事実が分かった。

ちなみに沖縄は酒税が泡盛が35%、その他の酒が20%低いという「本土復帰の特別措置」が今も続いているために、国税庁の全国統計とは別扱いになっている。


こちらのデータが2017年度都道府県別成人1人あたり酒類消費量(単位リットル)と2018年飲酒運転検挙率(飲酒運転検挙件数を運転免許保有者数で割ったもの)。筆者まとめ。

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日本酒消費量は新潟、秋田がずぬけて多くてあとは秋田、山形、福島の東北が強い。高知も納得だが意外と佐賀も飲むんだ。知らなかった。

焼酎は九州、特に南と泡盛飲む沖縄強し。意外と山陰・中国も力強い。

ビールは東京の圧勝ぶりが目立つ、が発泡酒と合わせた時の高知が強すぎて笑う。

ワインは東京が強いのには驚かないが山梨がこんなに強いとは知らなかった。ウイスキーも山梨強い。そして飲酒運転も。

リキュールは恐らく第三のビール(風アルコール飲料)の売れ行きに左右されていると思うが沖縄圧勝。調べてみるとオリオンビールから結構な新ジャンル出ててそれによるのかな、と思う。

この数字見て私が勝手に導き出した仮説は4つ。

仮説その1「実は山梨県人は嗜好品としての酒が大好き」

果実酒、主にワインは「酔うため」に飲んでいるのではなく嗜好品としての性質が高いと思われるが、東京がぶっちぎりなのは分かるとしてもその次に多いのは山梨。ワイン生産出荷量は山梨が日本で一番多くて33%のシェアだそうだが、二番目に多い長野県(22%)よりも2倍以上の消費量。三番目に多い北海道(15%)でもそれほどワインの消費量が多くないことを考えると山梨県人は嗜好品として酒がめちゃくちゃ好きということ?
それに山梨はウイスキー消費量も多い(東京、宮城に次ぐ3位)。白州蒸留所があるから?
ちなみに山梨県は人口千人当たり飲酒運転検挙率で全国ワースト4位。県民性として民度が低いといった悪いイメージなかったけどな。鉄道があまり便利じゃないのに酒飲むからかな。

仮説その2「やっぱり高知はヤバい」

これは仮説ではなくて事実だろう。四国の他県と比べてもビールと発泡酒の売れ行き違い過ぎて笑う。発泡酒飲む量が香川の2倍をはるかに上回る力強さ。でも島根よりも日本酒飲まないって結構意外。飲酒運転も堂々の(?)全国6位。色々納得できます。

仮説その3「沖縄は発泡酒第三のビールをめちゃ飲む、そして飲酒運転ヤバい」

これも仮説ではなく多分事実。泡盛飲むからもっと焼酎売れててもいいかな、と思ったけれど、若い人はあまり飲まないらしい。公共交通機関があまりないのに酒やたらと飲むからだと思うが、飲酒運転検挙率(飲酒運転検挙件数を運転免許保有者数で割ったもの)が東京の25倍。さすがです。

仮説その4「茨城が一番ヤバいかもしれない」

大してお酒飲まないのに東京対比で飲酒運転検挙率10倍はヤバい。同じくらいしか飲まない近くの栃木や群馬と比べても飲酒運転3倍超。もしかしたらある意味一番ヤバいかも。


そしてこちらが成人1人当たりのウイスキー消費量の都道府県別ランキング。

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結果はやはり東京圧勝。そして2位が宮城、ニッカのおひざ元だからか。そして白州おひざ元の山梨が3位。マルス信州蒸留所があるお隣長野県よりも相当多い。

東京、大阪のような大都市と北海道、東北のような寒い地域でウイスキーの消費が多い傾向があることが分かる。愛知の人は県民所得高い大都市の割には酒飲まないのにやや驚く。
家計調査では健闘の目立った奈良は下から8番目。

なんか眺めているだけでも意外と面白かった。いつもと違う感じの記事ですが、調べてみてよかった。





 

出典

国税庁平成29年度分 酒税課税関係等状況表 酒類販売(消費)数量等の状況表https://www.nta.go.jp/taxes/sake/tokei/kazeikankei2017/pdf/29-06.pdf
統計情報(沖縄国税事務所)
https://www.nta.go.jp/about/organization/okinawa/statistics/index.htm
沖縄県 住民基本台帳年齢別人口
https://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/shichoson/2422.html
平成30年の犯罪
https://www.npa.go.jp/toukei/soubunkan/h30/h30hanzaitoukei.htm
警察庁 運転免許統計平成30年版
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo.html

SNS/ウェブ情報をうのみにすべきでないとSNS/ウェブ上で主張するという大ブーメランについて

突然音楽の、それも昔話から始めますがお許しください。


今は音楽をお金払ってダウンロードする前に、YouTubeで曲を聴いてみて、あるいはダウンロードサイトで試聴して買うか買わないか決めることができる。
だからお金を払って聴いてから「ハズレだった~」って分かることは基本ない。それも1曲ずつ好きか嫌いか確認して買うことができる。

だが昔は、音楽、特に洋楽は試聴してから買う、ということはほぼできなかった。正確に言うとシングルカットされているアルバムの中の1曲はFMラジオなどで金払わずに耳にすることはできたが、オンディマンドではなく特定のラジオ番組の時間にラジオの前に正座して曲がかかるのを待たなければいけなかったし、それ以外のアルバム収録曲は試聴できないままに3000円を払ってCDもしくはLPでアルバム全曲を買わされる、というのが普通だった(信じられないかもしれないがそのためにラジオ番組でどの曲が掛かるか知るための番組表雑誌、みたいなものまであり、それを読んでいるとシャレオツ、とされていた)。当然昔はインターネットもなければYouTubeもない。
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田舎の中学生だった私の1カ月の小遣いは3000円だったのでアルバム1枚買うのは清水の舞台から助走をつけて飛び降りるぐらいの相当な決意を必要とした。当時はレンタルレコード屋もしくはレンタルCD屋があって一泊二日350円とかでアルバム借りられたけれど、私は当時から結構マニアックだったのでレンタル屋に自分が聴いてみたいアルバムがないことがままあり、自分で1か月分の小遣いをすべてはたいてアルバム買うしかチョイスがない時が多かった。

だからレコード/CDを買ってきて最初に針を落とす/CDプレイヤーを再生するときは相当ドキドキし、大枚はたいて買ったアルバムがしょうもなかった時の凹みっぷりは半端なかった。ハズレをつかまないために音楽雑誌のアルバム評を食い入るように読み、ストレートにネガティブなコメントを雑誌に書けない時もあったりしょうもないアルバムをしがらみにより絶賛しなければならないようなオトナの事情があることも高い授業料を払って学び、行間を読む技を身に付けることができるようになった。

からしてみれば笑ってしまうようなことだと思う。試聴せずに金払うなんてありえねー。今の感覚ではそうだろう。今時そんなリスク取ってまで買わなければならない嗜好品、ってあまりない。そもそも自分が好きだから消費するのが嗜好品なのに。買ってみないと自分がそれが好きかどうかわからない、ってもはや嗜好品の定義からも外れてしまっている。

 

だけどテクノロジーの進化した今日この頃でも高い金払った後に「ハズレだったらどうしよう」とドキドキさせられる嗜好品がまだある。はい、もうお気づきでしょうが、そのうちの一つはウイスキーってやつです。ペリペリするときドキドキしませんか?*1f:id:KodomoGinko:20200130103620j:image

店頭もしくはバーで試飲せずに買うと、最近ボトルの値段も上がっているのでドキドキ感めちゃ強い。輸入元のコメントを鵜呑みにしてしまうと、最近だと「トロピカル詐欺」、ちょっと前までは「シェリー感詐欺」に引っかかる。だからだれかがバーで試して、あるいはチャレンジャー*2がボトル買ってツィッターでどんなコメントしているのか眺めてから買うか買わないか判断する、ってなりますよね、普通。
特に可処分所得が限られると、失敗した時のリスクが大きいのでよりそうなるはず。大人の私よりも中学生の頃の私の方がよりシビアにアルバム選んでたことは間違いない。だからおじさんよりも若い人の方がウェブ上の情報を真剣に見ているはずだと思う。

少し話題を変える。一般的に日本人の間では、知り合いの意見に対しては表だって違う意見を述べない、という無意識のうちの同調圧力がある*3

人口密度が高く農耕というチームプレイで生きてきた日本人の多くは、狭くて濃厚な人間関係の中でトラブル起こすと生きていかれなかったはずなので、「和をもって貴しとなす」、つまり人の意見に表立って反対しないような傾向を進化の過程で身につけるのは自然なことで、現代社会に生きるマトモな大人は空気を読む能力を身につけて当たり前。

日本人は一般的にDisagreeとDislikeの距離が近いイメージ。外国人は自分の意見と違うこと言う人がいても議論の後に仲良くランチ食べたりするのが普通だが、日本人の一部(特に私以上の世代)は「自分と意見の違う人=自分の人格を否定する人」、と受け止めるので人間関係が気まずくなってしまう。結果、自分がよっぽど強く主張したいことでなければ他人に対して反対意見を(強く)述べない、というのが無意識のうちに「大人しぐさ」になっている。サラリーマン社会にいる人、毎日実感してますよね?

