東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

カバラン蒸留所見学

台北の宿から一番近い駅、科技大樓のすぐ隣にあるバスの待合所でお金払って、高速バスでカバラン蒸留所のある宜蘭(イーラン)に向かう。クッションが肉厚で大ぶりな座席に収まると、自分がまるで肉まんの皮に包まれた餡になった気がする。いい感じの揺れが気持ちよくてうとうとしているうちに着いてしまう、1時間弱の旅。

宜蘭の雰囲気は日本の田舎の県庁所在地の次の次に大きな街、みたいな感じ。そんな街のJR駅の裏にありそうなぶっきらぼうなバスターミナルで下車、そこからタクシーで20分ほどでカバラン蒸留所に到着。タクシーの中でまたうとうとし、ふと目を開けたら自分が群馬の田舎にでもいるのかと一瞬混乱した。なんだか懐かしい景色が広がる。

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カバラン蒸留所は電子部品を作っています、と言われてもあまり違和感ないぐらい近代的でハイテク、「工場感」が漂う。日曜日に行ったせいでガランとしている。タクシーで来ているのが我々ぐらいで、バスのツアー客、その他の人たちは自家用車。帰りはちゃんとタクシー拾えるだろうか、という不安は後程的中してしまう。

まずはこちらの製造棟を見学。

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見学コースも効率的、ガイドは特におらず工場の真ん中にある通路からガラス越しに糖化や蒸留工程を眺め、説明文を自分で読む、という淡々としたもの。

ちなみに日本語の説明はない。
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グレンリベットなどメジャーな蒸留所で使われているForsythsの蒸留器が使われている。

樽の貯蔵庫まで来るとようやくウイスキーの香りがする。樽を立てたまま熟成するというのは知らなかった。

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あっさりとした工場見学が20分程度で終わり、無料の試飲。iPhoneの性能のせいで明るく写っているが実際はもっと暗く、ちょっと安っぽい電飾が光る。
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カバランのスタンダード、久々に飲んだがこれはこれで旨い。

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普通にお金払って最近出たソリストの青いやつとか飲みたかったのでショップの人に聞いたら、「1時まで待てばいろんな種類の有料試飲もできる」とのことだが、1時間半以上も先なのであきらめる。せっかくの機会だから有料で色々試せたらよかったのに、残念。

蒸溜所限定のボトルも特になく、それであれば免税店で買えばいいか、と思い結局グラスを2個だけ購入。
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そういえばウイスキーブレンド体験ができると誰かが言っていたけれど、どうすればよかったのだろう。事前の申し込みが必要だったのかもしれない。いつも出たとこ勝負だと、そういうところがうまくいかない。

はっきり言ってしまおう。日曜日に来たせいで誰も働いていなかったせいもあるのかもしれないし、ブレンド体験を事前に申込んでおけば違った印象になったかもしれないけれど、申し訳ないがここの蒸留所の見学はつまらなかった。どういう人たちがどういうこだわりのもとにウイスキー造りをしているのか、といった哲学的なものを感じ取るのがかなり難しいのだ(一応英語の説明は一通り読んで言っているつもりだ)。アイラ島やニッカで感じたような職人魂が伝わってこない。歴史が浅いので仕方がないかもしれないが。私はカバランのウイスキーそのものについては評価しているので、念のため。

買い物を終えてさあ宜蘭の街まで帰ろう、と思ってタクシーを探そうとするものの、街からクルマで20分ほど、さらに立派な蒸留所のゲートから2分ぐらいかかるビジターセンターに流しで来るタクシーはいない。駐車場に止まっているイエローキャブのおじさんに乗せてくれと言ってみるものの、首を横に振られる。誰かがタクシーで来て、待ってもらっているのだろう。困ったな、小雨も降ってくるし。

さっき声を掛けたおじさんが、タクシーの中を掃除しながら客の帰りを待っている。おじさんに、英語で「タクシー一台呼んでもらえませんか」とお願いしてみる。英語が全然通じず、おじさんの喋る台湾語もわからないけれど、おじさんは分かった、という顔をして携帯電話で電話してくれる。そしてタクシーの番号らしき数字を書いた紙を私にくれ、ちょっと待っていろ、と言っているのが何故だかわかる。シェイシェイ。おじさんは笑う。

台湾の人は、と一括りにしていいのかわからないけれど、少なくとも私が出会った台湾の人たちはみんな優しかった。旅行の下調べでウェブを見ていたら「台湾のタクシーでぼられないために」みたいなページをいくつも見たけれど、帰りのタクシーの運転手さんも親切だし、台北でも嫌な思いをすることは一度もなかった。

謎めいた宜蘭駅。面白い。
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日曜の昼下がりの駅前の公園でやっていた蚤の市を見て、少し歩いて寂れたデパートの前を通り、みんな生活に疲れた感じで働いている家族経営と思しきお店でぼんやりした味のラーメン的なものを食べる。
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不味くもないし、うまくもない不思議な食べ物。

街には人がいるけれど、日曜日のせいか寂しさが目立った。

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屋台のおじさんも暇で寝てしまっている。
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街なかの公園で見かけた注意書き。
「この辺りではよく野犬が出ます、エサをやったりせず注意してください」ってことか、と書いてあることを自分が100%理解できたのに自分で驚く。凄くのんびりしている街なので、獰猛な野犬がいたらとても場違いに感じるだろう。

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駅裏のバスターミナルに行く途中に大きな踏切があって、つい電車の写真を撮りたくなった。茅ケ崎に住んでいた小学生の頃、東海道線を走るブルートレインや踊り子号の写真を小さなカメラでよく撮ったことを思い出した。 

