東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

サービスに対する正当な対価について

近くの駅前にある書店が閉店になった。40年の歴史があったのだという。ベストセラーと雑誌と漫画しか置かないしょうもない店が多い中で、面白い人文書や歴史書などを置いていて、立ち寄るとこれまでそのテーマに興味を持ったことのない本が平積みにされているのを見てなぜかつい手が伸びる、というような不思議な気づきと出会いを生んでくれる店だった。大きな本屋でも全くセレンディピティ、偶然の出会いを感じさせない店もあるので、在庫の多寡にかかわらず何か目に見えない導きを生み出すことができる空間だったと思う。

NHKも取り上げた話なのでご存知の方も多いと思うが、ウェブを見ると「言うのも恥ずかしいぐらいの給料」で経営していた、と書いてあったのを読んで改めて小さな衝撃を受けた。

本屋のおじさんも「店を畳んでは地元の皆さんに申し訳ない、本屋をやっているのはお金儲けだけ考えてのことではない」と思って歯を食いしばって頑張っていた部分もあったと思う。けれど、そのようなほとんど目に触れることのない日常的な地元への貢献は、閉店という非連続的な突然の出来事によってしか人の意識に上ることはない。残念なことだが、現実はそうなっている。私だってあの本屋の丸眼鏡のご主人が「正直人に言うのも恥ずかしい給料しか取っていなかった」ことなんて全く思いも及ばなかった。それを聞くと自分勝手に「いい本屋だったのに」とか「街から本屋がなくなるのは残念だ」なんてさらに言えなくなった。

このお店があることに感謝しています、という気持ちをいくら伝えたところで、本屋のおじさんが老後を心配しなくていいぐらい儲かったりはしない。私がAmazonで本を買うことを止めて街の本屋に多くの本を発注するようにすれば店が潰れずに残ったのかというとそれも現実的ではないだろう。だから仕方のないことだったのかもしれない。街のレコード屋も八百屋も魚屋もどんどんなくなっているのだし、それも時代の流れなのだ、と片づけてしまうのは簡単だ。だけどなぜだかわからないが簡単に片づけてしまっていいのだろうか、とずっと引っかかるので、いろいろ考える。

本は定価販売されているので、様々工夫している店の方がその他大勢の店よりも経済的に報われる仕組みはあまりない。売り上げ全体が変わるかもしれないが、例えば同じものを三越で買うと3000円払うけどドンキでなら1500円しか払わない、というようなドラスティックな違いは生まれない。良質なサービスはタダでも受けられる、というままだとサービス業の人の生産性は絶対上がらないだろう。だとすると日本にチップという習慣ができれば、あるいは心付けという一度廃れた習慣を復活させられれば、幸福書房のような事態、すなわち他の店と差異化を図る努力があまり報われない状況、を避ける手段なのかもしれないと薄ぼんやりと思う。なぜ薄ぼんやりなのかというと、そのような習慣をどうやって浸透あるいは復活させればいいか思いつかないからだ。

ちなみにアメリカに行くとスターバックスだろうが本屋だろうがレジの横にチップを入れる箱を置いているのは珍しくない。またバーテンダーやヘアサロンのスタッフなどは給料は安い代わりにチップが手取りの半分以上を占めているようなケースも少なくない。いいサービスをしている人、付加価値を付ける人が経済的にも報われる、というシステムになっている。

学校の先生にせよ、介護施設のスタッフにせよ、看護師にせよ、あるいはバーテンダーもそうかもしれないが、幸福書房の店主のように「誰かのために私が頑張らないと(ただし見返りはなく、感謝の声すらかけてもらえないことも多い)」という個々の責任感を搾取されている状況がいろんなところで起きている気がする。

そしてそれは「日本人なら当たり前」的な直接的でない心理的強制が生んでいる気がする。それは以前も触れたPeer Pressureの違った形かもしれない。オリンピックが近づくにつれ、「日本人なんだからおもてなしして当たり前でしょ、見返り求めるなんて」みたいなサービス業に従事する人たちの責任感を搾取する謎のプレッシャーが強まらないといいな、と思う。

islaywhiskey.hatenablog.com

最近渋谷のバーでこんなの飲んだ。バー11さん、という行ったことない向けのIchiro's Malt。池袋、だからフクロウなのか。2011年12月蒸留の6年ものだから、去年の祭ボトルと結構近いものだと思われる。

f:id:KodomoGinko:20180304165405j:image

 

 

このボウモア9年シェリカスクマチュアード、強くお勧めします。わざわざ個人輸入までして手に入れたのですが、今また結構な本数が日本に入ってきているようです。 


 

 

islaywhiskey.hatenablog.com