東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

余市蒸留所訪問

すすきのの朝は6時からまた電話会議。連休中だが仕事だから仕方ない。家人を起こさないようレンタカーの中から電話。駐車場に移動する間に創成川のほとりの桜が朝日に美しく照らされているのが観られて、早起きは三文の徳、と負け惜しみを言ってみた。
夜の続きの人たちが花見をしていて、若いってうらやましいなと改めて思う。

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朝食後チェックアウト、小樽へ。ゴールデンウイーク真っ只中なのに全く渋滞がない。さすが北海道。小樽の宿に車を止め余市へ。

小樽駅始発の二両編成のディーゼル車は乗車率100%超え、そのうちの半分ぐらいは余市で降りた。駅を出ると今にも降り出しそう、満開の桜を綺麗に見られたのが幸運だったことに気づく。負け惜しみでなく。駅を出ると国道越しに蒸留所が見える。エディンバラ城スターリング城とまでは言わないが、でもそういったものを思い起こさせる。言い方は悪いが昔は余市は何もない寒村だったに違いなく、こんなに威風堂々としたお城みたいな蒸留所ができた時は多くの人がわざわざ遠くから見に来るぐらいだったに違いない。

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宮城峡蒸留所は煉瓦を基調とした明るい近代的なイメージで少し「工場」感があるが、余市は石造りで歴史も相まって重厚、かつ威圧感がある。

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10時半からのガイド付きツアーをインターネットで予約済みで、20分前ぐらいに着き荷物を待合室のコインロッカーに入れようとしたら100円玉がない。受付で両替してもらおうと思ったが、「生憎両替はしておりません」と言われて一瞬しょんぼりするも、「ですが100円玉お貸しします」といって事務所から100円持ってきて貸してくれた。なんという神対応

ゴールデンウイーク中だったが工場は稼働しており麦汁の香りがあちらこちらでそこはかとなく匂う。一番見たかったのは蒸留。石炭でポットスティルを直火焚きしているのは世界でも珍しい。大量生産したいのであれば職人がシャベル使って石炭を手でくべる、なんてことはやるわけないのに、これだけウイスキーが売れてもまだ昔ながらの製造方法にこだわるニッカはすごい。

こちらは1号釜。ポットスティルには注連縄が巻かれている。またノーマルネックのストレート型で、様々な成分が含まれる力強いウイスキーが作られるのがわかる。

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8分に一度それぞれの釜に石炭くべるという。それも一日中なので相当な重労働。電車もディーゼル車もあるのに今どき蒸気機関車走らせているみたいなもので、職人さんはその機関助手みたいなものか。

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そして一番奥には再留釜が。石炭のせいで煤けているのがよくわかる。

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ガイドツアーは30人ぐらいの見学者を1人のガイドさんが引き連れて説明してくれる。「ウイスキー良く飲む方はこの中でどれぐらいいらっしゃいますか?」という質問に勢いよく手を挙げてみるものの、周りを見ると手を挙げたのは3人ぐらい。年齢的には50代以上の人がほとんど。ガチで蒸留所見に来た、というよりは朝ドラ効果と連休中ということもあって観光コースの一つ、という位置づけなのだろう。

ガイドさんが説明する「ニッカ」の名前の由来を聞いてみんな感心していた。改めて話を聞いて、ウイスキーの会社なのに自分達はジュースしか作っていなかったことを想起するような名前を付けたのもただ単にカタカナで外国製っぽい響きになるとかではなくウイスキーづくりに至るまでの苦労を忘れない、という思いが込められているのだろうと勝手に想像。

普段ハードリカー飲まない観光客に、蒸留所見学をきっかけにどんなに真面目にウイスキー作っているか見てもらって、トワイスアップやハイボールなど飲みやすくかつ旨さを引き出す飲み方を覚えてもらい、高くていいものを少しずつ消費してもらうようにするのが一番正しい企業戦略だと思うし、丹精に手間を掛けて本物を造りたかった竹鶴翁の遺志に沿っていると思う。そういう意味でこのガイドツアーはよくできている。

Rita Houseと名付けられた研究所。少し前まで実際に使われていたそうだが、冬は寒くて仕方なかったのではなかろうか。

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一番古い貯蔵庫。立派な札幌軟石でできている。ちなみに新しい貯蔵庫はモルタルづくりになっているものもあった。そもそも原酒は高価なもので、アルコールという危険物を扱う蒸留所で長い年月かけて熟成しているものが仮に火事で焼けてしまった、などということになると本当に会社が傾くことになるのでそれはそれは大切に扱われていたのだろう。

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中では実際に熟成が行われているそうだが、こんなに人の出入りが激しいところで貯蔵して大丈夫だろうか、と思う。宮城峡も同様だった。恐らく手前の方にある樽はなんちゃって、で本物は奥の方にしかないのかも。写真の樽が明るく映っているのはiPhone Xのカメラが優秀だからで、実際は結構暗い。

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ツアーはあまりマニアックなところにフォーカスしないので、後からもう一度見て回ろうと思っていたら大粒の雨が降り出してしまい、写真も思ったように撮れなかったのが残念。

まっさんとリタが住んでいた住居を移築してきた展示の中の以下の写真が印象に残った。若いころでショートカットの髪型のせいかこんなにボーイッシュであどけないリタの写真を見たは初めて。お歳を召してからの写真が多くかつ眼鏡掛けたり和服を着たりしているものが多かったからとても新鮮。政孝を信じて遠い日本にやってきて祖国が日本の交戦国になるなど様々な苦労を乗り越えたに違いない彼女のハートの強さが伝わってくるような写真。

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博物館にある蒸留所設立当時に輸入されたポットスティル、銅の一枚板を鍛造して作ったそうだ。こちらはランタンネック。

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そして髭のウイリアム・ローリー卿のステンドグラス。子供の頃このニッカのKing of Blendersと丸大ハムのコマーシャルで出てくる髭のおじさんは同一人物だと思っていた。昭和の話なので1980年代以降に生まれた方はスルーしてください。

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一号ウイスキーが飾ってある。意外と色は抜けていないのは着色なのだろうか。キャップもボトルもラベルも特徴的。間違いなく樽熟成、ニッカ蒸留所で特別に蒸留、瓶詰とのラベル表記(Guaranteed matured in wood, distilled & bottled specially by Nikka Distillery, Yoichi Hokkaido, Japan)。

f:id:KodomoGinko:20180512100613j:plainそして1時間ほどでガイドツアー終了。無料の試飲をいただく。余市ノンエイジ、スーパーニッカ、アップルワイン。トワイスアップとソーダ割などいろんな飲み方が楽しめる。

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壁側にあるおつまみの自動販売機で「枝豆ポリポリ」をぜひ買ってもらいたい。これが想像以上に美味しくてウイスキーに合う。無料試飲もう一ラウンド行きたくなるぐらい。騙されたと思って試してみてください。

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そしてウイスキー博物館内の有料試飲のバーに逆戻り。蒸留所限定のものや終売になっているものがかなり少なくなっている中で以下の二つをチョイス。シングルカスク余市は最近なかなか飲めない。15ml売り、つまり大匙1杯と書かれているが多分倍量ぐらい入れてもらっている気がする。