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宜蘭の街を歩いて既視感を覚えたのは、うっすらと記憶に残る昭和50年代の日本とどこか似ていたからかもしれない。


 

www.kavalanwhisky.com

 

 

 

 

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1971年蒸留のKnockandoと「マチネの終わりに」

先月の終わりにまた一つ歳を重ねた。誕生日おめでとう、と言われても正直めでたいのかよくわからない。あと数年で50になるけれど、「50歳のおじさん」のイメージと今の自分というのがどうもきれいに重ならなくて気持ちが悪い。

「流石70年代のアイラは違うね」などと普段偉そうに言っている割に、「あの年代生まれのおじさんはさすがだな」とか言われるかというとそんなことはない。樽や瓶の中で眠っているだけのウイスキーは称賛されるぐらい熟成するのに、起きて毎日活動しているおじさんが熟成されていないってどういうこと?という疑問がふつふつと湧いてくる。そして気持ち悪さは「これぐらいの年齢になればこのぐらい熟成されていないといけない」という水準がどこなのか、そして自分はそれを満たしているのかどうか分からないところからやってきている気がする。

つまるところ自分は自分が思っていた人生を思い通りに歩めているのか、という刃のように鋭い質問を節目の日に改めて目の前に強く突きつけられている、ということに気が付いた。毎日考えるが目をそらし続けてきた、非常に深くて重い根本的な問題。
f:id:KodomoGinko:20181110104501j:plainそんな苦い思いを自分の生まれ年に蒸留された酒を口に含んで洗い流す。80年代に瓶詰めされているため流石にコルクはもげてしまったが、ビンテージ入りのKnockandoは品の良いキャンディのように甘くて軽やかで力が抜けて明るく朗らかで、私と異なりいい歳の取り方をしていた。

その数日後、人に勧めていただいた平野啓一郎の「マチネの終わりに」を読んだ。彼は自分よりも数年若いがまあ同世代で、大学も一緒ということもあって親近感を持っていたが手に取るのは今回が初めて。彼の小説が素晴らしすぎるといったいこれまで自分は何をしてきたんだと思わされるかも、という恐怖感が無意識のうちにあったのかもしれない。

しかし読了し「もっと早く読むべきだった」と少し後悔。

そもそも自分の人生は自分の選択の結果なのか、あるいは運命なのか。

真実を言わないことの効用と正直であることの費用。
自分を偽らずに生きることでより困難な人生を自分が歩むことのコストと、それを自分ではなく自分が愛する人が払わなければならなくなったときに自分を曲げずに生きていかれるのかという問題。

人を陥れてでも、軽蔑されてでも自分の幸せをつかみに行くべきなのか、他人のことを慮る故に自分の幸せを逃すことが正しいことなのか。

生と死とが紙一重であること、そして生き残った/生き残らされたものの苦しみ、生を授かったわが子に対する絶対的な愛情。

自分の才能の枯渇や加齢による衰えの自覚と若い才能の台頭への恐怖感。

真の救済と偽りの救済、音楽による魂の救済。

これまで薄ぼんやりと考えてきたことが一つの小説の中にたくさん含まれていて、全ての問いに対する答えは必ずしも描かれていないのだけれど、繰り返し読めば答えがおのずと見つかるような気がする一冊だった。

小説には読むべき人生のタイミングというものがあるというのが持論だったのだが、まさに「マチネの終わりに」は私にとって今読むべき小説だった、と強く思う。いい本だから早く読んでおきたかった、という気持ちはもちろんあるものの、2年前に出た小説を新刊で買って読まずに今読み終わったのは何かに導かれてのことだったのかもしれない。

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(個人的にはできるものなら10年前の豊川悦司松雪泰子で撮ってもらいたかった)

 

 

 

 

 

 

福岡Bar Kitchen、サウナでととのって佐賀へ

バーテンダーに初めて自然にお酒を奢れるようになった時は「自分も大人になったなあ」という気がしたが、最近サウナの仮眠室に初めて泊まって「俺もおっさんになったなあ」と改めて実感。日本のサウナ界の聖地のひとつ、ずっと行きたかった福岡のウェルビーというサウナにて。

今でも若干そうだが神経質なところがあって、知らないおっさんがいびきかいている横で寝ることなんて昔は想像できなかった。もちろん耳栓とアイマスクはしたけれど。

早朝、個性的ないびきがいろんなところから聞こえてくる仮眠室を抜け出し、サウナの中で普段はほとんど見ないテレビを見る。俳優の奥田瑛二若手俳優二人と酒飲みながらトークする、という日曜の朝7時にふさわしいとは思えない番組をやっていた。

若手のうちの一人は苦労人で映画出身、もう一人はイケメン俳優でトレンディドラマ系。映画出身の二人はテレビと映画が同じ演技する場とはいえあたかも別の惑星のように違う、という話をイケメンにする。イケメン俳優はテレビドラマの撮影で監督から罵倒された経験などないのだろう。映画の世界ではそれは日常茶飯事のようだ。

苦労人の若手(とはいえ後で調べたら40代、井浦新という人だった)は、師匠と仰ぐ若松孝二監督とのエピソードとして、「お前のしょうもないプライドやこだわりなんか全部捨てて、来た役は選ばずに全部やるんだよ」と言われた、という話をしていた。奥田瑛二も「それは大切なことだ」と相槌を打つ。だが二人そろって「傷つくけどね…」と顔を見合わせて苦笑い。

それを見ながら、自分のつまらないこだわりや好き嫌い、それも食わず嫌いも多く、のせいで本来自分が出会うはずだったものを自分から遠ざけて自分の人生をよりつまらないものにしてしまっているかも、と思い至る。