そしてウェブでやSNSで情報収集する皆さんがあまり意識しない事実だが、実はブロガーやツイッタラーは意外とつながっていることが多い(SNSはつながるためのものなので当たり前だけど)。仮に同調圧力が働くとするとどうなるか、というと「あの人があのボトル褒めてるのに自分はあまり好きじゃないとは書きにくい」「あの人がネガティブなコメントしているのに自分は好きとは言いにくい」的なバイアスがかかる。書いている人の顔が思い浮かぶようだと特に。

念のためだが実際にそれが起きているか否かとか、それがいいとか悪いとか、馴れ合うべきかそうでないべきかなどを議論したいわけではなく、日本における人付き合い*4って普通そういうものだ。先ほども述べたように、マトモで立派な大人であればあるほど同調圧力センサーが働くようになっている。

ウイスキーの好き嫌いの主張のために友達失うかもしれないリスクとりますか?普通はとりません。

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そもそも全員が試飲してからボトルを買うことができないという事実と若いウイスキー好きが増えているという事実によりウイスキーの評価におけるウェブやSNSの影響力が強くなり、それと同時にウェブやSNSでボトルを評価する人が仮に同調圧力にさらされているとすると、結果何が起きるか考えてみよう。

おそらく、ボトルリリース直後に書かれたテイスティングブログやツイッターでの評判の多様性が薄くなる上にそれにみんなより強く依存するようになる。ウェブやSNSで誰か声の大きな人の一人が発売直後に「これは旨い!」というとみんなそれに乗っかって人気化するし、「これはダメだ!」というと売れないという状況が少しずつ出来上がる、はず。嗜好品だから本来は色んな意見が飛び交って当たり前なのだけど。

もしそうなってしまうと、いくつかの点で良くない状況が発生してしまうのではないかと個人的に懸念している。

一つ目はいろんな個性のウイスキーが楽しめる、という多様性が失われていくという点。
みんなは「これよくありがちな凡庸なウイスキーだ」と言っているけれど、私は実はこういう風なニュアンスを取ることができて意外と悪くないと思いました、みたいな様々な意見を持つ人が増えれば多種多様な商品が受け入れられる環境になる。
逆にみんながみんな「トロピカルな甘い香りのするこの手のボトルサイコー!」みたいな似たような意見しか言わないと似たような商品しか出てこなくなる、ような気がする。
そしていわゆる「尖った」ボトルが出てこなくなるリスクが高まる。そうなると自分が経験できる感覚のスペクトラムの幅が狭いままになってしまう。
例えば海外の人が「ミーティ」という硫黄系の香りや後味をあまり嫌がらずに評価するが、日本人は(私も含め)あまり好まない。だけどミーティ、という表現はどういうときに使われるか、どの程度までだったら海外の人も受け入れるのかを知っておきたい、と思う。多様性が失われるとそういうことを学ぶ機会が徐々に失われていくことを心配する。

二つ目は蒸留所のハウススタイル、ビンテージ、樽使い、熟成年数、色などの客観的要素から試飲をしなくてもある程度信頼性のある官能評価、主観的評価を予想し導き出すことのできる能力を飲み手が磨く機会が失われる、という点。
もう少し具体的に言うと、「これだけ色濃いしこの蒸留所の酒質が軽めなこと考えるとシェリーの樽感がくどすぎる可能性が強いからパスしとこうかな」とか「このビンテージは当たり年だったし前に飲んで美味かったカスクナンバーに近いから試飲しなくても買って大丈夫なはず」とか想像していいボトルを見分ける「野生の勘」のようなものを持たない人が増えてきてしまうのではないかという懸念。

全てのボトルについての情報がウェブ上で入手可能なわけではなく、またアウェイのバーに行ったときなど事前情報なく自分の力でよさそうなボトルを見つけて飲まないといけないときもある。やはりいいボトルを自力で見極められるスキルがあった方がいい。ウェブ情報に頼ることに慣れてしまうと、カーナビなしではドライブに出かけられないドライバーのような「ウイスキー方向音痴」になってしまうのではないか、と思う。

三つ目は、ウイスキーに対するリスペクトが失われていく気がする点。
SNSやブログの評価に頼ることで「いい」ウイスキー「だけ」飲みたい、というのは時間とカネという資源を節約する行為かつ他人にフリーライドする戦略。だがそもそもウイスキー造りには時間も手間も掛けられていることを考えると、作る側にはスローフードの精神を要求しておいて消費するフリーライダー側はマクドナルドのハンバーガー食べるのと変わらないメンタリティーウイスキーをいただき、落とす金は最小限で済ませたい、という生産者に対するリスペクトを著しく欠くおかしな状況になる。

家飲み用に買って飲んでみたら自分にとっては「ハズレ」だったボトルを、ただ捨てるのはもったいないからと言う理由だけで飲む、というのは有限な時間や肝臓の無駄遣いではあるものの、そういう痛い目にあって「授業料」を払わないと先ほど書いたように自分のセンサーの感応範囲が狭くなり、野生の勘も養うことができないのだと思う。そして、残念ながら全てのウイスキーが美味いわけではないので一定量の「ハズレ」ウイスキー*5が世の中に存在するというのは変えようのない事実。誰かが授業料を払い、そのババを引かなければならないが、自分だけ授業料を払わずババも引かずにいいとこどりしてずっとウイスキーを楽しもう、というのは完全なフリーライドで自分勝手すぎる気もする。ただし「フリーライダー」の中にはそうしなければならない経済的理由がある人もいるのはわかる。みんながもっと豊かだったらハズレボトルも楽しめる余裕が出るのに、とちょっと老害的な発言の一つもしたくなる。

正直言うと私も「おいしいウイスキーしか飲みたくなくて、好きなものだけに囲まれていたい」と思う部分ももちろんある。ストレスレベルが高いときは特に。だが、「愚者は誰からも学ばないが、賢者は愚者からも学ぶ」というありがたい言葉*6がある。「ハズレ」ボトルからも学べるフレイバーやニュアンスがきっとあるはず。

音楽の例で書いたが、ボトルを評価する人が本当に独立した自分の意見を述べているとは限らない。世の中いろんな大人の事情やしがらみがある、と私は昔授業料を払って学んだ。ちゃんとした人であればあるほど、オトナのしがらみにがんじがらめになる面もある。

上記の理由から、ボトルの評価に関してSNSやブログを頼りすぎるのは正しくない気がする。ただし真面目にSNSやブログを書いている人を貶めるつもりは全くなく、あくまでも受け止める側がそれに頼りすぎないように、ということが言いたいので念のため。
当たり前ですがあなたが今読んでいるこのブログで私が今まさにこう書いていることを鵜呑みにしていただく必要は全くない、ということを暑苦しく主張しているという意味でこの記事は壮大な自己矛盾、大ブーメランだけど。


そして私がツイッターで書いている内容の一部も、悪い意味でのフリーライダーの参考になってしまっている部分ももちろんあることは自覚している。
そこは本当に申し訳なく思っております。
特に「スローフード」メンタリティーウイスキーを作っている生産者やボトラー(インポーター)、そして彼らに強く敬意を示されている(オーナー)バーテンダーの方々、日々SNSを見て店に現れる一見の「フリーライダー」に対して思うことがあるバー好きの皆様に対して。 

