東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

愚者の金、あるいは終売のウイスキーをめぐる狂騒曲について

竹鶴17、21年の終売発表後、17年は5万円、21年は10万円を超える値段でオークションで売られている状況です。また一部投機的なお金が入ってきているせいもありウイスキーはどんどん高くなっています。
一人のウイスキー好きとして、ウイスキー転売の是非やそもそもの適正価格はどう決まるべきかについて考えました。

■ はじめに

Twitterで紹介されていたブラックウォーター蒸留所の直近のブログを読んだ。ウイスキーの値上がりの激しい昨今、とても含蓄のある記事だと思った。

 
「FOOL’S GOLD? INVESTING IN IRISH WHISKEY CASKS(愚者の金?アイリッシュウイスキーの樽への投資)」、という記事。少し長いが訳してみた。
(長いのでサクッと読みたい人には原文の下に要約つけてあります)

 

 

■ 愚者の金?アイリッシュウイスキーの樽への投資

https://blackwaterdistillery.ie/fools-gold/

我々はゴールドラッシュの真っただ中にいる。液体のゴールドラッシュだ。アイルランド島にある蒸留所の数は3から30を超えるまでに増えた。それも私が中古のルノーラグーナを買って乗り始めてからの間で。ゴールドラッシュでは一山当てる者もいるが、多くは泥を掘り返しただけに終わったり、偽物の金をつかまされて質屋に駆け込むことになる。

最近私のソーシャルメディアのタイムラインはウイスキー金融商品として取り扱う会社であふれかえっている。アイリッシュウイスキーを買うのは間違いない投資だと言われている。その投資は家を買うのと同じぐらい安全だと言われている。しかし現実は全く異なるかもしれない。

私はさかのぼること1990年、初めてジョン・ティーリングに会い、彼がこういったのをはっきり覚えている。「そこそこの金持ちになるのに最も手っ取り早い方法はウイスキー造りだが、ウイスキー造りは巨万の富を持って始めるものだ」

もしあなたが真剣にアイリッシュウイスキーの樽買いを考えているのであれば(趣味や飲むためでなく、投資の一手段として)、彼の言葉を心に留めておくべきだ。以下があなたの意思決定にあたって知っておくべきことのショートリストだ。