バーに入って、酒というとてつもなく広くて深い大海に較べるとその一滴にも満たない自分の知っている酒の中から「好きなもの」を頼んでもいいが、その大海の中で自分を待ってくれているかもしれない、今の自分がまだ知らないものを新たに知る方がいいに決まっている。

そんなことを旅の途中にサウナで考えていたらのぼせてきて、ウェルビー名物水温8度の水風呂にざんぶりと浸かる。手先足先、体中の末端がびりびり痺れる。前の日の夜中まで摂取したアルコールが抜けていく。

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前の晩に訪れたのは天神のBar Kitchenさん。秋の月夜にドアが開け放たれていて気持ちのいい風が吹き込む。東京だと中々ない。

バックバーが圧巻。3000本ぐらいあるのでは。イチローモルトのカードシリーズの空き瓶が一番上の棚にずらっと並んでいて壮観。
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銀杏の一枚板のバーカウンターは15メートルぐらいあるかもしれない。オーナーバーテンダーの岡さんからいろんな話を伺いながらグラスを傾ける。
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Elgin、Benriach、Tobermory、Laghroaig、Kilchoman。なかなかいい流れだった。いろんなウイスキー飲みたがるのは県外の人か外国人が多いそうだ。

福岡人にとってのソフトバンクホークスとは、とか、ご自身のプライベートの話などを伺っているうちに明日どこに行くべきかという話になり、佐賀の金立公園でコスモス祭りをやっていて満開で綺麗なはずだ、と教えてもらう。

礼を言って辞去し、サウナでまた一歩おっさんへの階段を上った。さあ、今日はどうしよう。やはり人が勧めてくれるものを素直に受け取ろう。そう考えクルマで佐賀を目指す。

稲穂がたわわに実って黄金色に光っているのを見ると、黄金の国ジパングというのもあながち間違っていないなと思う。美しい日本の風景で誇らしい。

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金立公園はコスモスが満開だった。真っ青な空と緑濃い山と淡い色のコスモスのコントラストが素敵。蛍の頃も来てみたい。

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佐賀市は何もないと思われがちだし実際唐津の方が楽しかった過去の記憶があるが、今回改めてゆっくり歩いてみると相当楽しかった。

松濤鍋島公園が近所にあったり今右衛門窯の磁器が好きで家にあったりするのでそもそも佐賀のお殿様には勝手に親近感を持っていたのだが、初めて徴古館という鍋島家の宝物を展示してあるところを訪問して感銘を受ける。
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鹿鳴館時代の小紋柄の和服から作ったイブニングドレス明治天皇ご下賜の花瓶一対、とても上品な透かしの入った鶴と亀の縁起物が描かれた花瓶一対など、ずっと見ていてぜんぜん飽きない(リンクを一度クリックしてみることを強くお勧めします)。特に明治天皇ご下賜の花瓶は、明治維新のため前田家という最大のスポンサーを失ってすたれてしまった金沢銅器の象嵌技術が見られるとても貴重な品。銀が輝いていた頃もさぞかし立派だったに違いないが、黒錆をまとった今の姿も渋く味わい深い。自分がこういう細かい手仕事がされている古いものを見るのが好きなことに改めて気が付いた。

そのあと、徴古館の受付の方に勧めていただいた肥前通仙亭、というところまでふらふら歩き、煎茶と生菓子をいただいた。古い街では必ずと言っていいほど美味しいお茶と和菓子がいただける。ハズレを引くことはあまりないので探してみることをお勧めする。
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三煎目が終わったところで茶葉を取り出して濃い目の昆布出汁をかけてお茶っぱを食べてみてください、とのこと。下の写真は出汁を茶葉に掛けたところ。全然苦くなくむしろ爽やかで、お茶と昆布の二つの旨味成分が口の中で渾然一体となって広がる。こういうのも、勧めてもらわないと知りようがない初めての素敵な体験。
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佐賀の街はところどころで時計が昭和のまま止まってしまったような光景が見られる。 

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何か目に見えないものに導かれたかのようだった秋の一人旅はしみじみと楽しかった。地味なイメージのある佐賀は実は魅力的なところ。松雪泰子も牧瀬理穂も佐賀出身、ぜひ行ってみてください。

 

 

 

 

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フォトジェニック村上

大好きな村上で印象に残った場所をアトランダムに挙げていく。

益甚酒店。文化庁の文化遺産に登録されている昭和9年築の町屋。雪国なのにもかかわらずとても丁寧に手入れされていて今も現役。

新酒ができたことを告げる杉玉と一斗樽。地元の酒蔵、大洋盛。
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中を見せていただくと昔お酒を量り売りしていた時代の酒瓶が置いてある。自分の屋号が入っているのもある。
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村上 千年鮭 きっかわにて。益甚酒店の隣で建物も続いている。こちらの建物も文化遺産、隣より古く明治築。

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塩引鮭を干しているところ。鮭が育った川に戻ってくる習性を利用して稚魚を放流する世界初の養殖は村上で始まったそうだ。米が凶作の年には鮭が豊漁で、鮭は村上の人たちの命を支えたそうだ。

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暗がりで干している鮭の身が陽に照らされて透き通って橙色に光るのが美しい。
f:id:KodomoGinko:20181016075003j:image屏風まつりでお披露目されていた由緒ある品々。
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村上牛専門店 江戸庄にて。村上牛レアステーキ丼(上)。
薄くそぎ切った村上牛のローストビーフにタレが絡んで、ご飯と一緒に食べると口の中で牛の脂が甘みとともにとろける。肉好きとしてはもっと肉だけがっつり食べたい気持ちもあるものの、上品な脂が口の中で溶けていく感覚はこれぐらいのスライスでしか味わえないので、ステーキはまた今度の機会に。

