東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

オチのない大阪での話:イチローズモルト羽生15年など

年末の夕方梅田で仕事が終わり、折角なので飲んで帰ることに。阪急三番街から場外馬券売り場を横目に饐えた匂いのするガード下の半地下の薄暗い通路を歩き、朝日放送の駐車場出口にいる出待ちの人たちとプラザホテルを眺めながら浦江公園を越えて通っていた塾から家に帰ったのはもう35年以上前のこと。大阪市内にはわずか一年半しかいなかったが強烈な記憶として残っている。

綺麗になった梅田の中でも全然変わらないのが新梅田食道街。食堂街、ではなく食道街。阪急とJRの駅の間の一等地に雑多な飲食店が軒を連ねる謎のゾーン。有楽町交通会館や新橋の駅前ビル、三軒茶屋の三角地帯や吉祥寺のハモニカ横丁のようにてっきり闇市の名残かと思っていたらそうではなく、ちゃんと整備して戦後作られたものらしい。

その一角にあるお好み焼き「きじ」本店、珍しく空いていたので初めて入ってみた。ガード下に店を作るとこんな感じになるのか、と改めて思う。カウンターに座りモダン焼きを注文。卵液がとてもふわふわしていて素敵な食感。ソースが鉄板の上で焦げてカラメル状になり香ばしい。そばはもっちり。丁寧に焼いてもらうので時間がかかるがそれだけのことがある。東京まで店を出すのも納得。
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何軒もはしごして色々飲み食いするのが大阪の食い倒れ。関西風のおでんが食べたくなり兎我野町方面へ。この猥雑な感じが大阪らしくていい。

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結局行きたかったおでん屋は予約で満席、気を取り直して阪急東通り商店街へ。以前も訪れたAle House加美屋さんへ。ここはさりげなく置いてあるイチローモルトが飲める穴場。

The Peatedの2016年があったのでまずそちらをいただく。香りは少しニューポッティ、グラッシーさや桜の木のチップを使ったスモーク、口に含むとチェリーの缶詰、カカオ、ブラックベリー、コーヒーキャンディ、フィニッシュは短くて切れ味が抜群。ビールのハーフパイント用のグラスになみなみと注いでくれる。
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The Peatedの横に羽生15年が。今時羽生を普通に飲めるというのにまず驚いた。そしてさすがにすごい値段になっているだろう、と思ったので聞いてみたら「めちゃ高いですよ」とのこと。じゃあそこまでして飲まないでも、と思ったが、ここで飲まないともう二度と羽生を飲む機会がないかもしれないと思い直して注文。

ハーフショットでもらったが、思った値段の半分ぐらいだった。そもそもこの店に来る人でイチローモルトを知っている人も高いウイスキー飲む人も多くないので「あれなんですか?」と聞く人はいても実際に注文する人はそれほどおらず、注文するのはバーテンダーの方が多いそうだ。
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甘くライチのような、そして干し草やわら半紙を思わせるような香り。熟したマスカット、少し焦げたカラメルが乗ったプリン、わずかなオレンジのような柑橘。余韻は震えて細くきれいに消えていく。
ボトルを手に取ってラベルを眺め、客観的な事実しか書かれていないのにもかかわらず書き手の気持ちが伝わってきてじわりと心が動く。f:id:KodomoGinko:20181218124334j:plain

このシングルモルトウイスキー利根川に面した羽生という街にある羽生蒸溜所で作られました。麦畑や田んぼに囲まれた羽生蒸溜所ではスコットランドと同じ手法でモルトウイスキーを作っていました。しかし2000年をもって蒸留を休止してしまいました。ポットスティルやその他の設備は2004年に完全に取り壊されました。所有者が変わってしまったせいです。幸運なことに創業者の孫によって樽詰めされたウイスキーと器具は廃棄を免れました。彼は蒸溜所を再建し、2008年に生産を開始しました。その蒸溜所は秩父と呼ばれています。


最終の飛行機に乗るぎりぎりまでどこかでまた酒を飲もうかと思ったが、今日はよい出会いがあったので早めに帰京することに。
高速バスの時間を確かめ、まだ20分ぐらい時間があったので再び新梅田食道街に戻り串揚げを食べる。10分程度の時間と1000円ぐらいあればかなり満足。せっかちな大阪の人にあった業態だな、と改めて感心。

さくっと飲み終わって、小走りにバス乗り場まで行くと空港からのバス到着が遅れていて二、三十分ほど遅延しますとのこと。それだと予定の飛行機に間に合わないのでタクシーで伊丹へ。阪神高速を走る車の外に大阪の夜景が流れていく。もっとゆっくり串揚げ食べられたな、さよなら俺の2018年の大阪。

 

 

 

 

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