  1. この国で金融サービスや共同投資スキームを提供するものはアイルランド中央銀行に登録する必要がなる。登録者リストはこちらで見られる。もし樽のプロモーターがこれらのサービスを提供しているなら、このリストに載っているはずだ。調べてみてほしい。もし載っていなければその理由を考えてみよう。それは基本的な法律上定められた要件だ。
  2. ある樽への投資商品では樽の購入代金が55%割引になるとうたっていて、彼らのパンフレットには一樽2400ユーロと2900ユーロという価格が宣伝されている。だがある商品が実際に「それなりの期間」、すなわち値下げ前の3か月のうち28日間、より高い値段で売られていないと「割引販売」と言うことはできない。もともとの値段が高かった証拠がないとそれはインチキな割引なだけでなく違法だ。
  3. 全てのモノの価値はマーケットで決まる。ここでは希少性の原則が働く。現時点ではアイリッシュウイスキーの古酒が不足しているが、市場は変化しつつある。現在13ほどのアイルランドの蒸留所が熟成したアイリッシュウイスキー保有している(ただし多くがまだ市場に出てきていない)。そして17ほどの他の蒸留所がニューメイクを熟成させている。二つ目のファンドは「樽のリターンは12.5%以上」とうたい、三つ目は独自モデルにより「将来の利益を樽のオーナーに保証」という。ここでのキーワードは「保証する」で、それが実際には不可能だという事実はとりあえずおいておいて、これらの樽のプライシングを検討してみよう。スーパーマーケットの自社ブランドのウイスキーは常に業界の良いバロメーターだが、過去数年全く見かけなくなっていた。しかしALDIとLIDL*1ではアイリッシュウイスキーを一瓶18.99ユーロで安売りしている。そのうち14.66ドルは酒税と付加価値税だ。つまりウイスキーの正味の値段は4.33ユーロで、それにはウイスキーそのもの、瓶、ラベル、栓、封印、外箱、労賃、諸経費、配達の費用が含まれ、生産者とスーパーマーケットの利益も乗っている。計算してみればいい。若いウイスキーで金儲けをするのはボリューム勝負で、古いウイスキーは現在希少だが今後もずっとそうあり続けるわけではない。たった2、3の生産者しかウイスキーの樽を外部に販売していないため古いウイスキーの在庫が現在希少で価格が高どまりしていることを忘れてはいけない。今から10年もすれば30、40、もしくは50の蒸留所がアイリッシュウイスキーを生産することになる。時間の経過とともに比較的安価に買うことのできるウイスキー樽の大量の在庫も熟成されていくので、現在値段が高くないものは将来も値段が高くならない可能性が高い。
  4. もしあなたが樽を買い、素敵な保有証明書をもらい、どこかの保税倉庫でウイスキーが熟成されているとしよう。あなたは個人として樽を保管している保税倉庫のサブリース契約を登録し、地元の税務署の許可を取りましたか?これは重要なことで、税務署は一樽当たり約6800ユーロの酒税と付加価値税を課税するために誰に支払い義務があるのか調査する。仮にあなたがその樽をファンドもしくは蒸留所経由で買ったとして、そのファンドもしくは蒸留所が借金を抱えたまま倒産したとしよう。その場合資産は売却され、あなたの保有証明書は同じ重さのトイレットペーパーよりも価値のないものとなる。結局のところ、税務署に樽の保有者として法的に登録されていなければ、あなたは登録された保有者ではないのだ。簡単なことだ。もしそれをしなくていいのなら、なぜ全てのアイルランドの蒸留所がウイスキーを熟成庫に送るときにわざわざそうしているのか考えてみればいい。
  5. 全ての投資で最も重要なのは出口戦略だ。どうやって樽への投資から利益を確定するのか。酒業界は高度に規制されていて、酒の一滴一滴には酒税がかかる。蒸留酒の樽を売るのは中古のルノーラグーナを売るのとはわけが違う。もしあなたが熟成されたアイリッシュウイスキーの樽を売りたいのであれば、Done Deal*2に広告乗せるわけにはいかない。ファンドの中には一定期間の後に樽を買い戻す保証をしているものもある。もしそうならその保証を書面にしてもらい、弁護士に見せてみるといい。なぜか?だれかに樽を売るためにはアルコールの卸売に該当する量を扱うための酒類卸売業免許が必要だからだ。また保税倉庫から樽を出すためには税務署と話をつけないといけない。OK、樽のことは忘れよう。瓶詰めして売れば利益を最大化することができる。だがまずラベルについての許可を取る必要があり、アイリッシュウイスキーを瓶詰めする認可を受けた施設を見つける必要がある(アイリッシュウイスキー技術要項に規定されている)。あなたはおそらく付加価値税の登録をしなければならず、なぜなら販売額の23%は付加価値税だからで、小売り免許、すなわちパブの営業許可も必要となる。最後に確認した時はパブの営業許可取得には8万ユーロほど必要で、地方裁判所に行って費用を払う必要がある。許可なしでアルコールを外部に販売するのは税務署と警察署のご厄介になることを意味し、死ぬほどバカげている。
  6. 頭のいいあなたであれば、これの問題を解決するためには適切な免許を持っている誰かに樽を売ってもらうもしくはオークションにかけてもらう必要があることに気づくだろう。いまのところ当局はお目こぼししているが、問題は規模だ。アイルランドでの樽の購入は趣味の範疇で行われているが、それが大規模になれば税務署が黙っていないだろう。ある樽投資ファンドは2019年に1000万ユーロの価値のウイスキーを売ったが、今年は140%成長の計画を描いている。酒税やVATは多額となり、キャピタルゲインについての税金も追跡されるだろう。だから樽を買う前に私ではなく独立投資助言業者からの助言を受けるのが最良だ。