だから私はできるだけ多様性を意識して人の意見に流されないようにしながらSNSやブログを使っていきたいと思う。そして私のできることは、ウイスキーを生業にしている人たちに常にリスペクトと感謝を持ち、だがしがらみからもできるだけ距離を置き、できる範囲でカネを落とすことでフリーライダーを排除しないといけなくなるような世知辛さを減らしていくことだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (かつて同調圧力Peer Pressure)について割と真剣に考えてみたことがありました)

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*1:擬音祭

*2:人柱ともいう

*3:逆に自分が安全地帯にいるとわかると手加減せずにボコボコにする傾向もあることがSNS見ているとわかる

*4:ウェブ上のバーチャルな付き合いを含む

*5:めちゃくちゃ失礼な表現だと理解した上でこの言葉を使っています

*6:すみません、今私が作りました

愚者の金、あるいは終売のウイスキーをめぐる狂騒曲について

竹鶴17、21年の終売発表後、17年は5万円、21年は10万円を超える値段でオークションで売られている状況です。また一部投機的なお金が入ってきているせいもありウイスキーはどんどん高くなっています。
一人のウイスキー好きとして、ウイスキー転売の是非やそもそもの適正価格はどう決まるべきかについて考えました。

■ はじめに

Twitterで紹介されていたブラックウォーター蒸留所の直近のブログを読んだ。ウイスキーの値上がりの激しい昨今、とても含蓄のある記事だと思った。

 
「FOOL’S GOLD? INVESTING IN IRISH WHISKEY CASKS(愚者の金?アイリッシュウイスキーの樽への投資)」、という記事。少し長いが訳してみた。
(長いのでサクッと読みたい人には原文の下に要約つけてあります)

 

 

■ 愚者の金?アイリッシュウイスキーの樽への投資

https://blackwaterdistillery.ie/fools-gold/

我々はゴールドラッシュの真っただ中にいる。液体のゴールドラッシュだ。アイルランド島にある蒸留所の数は3から30を超えるまでに増えた。それも私が中古のルノーラグーナを買って乗り始めてからの間で。ゴールドラッシュでは一山当てる者もいるが、多くは泥を掘り返しただけに終わったり、偽物の金をつかまされて質屋に駆け込むことになる。

最近私のソーシャルメディアのタイムラインはウイスキー金融商品として取り扱う会社であふれかえっている。アイリッシュウイスキーを買うのは間違いない投資だと言われている。その投資は家を買うのと同じぐらい安全だと言われている。しかし現実は全く異なるかもしれない。

私はさかのぼること1990年、初めてジョン・ティーリングに会い、彼がこういったのをはっきり覚えている。「そこそこの金持ちになるのに最も手っ取り早い方法はウイスキー造りだが、ウイスキー造りは巨万の富を持って始めるものだ」

もしあなたが真剣にアイリッシュウイスキーの樽買いを考えているのであれば(趣味や飲むためでなく、投資の一手段として)、彼の言葉を心に留めておくべきだ。以下があなたの意思決定にあたって知っておくべきことのショートリストだ。

  1. この国で金融サービスや共同投資スキームを提供するものはアイルランド中央銀行に登録する必要がなる。登録者リストはこちらで見られる。もし樽のプロモーターがこれらのサービスを提供しているなら、このリストに載っているはずだ。調べてみてほしい。もし載っていなければその理由を考えてみよう。それは基本的な法律上定められた要件だ。
  2. ある樽への投資商品では樽の購入代金が55%割引になるとうたっていて、彼らのパンフレットには一樽2400ユーロと2900ユーロという価格が宣伝されている。だがある商品が実際に「それなりの期間」、すなわち値下げ前の3か月のうち28日間、より高い値段で売られていないと「割引販売」と言うことはできない。もともとの値段が高かった証拠がないとそれはインチキな割引なだけでなく違法だ。
  3. 全てのモノの価値はマーケットで決まる。ここでは希少性の原則が働く。現時点ではアイリッシュウイスキーの古酒が不足しているが、市場は変化しつつある。現在13ほどのアイルランドの蒸留所が熟成したアイリッシュウイスキー保有している(ただし多くがまだ市場に出てきていない)。そして17ほどの他の蒸留所がニューメイクを熟成させている。二つ目のファンドは「樽のリターンは12.5%以上」とうたい、三つ目は独自モデルにより「将来の利益を樽のオーナーに保証」という。ここでのキーワードは「保証する」で、それが実際には不可能だという事実はとりあえずおいておいて、これらの樽のプライシングを検討してみよう。スーパーマーケットの自社ブランドのウイスキーは常に業界の良いバロメーターだが、過去数年全く見かけなくなっていた。しかしALDIとLIDL*1ではアイリッシュウイスキーを一瓶18.99ユーロで安売りしている。そのうち14.66ドルは酒税と付加価値税だ。つまりウイスキーの正味の値段は4.33ユーロで、それにはウイスキーそのもの、瓶、ラベル、栓、封印、外箱、労賃、諸経費、配達の費用が含まれ、生産者とスーパーマーケットの利益も乗っている。計算してみればいい。若いウイスキーで金儲けをするのはボリューム勝負で、古いウイスキーは現在希少だが今後もずっとそうあり続けるわけではない。たった2、3の生産者しかウイスキーの樽を外部に販売していないため古いウイスキーの在庫が現在希少で価格が高どまりしていることを忘れてはいけない。今から10年もすれば30、40、もしくは50の蒸留所がアイリッシュウイスキーを生産することになる。時間の経過とともに比較的安価に買うことのできるウイスキー樽の大量の在庫も熟成されていくので、現在値段が高くないものは将来も値段が高くならない可能性が高い。
  4. もしあなたが樽を買い、素敵な保有証明書をもらい、どこかの保税倉庫でウイスキーが熟成されているとしよう。あなたは個人として樽を保管している保税倉庫のサブリース契約を登録し、地元の税務署の許可を取りましたか?これは重要なことで、税務署は一樽当たり約6800ユーロの酒税と付加価値税を課税するために誰に支払い義務があるのか調査する。仮にあなたがその樽をファンドもしくは蒸留所経由で買ったとして、そのファンドもしくは蒸留所が借金を抱えたまま倒産したとしよう。その場合資産は売却され、あなたの保有証明書は同じ重さのトイレットペーパーよりも価値のないものとなる。結局のところ、税務署に樽の保有者として法的に登録されていなければ、あなたは登録された保有者ではないのだ。簡単なことだ。もしそれをしなくていいのなら、なぜ全てのアイルランドの蒸留所がウイスキーを熟成庫に送るときにわざわざそうしているのか考えてみればいい。
  5. 全ての投資で最も重要なのは出口戦略だ。どうやって樽への投資から利益を確定するのか。酒業界は高度に規制されていて、酒の一滴一滴には酒税がかかる。蒸留酒の樽を売るのは中古のルノーラグーナを売るのとはわけが違う。もしあなたが熟成されたアイリッシュウイスキーの樽を売りたいのであれば、Done Deal*2に広告乗せるわけにはいかない。ファンドの中には一定期間の後に樽を買い戻す保証をしているものもある。もしそうならその保証を書面にしてもらい、弁護士に見せてみるといい。なぜか?だれかに樽を売るためにはアルコールの卸売に該当する量を扱うための酒類卸売業免許が必要だからだ。また保税倉庫から樽を出すためには税務署と話をつけないといけない。OK、樽のことは忘れよう。瓶詰めして売れば利益を最大化することができる。だがまずラベルについての許可を取る必要があり、アイリッシュウイスキーを瓶詰めする認可を受けた施設を見つける必要がある(アイリッシュウイスキー技術要項に規定されている)。あなたはおそらく付加価値税の登録をしなければならず、なぜなら販売額の23%は付加価値税だからで、小売り免許、すなわちパブの営業許可も必要となる。最後に確認した時はパブの営業許可取得には8万ユーロほど必要で、地方裁判所に行って費用を払う必要がある。許可なしでアルコールを外部に販売するのは税務署と警察署のご厄介になることを意味し、死ぬほどバカげている。
  6. 頭のいいあなたであれば、これの問題を解決するためには適切な免許を持っている誰かに樽を売ってもらうもしくはオークションにかけてもらう必要があることに気づくだろう。いまのところ当局はお目こぼししているが、問題は規模だ。アイルランドでの樽の購入は趣味の範疇で行われているが、それが大規模になれば税務署が黙っていないだろう。ある樽投資ファンドは2019年に1000万ユーロの価値のウイスキーを売ったが、今年は140%成長の計画を描いている。酒税やVATは多額となり、キャピタルゲインについての税金も追跡されるだろう。だから樽を買う前に私ではなく独立投資助言業者からの助言を受けるのが最良だ。


