東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

それぞれの人のそれぞれの事情

平日昼間に母から携帯にショートメールが来た。仕事終わりにようやくチェックしたら悲しい知らせだった。実家で飼っていたフレンチブルドッグが死んでしまった。

「コパンが昨夜亡くなりました。ずっとテレビを見ていて、気が付いたのは寝るときでした。眠ったままで行ってしまいました。ワンとも言わないで。17日に荼毘に付します」 


老いた親からの短いメッセージに込められた気持ちを思うと二重に悲しくなった。

さぞかし気落ちしているだろうと思い、両親の顔を見に週末バイクで伊豆へ。事前に連絡するのもと思い、あえて熱海から電話してみると父はいるが母は入れ違いに東京に来ているとのこと。虫の知らせとかそういうものはないのだな、と心の中で苦笑いしながらとりあえず無事に実家に着く。土曜日の昼下がり、父は居間で一人本を読んでいた。コパンがいなくなった家が余計にがらんと感じられた。

コパンは骨になって立派な白い布がかぶせられた桐の箱の中にいた。わが実家に来ておよそ15年。大往生だった、と思う。元気な頃はフレンチブルドッグらしい陽気な性格でみんなに愛されていた。ここ数年は目もあまり見えず、あまりしっかり歩けなくなっていたので生きていたのも苦しかったはず。この世の苦しみから解放されて天国に行かれたのであれば長生きしてほしいと思うのは我儘だったのだろう。

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親の顔を見るべくやってきたにもかかわらず、男二人で家にいるのも気づまり、というたいていの男性ならわかるはずの状況になり、実家を出て伊豆熱川まで15㎞ほどのランニングに出掛ける。山道を走った疲れを温泉とサウナで癒して伊豆急に乗り、ちょうど東京から戻ってきた母と合流して実家に戻った。伊豆高原の駅の早咲きの桜が見事に咲いていた。


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コパンのことが気になって早く東京から帰ってこないと、と今でも思うわ、と母が言う。それはそうだろう。母が東京で買ってきた総菜を3人で食べて、夜8時過ぎにバイクで東京に戻る。

夜には気温がぐんと下がり、小田原厚木道路走っていたら体の震えが止まらなくなった。海老名サービスエリアに入り、ジャケット着こもう、と思って背負っていたリュックを見たら口がぱっくり開いている。
まさか、と思って見てみると着たかったジャケットはそこにはなかった。背負っていたリュックの口が風圧で開いてしまい、中に入れていたNorth Faceのお気に入りのトレッキング用ライトシェルジャケットが吹き飛ばされてしまったのだ。とっても気に入っていたのに。
残念過ぎ、そして寒すぎて心が折れる。仕方がなく夜も10時になろうというのにスタバでショートドリップ飲んだ。カフェインと暖かさが身体に染み入ってくるのを感じながら、コパンのことを少し思った。

 

その後、今度バイク乗るときはいろいろ気を付けないと、と思っていたのにまたやらかした。首都高を走っていてガレージのシャッターのリモコンを落っことした。デニムのお尻のポケットにマッチ箱ほどの大きさのものを入れていたのだが、コーナーで身体を動かしているうちにポケットの中をせりあがってきてしまったようだ。結構な勢いで走っている時にブーツのかかとあたりに何か当たった気がして「まさかリモコン?」と一瞬思ったがそんなわけはなかろう、と考え直し、そのまま走り続けた。仮に目の前で落っことしたとしてもまさかバイク停めて首都高の真ん中で拾うわけにもいかない。気もそぞろに走り続け、パーキングエリアに止まって確認したらやはり、だった。

恐らく後続の車に踏まれてバラバラになっているだろうな、と想像し、いつも楽しい首都高ぐるぐるひとりツーリングなのだけど気持ちが折れて帰宅。いつもならリモコン使ってシャッター開けるのにヘルメットかぶったままで家の鍵を開け、ガレージの中からシャッター開けてバイク片付ける、という作業の不便さにさらに凹んだ。

翌日シャッター会社に電話して値段を聞いたら1個1万5千円を超えるとのこと。5千円ぐらいかと思っていたから予想以上。首都高にバイク停めて落っことしたリモコン拾って轢かれたら1万5千円ではきかないのでまあしょうがないか、と訳の分からない納得の仕方をした。不注意は高くつく。

車で高速道路を走っているとなんでこんなものが道に落ちているんだろう、と思う時があるが、それぞれの落下物にはそれぞれの事情があることがよく分かった。

不幸はいくつかあったが、最近は小さな幸せにもいくつか恵まれた。

後輩と目黒の焼きとん仲垣で散々食べてあまりの旨さに結構びっくりした後、二軒目どこ行くか考えた挙句、マッシュタンでもGosseでもなくFractaleというラムが飲めるバーに行くことに。当たり前だがウイスキーだけが蒸留酒ではなく、ウイスキーだけが美味い酒だというわけではないのだ。

この店はバックバーというものがなく、おすすめのボトルを数本持ってきてもらいそれぞれ説明してもらって香りをかぎ、気に入ったものを注文するというスタイル。なのでボトルの写真を撮り損なうと何を飲んだのか忘れてしまいがちで、詳しくないラムの詳細はアル中ハイマーの中年の酔っ払いにはなおのこと覚えられない。一杯目にいただいたラムはブラインドテイスティングすると10人中8人はブランデーと言いそうなくらいブドウの香りとコクで驚き、二杯目は…。なんだっけ。

それからウイスキーで何か面白いものありますか、と聞いたら結構びっくりするものが出てきた。イチローズのThe Game、ミズナラカスクミズナラ特有のオリエンタルな香りはあまり感じられなかったがキレのある綺麗な麦を感じる軽快なドラム。少しソーピーだった記憶もあるが気のせいかも。羽生の酒ももう飲めなくなってきているので想像していなかったところで飲めてうれしかった。もしかしたら酒好きオーラが伝わったのかもしれない。

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小さな幸せその2。スーパームーンの翌日に海岸通りをランニングしていて見られた東京湾に映る月。奥はお台場。品川埠頭の近くから。海外にも関西にも住んでいたことはあるのだけれど、東京が大好きでたまらない。こういう景色が見られることも含めて。

 

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小さな幸せその3、というか自己満足。30年近く前に買ったピクチャーレコードを引っ張り出してきて、ヨドバシExtremeでレコード専用のフレームを買って自分の部屋に飾ってみた。レコードそのものも名盤だと思うし、ジャケットも歴史を感じていいと思っていたので飾れてよかった。Roadrunnerから出ていたレコード。

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小さな幸せをいろいろ探して考えてみたけれど、やはりコパンがいなくなってしまってとても寂しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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