もしこれでも純粋な所有欲のために樽に投資しようと思うなら、そうしてみるといい。そして蒸留所に直接行くことを検討してみればいい。間に入る人は全て手数料を取るのだから。樽購入プログラムを提供している新設蒸留所はたくさんあるので比較検討できる(念のためだがブラックウォーター蒸留所ではそのサービスは提供していない)。

もしこれをすべて読み終わってまだウイスキーを財産と同一視しているのであれば、この言葉を覚えておこう。「Caveat Emptor(買い手責任)」

 

 

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簡単にまとめてみるとこうなる。

ウイスキーの樽への投資が流行っているようだけれど、いろいろ疑わしい面がある。

投資商品とうたうなら、ちゃんと登録してあるはず(でそうしていないなら詐欺の疑いが強い)。
樽をディスカウントで買える、というのであれば一定期間定価で売られていてそこからのディスカウントだとはっきりしていなければならないと法律で決まっている(けどそうなっていないのでインチキか詐欺の疑いが強い)。
今は古酒がなかなか手に入らないので値上がりしているが、新しい蒸留所がたくさんできていて将来の供給量が増えることが確実で、希少性がなくなれば値段は上がらない。安い値段のウイスキーを売って儲けるためには大量に売らなければならない(ので一樽買っても儲けは薄い)。つまり「確実に儲かる」というのはかなり疑わしい。
樽を買っているように見えるけれど、実際にあなたが直接樽を持っているわけではなく、ファンドや蒸留所にお金を貸しているのと同様のスキームになっているのでファンドや蒸留所が倒産してしまうと手元に何も残らない。
樽を誰かに売らないと儲けが確定しないが、それには免許もいるし税金もかかってくるので費用もかかるし簡単には売れない。
仮に儲かったとしてもリターンには税金は考慮されておらず、今はお目こぼしされていてもウイスキーへの投資が一般的になり金儲けする人の数が増えるにつれて税務署のマークはきつくなる。
もし本当に樽への投資がしたいのであれば、直接蒸留所に行って樽買いプログラムに参加するのが一番割安なやり方のはずだ。

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結論はウイスキー造りは「絶対確実な投資」などではありえない、ということだと思う。

プロとして断言するが、「12.5%以上のリターンが確実な投資商品」は基本眉つばだ。そのリターンが確実に上がるのであれば自分で借金してそれに投資すればよく、人に薦める理由がない。このカネ余りの時代、よほど信用履歴の悪い人でなければ5%ぐらいの金利払えば金が借りられ、その金で12.5%以上のリターンを約束する「確実な」投資機会に投資すれば最低でも7.5%儲かる。わざわざそんな金儲けの機会をお勧めしてくる人はよっぽどのお人好しか詐欺師かお人好しの詐欺師のどれかだ。

ウイスキーをオークションで投資目的で買うということ

アイルランド金融商品としてアイリッシュウイスキーの樽へ投資する人向けへの忠告なので我々にはあんまり関係ない気がするが、実際には我々のような日本でボトルを買っているウイスキー好きにも重要な論点がいくつかある。

たとえば直近終売になることが発表された竹鶴。ヤフオクを覗いたら一時は17年が5万円超えていた。最近は箱入りでも値段下がって4万円台になってきているようだが。21年は値段が上がって10万円が相場のようだ。2本売ったら手数料10%払っても12万円以上が手元に残る、ように見える。

auctions.yahoo.co.jp


ちなみにアサヒのHP見るとこんな感じ。希望小売価格は小売店での販売価格を拘束するものではなく、その値段で買うことは基本難しかったことは知っているが改めて見てみると感慨深い。

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終売発表前の9月末には竹鶴17年は1万5千円ぐらいで落札されていた。

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竹鶴17年を5万円で投資目的で買う人は出口戦略、すなわちどうやって利益を確定するかについてはどう考えているのだろう。

5万円よりも高く買う人を見つけてその人に売りつけられないと儲けようがない。
それを分かって落札しているのだと思うが、自分が落札したということは、自分の値段が最高値である、すなわち「現時点では自分より高く買う人はいない」ということを意味する。現時点で自分が一番高値で買っている人なのに、将来自分よりも高く買ってくれる人を見つける、というのは極めて困難だということを分かってやっているのだろうか。
そもそも希望小売価格が7000円だったものが現在7倍以上になっているのに、さらに値段が右肩上がりに上がっていくと考えるのは結構難しいように思われる。