家人を連れて翌週再訪した際、家人たちはあまりの美味さに絶句していた。
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再訪した千渡里にて。もう何も言わない。
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と思ったけど一言だけ言うと、この村上牛のコロッケも最高。村上牛が美味いのもあるけれどコロッケそのものが出色の出来。
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家族を連れて再訪した週末はちょうど「宵の竹灯篭まつり」が行われていた。
一万三千本の竹の灯篭に蝋燭が灯され、ひっそりとした新月の夜の路地を幻想的にゆらゆらと照らす。

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このように村上はとても素敵なところだ。機会があればぜひ訪れてもらいたい。

酒も魚も肉も美味い村上が好きだその3 割烹 千渡里

村上に来たのは実はこれで3度目。過去2回はトライアスロンの前日、東京から400㎞のドライブを経て瀬波温泉にチェックイン、海岸で試泳して選手登録と競技説明会に参加、そのあと温泉入って晩御飯食べて早目に就寝、日曜日のゴール後はホスピタリティとして振る舞われる無料のカレーその他の食べ物をいただいて、月曜からの仕事に備えて急いでクルマで帰京、という慌ただしい展開だった。

正直これだと瀬波温泉のお湯のクオリティと地元の人の温かい応援ぐらいしか村上の魅力がわからない、伝わらない。せっかく村上に来たのなら、お仕着せの旅館の料理よりも夜の街に出て地元の旨いものを地元の人の話を聞きながらたくさん食べてみたい。だけど温泉にもこだわりたい。そう思っていろいろ探してみて、温泉加水なしでかけ流し、素泊まりOK、という「木もれびの宿 ゆのか」を見つけ、夜は街に出掛けることにした。

お一人様歓迎の割烹か居酒屋で目星をつけ、千渡里という店にたどり着いた。トライアスロンの前日は酒を飲まないことにしているので宿から車を10分ほど走らせて店に着く。提灯からして風情があって、期待が高まる。

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カウンターに座りノンアルコールビールを頼み、新物のハラコ(イクラの醤油漬け)、塩引き鮭の酒浸しと焼き物、お刺身1人前を早速オーダー。

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酒浸しは塩漬けにして乾燥、発酵させた鮭を薄く切った上に酒を振りかけ、柔らかくほぐれたところを食べる。サラミみたいなイメージ。日本酒に合わないわけがない。だが今日は飲めない。ハラコも、酒なしで箸でちびちび食べているとフラストレーション溜まる。結局ご飯とお味噌汁のセット貰って、焼き鮭もイクラもがっつりご飯に乗っけてむしゃむしゃ食べる。これが本当に極上。お刺身盛り合わせに入っていたブリは何と11キロの大物で脂の乗りが半端なく、山葵をのせて軽く醤油をつけると醤油の表面に脂の輪がさっと広がる。幸せ過ぎ、そして酒が飲みたくなりすぎてヘンになりそうだ。

さらにカウンターにドンと鎮座していた天然ものの舞茸のホイル焼きをいただく。そもそも天然物ものの舞茸なんか見たこともなく、すごく身がしっかりしているので驚く。

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歯ごたえがしっかり残っていて、鍋物などですぐにクタっとなってしまう養殖ものとは大違い。それよりなにより土っぽいすこしゴボウを思わせる香りの高さに驚く。

そしてカウンターの奥にいた日本トライアスロン連合のオフィシャルカメラマンの方がハラコ飯を注文されたので、レースの前日ぐらいは私も流石にがっつり食べてもいいだろうと自分に言い訳をして、思わずもう一杯注文。全く後悔はない。

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結局凄い量の旨いものを満喫し、翌日のレースに臨んだ。お店の方たちも忙しいのに本当に良くしてくださって恐縮した。レースは台風のせいで半分に短縮されたけれど平凡なタイム、でもとても楽しい今年最後のトライアスロンとなった。

自分だけ旨いもの食って村上を満喫したことが少し後ろめたく、実は翌週家人たちに千渡里の料理を食べさせるためまた訪れたほど。村上のことが改めて好きになった。

 

www.chi-do-ri.jp

 

 

 

 

 

 

 

酒も魚も肉も美味い村上が好きだその2 〆張鶴蔵元 宮尾酒造

好きな日本酒、〆張鶴の蔵元も村上にある。有名な酒蔵なので大きいのかと思ったら意外と小ぢんまり、ちょっと驚く。

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直売をやっているようなので引き戸を開けて入ってみると、帳場にいた若いお兄さんが出てきてくれていろいろ教えてくれる。「東京だと手に入らないものを教えてください」と言って四合瓶2本を選んでもらう。

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一つは「越淡麗」という酒米を地元村上で育てて作った数量限定のもの。そして地元中心に卸しているため手に入りにくい、定番の吟撰。

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改めて蔵元の宮尾酒造のHPを見てみると、越淡麗の生育日記が書かれていてとても大切に育てられた米だということが分かった。地元の米と地元の水で醸造した日本酒、ワインでいうとテロワールウイスキーでいうとLocal Barleyになるのだろう。

「蔵の見学はできますか?」と伺ったら、見学施設は作っていないけれど酒造りしているところをちらっと見てもいいですよ、とのことだったのでお言葉に甘える。


立派な暖簾をくぐって建物の奥に進む。

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この暖簾の正面に酒蔵があって、忙しそうに働く皆さんが見えた。覗きこんでいると軽く会釈をしてくださる。中は撮影禁止、お断りして入口のしめ縄だけ写真を撮らせてもらった。

f:id:KodomoGinko:20181006095557j:plain壁には〆張鶴で使っている3種類の米が飾ってある。

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土曜日の午後、他にお客さんもいなかったこともあってか時間をかけていろいろと教えてもらってありがたかった。