もしこれでも純粋な所有欲のために樽に投資しようと思うなら、そうしてみるといい。そして蒸留所に直接行くことを検討してみればいい。間に入る人は全て手数料を取るのだから。樽購入プログラムを提供している新設蒸留所はたくさんあるので比較検討できる(念のためだがブラックウォーター蒸留所ではそのサービスは提供していない)。

もしこれをすべて読み終わってまだウイスキーを財産と同一視しているのであれば、この言葉を覚えておこう。「Caveat Emptor(買い手責任)」

 

 

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簡単にまとめてみるとこうなる。

ウイスキーの樽への投資が流行っているようだけれど、いろいろ疑わしい面がある。

投資商品とうたうなら、ちゃんと登録してあるはず(でそうしていないなら詐欺の疑いが強い)。
樽をディスカウントで買える、というのであれば一定期間定価で売られていてそこからのディスカウントだとはっきりしていなければならないと法律で決まっている(けどそうなっていないのでインチキか詐欺の疑いが強い)。
今は古酒がなかなか手に入らないので値上がりしているが、新しい蒸留所がたくさんできていて将来の供給量が増えることが確実で、希少性がなくなれば値段は上がらない。安い値段のウイスキーを売って儲けるためには大量に売らなければならない(ので一樽買っても儲けは薄い)。つまり「確実に儲かる」というのはかなり疑わしい。
樽を買っているように見えるけれど、実際にあなたが直接樽を持っているわけではなく、ファンドや蒸留所にお金を貸しているのと同様のスキームになっているのでファンドや蒸留所が倒産してしまうと手元に何も残らない。
樽を誰かに売らないと儲けが確定しないが、それには免許もいるし税金もかかってくるので費用もかかるし簡単には売れない。
仮に儲かったとしてもリターンには税金は考慮されておらず、今はお目こぼしされていてもウイスキーへの投資が一般的になり金儲けする人の数が増えるにつれて税務署のマークはきつくなる。
もし本当に樽への投資がしたいのであれば、直接蒸留所に行って樽買いプログラムに参加するのが一番割安なやり方のはずだ。

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結論はウイスキー造りは「絶対確実な投資」などではありえない、ということだと思う。

プロとして断言するが、「12.5%以上のリターンが確実な投資商品」は基本眉つばだ。そのリターンが確実に上がるのであれば自分で借金してそれに投資すればよく、人に薦める理由がない。このカネ余りの時代、よほど信用履歴の悪い人でなければ5%ぐらいの金利払えば金が借りられ、その金で12.5%以上のリターンを約束する「確実な」投資機会に投資すれば最低でも7.5%儲かる。わざわざそんな金儲けの機会をお勧めしてくる人はよっぽどのお人好しか詐欺師かお人好しの詐欺師のどれかだ。

ウイスキーをオークションで投資目的で買うということ

アイルランド金融商品としてアイリッシュウイスキーの樽へ投資する人向けへの忠告なので我々にはあんまり関係ない気がするが、実際には我々のような日本でボトルを買っているウイスキー好きにも重要な論点がいくつかある。

たとえば直近終売になることが発表された竹鶴。ヤフオクを覗いたら一時は17年が5万円超えていた。最近は箱入りでも値段下がって4万円台になってきているようだが。21年は値段が上がって10万円が相場のようだ。2本売ったら手数料10%払っても12万円以上が手元に残る、ように見える。

auctions.yahoo.co.jp


ちなみにアサヒのHP見るとこんな感じ。希望小売価格は小売店での販売価格を拘束するものではなく、その値段で買うことは基本難しかったことは知っているが改めて見てみると感慨深い。

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終売発表前の9月末には竹鶴17年は1万5千円ぐらいで落札されていた。

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竹鶴17年を5万円で投資目的で買う人は出口戦略、すなわちどうやって利益を確定するかについてはどう考えているのだろう。

5万円よりも高く買う人を見つけてその人に売りつけられないと儲けようがない。
それを分かって落札しているのだと思うが、自分が落札したということは、自分の値段が最高値である、すなわち「現時点では自分より高く買う人はいない」ということを意味する。現時点で自分が一番高値で買っている人なのに、将来自分よりも高く買ってくれる人を見つける、というのは極めて困難だということを分かってやっているのだろうか。
そもそも希望小売価格が7000円だったものが現在7倍以上になっているのに、さらに値段が右肩上がりに上がっていくと考えるのは結構難しいように思われる。

仮に投資目的で買った人が目標リターンを年率10%、5000円としていると仮定して計算してみよう。

オークションでの売却手数料が10%とすると1年後に61111円以上に値上がりしていれば5000円の利益。仮にそうだとしても10本で5万円、100本で50万円の儲け。お小遣いでは嬉しいかもしれないが、ビジネスでやるには効率悪い。

そして1年後に6万円以上で竹鶴17年売れるか?というのがそもそもの問題。山崎18年の落札相場7万円近辺とあまり変わらない値段でそっち買いますかね?
山崎18年の落札価格は竹鶴の終売にあまり影響されていない、ように見える。ちょっと前まで竹鶴17年の評価は山崎18年の20%ほどだったのに、今は70%ほど。竹鶴の割安さは終売発表後大きく修正されている。

まあ一言でいうと金儲けで竹鶴17年を今から買うのはあまり得策ではない気がする。
さすがに自分ではその値段では買おうと思わない。


■ 何が「適正で」「フェアな」価格なのだろうか

ではフェアな価格はいくらか、というのを考えてみたい。私にとってフェアな価格の水準は、当たり前だが自分が竹鶴17年を飲む体験にいくらまで払いたいと思うかに左右される。

17年は自分の中での価値は感覚的には1万5千円ぐらい。直近の相場の過熱を加味しても年数×1300円、2万2千円ぐらいが上限かもしれない。異論は認める。あと改めてはっきりしておくが、竹鶴のことを下に見たりしているわけではないので念のため。

私が今竹鶴17年を5万円で買うかどうか決める際には、例えば以下の2つのチョイスのどちらが自分にとっての効用が高いか考える。

チョイス① 
竹鶴17年を1本飲むという体験を5万円で買う

チョイス②
アラン10年新ボトルを買い、丸亀サイレンスバーさんに行って2万6千円分飲む

(4000円(家飲み用の新しいアラン10年1本購入)+2万円(JetStarで高松行き往復航空券、片道4500円から +宿泊費その他)+2万6千円(丸亀のサイレンスバーでの飲み代))


別にアランである必要はなく、ダルユーイン花動でもいいしモーレンジオリジナルでもいいが、私にとっては圧倒的にチョイス②の方が効用が高い。丸亀行かなくても4万6千円握りしめて有楽町や新橋や池袋のバー回れば相当素晴らしい体験ができることは私が保証する。

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そう考えると、仮に竹鶴17年を5万円で買いたい人がいれば私はその値段でボトルを譲って全然問題ない、ということになる。(ちなみに上記のフェアな価格を決める時にはチョイス①を1万5千円とか2万2千円とかにしてチョイス②の例を様々考える)

こういうことを書くと、「高値で売って転売で金儲けしやがって」的に快く思われない方がいることも知っている。だがプレ値で売って供給が増えれば値段が下がるので、むしろ高値で転売することに反対する人から褒めてもらってもいいはずだ。

プレ値でケースごとオークションに出すような人をSNSで晒して非難する人が現れる一方で、情報弱者の地方のお年寄りが経営するような酒屋ばかり狙い撃ちにして巡ってボトルを買い占め「定価で買えましたラッキー」的に誇らしげに「戦果」をSNSに上げる人もいる。

大体前者は「転売ヤーに死を」的なリツイートを浴びるのに、後者は「うらやましい」的なコメントがつく。

終売になってなかったら同じことしましたか?プレ値が付いていなかったら同じことしましたか?両者ともプレ値がついているからやっているわけでコインの裏表で全く同様の行為なのに片側だけ強めに非難される。つまるところ利益を確定させた人に対する単なる嫉妬なのだろう。

プレ値での転売自体許せない、という人に対して私はこう思う。

自分がその酒に対してプレミアム払ってでも買いたい、と思うのであればそうすればいい。どうしてもお父さんの命日にお父さんが好きだった竹鶴17年をお供えしたい、もうすぐ命日が近づいているのだけれど全然酒屋では見つからない、というのならヤフオクで5万円で買ってもいいじゃないですか。飛行機の切符が仮に全部売り切れだったとして、うちの親が危篤でどうしても目の前の飛行機に乗らないと死に目に会えないかも、と思えば搭乗券持っている人見つけて定価より多くいくらでも払いますよ。何か?