仮に投資目的で買った人が目標リターンを年率10%、5000円としていると仮定して計算してみよう。

オークションでの売却手数料が10%とすると1年後に61111円以上に値上がりしていれば5000円の利益。仮にそうだとしても10本で5万円、100本で50万円の儲け。お小遣いでは嬉しいかもしれないが、ビジネスでやるには効率悪い。

そして1年後に6万円以上で竹鶴17年売れるか?というのがそもそもの問題。山崎18年の落札相場7万円近辺とあまり変わらない値段でそっち買いますかね?
山崎18年の落札価格は竹鶴の終売にあまり影響されていない、ように見える。ちょっと前まで竹鶴17年の評価は山崎18年の20%ほどだったのに、今は70%ほど。竹鶴の割安さは終売発表後大きく修正されている。

まあ一言でいうと金儲けで竹鶴17年を今から買うのはあまり得策ではない気がする。
さすがに自分ではその値段では買おうと思わない。


■ 何が「適正で」「フェアな」価格なのだろうか

ではフェアな価格はいくらか、というのを考えてみたい。私にとってフェアな価格の水準は、当たり前だが自分が竹鶴17年を飲む体験にいくらまで払いたいと思うかに左右される。

17年は自分の中での価値は感覚的には1万5千円ぐらい。直近の相場の過熱を加味しても年数×1300円、2万2千円ぐらいが上限かもしれない。異論は認める。あと改めてはっきりしておくが、竹鶴のことを下に見たりしているわけではないので念のため。

私が今竹鶴17年を5万円で買うかどうか決める際には、例えば以下の2つのチョイスのどちらが自分にとっての効用が高いか考える。

チョイス① 
竹鶴17年を1本飲むという体験を5万円で買う

チョイス②
アラン10年新ボトルを買い、丸亀サイレンスバーさんに行って2万6千円分飲む

(4000円(家飲み用の新しいアラン10年1本購入)+2万円(JetStarで高松行き往復航空券、片道4500円から +宿泊費その他)+2万6千円(丸亀のサイレンスバーでの飲み代))


別にアランである必要はなく、ダルユーイン花動でもいいしモーレンジオリジナルでもいいが、私にとっては圧倒的にチョイス②の方が効用が高い。丸亀行かなくても4万6千円握りしめて有楽町や新橋や池袋のバー回れば相当素晴らしい体験ができることは私が保証する。

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そう考えると、仮に竹鶴17年を5万円で買いたい人がいれば私はその値段でボトルを譲って全然問題ない、ということになる。(ちなみに上記のフェアな価格を決める時にはチョイス①を1万5千円とか2万2千円とかにしてチョイス②の例を様々考える)

こういうことを書くと、「高値で売って転売で金儲けしやがって」的に快く思われない方がいることも知っている。だがプレ値で売って供給が増えれば値段が下がるので、むしろ高値で転売することに反対する人から褒めてもらってもいいはずだ。

プレ値でケースごとオークションに出すような人をSNSで晒して非難する人が現れる一方で、情報弱者の地方のお年寄りが経営するような酒屋ばかり狙い撃ちにして巡ってボトルを買い占め「定価で買えましたラッキー」的に誇らしげに「戦果」をSNSに上げる人もいる。

大体前者は「転売ヤーに死を」的なリツイートを浴びるのに、後者は「うらやましい」的なコメントがつく。

終売になってなかったら同じことしましたか?プレ値が付いていなかったら同じことしましたか?両者ともプレ値がついているからやっているわけでコインの裏表で全く同様の行為なのに片側だけ強めに非難される。つまるところ利益を確定させた人に対する単なる嫉妬なのだろう。

プレ値での転売自体許せない、という人に対して私はこう思う。

自分がその酒に対してプレミアム払ってでも買いたい、と思うのであればそうすればいい。どうしてもお父さんの命日にお父さんが好きだった竹鶴17年をお供えしたい、もうすぐ命日が近づいているのだけれど全然酒屋では見つからない、というのならヤフオクで5万円で買ってもいいじゃないですか。飛行機の切符が仮に全部売り切れだったとして、うちの親が危篤でどうしても目の前の飛行機に乗らないと死に目に会えないかも、と思えば搭乗券持っている人見つけて定価より多くいくらでも払いますよ。何か?