東京からわざわざ村上まで足を運んでくれて恐縮です、とおっしゃるので、3回村上に来ているけれど酒も魚も肉も野菜もコメも旨い村上は奇跡のようなところだと思います、と申し上げた。お兄さんはちょっと小首をかしげた感じだったけれど、お世辞抜きにそう思う。地元にいると当たり前のことなのかもしれない。羨ましい。

まだ行ったことのない酒田もおそらく何でも美味いのだろう。新潟や山形がすごく魅力的なことに改めて気づかされ、自分が自分の住んでいる国を表面的にしか知らないことが少し恥ずかしくなる。

レースの後ずっと忙しくて家で晩酌をする機会がなく、搾りたての酒を早く飲まないと、と思ってちょっと気が焦っている。旨い肴を用意しないといけない。


 

www.shimeharitsuru.co.jp

 





 





酒も魚も肉も美味い村上が好きだその1 御茶所 九重園

村上笹川流れトライアスロンのゴールとなる村上市役所を大会前日のぞきに行った後、ふらふら街歩きをしていて見つけた、250年の歴史を持つお茶屋さん九重園。
中をのぞくと煎茶と和菓子のセットが店内でいただけると書かれていたので入ってみることにした。

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歴史を感じさせる帳場の奥、立派な虎が描かれた屏風一双と水墨画の一双が飾られたお座敷に通され、Tシャツ、ジーンズ、サンダル履きという超ラフな格好で来たことを激しく後悔。

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二十畳は優にあろうかというお部屋に場違いな格好でぽつんと一人座って待っていると、きれいな紫色の練り切りと煎茶が出てくる。
小ぶりの茶碗にとても丁寧に淹れられた煎茶。口に含むとさわやかな香りと甘みが鼻を通り抜ける。苦味はあまりなくじわりと凝縮された、それもわざとらしくない端正な旨味。

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お茶の商業栽培の日本最北端が村上市というのは知らなかった。さわやかなお茶の甘みは冬に雪で覆われる地方ならではのものなのだろうか、栽培が簡単ではない環境だから手間暇かけて育てられたためだろうか、などとうすぼんやりと考えながらお茶をすすり、和菓子をいただくとしみじみ落ち着く。

f:id:KodomoGinko:20181006091056j:plain屏風の虎は活き活きと描かれていてなんだかかわいい。

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村上では10月15日まで祇園祭のようにそれぞれのおうちにある屏風をお披露目するイベント「町屋の屏風まつり」が行われている。

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屏風だけでなくとてつもなく仕事の細かい螺鈿の重箱や日露戦争の頃に作られた堆朱の硯箱も飾られていてうっとりする。絶賛開催中の日本伝統工芸展@三越本店かよ。何だこの螺鈿の細かさは。漆にはめ込むのにどれだけ手間かかっているのだ。
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そして今話題の旭日旗 をかたどった帝国海軍御用達の堆朱の硯箱。こんなに彫りの厚みが異なるようにするにはどれだけの漆を塗り重ねたのか想像を絶する。
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やはり米どころだけあって経済的にも余裕があり、文化が蓄積したのだと思う。裕福でなければお茶も楽しめず、お茶がなければ和菓子も発展せず、茶碗も茶室もそこに飾る調度品も代々伝わらなかっただろう。

気になって何の予備知識もなく入ってみたが、直感に従って正解だったと強く思った。

 

 

www.kokonoen.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高級メロン食べ放題@南房総安田メロン農園が控え目に言ってもサイコーだった件

毎年イチゴ狩り、ブドウ狩り、桃狩り、サクランボ狩りには必ず出かけるぐらいフルーツが好きな私が一押ししたい、安田メロン農園の高級メロン食べ放題。とりあえずだまされたと思ってこれを読んでほしい。

去年初訪問してメロン1/2玉をいただいた。その美味しかったこともさることながら、隣の女子二人連れがメロン食べ放題をやっていて、まるでわんこそばのように次から次へとジュースの滴り落ちるマスクメロンを一心不乱に頬張る姿を、食べ放題の予約をしなかった我々は生暖かい羨望のまなざしで見守るほかなく、今度は絶対食べ放題予約して再訪するぞ!と心に誓った。そして昨日ついにリベンジを果たす。

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旗だけ見るとメロンというよりはスイカ?、というカラーリングだが、同じ瓜系だからまあいいか、と思いつつこのメロン食べ放題を心から楽しむため朝食も軽くしかとらず、もう1時なのにランチも食べていないせいで前のめりになり過ぎた心を抑えながら歩く。

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階段を降りると温室がいくつも並んでいて、目の前の納屋のような建物の中にメロン直売や食べ放題の受付がある。

下の写真が去年もらったパンフレット。今年も値段は変わっていなかった。600円で1/4玉、1100円で1/2玉という値段からすると2000円で食べ放題、というのははっきり言って超破格なお値段ではなかろうか。そして食べ放題には時間制限なし!!