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そしてお楽しみのお買い物、宮城峡に続き今回も大人買い余市と書かれた蒸留所限定ボトル、Peaty & Salty、Woody & Vanillic、Sherry & Sweetは500mlで6600円と、通常の700mlボトル換算で1万円程度だからノンエイジにしてはかなりのお値段。そして有料試飲のバーで「鶴17年お願いします」と言ったら「鶴はノンエイジでも蒸留所以外ではもう終売ですよ」と言われたのでノンエイジの鶴も購入。こちらも12000円オーバーとなかなかのお値段。響のメローハーモニーとかを家で普通に飲んでいたころが懐かしい。

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山梨県の蒸留所見学の際、ガイドツアーのお姉さんは「お仕事」感の強いご案内だったけれど、ここ余市ではウイスキー造りに関わる人たちだけでなくゲストに接する人たちからウイスキーそのものやニッカ製品、ニッカの歴史に対する誇りと愛情のようなものが強く感じられてそれが伝わってきた。そもそも地元の人が地元の蒸留所のことをとても誇らしく思っていて、その人たちが働きに来ているからかもしれない。

余市蒸留所見学はマニアだけではなくウイスキー飲まなさそうな一般の人たちにとっても間口の広いとても効果的な企業PRだと思う。

ちなみに100円玉はちゃんと忘れずお返ししましたので、念のため。

 

 

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すすきのにて

ゴールデンウイーク後半初日、というか磐梯吾妻スカイラインから戻ってきた翌日、午後から札幌入り。とても蒸し暑い東京とは打って変わって札幌は10℃を切るか切らないか。少し厚着をして羽田に向かうと大汗をかいた。すすきのの南の外れの宿にチェックインしたらすでに夕方になっていた。

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初日の夕食は鮨屋「あら政」。札幌通の人に教えてもらった、街の中心から離れた地元の人中心の落ち着いた店。書き入れ時にすすきのの有名な鮨屋のカウンターに子供連れで陣取るのも気が引けるので。

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ホッキ貝、シャコ、ホタテ、赤貝、紅ますなど旬の北海道の素材が目白押し。その中でもシャコが出色。茹で上げられた大振りのシャコはばりばりとハサミで脇腹を切られ、包丁で皮をはがされる。軟らかくて甘い身と独特の味と歯ごたえのある卵のコンビネーションが素晴らしい。大間のマグロの赤身も繊維がとても細かく味が濃く、ねっとりと舌に絡みつく。気のすむまで食べてそこそこ飲んでお勘定をいただくと一人5000円しない。リーズナブルだとは聞いていたが改めて、驚く。東京だと初セリで有名な某チェーン店でももっとするはず、一度行ってあまりの掃除の行き届かなさに辟易し再訪していないので自信がないが。24時間営業だと仕方ないのかもしれない。

鮨を食べ終わった後、狸小路を冷やかし、インバウンドのせいか随分と雰囲気が変わっていることに少し驚く。札幌はちょうど桜が盛りを過ぎたころで、一年に二度も桜の満開が見られたことに家族で感謝。そして家人たちを宿に残し一人で軽く飲みに出かけた。本当はがっつり飲みたかったのだが、連休中なのに深夜に仕事の電話会議があったため自制を迫られる。すすきのの中心部からほど近い有名なモルトバーへ。

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上の3つの佳酒をそれぞれフルショットでいただいて、時間が迫り少し慌ただしくお勘定をお願いしたら、鮨屋のおよそ倍のお値段。今日びウイスキーも高いから仕方ないが、家族3人でとても美味しい食事をいただいて、その後おとーさんだけ飲みに出たら1人で3人分の鮨屋の勘定の倍の値段の酒を飲んだ、となると家族に対して何だか申し訳ない気持ちになる。ただし念のためだがどのボトルも何の文句のつけようもないものだった。

この前の郡山とは全く反対の展開で可笑しくなった。アウェイのバーはなかなか難しい。流石に家人にはこのことは話せていない。






 









郡山へ

ふと思い立って、郡山に出かけた。

ゴールデンウイーク谷間の二日の平日、初日はしっかり仕事をしたが二日目の予定がキャンセルされたので急遽休暇を取得。初日の仕事の後そそくさと帰宅し、バイクで夜の東北自動車道を北上。

風もなく寒くもなく、穏やかな朧月夜。一応ゴールデンウイークではあるものの、交通量は少ない。宇都宮を過ぎ、車がさらに少なくなると道は真っ暗。バイクのライトだけでは心もとないけれど、どこまで走ってもオレンジに鈍く光る月が追いかけて来てくれる。7時に家を出、10時前には郡山にいた。自宅から250㎞。

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全く土地鑑がないので街を徘徊してみたかったが、夜10時を廻って何も食べていないこともあり、とりあえず福島の地酒が置いてある居酒屋「しのや」へ。
ウドの天ぷら、アスパラのマヨネーズ酒盗和えを注文。一杯目はハイボールを飲んだが、せっかくなので福島の酒を飲みたく、会津の酒「天明」の飲み比べセットを注文。

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純米と純米大吟醸、火入れと生酒、の4通り。最近私は複雑な酸味の日本酒にはまっているのだが天明は王道を行く日本酒。どれも綺麗な味で、敢えて言うと生酒の純米大吟醸が一番好きだった。アスパラのマヨネーズ酒盗和えが日本酒によく合って驚いた。

折角知らない街に来たので郡山では名の通ったモルトバーに行ってみる。すぐ近く。ふらっと入ったらカウンターは空いているように見えたが予約で満席、ということでその真上の階にある姉妹店に案内される。とりあえず目に付いたBenriachのオフィシャルを頼み、それを飲み終えて「何かアイラで珍しいものがあれば」とお願いする。出てきたのはCaol IlaのDistillers Edition。ラベルの黒いやつ。東京を離れると高いウイスキーを頼む人が少ないので隠し玉があることが多く、今回もそれを期待したのだが空振り。

二杯飲んで勘定をもらい、バーテンダーに「いつもウイスキー飲まれるんですか」と聞かれ「そうなんです」と答える。「うち、アイラの珍しいのもあるんですけど大体一杯で2000円超えちゃうんですよ、Ardbegとかだと最近の限定のやつはほぼあるんですけど」と言われ、いやそれ出して欲しかったんだけど、という話になる。Perpetuum、Dark Cove、Ardbogなどがあって、Ardbogをいただいて帰る。

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よくよく考えると、一軒目は席が空いていたように見えたのに満席と言われ、二軒目では高い酒は勧められなかったのは自分がとっても貧乏臭く見えたせいかもしれない、と気が付いた。高速道路のサービスエリアでバイク乗りが髪の毛くちゃくちゃで訳の分からない日本語英語が書かれた薄汚れたレザージャケットとぶかぶかのパンツ履いているの見ると「なんだかなー」と思うけど、多分五十歩百歩だったのだと思う。

翌朝は平日なので間違っていつも通り6時前にアラームが鳴って目が覚めた。那須高原のサービスエリアから予約した東横イントライアスロンの試合の時のように一人で贅沢しても意味のないときに泊まるが、実は意外と悪くない。6000円の部屋とは思えぬクオリティ。まだバイク運転するには血中アルコール濃度が高すぎるかも、という目覚め。味噌汁飲んだり風呂入ったりしてアルコール抜いて8時に出発、目指すは磐梯吾妻スカイライン

実は今のバイク、確か2007年に買ったのだがあと1か月程でお別れ。名残惜しくていい道を走りたく、日本とは思えない景色の磐梯吾妻スカイラインにツーリングに行きたかったのだ。だから郡山に前泊した、というわけだ。