良識ある二人の大人の同意の上での契約や行為に対して、自分の価値観と相いれないからと言って他人が文句をつける権利は誰にもない。高値での転売許せない、と言う人は同性婚反対論者とあまり変わらない。違う、と言うならロジック教えてください。

ちなみに反復継続的に業としてオークションに出品しない限りは酒販免許もいらないし普通のサラリーマンはその他も併せて 副収入が20万円以下の場合は税金申告も必要はない。 世の中には親切を装った嘘つきの嫉妬深い人が多いので気を付けてください。

一番大事なことは、そのボトルを買うことで得られる体験に対してあなたはいくらまでなら払いたいですか?ということだと私は思う。それは人によって違う。違うからある値段で同じものを売ってもいいと思う人もいれば買ってもいいと思う人もいる。ウイスキーだけじゃなくて、トレーディングカードでも、リンゴでもイワシでもそう。

私はこれまで転売はしたことがないけれど、こう書いているうちに改めて家にある竹鶴17年と21年をプレ値で売ることの方がむしろ正義である気がしてきた。なぜならばさっきも書いたように、自分の物差しで測ればそのボトルから得られる体験よりも5万円で得られるその他の体験の方が自分にとっては価値がある気がするから。そして他の体験よりも5万円で竹鶴17年買う方がいい、という人に売ってあげられれれば、私にとってもその人にとってもWin-Winになるから。もっと言うと社会全体にとって私が竹鶴17年を持ちつづけることよりも転売することの方が役に立つから。

投資はビューティーコンテストすなわち美人投票*3で、自分が一番美人だと思う人ではなく他の人が一番美人だと思うであろう人を当てるゲームだから他人がどう思うか、他人の価値観を気にする必要がある。

だが投資でウイスキーを買っているわけではない我々にとっては、他人の評価は関係あるようで関係ない。

人からどういわれようとも、安いウイスキーでも自分が旨いとも思えばそれを飲めばいい。高くてもいいものだと思えばそれをプレ値で買えばいい。人から何を言われても揺らぐ必要はない。つまるところ自分の価値観、すなわち自分はこのウイスキーから得られる体験に対してどれ程度の評価を与えるのかの物差しが自分の中ではっきりしていればいいのだ、と思う。

 

 

 

 

 

 

 ■ おまけ

以下おまけ。

ウイスキーをこよなく愛する私は、以前美味しい竹鶴17年を安値で手に入れた。その後、その竹鶴17年は評価がぐんと高まり、当時1本7千円で買ったものがオークションに出せば今や5万円の値が付くという。私はこのウイスキーをときどき、ちびりちびり味わって飲んでいるが、競売価格で手放す気はまったくなく、ましてやそんな高値で買い足そうなどとは思ってもいない」。

私が5万円で竹鶴17年を転売しないとするとこのような状況になるわけですが、これは極めて非合理的な行為をしていることになります。なぜそうなのかがわからない方で興味があれば、以下の本を読んでみてください(写真左側の文章に注目)。10年以上前に出た本ですが、ノーベル経済学賞をとったセイラーの手で書かれた名著です。

オークションで落札することのリスクについても詳細に検討されていますので、ウイスキーオークションに参加されている方にもお勧めします。原題は「The Winner's Curse」、勝者の呪い、でまさにオークションで勝つということはどういうことかが主題とされています。
自分で飲むためにオークションに参加されるような方は私よりも皆さんよりはっきりと自分の価値観をお持ちだと思うので、大きなお世話だとは思いますが。

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*1:いずれもドイツ資本のディスカウントストア

*2:アイルランドの中古車のネットオークション

*3:今時不適切、Politically Incorrectな言葉遣いだというのは十分理解した上で言っています

バー飲みを愛する男がカウンターで考えていること

とある酒飲みの一日。

ウェブサイト眺めてたら飲んでみたいラムを発見。ラ・メゾン・ド・ウイスキーが詰めたスリーリバース向けワーシーパークシングルカスクカスクストレングス、シングルポットスティル蒸留、11年ジャマイカ・2年ヨーロッパ熟成。ラムは勉強中、スペックだけでもかなり興味深い。どこかのバーで試してみたい。

ワーシーパークってスペルどうだったっけ?とりあえずカタカナでTwitter検索するも意外と見つからない。「メゾン ワーシーパーク」ではヒットなし。「ワーシーパーク」だと京都のラムアンドウイスキーさんのボトルばかり。Twitterの「最新」タブでようやく吉祥寺と池袋でお目当てのボトルが開いていることが判明。店の基本情報を確認し、仕事終わりに比較的行きやすそうな池袋のBar Crossさんに行ってみることに。


初めてのBar Crossさん、JR池袋駅から少しだけ歩いた懐かしい感じの飲食ビルの地下にある。雨が降るとちょっと行きにくいかな、ぐらいの距離。カウンターに落ち着くとヒュミドールらしきものが奥に見え、タバコ吸っているお客さんもいたのでどうかな、と思ったが、換気がいいのか全く気にならない。

バックバーにはグレンフィディックスプリングバンクなどのオフィシャルのオールドボトルが並んでいて見ていて楽しい。一杯目からワーシーパークを頼むべきかうかがうと、「力強いので最初は違うのがいいかと思います」とのこと。そこでカーデュの80年代オフィシャル加水をチョイス。

ああこういう素朴な麦感好きなんだよな、飲み疲れないし一杯目にぴったりだわ、グッドチョイス、と思いながら一人静かに飲む。
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その後お目当てラムを飲むことができた。

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確かにこの重厚な飲みごたえはいきなり頼むものではないかも。ウイスキーと違ってラムは原酒と樽の強さのバランスが原酒寄りだなあ、と改めて思う。かといってバランスが悪いわけではない。ラムならではの複雑なグラッシーさ、後からフルーツの甘みとスパイシーさが出てきて変化を楽しめて面白かった。

さらにその後あまり詳しくないコニャックをお薦めいただく。ケイデンが詰めたシャルパンティエ蒸留所カスクストレングス30年。これもオッサンのハートを直撃。即2本ポチる。さらにグレンキンチー10年のオールドのオフィシャルも飲めてとても楽しめた。

バックバーを見ると、ボトルの前面にA6とかB4とかラベルが貼ってある。それぞれ1ショット1600円、2400円ということなのだろうな、と思いながら見ていると、80年代から2000年代初頭ぐらいに出ていたオフィシャルボトルがリーズナブルに色々試せることが分かった。ハーフで頼んだら相当な種類が飲めて楽しそう。

何杯か頼むと一番高いショットが半額、というお年玉サービスの最終日だったこともあってか、お勘定をいただいたところ「この体験に対してならこれぐらい払って然るべき」という自分の感覚から3割ぐらい安い破格のチャージ。

ご自宅どちらなんですか?と聞かれて「渋谷方面です」と答えたら、「じゃあ副都心線ですかね」と言われる。しばらく歩いてJR池袋駅に戻らないと、と思っていたけれど、店を出たらすぐ目の前が副都心線の入り口で、実は家からさほど不便でないことが分かった。