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去年も良くしてくださったお母さんに食べ放題お願いします、というと「メロン畑を案内しましょうか?」と聞かれフルーツ好きとしてはちょっと心が動いたのだが、もういい大人だというのにメロン食べたいはやる心を抑えることができず「去年も見させていただいたので大丈夫です」とつい言ってしまう。

そしてお母さんが両手で抱えて持ってきてくれた、お待ちかねのメロンがこちら。

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まったくケチケチすることなく、がっつりとケースごとカットメロンが登場!待ってました。あまりのみずみずしさにジュースが滴ってケースの底がすでに濡れていて、まだ食べてもいないのに少し興奮。そして食べやすいようにほぼ完ぺきに種が取ってあってすぐにかぶりつける上、実は超つめたく冷やしてある。

どんなにメロン好きでもぬるいメロン食べたらあまりおいしいと感じないはずだが、めちゃ冷たい。これはポイント高い。渇いた喉に冷たいメロンのジュースが沁みわたっていって、これは控えめに言ってもサイコー以外の何物でもない!

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見ていただくと分かるかと思うが、皮と身の間に半透明に緑色になっている部分がある。この部分までスプーンが力を入れなくてもすくっと入っていって、ジュースを大量に含んだ身をぱくっと食べると首の後ろがぞくぞくするぐらいの甘みが襲ってくる。なんだこの糖度は。ハンガーストライキ中のマハトマ・ガンジーでもこっそりつまみ食いするレベル。食べ放題のものだからといってクオリティ下げたりしていないのがよくわかる。

そして普通のフルーツ狩り食べ放題はだいたい30分までなど時間制限があるが、ここの食べ放題は時間制限なし。まるでわんこそば状態。食べても食べても次から次へとじゃんじゃん持ってきてくれる。

「おいしいからたくさん食べてくださいね~」とお母さんが勧めてくれるので無我夢中で食べた結果がこちら。バケツ一杯皮が出るほど食べてしまった。お昼ごはん代わりにお腹いっぱいになるまで高級メロンを食べられるなんて贅沢過ぎて罰が当たりそうだ。ちなみに一人ではなく家人二人と一緒なので誤解なきよう。一生懸命大切に作っていらっしゃるのが温室見ても分かるので、良い子の皆さんは食べ放題だからといってカットメロンの真ん中のわずかなところだけ食べたりしないように。

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温室の中を見て回ることもできる。こちらはまだ表面のしわしわができていない若いメロンたち。

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そして一人前になってもう少しで出荷となるのがこちら。

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ちなみに帰り際に富津館山道路鋸南・富山IC手前の道の駅、富楽里とみやまに寄ったのだが、そこで売っていたメロンが1玉4000円で生産者は安田さん、と書かれていたのでさらに得した気分になったのは言うまでもない。

お母さんいわく、高級メロンは贈答用としての需要が多く、お盆と敬老の日をピークに需要が落ちるのでお盆過ぎから11月半ばまで食べ放題をやっていらっしゃるそうだ。

9月の連休というのに我々のほかの客は4人家族1組しかおらず、これを世の中の皆さんが知らないというのはあまりにもったいなく、ぜひ秋の行楽日和に南房総まで足を延ばしていただきたいと思って大きなお世話かもしれないが書いてみた。事前の予約をすることを忘れないことと、お腹をすかせて出掛けることをお勧めします。

 

 

bosotown.com

 

 

 

 

 

 

 おすすめスポットについて書いた過去記事はこちら。

islaywhiskey.hatenablog.com

 

 

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オチのない池袋での徘徊の記録

東京であまり縁のなかったところの一つ、池袋。Bar Nadurraさんにたまにお伺いするぐらい。何で来ないのかちょっと考えてみたが、私が必要とするもので池袋にしかないものがなかったからなのかも、というのが結論。だが最近その認識が間違っていることが分かった。蘭州料理が食べられる自宅から一番近いところが池袋なのだ。

ここしばらくツイッター眺めていると西川口「ザムザムの泉」という蘭州ラーメンが美味いという情報がやたらと流れてきて、調べているうちに蘭州料理がどうしても食べてみたくなった。でも西川口はちょっと遠い。ザムザムと並んでよく名前の出る「火焔山」には池袋店があることが分かり、日曜の昼、私にとっての魔境池袋を目指すことに。

9月も半ばとは思えない酷暑の中、山手通りをランニングで北上、訳あり風の30代半ばの緊張気味の顔の男性が女性の手をやや引っ張り気味に歩いているのを横目に見ながらラブホテル街のど真ん中にあるサウナ「池袋プラザ」で汗を流し火焔山へ。日曜日の昼下がり、客は6分の入り。カウンターで隣になった人以外は全員中国語で話している。店員も中国の人なのだけど、「後ろ失礼しまーす」とか「ラーメンでーす」とかは日本語なのがおもしろい。日式サービスというのにバリューがあるのだろうか。
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麺は細麺、平麺、三角麺の三種類から選べる。何も指定しないと「並」になります、と謎みがあることが書いてあるのだが恐らくデフォルトは細麺、ということらしい。折角なので珍しい三角麺を注文すると、店の奥で小麦粉の塊を叩いて伸ばしてねじって畳んで、というのが始まった。注文してから麺を作ると聞いていたがまさにその通り。2リットルのペットボトルと同じかそれ以上の小麦粉の塊を空中でうまく伸ばしてねじって折って、台で叩いて伸ばして、とやるのは見た目以上の重労働だろう。

麺から作るとそれなりの時間がかかるのは仕方ない。むしろ丁寧に作ってくれているので時間かけてくれて全然構わない。そして出てきたのがこちら。

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調理場にいる男の人は全員ムスリムの人が被る刺繍の入った小さな白い帽子をかぶっている。麺の上にのっているのは叉焼ではなく当然牛肉、スープも牛肉ベース。意外とあっさりとした塩味、だけど独特のスパイスが奥に隠れている。辣油がかかっているがそれほど辛くない。しかしスープを飲んでいるうちに体の中からホカホカしてきて、せっかく運動して汗いっぱいかいてサウナに入ってさっぱりしたのにまたいい汗をかいてしまう。謎のスパイスの魔力。