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最高標高1600mなので雪が残っていて、5月というのにかなりひんやり。バイクは体が固まると曲がらないのだが、寒くて身体が動かない。この前の日光みたいに転ぶと飛んでもないことになるので慎重に走る。身体がリズムを思い出すとカーブが迫るたびに楽しくなる。加速してコーナー手前でブレーキ掛けて、フロントブレーキリリースしてバイク傾けると勝手に前輪がイン側に切れ込み、引きずっていたリアブレーキをリリースしてアクセルオンするとトルクステアできれいに曲がる。コーナリングスピードが高くなるとバンク角が深くなりリアタイヤの端から端まで使えていることが分かって楽しい。フロントブレーキの右手、リアブレーキの右足、シフトチェンジの左足とクラッチの左手、そして前後左右への荷重移動と全身でスピードを楽しむ。

自分で別れようと決めたのに、いざ別れるとなると名残惜しくなって別れたくなくなる、というのは本当にダメな男以外の何物でもないわ、と自嘲する。もういいおっさんなのに。

吾妻小富士を一周し、山を降りて高湯温泉のあったか湯に浸かる。いろんな温泉行ったけど、ここが日本で一番好きかも。Ph2.7の硫黄泉。硫黄の粒子が細かくて、肌をさするとクリーム塗っているような感触のお湯。そして露天風呂の温度がちょうどよく、ほっとかれれば永遠に入っていられそうな気がする。これが250円なんて本当に安すぎる。今度改めて高湯温泉泊まりたい。このためだけに来てもいい。

高湯温泉 福島|共同浴場あったか湯 日帰り温泉 日帰り入浴施設

そして福島市内に近づき、一度行き過ぎたのだが何だか美味そうな店だとセンサーが反応したのでUターンして入ってみた蕎麦屋が大当たり。胡々里庵。せいろ2枚食べちゃった。

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素晴らしい景色とバイクが楽しいワインディングロード、最高の温泉と旨いそば食ったら本当に満足して東京に戻った。帰宅してバイクのタイヤを見るとショルダーの方がささくれ立っていて少し嬉しい。久しぶりに心の底から楽しいと思える休日だった。何のオチもないけれど。

美味い鰻と素晴らしく硫黄臭い温泉と日本酒「仙禽」が揃った栃木は凄い

今回は珍しく日本酒のことを書いてみようと思う。

春分の日は生憎朝から冷たい雨。久しぶりに家でゆっくり過ごすか、と思ったのだが、このところ体の疲れが抜けないこともあり、雨でも問題ない日帰り温泉、それもスーパー銭湯のようなところではなくガチの温泉に行きたくなった。大好きな那須高原の鹿の湯、と言いたいところだが、山沿いは積雪もあり得るとのことだったので、鹿の湯同等の硫黄の強さを誇る喜連川の早乙女温泉をチョイス。だが実はそれだけではなく、大好きな鰻を食べ、栃木の名酒「仙禽」の酒蔵を見て酒を仕入れるという隠れミッションつき。

雨なので交通量が少ないかと思ったが、首都高山手トンネルから東北道に出ると渋滞ではないがそれなりの車の量。栃木インターの先から北関東自動車道に入ると12時前で、鰻が焼きあがるまでの時間を考えると温泉より先にランチを食べたほうがいい、という結論に達し前から気になっていた宇都宮市の北にある「和食 たにぐち」さんへ。上三川インターを降りたぐらいから雨がみぞれに、そして雪に変わる。

インターから15分ほど、目指したお店はそこにあった。店構えも凛としていて、いい予感がする。

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小上がりに通され、家人たちは鰻重の並を、私は上を注文。並は鰻一串、上は一串半だそうだ。後で分かったのだが上は味噌汁の代わりに肝吸い付き。
昼のニュースで関東地方でも大雪、と言っているのが聞こえてくる。窓の外は湿度の高い雪がかなり強め。私の車はサマータイヤなので、下手したら帰れなくなるリスクも考えておかないと、と考えながら焼き上がりを待つ。
30分ほどして出てきたのがこちら。

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柔らかく蒸し上がっているが焼きで香ばしさもしっかりついていて上品な鰻。一粒一粒がしっかり自己主張するお米でべたべたしておらず私の好きなタイプ。タレは少し辛目、若干かかり過ぎていたのが残念だったが、期待以上に美味しかった。

外に出ると雪は強いが路面がそれまでの雨でかなり濡れているので積雪にはならないだろうと判断、第二の目的地、喜連川早乙女温泉へ。「和食 たにぐち」さんからは車で15分ぐらい。

雪の降る中、かわいい猫が玄関でお出迎え。そそくさと受付を済ませて男湯へ。風呂の扉を開けると、予想外の半露天で寒い!急いで大量に掛け湯をし、白濁とエメラルドグリーンの中間のような湯に浸かる。

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外気の冷たさでお湯が絶妙の温度、ずっと入っていられる。硫黄と石油の匂いが入り交じった独特な柔らかなお湯。色が夜になると乳白色に変わるらしい。カランや機械がすぐにだめになるぐらい硫黄が強い、とのことだったのでさぞかしpH低いかと思いきや7.4とほぼ中性。鹿の湯のpH3弱とは大違い。でもしみじみと肌あたりのいいお湯で、ストレッチしながら50分ぐらい浸かっていられた。身体がポカポカ。そして身体拭いても硫黄と石油の匂いがいつまでも取れない。最悪着られなくなってもいい服を着て行って大正解、だって脱いでも服に着いた匂いが取れないんだよ。それぐらいのお湯ってことでもある。こちらのブログで早乙女温泉教えていただきました、ありがとうございます!情報の海で溺れてしまう世の中、こうやって情報を取捨選択してもらえると本当にありがたい。

takachi.hatenablog.jp


そして硫黄の匂いを引き連れながら、祝日で閉まっているだろうと思いつつ駄目もとで仙禽へ。以前ランニングで北千住に行き銭湯「梅の湯」に入った後、目の前にある居酒屋「やすらぎ」で飲ませてもらった立春朝搾りの仙禽の酸味と甘みのバランスが途轍もなく旨くて忘れられず、さくら市に行くことがあったら必ず酒蔵に寄ってみようと心に決めていたのだ。

何でこの辺りには花崗岩を使った蔵がたくさんあるのだろう。米が沢山取れてみんな豊かだったということだろうか。仙禽も花崗岩造りの建物。仙人に仕える鳥、という由来だが、看板からして超カッコいい。

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中を覗いてみるものの人影はなく、直売所のようなものも残念ながらなかった。だがイメージ通りの酒蔵だったのでそれが確かめられてよかった。すぐ近くの酒屋に行き、モダン仙禽雄町の4合瓶を買い求める。

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酒の仕込みに使う水と田んぼの水が同じようにするドメーヌ化を行っているという。私の大好きなブルゴーニュのワインを思い起こさせる。口に含むとまず甘みが広がるとともにアルコール分が立ち上がるのだが、柔らかな酸味がアルコールの角を削って落ち着かせる感じ。その後旨みが押し寄せてくるのだが、全然重くなく飲み疲れしない。ムルソーと比べても負けない日本酒が、2000円でお釣りがくるというのはすごいことだ。フランスのワインと比べてどうこうというのも少し失礼なほどの独特の旨さと主張がある。いつもスコッチウイスキーばかり飲んでいるけれど、実は灯台下暗しなのではないかという気が猛然としてきている。