家飲みだと味わうことのできない、バー飲みならではの美しい流れ。様々な意味で満足度が高く、またお店に寄りたいと思った。

そして昨日改めてお邪魔して自己紹介とご挨拶をし、裏を返すことができた。井手尾さんという方がオーナーバーテンダー。30代半ばぐらいだろうか。前回来た時にいただいたコニャックが気に入ってポチりました、という私のツイートをお店の常連さんが見ていたらしく、やや身バレ。
再訪一発目にお薦めいただいたのがスペイバーンのセミオールド、オフィシャル10年。そこをお薦めいただくかー、と思ってまたちょっと感心してしまう。

いいんだよこういうので。毎日雄弁過ぎるのばかり相手にしていると疲れが貯まってきてしまうから。
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私はハーフショット4杯で失礼したのだが、その間にも隣に座っていた若いゲスト3人連れのボトルについての質問に丁寧に答えられていた。

飲みたいボトルを見つけられて有難かったこと、セミオールドのオフィシャルなど気軽に試せて楽しく居心地も良かったこと、副都心線だと家から来やすかったことをお伝えしお礼を言う。

久しぶりにまた改めてお邪魔したいと思うお店を見つけられて幸せだった。


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今回はバーで飲むのが好きな私がいつも思っていることを改めて考え直すいい機会だった。

バーでは仕事のことを極力忘れて飲みたいと思っているので、いつもあまりしゃべらず空気の抜けた感じでぼーっとしている。けれど職業病なのかどこに行っても頭の片隅では仕事の感覚が抜けきらず、目についたことや気が付いたことについて様々考えてしまう。

この日はいろんなバーで飲みながら気になっていたことをあまり気にせず飲めたこともあっていつも以上に飲んでいて楽しかった。


初めて入ったバーに改めてまた来よう、と客が思うプロセスと心理について書かれているのはあまり見たことがない。またバーテンダーの向かい側にいる客の一人として、そしてカウンターの隣にいる別の客として、一人静かに飲んで何も言わずに帰る客が心の中で何を思っているか、というのも。

見えている景色がこちらとそちらでどのように違うのか違わないのか、というのをご参考までにお伝えできればと思い少し書いてみる。

念のためですがどこか特定のお店やそのバーテンダー、あるいは特定の他の飲み手に対してどうこう言いたい、ということでは全くありません。また私個人のかなり偏った感想であることをお含みおきください。

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そもそも来店するきっかけがないことにはリピーターにはなりようがない。今回きっかけとなった理由は以下の2つ。

#1 飲みたいと思ったボトルが試すだけの価値があり、どこに行けば飲めるのかインターネット/SNS検索ではっきり分かった

「このボトル興味あるので飲んでみたい」と思い、検索してバーでの開栓情報が見つかり、信頼できそうなテイスティングコメントも書かれてあったので「このボトルはやはりわざわざ試す価値がある」「そのボトルはこのバーに行かないと飲めない」と分かったので、初めてのバーへの訪問というそれなりに高いハードルを越える強い動機付けになった。

Twitterでボトルの情報を見つけられ、お店のブログがあることが分かりそこでさらに詳しいテイスティングコメントが書かれていて参考になった。

blog.goo.ne.jp

これだけ情報があればお店に行こうという動機も強まる。文体や写真からどんなお店なのか雰囲気も察することができる(し、実際に伺ったらイメージ通りだった)。

インターネットの世界では検索できないもの、あるいは検索ヒット数が多すぎて埋没してしまうものは存在しないのと同義。工夫がないと、情報を出しているつもりでもなにもしていないのとあまり変わらなくなってしまう。

「このボトル開けてみました」という写真を投稿するだけだと、すでにお店をフォローしている既存顧客はそれ見て「今度行かなきゃ」となるけれど、キーワード検索でヒットしないのでフォロワー以外はその店行くとそのボトルが開いているという事実を知ることはほぼ不可能。

また輸入元からのボトル情報とオフィシャルテイスティングコメントをコピペしてウェブ上に情報をあげる、あるいはそれに「いいですねー」的なコメントを付け加えるだけではあまり意味がない(もちろん何もしないよりはいいが)。なぜか。理由は3つ。

  1. 同じことをしている酒販店やバーはたくさんあるので埋没する
  2. リピーターになりえるような客に「その店に行くとなにか新たな発見が得られるかも」と直感させて来店を動機付ける「なにか」が感じ取れない
  3. 自分の店で出しているボトルで客に薦めるのに自分では試していないのでは?と熱心かつ誠実な店ではない印象を与える

少なくともバーテンダーなら自分で入れたボトルに対してそれなりにコメントもあるだろう。それが何もないなら、何かが間違っている。

ボトルのスペック詳細(特にビンテージ、ボトリング年、度数)が書かれているとキーワード検索がはかどってありがたい。Worthy ParkとかGlen GariochとかBunnahabhainではなく、カタカナでワーシーパークとかグレンギリーとかブナハーブンと書いてないと見つけるのは厳しい。

(ついでにいうとお店の正式名称が英語の時も、英語とカタカナの両方で表記してSNS登録していただくと検索ヒット率が高まるのでありがたい。)

自分の興味を惹いたボトルが試してみる価値があるという情報と、「そのボトルがここに行けば飲める」ということがセットになっていたので、初めてのお店だけど行ってみようか、という気にさせられた。

「知る人ぞ知る」的なボトルについてはウェブ上でも情報量が少ない。有名ブロガーが取り上げてみんなが知っているボトルももちろんいいが、あまり注目されていないけれどもめちゃくちゃ美味いボトルを知っていることの方が酒飲みの自尊心(あるいはSNS中毒者の承認欲求)を満足させるかもしれない。

SNS中毒者の承認欲求が刺激できれば、わざわざお店がコメント書いたりしなくても客が勝手にコメント書いて宣伝してくれるので手間が省ける。それがお店にとって諸刃の剣であることも重々承知している(以前詳細に書いたので繰り返さない)。

「これは!」と思った(が他の人があまり取り上げていない)ボトル、口開け直後はあまりよくなくてみんながそっぽを向いたけれど瓶熟してびっくりするほどよくなったボトル、などについての投稿は、書き手の想像以上にとても価値があるし、値段を下げて客寄せするなどよりもっと効果的のある集客方法かもしれない。


#2 TwitterFacebook、ブログ/HPのわかりやすいところに店の基本情報が書いてある

ボトルが開いていることが分かってそのお店に初めて行ってみようか、という気になったとしても、定休日や営業時間、アクセスがはっきり記載されていないと初めての店に行くのには相当躊躇してしまう。

わざわざ行ってみたのに定休日でした、とか、21時から営業であと1時間待たされる、とかは流石にイヤじゃないですか。かと言って初めての店にわざわざ電話してから行くか、というとワンオペで忙しいところに一見の客が電話したら迷惑かも、とか考えてしまい気が引ける。だから定休日や営業時間が明記してあると初めての店に行ってみようと思う心の中のハードルが大きく下がる。
 
オーナーバーテンダーが一人でやっているお店が「不定休」となるのは仕方のないことというのはよくわかるので、「不定休、ただしお休みの際はTwitter(もしくはFacebook、HPなど)で告知します」とでも書いて実際に告知していただいていると助かります。

アクセスに関しては、先ほどの例だとJR池袋駅からは少し歩いたので雨の降る日だったら行かなかったかもしれない。でも副都心線池袋駅の出口から目の前、というのを知っていれば駅から徒歩3分のバーに傘差していくよりも若干時間かかったとしても行きやすい。東京メトロ池袋駅C3出口出て道渡ったところ、とか書いてあると助かります。

また別の代々木公園にあるバーの話を友達にすると「代々木公園ってなんか行きにくくない?」と言われることがしばしばある。だが実は渋谷からも新宿からも原宿からも10分以内に着く。渋谷駅西口からだと1時間に20本近く走っているバスに乗ればすぐ。新宿からも小田急線の各停で5分、そこから徒歩2分。下手にターミナル駅周辺でうろうろ店を探し歩くよりもよっぽど近い。そんな情報が書かれていれば、店に行こうか悩む人の背中を押すことができると思う。

日々入荷するお酒のボトルの情報をアップデートするのと違って、基本情報は一度丁寧に書けばいいだけなので大した手間は掛からない。お休みの告知は飲食業の基本動作かもしれず、当然だがお知らせなく店を開けないと常連さんも失うリスクがありこれも大した追加の手間ではないだろう。その割にはどちらも費用対効果がお店が想像する以上に高いと思う。