ラーメン食べてて途中で麺を噛み切るということは基本しないのだが、ここの手打ち麺は長いのでどうしても噛み切らざるを得ない。でも麺はモチモチ、噛むときの感触が讃岐うどんを噛み切るときの感覚に近い。麺の表面から奥に入っていくにつれてより弾力を感じる、あの感覚。癖になるわ。

そしてクミンのようなスパイスがかかった羊の串焼き。これも旨い。あまり辛くなく、噛みしめると羊の脂と肉汁が渾然一体となって口内を満たす。
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隣の中国人のお兄ちゃんが蘭州ラーメン食べながらなんか店員さんにお願いしているなあ、と思っていたら店員がニンニクまるっと持ってきた。ひとかけじゃなくて、ひと房まるまる。そして兄ちゃんはおもむろに皮をむき、生のままのニンニクをひとかけひとかけかじっていく。すげえ。

メニューの一番後ろにおつまみがあり、羊のモツや干し豆腐の和え物などやたらと魅力的。今回は諸事情によりビール飲めなくて極めて残念だったので今度リベンジ果たしてやる、と心に誓う。塩分と水分を欲する身体の欲望に素直に従いラーメンのスープまで完食、店を後に。

そして翌日、即行リベンジ。職場からは池袋は地下鉄で一本。再び池袋プラザでサウナ入って体調を整えてからの火焔山。羊のモツの和え物、ジャガイモのピリ辛和えと羊肉の串を一本、ハイボール

初めて食べた羊のモツ。全然臭みがないコラーゲンの塊のような食感。麻辣味のタレ、パクチーと完璧なまでに合う。ハイボールが進む進む。

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写真を撮り忘れたがジャガイモのピリ辛和えも旨かった。だが味付けが羊のモツとかぶっていたのと、頼んでから低糖質ダイエットしていたことを思い出して少しだけ。串は当然完食。つまみ一皿と串だけで良かったかも、と思いながらリベンジ完了。ラーメン食べなくても楽しいことが確認できた。
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満足した腹を抱えながらどこへ行こうか一瞬悩み、歩いてすぐのジェイズバーへ。行ったことないバー行くの久しぶりかも、と思ったが最近赤坂のバーで塩対応されたばかりだった。 

モルト侍は残念ながらいらっしゃらず、少し若いバーテンダーの方が相手をしてくれる。雨の月曜日の夜、ということもあり関西から出張で来て飛び込みで入ったと思しきおじさん二人連れがカウンターにいるのみ。カウンターの端に通されて何を頼むか少し思い悩む。厚岸のニューボーンを見つけ、自分でも買ったけど口開けしていなかったのでお願いする。

厚岸はニューポット特有の金属臭がわずかにするけれど、それが悪く働く手前でピートの香りがまろやかに包み込んで丸くなり、少し後を引く感覚が残る。もう少し瓶熟したらまた違う世界が開ける気がする。

次はシェリー系のお勧めをいただく。モルトマンGlen Keith、1998年蒸留19年。月が映り込む静かな夜の海を思わせる綺麗なシェリー。そして麦の香ばしさがしっかり感じられ甘みが後からやってくるバーボン樽熟成Glenlossie。こういうスタイルが一番好きだ。

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カウンター4席分ぐらい離れたところに座っているおじさんたちが仕事の話にかこつけた悪口成分多目の人物評をやっているのが聞こえてきてしまう。そういうのは居酒屋でもどこでもできるけどモルトウイスキーはどこでも飲めるわけではないのでできれば他に行ってやってもらいたい。

あと何杯飲みますか、と聞かれ、2杯ぐらいですかね、と言ったらモルトヤマとのコラボのBen NevisとGlenglassaughが目の前に置かれる。Ben Nevisは芯の太いシェリーで味に厚みがあり、食後に甘いデザートをいただいているような気持ちになる。Glassaugh1974年蒸留37年は文句のつけようのないスムースさと上品さが枯れずに出ていて高貴な感じ。

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5杯だけにしておこうかと思ったけれど、バーテンダーと話をしていたらもう一杯飲みたくなってしまってBraeval。最後に飲んでも力強い穀物感と甘み、アルコールの辛さがバランス良くて心地よい。

フラフラしながらお礼を言って辞去、駅前の中華食材店でよだれ鶏のタレを作るときのために粉トウガラシと花椒をそれぞれ一袋買って家路についた。都心で暮らして23年になるけれど、まだまだ知らない場所が多いことに改めて気が付いた。

中国蘭州ラーメン 火焔山蘭州拉麺 池袋店
〒171-0014 東京都豊島区池袋2-47-7
1,500円(平均)980円(ランチ平均)

 

 

 

 

 

 

 

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マレーシアで旨かったもの

マレーシアで旨かったものその1。チャイナタウンにある「冠記」で食べた雲呑麺と叉焼麺。1人前6リンギット、200円しないぐらい。マジでこの椅子座ってこのテーブルでこの箸と食器で食べるんかい、という小汚さ。難波花月の近くのたこ焼き屋、わなかでのイートインを思い起こさせる。小汚さ的には冠記は1.5倍増しぐらい。でも雲呑麺は絶品、澄んだ魚介系の出汁が効いたスープはその上品さが店の見た目とすごいギャップがあり、かなり細めの麺によく絡む。雲呑の餡は噛むと海老の旨みが沁みだしてくる。

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叉焼麺は焼きそばで、甘い甜面醤系の味付けがされた麺の上に乗る叉焼も焼き目がしっかりついているけれど中はジューシー。麺と叉焼と青菜の完璧なコラボレーション。付け合わせに先ほどの雲呑麺の麺抜き、胡椒入りのスープが出てきてこれも旨い。毎日食べても飽きなさそう。