家人からはまたバイクに乗って仙禽買いに宇都宮の先まで行って来い、と煽られている。先入観なく色々試してみるのも本当に面白い。素晴らしい鰻と素晴らしい温泉と素晴らしい酒が揃う栃木は凄い。またこの3点セットで訪れたい。

 

 

 

 

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八景島と横須賀

バイクで金沢八景野島公園まで行ってみた。海の横にあることもありずっと「やちょうこうえん」だと思っていたが実は「のじまこうえん」だったことを知り、軽く衝撃を受けた。

四半世紀ほど前、親が転勤で大阪から東京に戻ることになりどこに住むか検討していた時、「横網」というところが候補に挙がっていた。相撲大好きな私は「国技館も近いし『よこづな』なんて最高」と舞い上がっていたが、その後「よこあみ」だったことが判明してテンションだだ下がりだったことを思い出す。

野鳥公園ならぬ野島公園に何の用があったのかというと、こちらのブログ読んでいたら金沢八景の忠彦丸本店の生海苔がこの時期旬で超美味い、と書かれていて(記事のかなり下の方です)居ても立っても居られなくなり、というのは大げさだが早速買って食べたくなったのだ。本当は時間があればYokosuka軍港めぐりを体験したかったのだが、家庭の事情で3時間一本勝負。都心から片道50㎞ほどなのでほとんどピンポンダッシュかタッチアンドゴーのような状態。

車だと何でもないのだが、バイクだとベイブリッジ渡る時は下の見えない中央寄りの車線走らないと怖い。高所恐怖症気味なので。磯子から三渓園、幸浦までは空いているうえ超高速コーナーの連続で、車で走る数倍気持ちいい。幸浦で高速降りて少し走ると野島公園

忠彦丸はすぐに見つかり、色々試食させていただいた上、生海苔、海苔の佃煮と焼き海苔のはねを仕入れる。とても親切なお店の女性に「どこで食事したらいいですか?」と伺ったら「アナゴの天丼ならカリビアンさん、お刺身なら八景島のシーサイドスパの中のレストラン」とのこと。ネーミングと料理のギャップが激しいカリビアンさんに行ってみることに。

野島公園駅目の前の交差点のビルの2階にあるスナックの居ぬきみたいな店に入ると、ちょうどオリンピックの男子スケートフリーの演技が行われているところだった。壁を見るとやはり、「あなご天丼のカリビアン」と書いてある。それもネオンサインで。 

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「あなご天丼のカリビアン」級の破壊力を持つネーミングは他にないかと知恵を絞ったが「おふくろの味 ニューヨークグリル」「本格中華料理 タージマハール」「元祖もんじゃ焼きの店 道頓堀」ぐらいのパンチの効かないやつしか思いつかない。夜は「あなご天丼のカリビアン」ってネオンサインが光って駅から見えるんだよ、インパクトすごくない?カリビアン恐るべし。

そして羽生結弦選手の金メダル演技が後半に差し掛かるときにやってきたのがこちらの野菜の天ぷら盛り合わせ入りアナゴ天丼、880円也。想像以上にでかい。

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見た目よりも意外とあっさり食べられる気がして、また時間もあまりなかったのでさくっと完食。穴子の量が少ないので穴子好きは穴子天丼を頼んだほうがよろしいかも。「あっさりしている」というのはやはり勘違いに過ぎず、中年というか初老男性の胃にはダメージ大、著しく食欲減退。晩御飯は鴨鍋にしようと合鴨肉を築地の宮川食鳥鶏卵店で1㎏近くも買ってしまったことを思い出して激しく後悔。だが高級食材を無駄にするわけにもいかず、意地っ張りなうえに食い意地も張っているので胸やけしながらも完食したよ鴨鍋。

宮川食鳥鶏卵店では鴨鍋用に切ってください、というとちょうどいい厚さに切ってくれるのでありがたい。ちょっと脂身残してもらって焼きつけたほうが上品な脂が出てよりよかったかも。家族3人では合鴨肉1枚だと物足りず2枚だと微妙に多い。でも相変わらずうまい。

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そして若干の残尿感的なものがあったので(加齢とは関係ない)2週間後家族とともに八景島に再訪、その前に念願のYokosuka軍港巡りにチャレンジ。戦艦三笠は見たことあったのだが、横須賀軍港は初めて。

アクアラインの渋滞が湾岸線までつながっていて予約した10時のクルーズの時間に間に合わないかと思いドキドキしたが何とかなった。横須賀インターから本町山中有料道路にでてしばらく走るとショッピングセンターが見えてきて、そこからすぐ船に乗れる。

出航するといきなりディーゼル潜水艦が見えてテンション上がる。船の上から兵隊さんが帽子を振ってくれる。

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iPhone Xで撮った動画がこちら。結構近くで見られるのが分かるかと思う。


横須賀軍港めぐり 掃海母艦うらが、試験艦あすか

原子力空母ロナルド・レーガンも入港中。保安上の理由でそもそも陸地から軍港を一望できるところはほとんどないが、その中でも一番奥まったところで作業中。ひたすらでかい。

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天気も良く、沢山船も見られて小一時間ほどのクルーズは想像以上に楽しく、「なんで土曜日なのに早起きして出掛けるのよ」とやや機嫌の悪かった家人も満足した模様。軍港巡りのボートは右舷に乗らないと船が見えにくいのでご注意あれ。

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その後はヴェルニー記念館を冷やかし、どぶ板通りを歩いてハニービーでハンバーガー食べる。米軍横須賀基地のど真ん前、ほぼアメリカのダイナー。

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割としっかりした肉の感触が残るパティで、超旨いわけではないけれどアメリカの田舎町で食べたハンバーガーを思い出す。開店とほぼ同時に入ったが、食べ終わって店を出ると長蛇の列ができていた。「横須賀市民の方ですか?」と聞かれたがそうだと答えると何かいいことがあるのだろうか。(多分観光客と地元の人で値段がこっそり違うのだと思う)

そして16号線を北上し、改めて忠彦丸の海苔を買いに行く。娘は先日買ってきた生海苔の佃煮がえらく気に入ってすぐ食べてしまったので追加購入。大人にはわさび入りの佃煮がお勧め。そしてあおさ入りの焼き海苔も。家で手巻き寿司作るときにいい海苔を使うと美味しさが全く違う。試してみてください。

じゃあ帰ろうか、と幸浦に向かっていたら、小柴漁港の入り口に大漁旗が掲げられている。何か買えるかも、と思って車で入ってみると、ちょっとしたイベントをやっていた。小柴といえば江戸前のシャコ、というイメージだったのだが今はもう取れなくなってしまい、ホタテの養殖とアナゴ漁、海苔の栽培がメインのようだ。

f:id:KodomoGinko:20180310102508j:plain棒の先に糸を垂らしてクリップを付けたものをホタテ貝の隙間に突っ込んだらパクっとくわえて離さないのを引っ張り上げる、というちびっ子向けホタテ釣りをやっていて、娘はそれでホタテを1個確保。大人は1個250円のホタテを買い、その場で炭焼きにしていただいた。歯ごたえがしっかりして甘く、上品な旨みが凝縮されていて味付けなしで全く問題なし。次回はアナゴを買って家の七輪で白焼きにしておろしたてのワサビで食べたい。想像するだけでも幸せになる。