良識ある二人の大人の同意の上での契約や行為に対して、自分の価値観と相いれないからと言って他人が文句をつける権利は誰にもない。高値での転売許せない、と言う人は同性婚反対論者とあまり変わらない。違う、と言うならロジック教えてください。

ちなみに反復継続的に業としてオークションに出品しない限りは酒販免許もいらないし普通のサラリーマンはその他も併せて 副収入が20万円以下の場合は税金申告も必要はない。 世の中には親切を装った嘘つきの嫉妬深い人が多いので気を付けてください。

一番大事なことは、そのボトルを買うことで得られる体験に対してあなたはいくらまでなら払いたいですか?ということだと私は思う。それは人によって違う。違うからある値段で同じものを売ってもいいと思う人もいれば買ってもいいと思う人もいる。ウイスキーだけじゃなくて、トレーディングカードでも、リンゴでもイワシでもそう。

私はこれまで転売はしたことがないけれど、こう書いているうちに改めて家にある竹鶴17年と21年をプレ値で売ることの方がむしろ正義である気がしてきた。なぜならばさっきも書いたように、自分の物差しで測ればそのボトルから得られる体験よりも5万円で得られるその他の体験の方が自分にとっては価値がある気がするから。そして他の体験よりも5万円で竹鶴17年買う方がいい、という人に売ってあげられれれば、私にとってもその人にとってもWin-Winになるから。もっと言うと社会全体にとって私が竹鶴17年を持ちつづけることよりも転売することの方が役に立つから。

投資はビューティーコンテストすなわち美人投票*3で、自分が一番美人だと思う人ではなく他の人が一番美人だと思うであろう人を当てるゲームだから他人がどう思うか、他人の価値観を気にする必要がある。

だが投資でウイスキーを買っているわけではない我々にとっては、他人の評価は関係あるようで関係ない。

人からどういわれようとも、安いウイスキーでも自分が旨いとも思えばそれを飲めばいい。高くてもいいものだと思えばそれをプレ値で買えばいい。人から何を言われても揺らぐ必要はない。つまるところ自分の価値観、すなわち自分はこのウイスキーから得られる体験に対してどれ程度の評価を与えるのかの物差しが自分の中ではっきりしていればいいのだ、と思う。

 

 

 

 

 

 

 ■ おまけ

以下おまけ。

ウイスキーをこよなく愛する私は、以前美味しい竹鶴17年を安値で手に入れた。その後、その竹鶴17年は評価がぐんと高まり、当時1本7千円で買ったものがオークションに出せば今や5万円の値が付くという。私はこのウイスキーをときどき、ちびりちびり味わって飲んでいるが、競売価格で手放す気はまったくなく、ましてやそんな高値で買い足そうなどとは思ってもいない」。

私が5万円で竹鶴17年を転売しないとするとこのような状況になるわけですが、これは極めて非合理的な行為をしていることになります。なぜそうなのかがわからない方で興味があれば、以下の本を読んでみてください(写真左側の文章に注目)。10年以上前に出た本ですが、ノーベル経済学賞をとったセイラーの手で書かれた名著です。

オークションで落札することのリスクについても詳細に検討されていますので、ウイスキーオークションに参加されている方にもお勧めします。原題は「The Winner's Curse」、勝者の呪い、でまさにオークションで勝つということはどういうことかが主題とされています。
自分で飲むためにオークションに参加されるような方は私よりも皆さんよりはっきりと自分の価値観をお持ちだと思うので、大きなお世話だとは思いますが。

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*1:いずれもドイツ資本のディスカウントストア

*2:アイルランドの中古車のネットオークション

*3:今時不適切、Politically Incorrectな言葉遣いだというのは十分理解した上で言っています