来店に対する心のハードルを下げられるかどうかというのは新規のお客さんを獲得するのに非常に重要だが、そのハードルが上がったか下がったかというのは目に見えない。店の中を一生懸命整えていい酒用意して待っていても、店のドアに掛かっているサインを「Closed」のままにしていたら誰も入ってこない。よほどの有名店でない限り、基本情報をおろそかにするのは目に見えないサインを「Closed」のままにしている行為と近いのではないかと思う。

 

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#1と#2を受けてバーとSNS/ウェブについて


上記#1と#2は常連さんだけで十分でもうこれ以上新しいお客さん増えなくていい、あるいはSNS見て来るような一見の客が増えて店の雰囲気が荒れるのは嫌だ、という店からすると気にする必要がないかもしれない。お一人でやっていらっしゃるお店だと、一見の手間のかかる客が増えると常連客が離れていくので逆効果になる可能性も強い、というのもよく分かっている。これについては過去にもいろいろと書いたので繰り返さない。

 

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だが「知る人ぞ知る」的なボトルに関する情報を一生懸命検索して初めての店にも関わらず開栓情報を見てわざわざやってくるような客はただの承認欲求の強いインスタグラマーではない。むしろ相当研究熱心な酒好きで、好きな酒には金使うことを惜しまない客で、店のコンセプトに共鳴すれば常連になる可能性が高い。#1は手間はかかるもののそれなりの費用対効果があるかもしれない。

#3 嗜好の異なる客同士への配慮がある

あるボトルを真面目に試してみようと思ってバーに行ったら、香水の匂いをぷんぷんさせる女性が隣に来てしまった、となるとその方がどんなにステキな方でも全然嬉しくない。
そんな時に1ショット6000円のブローラ飲んで「真剣にテイスティングしよう」と思うかというと答えはNo。気が散って集中できないし(いろんな意味で)、店の売上にも貢献できない。

「私は香水慣れているので繊細なウイスキーでも香りはとれますよ」と彼女が言ったとしても、隣にいるこちらはその匂いに慣れていないのでムリなのだ。

香水の匂いぐらいでテイスティングできなくてどうする、お前が我慢しろ、と思われる方も一部いるかもしれないが、大抵の方は同意いただけるかと思う。いかがだろうか。

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もし同意いただけたのなら、一つお願いがある。先ほどの文章の「香水」の部分を「ある言葉」に置き換えてみてもらいたい。 

「私は香水慣れているので繊細なウイスキーでも香りはとれますよ」と彼女が言ったとしても、隣にいるこちらはその匂いに慣れていないのでムリなのだ。

「私はタバコ吸い慣れているので繊細なウイスキーでも香りはとれますよ」と彼女が言ったとしても、隣にいるこちらはその匂いに慣れていないのでムリなのだ。


タバコの匂いぐらいでテイスティングできなくてどうする、お前がタバコの匂い我慢してウイスキー飲むべきだぞ、と思われるだろうか。

念のため先にはっきりしておくが、私は非喫煙者だが禁煙原理主義者でもなくバーでタバコを吸う人やその行為を非難するつもりは毛頭ない。タバコの吸えるバーにもちょくちょく顔を出している。換気のいいバーや煙の行方に気を遣いながらサクッとタバコ吸ってくれるようなお客さんが多いバーだとタバコもあまり気にならない。

前にも書いたが、他者に対する気づかいやリスペクトがあるお客さんが集まる店は様々な意味で居心地がいいので喫煙可でもむしろ結果的に何度も通ってしまうことが多い。

だが他者の感じ方に対する想像力が低い人、他者をリスペクトしない人たちが集まるところは様々な意味で居心地よいとは感じられず、結果として足を運ばなくなる。

なぜなら他者に対してこちらが払うリスペクトと、こちらが他者から受けるリスペクトとのバランスが取れていない場合、居心地がとても悪くなるから。

目に見えない形でバランスが取れていない時が一番辛い。目に見えなくて分かってもらえないからその状況が改善されにくいので。先ほどの香水の例はその一つだ。もう一つアンバランスの例を挙げてみよう。

お店に入って、カウンターの一番端の女性一人の客の隣だけ席が空いていて、そこに通されて座ってしばらく酒飲んでいたら、その女性以外のカウンター客が全部帰ってしまい、期せずしてカウンターの端っこで赤の他人の女性とカップルのように肩並べて飲むシチュエーションになってしまった。でもただ静かに飲んでいるだけで特段の会話はない。たまにありますよね?

そういう時にその女性が何も言わずに自分のグラス持ってあなたから一番遠い席まで移動したらどう思われます?
普通の男性なら「さっき食べた焼肉のせいでニンニク臭いのかなオレ?それとも加齢臭?」とかいろいろ思ってやや傷つきますよね。

そういう経験は何度かあるので、席が空いたとたんにいきなり何も言わずにグラス持ってその人から一番離れた席まで移動する、ってのは相手に対してかなり失礼な行為だと認識している。
だから男性の私でも隣の人のタバコがちょっと煙くてつらいな、と思った時でも上手な言い訳が見つけられないと席の移動は簡単にはできないんですよ。

「タバコを吸わないものでちょっと移動させていただきますね」ってあえて言ってもいいけれど、「タバコ沢山吸われるとこちらはメイワクなんですけど」というように相手に曲解されて気分を害させてしまうことになるかもしれないし。それはこちらの意図ではない。だから結果的に席の移動をあきらめてタバコの煙を我慢することになる。でも隣の人は私がそんな気持ちでモヤっとしていることは多分分からない。

ここで何が言いたいかというと、非喫煙者も喫煙者に対してリスペクトを持ち、それぐらい喫煙者が喫煙する権利と彼らが気分を害さずにお酒を飲めること、店の雰囲気を悪くしないことに気を遣っているという事実を分かってもらいたい、ということ。このリスペクトは恐らく他者、特に喫煙者から見たら全く見えないと思う。

そして非喫煙者の多くが、自分の払っているリスペクトがはっきり目に見えるものではないがゆえに自分は十分なリスペクトを喫煙者から受けておらず、先ほど述べたアンバランスでアンフェアな扱いを受けている、と感じることがある。

そんな時に気を遣ってくれて
「「いつもの席」が空きましたのでもしよければこちらにどうぞ」
って煙くない席に移るよう言ってくれるようなスマートなお店も存在する。ほんとありがたい。
(当然「いつもの席」にいつも座っているわけではない)

(ちなみに女性と肩並べる先ほどのようなシチュエーションの時でもそう言って女性をエスコートしてほしい。オッサンの繊細なガラスのハートはすぐ壊れてしまいがちなので。)

アンバランスの例をさらにもう一つ。

葉巻の吸える店ではどうしても服に匂いがついてしまう。その匂いは2、3日取れなかったりする。非喫煙者は葉巻を売りにしているバーには最初から覚悟の上で行くので問題ないが、葉巻推しではないけれど実は葉巻が置いてあるバーとか、喫煙可だがいつもは葉巻を吸う人がいないのに誰かが葉巻を吸い出す、とかのシチュエーションが一番困る。

うちの娘は強い匂いが苦手なので葉巻の匂いをつけて帰ると翌日いつも文句を言われる。また葉巻の匂いがついた上着着て混んだ電車に乗ると冷たい視線で見られることが多い。いや私のせいではないんですが、と大きな声で言い訳するわけにもいかない。

先日の例でも、裏を返しに行った際にカウンターで2つ離れた席で楽しそうにウイスキーをいろいろ試していた若者3人連れを見てほほえましく思いながら飲んでいたけれど、そのうちの1人が「このグレンフィディックのオールドに葉巻合わせたら最高だね」と言って注文しそうになったのでお気に入りのウール地のダウンジャケット着てきた私はムスメに嫌われたくない一心で慌ててチェックをもらいました。

扉付きのクロークもしくはコートに被せるビニールのカバー(けむい焼き肉屋によくおいてあるやつ)があると助かります。

非喫煙者はタバコの匂いに敏感すぎない?」と思っているスモーカーの方がいるのは知っている(もちろんそれはあくまでも一部のみでマナーのいい喫煙者がいることも知っている)。