帰宅して生鮮食料品の充実した近所のスーパーで刺身買ってきて、忠彦丸の焼き海苔使って手巻き寿司。イカは醤油ではなく、大葉をしいて生海苔の佃煮とわさびを乗せて食べると旨い。横須賀は都心から1時間ほど、やはり軍事施設があるところは厚木にしろ横須賀にしろ交通の便がいいのでありがたい。近場なのに様々楽しめるのでおススメします。

 

 

 

 

 

 

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 f:id:KodomoGinko:20180310112723p:plain金沢八景 忠彦丸海苔|神奈川県横浜市金沢区野島|野島名産海苔 養殖/製造/直売/販売

サービスに対する正当な対価について

近くの駅前にある書店が閉店になった。40年の歴史があったのだという。ベストセラーと雑誌と漫画しか置かないしょうもない店が多い中で、面白い人文書や歴史書などを置いていて、立ち寄るとこれまでそのテーマに興味を持ったことのない本が平積みにされているのを見てなぜかつい手が伸びる、というような不思議な気づきと出会いを生んでくれる店だった。大きな本屋でも全くセレンディピティ、偶然の出会いを感じさせない店もあるので、在庫の多寡にかかわらず何か目に見えない導きを生み出すことができる空間だったと思う。

NHKも取り上げた話なのでご存知の方も多いと思うが、ウェブを見ると「言うのも恥ずかしいぐらいの給料」で経営していた、と書いてあったのを読んで改めて小さな衝撃を受けた。

本屋のおじさんも「店を畳んでは地元の皆さんに申し訳ない、本屋をやっているのはお金儲けだけ考えてのことではない」と思って歯を食いしばって頑張っていた部分もあったと思う。けれど、そのようなほとんど目に触れることのない日常的な地元への貢献は、閉店という非連続的な突然の出来事によってしか人の意識に上ることはない。残念なことだが、現実はそうなっている。私だってあの本屋の丸眼鏡のご主人が「正直人に言うのも恥ずかしい給料しか取っていなかった」ことなんて全く思いも及ばなかった。それを聞くと自分勝手に「いい本屋だったのに」とか「街から本屋がなくなるのは残念だ」なんてさらに言えなくなった。

このお店があることに感謝しています、という気持ちをいくら伝えたところで、本屋のおじさんが老後を心配しなくていいぐらい儲かったりはしない。私がAmazonで本を買うことを止めて街の本屋に多くの本を発注するようにすれば店が潰れずに残ったのかというとそれも現実的ではないだろう。だから仕方のないことだったのかもしれない。街のレコード屋も八百屋も魚屋もどんどんなくなっているのだし、それも時代の流れなのだ、と片づけてしまうのは簡単だ。だけどなぜだかわからないが簡単に片づけてしまっていいのだろうか、とずっと引っかかるので、いろいろ考える。

本は定価販売されているので、様々工夫している店の方がその他大勢の店よりも経済的に報われる仕組みはあまりない。売り上げ全体が変わるかもしれないが、例えば同じものを三越で買うと3000円払うけどドンキでなら1500円しか払わない、というようなドラスティックな違いは生まれない。良質なサービスはタダでも受けられる、というままだとサービス業の人の生産性は絶対上がらないだろう。だとすると日本にチップという習慣ができれば、あるいは心付けという一度廃れた習慣を復活させられれば、幸福書房のような事態、すなわち他の店と差異化を図る努力があまり報われない状況、を避ける手段なのかもしれないと薄ぼんやりと思う。なぜ薄ぼんやりなのかというと、そのような習慣をどうやって浸透あるいは復活させればいいか思いつかないからだ。

ちなみにアメリカに行くとスターバックスだろうが本屋だろうがレジの横にチップを入れる箱を置いているのは珍しくない。またバーテンダーやヘアサロンのスタッフなどは給料は安い代わりにチップが手取りの半分以上を占めているようなケースも少なくない。いいサービスをしている人、付加価値を付ける人が経済的にも報われる、というシステムになっている。

学校の先生にせよ、介護施設のスタッフにせよ、看護師にせよ、あるいはバーテンダーもそうかもしれないが、幸福書房の店主のように「誰かのために私が頑張らないと(ただし見返りはなく、感謝の声すらかけてもらえないことも多い)」という個々の責任感を搾取されている状況がいろんなところで起きている気がする。

そしてそれは「日本人なら当たり前」的な直接的でない心理的強制が生んでいる気がする。それは以前も触れたPeer Pressureの違った形かもしれない。オリンピックが近づくにつれ、「日本人なんだからおもてなしして当たり前でしょ、見返り求めるなんて」みたいなサービス業に従事する人たちの責任感を搾取する謎のプレッシャーが強まらないといいな、と思う。

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最近渋谷のバーでこんなの飲んだ。バー11さん、という行ったことない向けのIchiro's Malt。池袋、だからフクロウなのか。2011年12月蒸留の6年ものだから、去年の祭ボトルと結構近いものだと思われる。

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このボウモア9年シェリカスクマチュアード、強くお勧めします。わざわざ個人輸入までして手に入れたのですが、今また結構な本数が日本に入ってきているようです。 


 

 

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オチのない最近の飲み食いの記録 2018年2月

築地場内 山はら

会社の同僚が、「このブログ読んでみてくださいよ、行きたくなりません?この店」とメールを送ってきた。久しぶりに読んだよこんなに前のめりなブログ。

barzam154.hatenablog.com

でも読んだ後、築地が移転してしまう前に一度は行っておかないと、と猛然と思い、越乃寒梅の大吟醸、宮城峡、知多、ニッカカフェモルト等を持参の上で40年ぶりの寒気が東京を襲う中、築地場内を目指す。

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熱く語るのは避けるが、湯引いた鯛やマグロからしてすごい。 f:id:KodomoGinko:20180212003256j:imageそして焼いた鯛がまるっと一尾鍋に沈む。出汁をとるために。香ばしさがスープに染み出る。f:id:KodomoGinko:20180212003314j:image
アンコウがやってきた。土手鍋みたいにぐつぐつ煮るのではなく、しゃぶしゃぶっとして食べるのだ。

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そしてペーパータオルにくるまれたあん肝がやってくる。見るだけで足の親指の関節がうずく。

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鍋が完成。大人数で行かないと物凄いボリュームで最後まで美味しくいただけないので注意。最初に入れた鯛の身もほぐしながら食べる。そして〆の雑炊。正直ここまでたどり着くのは大変で、大食いの男性10人で鍋を二つ囲むぐらいがちょうどよい。

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豊洲に行くと今の値段では到底やっていかれないということで、移転までの営業、その後は店じまいだそう。行ってみたい方はお早めに。
ごちそうさまでした。

熱海網代 さつき鮨

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伊豆の実家にバイクでふらっと向かう途中、あ、そういえば網代の鮨屋で旨いところがあるとどこかに書いてあったな、と思い出し、立ち寄ってみた。
国道沿いから一本山側に入った道をちょっと曲がったところ。一度泊まってみたいと気になっている大成館という旅館の近く。

3連休の初日の午後1時半ごろだったのだが、暖簾をくぐると先客はなく貸切状態。ご主人に上にぎり一人前をお願いするとテンポよく握ってくださった。タネが少し薄めだが長いのが特徴。シャリも少し平たいのが珍しい。握ってもらったらすぐ食べるようにしているので写真は撮らずじまい。最初に中トロが出てきて少し驚く。赤身と〆たアジが気に入った。クラシックなお鮨。