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下の写真の右側のパラソルの奥に店がある。知らないとかなり入りにくいし、知っていても中見るとちょっとおじけづくかもしれない。

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旨かったものその2。ランカウイ島「強師傳 (Quang Shi Fu Seafood Restaurant)」で食べたGrouper、老虎斑という魚。日本だとハタなのかなあ。蒸しあげて紹興酒と醤油の味付け、揚げ大蒜と生姜付き。写真撮り忘れて大失敗。
ランカウイ島の中で最も栄えている街Pantai Chenangをそぞろ歩きしているうちに、中国人でにぎわっている旨そうなシーフード料理屋があった。予備知識なくふらっと入ってみたらこれが大正解。店の前の水槽に魚が泳いでいて100gいくらと書かれていて、これ食べたい、というとその場で重さを量って値段が決まり、後は調理法を指定するだけの明朗会計。ハタの蒸し物以外に伊勢海老のバタークリーム炒め、干しナマコと野菜の炒め物、かにチャーハン食べたけれど本当にどれもおいしくてびっくり。伊勢海老は高かったけれど、それ以外は超リーズナブル。店の中を覗いてみて、中国人の家族が大勢で祝い事をしているような店は多分外れがないんじゃないかと思う。
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その3。クアラルンプールの屋台で有名なアロー街にあるW.A.Wレストランで食べたカニの黒胡椒炒め。甘くて白いカニの身が黒胡椒の辛さで引き立ち、無限にビールが飲める。あさりの大蒜生姜炒めも旨かった。この店は食べ物は旨いのだけどサービスが最低なので心して行った方がいい。休暇中のテンションだったので耐えられたけどいつもだったら舐めた口きいた店員の胸倉つかんで椅子蹴り飛ばして帰ったかもしれない。だけど食べ物は悪くない。ちなみにシーフードレストランのように思われているが実は手羽先の店。
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クアラルンプールのアロー街で食を楽しむためには一軒目で満腹になるまで食べずに、屋台をいくつかはしごするのがいいんじゃないかと思う。大阪食い倒れ方式。自分の好きな串を選んでバーベキュー焼いてもらう、というシステムの屋台があって、写真の人の顔の横にある50リンギットの値札が付いているのは蛙さん。1500円近いって高いね。食べなかったけど。

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BBQ屋さんだけではなくて果物も買い食いできる。当然ドリアンに挑戦。鼻が曲がりそう、というほどではないがやはり硫化水素臭い。そのあとにクリームのような甘みが追いかけてくる。どちらかというとマンゴスチンの方が好きかもしれない。

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その4。ステーキも旨かった。Lucky Bo Cafeにて。1.4㎏ぐらいあるトマホークステーキ。値段は下手すると東京の行きつけの店の方が安かったかもしれないけれど、どうしてもステーキ食べたくなって美味しくいただいた。ミディアムレアの焼き加減も絶妙。街の中心からは離れた住宅街の中にあるのでGrab(Uberと一緒のスマホベースのタクシーサービス)で行くのがいいと思う。
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しかしGrabは本当に便利。こちらのタクシーはメーター制のものと値段交渉が必要なものがあるのだけれど、土地勘ないところでタクシーの値段交渉するのは相当難しく結果的に割高につくことが多いし、メーターでもいくらかかるか分からないが、Grabだと乗る前に値段が確定。そしてタクシーより基本安い。ちょっと出かけるぐらいなら大抵10リンギット、300円以下。クレジットカード登録しておけばリンギットの現金の持ち合わせを気にする必要もないし、行先も発注時にGoogle Mapで指定してGoogleがナビゲートしてくれるので、どんなにマイナーな店に行こうと思っても言葉の壁もなく大丈夫。遠路はるばる行きたい店になんとしてもたどり着きたいと思う食いしん坊はスマホにダウンロードするのをお忘れなく。絶対後悔しない。

他の交通手段(普通のタクシーも含む)に対する価格競争力、迎車時間の短さ(当然迎車料金も発生しない)、言語の壁がなく目的地を正確に伝えられて到着可能、価格が先にどの程度か分かり発注した時点で確定している安心感、簡単かつ迅速な決済などほとんどの点でこれまでのタクシーと比較して圧倒的に便利なので、日本でも導入してもらいたい。というか導入されたら大抵のタクシー会社は淘汰されそうだ。

その5。新峰肉骨茶。そもそもマレーシアのことは何も知らなくて、いつも拝見しているTakiさんのブログをそのまま参考にしてMandarin Orientalに泊まったりランカウイ島にいってTanjung Rhu Resortに泊まったりしたのだが、彼のお勧めの食べ物が肉骨茶。スープのものとドライのもの両方食べてみた。スープのものも旨いが、汁なしのものは濃い目の味付けで無限にご飯が食べられそうだ。南の国で汗をたくさんかいた後の味の濃いものは旨いに決まってる。サウナの後もそうだけど。

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以上、帰国早々に記憶が新しいうちに備忘録も兼ねて。英語が通じるしLCCも飛んでいるし金曜日半休取って夕方5時のフライト、クアラルンプール夜11時着で行って日曜日羽田に夜10時に着くANAの便で行く2泊3日の旅でも満足できると思います。空港から市内まではGrabがやっぱりおすすめなのでダウンロードお忘れなく(ホテルで空港までタクシー頼むと160リンギット、Grabだと少し大きいクルマを頼んで75リンギット(通行料込み)だった)。

walking-gourmet.hateblo.jp