でもちょっと考えてみてほしい。お皿をフォークでひっかく音や黒板を爪でひっかく音を聞いて全然気にならない人と背筋が凍るぐらい気持ち悪がる人っていますよね。人によって特定の刺激に対しての生理的な反応はそれぐらい違いがある。(私は後者なので今こう書いただけでちょっと背中の筋肉が硬くなった)
その音が全く気にならない人がお皿や黒板をひっかいて、「なんでこんなの気にするの?」と言うのっていうのと先ほどの「敏感過ぎない?」っていうのとは本質的に変わらない。

そもそもタバコの匂いに敏感で、タバコの匂いが苦手な人が非喫煙者なのだ(非喫煙者の全員がそうだとは言っていない)。どっちがいいとか悪いとか、健康にいいとか悪いとかの価値判断の話ではなく、お互いに対するリスペクトの問題。

うちは喫煙可にしているけどタバコ吸わない常連もしょっちゅう店に来ているから全然オッケー!と思われる方もいるかもしれないが、非喫煙者は隣でタバコや葉巻を気遣いなく吸われると値の張る酒をまず頼まない、もしくは飲むペースが極端に落ちる。
あるいはこれ以上は厳しいと思うと何も言わずに勘定貰って帰る。これもアンバランスな見えないリスペクトの一例(「タバコ吸っている人は楽しいかもしれないがこれだと自分は楽しめない、俺はもっとお酒を楽しみたかったけどスモーカーの気分を害したりバーの雰囲気を壊さないため「ちょっと煙がしんどいです」などとは言わず静かに帰る」)で、見えない形で売上げに響いてますよ奥様。

だが絶対禁煙にしてくれ、とか高いお金かけてダイソンの空気清浄機入れてくれ、などというつもりは全くない。私も仲良くしていただいているバーテンダーやバー仲間にスモーカーはいるので、スモーカーとノンスモーカーが仲良く酒が飲める場所がある方がありがたい。

換気がいいと、今ずっと書いてきた問題が一気に解決する。非喫煙者も長居できるので売上にも貢献することができる。換気扇を「強」にして換気扇のフィルター清掃を頻繁にし、たまに外気と入れ替えていただければ大体OK。

バーテンダーもゲストもバーにいるすべての人ができるだけ居心地よくなるようなさりげない気遣いがそこここにあれば、居心地よさを感じて人が自然に集まってくるお店になると思う。

 

 

#4 ショットの価格が明示されていて若い人でも安心して飲める

おかげさまで今はあまり懐具合を気にせず飲めるようになったけれど、若くてお金ない頃だったら自分の頼んだウイスキーの値段わからなかったらドキドキしてた。

価格が表示されてないガソリンスタンドと表示されているガソリンスタンドあったら、わざわざ積極的に表示されていない方選んで給油しますか?普通の人は「書いていない理由は高いからに違いない」って思いますよね?
それと同様で、値段書いてあるのとないのでは頼みやすさが違う。値段が書いていないと一定の予算の中で値段と自分の好みをすり合わせながら効用最大化を考えて何をオーダーするか決める、ということができない。日本人的にはオーダーのたびに値段確認するというのも現実的ではない。このお店だとだいたいこれだけ頼めばこのぐらいだよね、という相場観ができていないとリラックスして飲めないから楽しめない。

今でも若干頼みにくいのは見たことのないオールドボトル。相場が分からないから高いか安いか全く分からない。親切な、というか普通の店なら、高いものをそうと知らずに注文すると「それはちょっといいやつですね」と言ってくれたり具体的なショットの値段を教えてくれるが、そうでない店があるのも事実。最近はこちらがわかってて頼んでいると思われてしまう部分もあるけれど。そして結果はチェックをもらう時までわからない。また初心者だと「それはいいやつですね」の裏の意味が取れない可能性がある。

最近見た都心のオールドボトルを売り物にしているバーへのGoogle口コミの例。多分クオリティ対比での価格としては悪くなかったのではないかと思うけれど、猫に小判かつ絶対値が高いとこういうことを言われてしまうので誰も幸せにならない。

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良心的な価格の店でも値段書いていないとチェック見た時に「この体験に対してその値段なんだったらあと2杯は飲みたかった」みたいなことは起こりえて店も客もLose-Loseになってしまう。

今回訪れた店はボトルの前面に符丁で価格が明示されていた。オールドボトルが多いので私にとってもありがたい。グレンファークラス15年の20年前ぐらいのボトルで1ショット1800円だったからそれほど心配することはないけれど。だがやっぱり値段が書いてある方が頼みやすいな、と改めて思った。

価格を明記すべきか、どう明記するかは議論はあるとは思うが今どきの若い人たちにとって値段が示されていないというのは恐怖以外の何物でもないのでは、と想像する。ボトルに値札をぶら下げたりメニューに値段を書くのが無粋だ、というのであればお勧めのボトルの説明をするときに聞かれなくても必ず値段を言う、とか価格帯で色分けした小さなシールを貼る、とかお店のHPなどウェブ上に価格を出しておいて、二次元バーコード的なものをカウンターにさりげなく貼っておいて携帯から見てもらう、とか工夫があるとお客も安心して財布を開きやすくなるのではなかろうか。

#5 今まで知らなかった素晴らしいものが世の中にはまだまだたくさんあることを改めて教えてくれる

先日の例でいうと、一杯目は重いワーシーパークでない方が、と言われたので私なりにカーデュを選び「これは80年代のボトルですかね?」と聞いた時点でそれなりにウイスキー飲んでいる客だな、とは分かってもらえたはず。

そして「こういうオールドのオフィシャルで飲み疲れない甘くてモルティな感じのボトルは大好きです」「ラムはまだまだ勉強中で飲みに来ました」と自分のことについてお伝えしたところ、ラムの後にいつもはあまり飲まないコニャックをお薦めいただいた。これも私のハートを撃ち抜く美味さ。飲みごたえのある珍しいカスクストレングスの長熟、ケイデンのボトリング。お伝えした情報から好みに合うと判断してお薦めいただいたのだろう。

最後に薦めていただいたグレンキンチーのオフィシャル10年、(私の推察で)90年代ボトリング、これもカーデュ同様に私の大好きなタイプ。そもそもグレンキンチーのオフィシャル飲む機会もそんなにない。

出してきてくれるボトルを見て、「ああこのバーテンダーとはコミュニケーションが成立しているな」と確信できた。

単に自分の気に入ったものを人に薦めるのと、相手の好みを踏まえたうえでその延長線上にあって相手の視野を広げることのできる材料となるものをお薦めするというのは全く次元の違うスキルだ。ゲストの好みを聞き出すことができるだけのコミュニケーション能力があり、聞き出したそれにぶつけてみせることができるだけの自分の中の引き出しと店のバックバーにボトルのストックがあり、それを客に気に入ってオーダーしてもらえるようにコンパクトにプレゼンできる能力がないと後者にはなれない。

あるボトルをバーテンダーに薦められ、飲んでみたら好みと違っていた、ということももちろんある。そんな時でもバーテンダーとコミュニケーションが成立していて彼の知識や力量に対するリスペクトができていれば「これが分からない自分がまだまだなんだな」と納得できる。むしろ今の私はそういう経験をしたいぐらいの気持ちでいる。

だがそこまでの関係が築けていないのにお薦めされたボトルが自分の好みから大きく外れたり、飲む前に聞いたプレゼンと飲んでみた時の印象が大きくずれたりするという経験を何度かすると客としては結構つらい。店から足が遠のいてしまったり、しばらく来なくていいか、と思ってしまう。

初めて訪問したのにお互いにコミュニケーションが成立して、バーでの体験が本当に価値あるものになると客としても嬉しい。これまでの自分の体験の中から自分が好きだったものを再びオーダーするという過去の美しさを追体験する行為だけでなく、世の中には自分が知らない素晴らしいものが沢山あって、将来また何か別の素晴らしいものに出会えるチャンスがまだまだ残っている、という物凄くポジティブなメッセージをバーテンダーから受け取ることができる客は幸せだ。でもそのメッセージこそが私たちが明日も明後日も生きていく意味なのだろう。

一日の終わりにそう思って家路につけるのは幸せなことだ。だから私はバーに行く。