バイクに戻るとなぜか左後ろのウインカーのカバーがなくなっていて電球がむき出しになっていた。どうしたんだろう。謎だ。

香取 いちご狩りと佐原 小堀屋本店のそば

そういやこの時期は毎年いちご狩りに行っている、というのをすっかり忘れていたのだが、Facebookが思い出させてくれた。

首都高に乗って東関道を佐原香取まで。都心からは1時間程度。水の郷さわら、という大きめの道の駅があるのだが、国道を挟んで反対側にあるのがいちご狩りができるさわらリバーファーム。比較的新しいので空いており、去年から我が家のいちご狩りはここ。

今年は例年より寒いこともあって、2月第一週の時点ではまだ少し早く、去年と比べて熟していないいちごが多かった。でもご覧のように大きいものもちゃんと見つかる。
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お腹いっぱいになるので、お昼ごはん食べずに行くのがお勧め。

その後、あみプレミアムアウトレットで家人の買い物に付き合い、また佐原に戻って小堀屋本店で軽くそばを食べる。昆布が練り込んである黒いそば。

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べらぼうに旨いわけではないが、雰囲気とのど越しがよく楽しめた。その向かいにある古本屋の老夫婦が一丁ずつ手焼きで焼いているたい焼きも旨いのでお勧め。

来年のための備忘録的に書いておくが、佐原の山田屋 別館という鰻屋が美味そうだ。鰻好きとしては一度行かざるを得ないだろう。

帰り道、クルマに積んできた家の中で使っていない家具やランプなどの電化製品を四街道のブックオフの家具版みたいなところで処分。粗大ごみで捨てるとお金がかかるのに、ほんのわずかな値段ではあるものの値付けしてくれて引き取ってもらえて助かった。断捨離できてクロゼットがすっきりしてよかった。

神田 三州屋f:id:KodomoGinko:20180212003637j:image

居酒屋放浪記でも登場する神田の老舗の居酒屋。いわしの煮つけが旨い。マラソンを走った後、グリコーゲンを使い果たしたせいかめっきり酒が弱くなり、焼酎のお湯割り2杯飲んだら酔いが回るようになってしまってあまり長時間楽しめない。刺身の盛り合わせも角がきりっと立っていて新鮮さがよくわかる。いつ行ってもにぎわっている、というのがよくわかる老舗だった。 

代々木公園 タラモア

安定のタラモア。ガストロパブ、という呼び名がいいと思う。食べ物がちゃんとしているパブ。スモークされたサバとともに先日家飲み用に大人買いして未開封だったTullibardine The Murrayを頂く。

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まだ若いからアルコールのアタックが若干強めだが、その奥にはファーストフィルバーボンバレルならではのフルーツ感と麦芽の甘さが感じられ、余韻もしっかりして楽しめた。これは我が家で口開けするが楽しみだ。3本まとめ買いして正解。

そして柔らかめのシェリー樽熟成を、と言ってゆかさんに出してもらったのがOld Pultney Pentland Skerries。綺麗なシェリー樽熟成で、好きな人は無限に飲めそうなぐらいスムース。

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リッターボトルでこのくらいのお値段だったら家飲みに最高ではなかろうか。

  

  

  


 

大阪にて:「最高にエロい」と称するガチャガチャにトライする勇者あらわる

久しぶりの大阪は私の知っている大阪よりも圧倒的に寒かった。日中の気温は3℃ぐらい、風がびうびう吹いていて氷点下の体感温度。間違ってコートを着ずに飛行機に乗ったので、あまりの寒さにかき氷を食べた時のような頭痛に襲われる。

昼飯は大阪名物お好み焼き定食。食べたかったミックスモダン焼きは時間がかかるというのでしょうがないなあ、と思いながら注文。おにぎりをおかずにご飯食べるみたいなもんだ、とかこれまで東京でネタにして茶化していたが、食べてみるとお好み焼きのソースと白いご飯が意外にマッチし、同行した同僚と少しうなった。
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いつもなら仕事の後は街をうろうろするところだが、あまりの寒さに元気をなくし、いつも拝見しているこちらのブログで紹介されているお店に行く。「民芸酒房 牧水」という法善寺横丁の近くにある店。

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店に入ると「おかえりなさい」と迎えられる。スタッフの女性は皆さんお年を召していて、実家でオカンにつまみ作ってもらって食べさせてもらっているような気がしてくる。寒いときの定番、麦焼酎のお湯割りを頼み、少し悩んでいわしのきずし、カキフライを注文。きずし、ってなんだ?と思われる方もいるかもしれないが、関西では青身魚を酢で〆たものをきずしと呼ぶ。念のためだがお米はなくて刺身のみ、アクセントは「き」にはこないで「ず」にくるので東京の人が正しいと思うアクセントで注文しても一瞬???という顔をされると思う。東京の人が「木津市」というのを読む感じでアクセントつけるのが正解。3文字の言葉の大阪弁でのアクセントの置き方は難しい。そしてハタハタの唐揚げ。

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周りはやはり裕福な感じの帝塚山とかに住んでいそうな大阪のおじい様中心。そんな関西でいいものずっと食べてきている人たちの話すことを聞くともなく聞かなくともなくしているうちに身体も温まったので店を出る。

ふらふらと難波の近くの商店街を歩いていたら、道端にこんな謎の物体を発見。一回通り過ぎたが、あまりのインパクトに戻ってきて写真を撮った。こんなの東京にはないわ。




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「たった500円で人生最高のエロい笑顔が生まれます 悩んでないでレッツガチャ‼」って言われても。これが怪しい一角の怪しい店の前にあるならまだわかるが、東京でいうなら渋谷センター街の入り口のツタヤのちょっと先にある、ぐらいのロケーション。大阪ならでは。面白かったのでFacebookにアップしておいた。

そしたらなんと次の日に勇者があらわれた。私の大学時代の同級生、公認会計士事務所経営、から飛んできたメッセージ。

 

 

 

 

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流石に大阪在住の人からしてみても面白かったようだが「後学のため」という枕詞はこんな時に使うものではない気がする。1年以上無沙汰だったくせにここに食いついて連絡してくるとは…。いい友人を持ったものである。

 

 

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インパクト絶大のガチャガチャ、それをスーツ着た格好で一人でガチでやっているだけで結構周りはドン引きなはずだが、そのガチャの写真写真撮ってる時点でヘンタイだ。白鵬に負けた後にずっと土俵下で行司の軍配に抗議するふりして手を挙げたまま土俵に上がらないぐらいの真の勇者だ。何が彼をそこまで駆り立てたのかはよくわからない。


 

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東京ならこの写真を外で撮っているだけで通報されても文句言えないかもしれない。しかしこの写真だけだと今一つ史上最高のエロい笑顔がでるとはとても思われない。そもそもそんなもの500円で期待する時点で、50年弱生きてきた人生から何も学んでいないとそしられても文句は言えない。

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…。今度会った時に金渡そうと思っていたのだが残念なことこの上ない。しかし今度大阪で自分がやるには恥ずかしいけど興味津々、というときにはK会計事務所の所長がやってくれるということが分かった。自分で恥ずかしい思いして500円払って男物のパンツ出てきたらちょっと打ちのめされる、のでやはり私の友人は勇者だ。だがそこから意外な展開が。

 

 

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誰がガチャやったか、特定されたら恥ずかしいぐらいの羞恥心は残っていたようである。しかしやはりもう一度眺めてみると女性用かも。いくら新品とはいえ、女性用のパンツの写真を外で撮っているスーツ着た公認会計士の姿を想像してみたらさらに笑えた。大阪の懐の深さと友人のブレイブハートに改めて衝撃を覚えたせいでいつもと大分違う路線の記事になってしまってすみません。

 

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好きなレストランを応援するということ

応援しているレストランがある。当たり前だが応援しているということは何らかの理由があるからなのだが、あまり真剣にそれについて考えてみたことがなかった。しかし今回とあるきっかけがあり、なぜ自分が応援したくなるのかを改めて考えてみた。

やはり一生懸命に美味しいものを作ろうとしていることが伝わってくると応援したくなる。もちろんすべてが口に合うとは限らないわけだし、現実問題として毎回ベストの一皿が出てくるとは限らない。例えば鮨だと魚の一番おいしいところは先ほどのお客さんに食べられてしまった、なんてことは普通にあり得る。野菜も肉も魚も、同じものは一つとしてなく、出汁の入り方も気温や湿度や素材の出来によって毎回変わってくる。でも一生懸命やっていらっしゃることを知っていれば、たまに少しのハズレがあってもまた来ようと思える。私が応援しているお店ではそうそう外れることはないが。

その延長線上で、来るたびに、とまでは言わないもののお邪魔すると新しい発見や驚きがある、というのも大事だ。いつも一定以上のクオリティの安定した味、というのは大歓迎だが、驚きがないと何度も来ようとは思わなくなってしまう。違う言い方をすると、常に進化し続けていて欲しい、ということになるのかもしれない。
生鮮食品の生産技術、流通や保存方法も日進月歩、昔と比べて食材の平均的なクオリティは間違いなく上がっている。だからそれに合わせて工夫ができる料理人と伝統に固執し続ける料理人ではどうしても差がついてきてしまうのでは、あるいは家で素人が料理するのとの差が埋まってしまうのでは、と思う。それだとそれなりのお金を出して、わざわざ何度も食べに出かける意味がないではないか。

心地よく食事できること、というのも重要だ。味だけではなくてそのレストランでの体験をもう一度味わいたいか、というのが再訪したいかどうかの分かれ道。どんなに美味しくても、寛げないと楽しくない。料理人から勝負を挑まれることは喧嘩上等、受けて立ちたいと思う気持ちもあるが、現実としてはせめて仕事じゃないときぐらいリラックスしたい。客に妙な緊張感を与える店もあるが、結果としてそういう店には味が良くても足が遠のいてしまう。それが店のせいではないときもある。例えばお店を紹介してくれた人が私にとって難しい人だったりすると、いつその方がその店に現れるかと思って寛げず、気が付いたらお店もお店の味も好きなのだが伺うのが億劫になってしまう、ということもある。
あとは自分の好みを覚えていただいている店はありがたい。私のためだけに仕入れをするわけではないのだろうが、「今日はYさんのお好きなホワイトアスパラガスのいいのがあったので仕入れておきました」などと言われたら当然居心地はいいし、また来ないわけにはいかないではないか。

気軽に何度も訪問できるぐらいバカ高くないことも大事。でも安ければいいというわけでもない。ちゃんとした材料を使って手間暇かけて作った料理を出していらっしゃるのだから、それなりの値段は取っていただいて構わない。利益率が低く、お店に儲けが出ないといろんな意味で疲弊してしまう。客筋も悪くなるし。変に雑誌やウェブで「値段の割に安い!」なんて取り上げられると一見の客が増えて予約も取れなくなって結果的に常連の足が遠のき、一過性のブームが去ると店の経営が安定しなくなる。だから、ちゃんとしたお店は高過ぎない、そして安過ぎることもないちゃんとした値段をとってもらいたい。

実は私にとってこれらの条件をすべて満たした店が2つある。一つは今流行りの奥渋、渋谷神山町交差点の近くにある鮨屋。10年以上お邪魔しているが、ここは紹介する人が皆驚くほどのクオリティの高い鮨が夜でも1万円ほど払えば食べられる。二年ほど前に、病院の待合で「おとなの週末」という雑誌の鮨特集を見ていたら、編集長が取材拒否された店、というコラムに書かれている鮨屋がまさにこの店としか思えなかったので大将に聞いてみたら、「一人でやっているから勘弁してくれ、って断ったんですよ」と言っていた。仕入れる魚もいいし、仕事も丁寧で、常連に愛されている店。一人でやっていらっしゃる上に場所柄もあり、周りのペースに合わせて注文ができる大人のお客さんのみ来てもらいたい。

そしてもう一軒が、こちらも渋谷だが青山寄りにあるステーキの店。かつてはお客さん全員分の塊肉を窯で焼いて、8時の焼き上がりとともにみんな一斉にメインを食べ始める、というスタイルだった店。今はいつお店に行っても大丈夫。ここのシェフの感覚の鋭さにはいつも驚かされる。例えば下の写真、宮崎の有田牛のステーキが美味いのは言うまでもないが、付け合わせのルッコラバルサミコとチーズのソースが秀逸。肉なしでこれだけ出てきたとしても問題のないクオリティ。酸味とパルミジャーノの塩味、甘みの均衡が取れていて、野菜のうまみを邪魔するどころか強く引き出す素晴らしいソースだった。
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窯で焼くスタイルなので食材の良しあしに大きく左右されるところがあり、素材に相当こだわっていることが分かるうえ、それをさらに引き出すための工夫が素晴らしく、いつ来ても驚きがある。こちらは鰤のかまと白子、ホワイトアスパラガス添え。ネギとアンチョビのソース掛け。
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今週この店に大阪の友達を連れて行った。東京で何か美味しいものを食べたいのでお店紹介して、という挑戦的なリクエストを受けたので。お店に入ると、フロアを取り仕切る(といってもそれほど大きい店ではないが)Yさんが素敵な笑顔で迎えてくださって、前回座ったカウンター席、お店で一番静かな席に通してくれる。私の好きなワインはメルローなことも、私がホワイトアスパラガスが好きなことも、ショートカットのとてもよく似合う彼女は全部覚えている。

7時から食事を始めて8時過ぎたころに、突然友人が「8時50分過ぎの山手線に乗らないと」と言い出す。てっきり今日は東京で一泊してから大阪に帰るのかと思っていたので油断していて、まだメインの肉料理が出てきていない。慌ててお店に伝えたら、全く動揺することなく「大丈夫です」と言ってくれる。ここでスタッフが浮足立ってしまうとこちらにも慌てる気持ちが共振してしまうのだが、全く動じずサービスが続いたことに舌を巻いた。

東京に不慣れな友人が新幹線の終電乗り過ごしても困るので、デザートの後渋谷の駅まで送り、バタバタさせてしまったことへのお詫びをしたかったのでお店に戻る。私の一杯のためだけにメルローのボトルを抜栓してくださったので流石にもう少し飲まないと申し訳なかった、ということもある(が、結果的にはチェックをすでに終えています、とのことでお代を受け取っていただくことができず、却って申し訳ないことをしてしまった)。

一人で飲んでいたら、気遣ってYさんがカウンターの横に来てくださったので、初めてゆっくりお話しできた。折角の機会だったので今日の料理もとても素晴らしくいろんな発見があったことをお伝えした。いつ来てもよくしてくださることにもお礼を言った。

そんな話をしていたら、彼女が「私、先週まで入院してまして」とおっしゃられたので心底驚いた。それも乳がんが見つかって、3週間ほど入院して切除されたそうだ。言われるまで全く気がつかなかった。食事中にサーブする自分に対して客に気を遣わせても、というプロ意識も当然あったのだろうが。
手術は上手く行き、転移も見つからず、無事に仕事に復帰でき、本当に何よりだと思った。彼女のいないお店は、ちょっと私には想像できない。そう思うと、なぜこの店に何度も来てしまうのか考えさせられた。それが先ほど挙げた、店を応援したくなるいくつかの理由だった。

お店を応援していることをこの機会に伝えられて良かった。娘にはお店で美味しい料理をいただいたら、ちゃんと美味しかったですといいなさい、と言っているのに、自分ができていたかといわれると疑問。違いが分からない客に対しても分け隔てなく一生懸命努力しサービスし続けられるほどハートの強い人はそんなにいないだろう。一生懸命料理を作ってくれる店が好きだ、と思うのであれば、「ちゃんとわかってますからねー」とカウンターのこちらからやはり強くフィードバックしてあげたほうが当然作っている方のやる気も出るだろうし、そういうお客さんが来たら頑張らないと、と思うのが真っ当なサービス業の人の矜持だろう。結果として、そういう客には一番の出来の皿が回ってきて、一番のサービスが受けられるはずだ。あくまでも結果として。あざとい意味でなく。

感謝の気持ちは、出来ればその場で相手に伝えたい方がいい。それはレストランであっても、バーであっても、家族であっても、友人であっても。頑張って自分の思いを相手に伝えているつもりでいても、感覚的には相手に2割ぐらい伝わっていたら上出来だろう。だから強く意識しないと、自分の思った通りの思いはなかなか伝わらない。そしてそれはお互いのためでもある。繰り返しになるが、あざとい意味ではなく。

次に仮に万が一がっかりしたことがあれば、それを上手く伝えられるような大人に私はなっているだろうか。そして良かれと思ってわたしの良くない点についてわざわざフィードバックをくれる人に感謝できるような大人になっているだろうか。そんなことを想い、少しだけ背筋が伸びた。Yさんにいつまでも元気でいてください、応援しています、と改めてメッセージを送っておいた。少しプライベートなことを含む内容なので、敢えてお店の名前を出してはいないが、機会があれば見つけて行ってみてください。

 

 

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酒飲みの考える「幸せな人生」の定義

酒を飲まない夜はなぜこんなに長いのだろう。いつもならアルコールの力を借りて昼間の緊張をほどいていくのだが、飲まないと自分の中のスイッチが入りっぱなし。田舎のコンビニか、と自嘲したくなる。周りが寝静まって真っ暗な夜更けに、ぽつんと一軒場違いにまばゆい光を放ち続ける田舎のコンビニ。

仕事の緊張を家に持ち帰りたくなく、帰宅前の少しの時間に気分転換をしたいのだが、飲まないとなると中々そんな場所は見つからない。唯一あるとするとジムぐらいだが、そもそも今回禁酒をしているのは週末のマラソンのため、レース前で運動も控えめにしておりジムにも行かれない。

場違いなテンションを下げるために仕方なく帰宅後読書したりウェブを眺めたりするのだが、何だか時間の流れがゆるやかだ。この手持ち無沙汰感はいったいなんだろう。そう考えてみてふと思った。これはもしかして定年退職後のサラリーマンが毎日感じるものと近しいのではないか。あくまでも想像にすぎないが。

そう思うと少し恐怖感を覚えた。仕事を離れて多くの人との関わりあいを失い、仮に金銭的には不自由なかったとしても自分が誰からも必要とされず時間を持て甘しながら緩やかに死を待つことを想像してみた。なかなかぞっとする。
そして手持無沙汰ついでに「幸せな人生とは何か」について考えてみた。

人との関わり合いであったり、金銭だったり、名誉だったりと幸せを象るものは沢山あり、その多寡で人を羨んだり思い煩ったりする人は多いが、そういったものを人生のどのタイミングで得るのがいいのか、という議論はあまり聞かない。

最近話題になったかつて一世を風靡した音楽プロデューサーのように、若いうちに自らの才能により人並み外れて成功して誰もが羨むような生活を送るものの、どこかで歯車が狂い超大金持ちから普通の金持ちに転落(?)した上、自分の才能の枯渇を毎日誰よりも強く思い知らされながら生きるというのは、彼の歩んだ道程をならして見ると圧倒的に幸福の総量は多いはずだが、「今幸せを感じているか」という意味では普通の人に大きく劣るかもしれない。それに似た最も分かりやすい例の一つは宝くじで大金を得た人だろう。一番幸せなのは当選した時点で、あとは右肩下がり。最初は散財して幸せを実感するものの冷静になるといつ金がなくなるかびくびくし、金があるうちには人は集まってくるがそのうち人は離れていく。おそらく幸せに人生を全うした人はそう多くないはず。

つまり、例えば人生の半ばで幸せのピークを迎えてそれがどんどん減っていく、という人生を送る人よりも、幸せの合計量は多くなくても右肩上がりに幸せを感じられる人生を歩む人の方が人生の幸福感は強いのではないか、と思う。
違う言い方をすると、幸せ(もしくは幸せを表象する富や周りの人たちや才能その他)の絶対量が重要なのではなく、かつての自分よりも今の自分の方が幸せと感じられるか、明日の自分の方が今の自分より幸せだと信じられるかどうか、という時間連続的、相対的な幸福感が一番重要なのかもしれない。

嘘だと思うなら、若いうちに大成功して100億円儲け、周りに人が急に増えてちやほやされたが、ほどなく99億円を失って周りの人たちが離れていきそのまま寂しい人生を送る人と、ゆっくりと時間をかけて1億円を稼ぎ、少ないながらも仲の良い友人に囲まれている人とどちらが強く幸せを感じられるのか想像してみればいい。細かな振幅はあっても緩やかな右肩上がりの人生が、急激な右肩上がりを経験した後ずっと坂を下り落ちて重力には逆らえないことを思い知らされながら終わる人生よりもいいに決まっている。

そう考えると今この国で生きている人たちが昔と比べて何となく幸せな感じがしないのも納得できる。そんな中で願わくば最期に近づいても損得抜きでの人との関わり合いがある人生を生きたいものだ、と思う。

こんなことを暇に任せてつらつらと考えた。

だが悲観する必要はないことに気が付いた。いつもの店に飲みに出かければ、そこにはいつもの人たちがいる。お金を払う側と受け取る側、という関係だけではない何かがそこにある。酒が入れば知らず知らずのうちに自分が身に着けていた鎧のようなものも自然と脱げる。バーのカウンターでは誰が偉いとか偉くないとか、金持ちか金持ちでないかとか、若いとか年を食っているとかは全く関係なく、好きな人が好きな酒を飲む。そして不思議な連帯感がそこにある。一人で飲みに来ても、あまり寂しくもない。

しばらく酒を止めてみて、飲まない人生は随分とつまらなくなりそうで、飲めるということは本当にありがたいことだと改めて想った。

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