東京ウイスキー奇譚

こだわりが強すぎて生きていきづらい40代男性の酒と趣味への逃避の記録

ウイスキーの聖地アイラ島訪問の詳細は以下のリンクから。
訪問記 アイラ島 初日 2日目 3日目
蒸留所写真  Ardbeg1 Ardbeg2 Laphroaig1 Laphroaig2 Bowmore
アイラ島写真 
アイラ島への旅行についてのアドバイス エディンバラ2日目  グラスゴー

  

フィンランド湖水地方でサウナキメたらキマりすぎて怖いぐらいだったの巻

ヘルシンキからベンツのA180dを借り出して北東に300㎞超走り、フィンランド湖水地方Hotel & Spa Resort Jarvisydanというところに来てみた。

 

フィンランドの高速道路はマナーが良く、交通量も少ないこともあってとても走りやすい。地方道に入ると至る所にスピード違反検挙用のカメラがあって制限速度を守らないとえらいことになりそう。

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途中には未舗装路だけどめちゃくちゃ路面状態のいい道があり、クルマ90km/hぐらいでスライドさせて遊んでたらウトウトしていた家人が起きて怒られた。フィンランドのラリードライバー速いの分かるわ。

f:id:KodomoGinko:20190911215354j:plainヘルシンキから3時間ちょっとでホテルアンドスパジャーヴィシダン着。国立公園でアウトドアスポーツするときの前線基地的施設。温泉ランド的な大きなスパも併設。気持ちのいいところだ。
下の写真で見えるコテージに泊まった。薪ストーブがあって楽しい。

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スパ施設はこちら。湖に面している。

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宿泊者以外でも29.9ユーロ払えば入れる。場内はとても充実しており綺麗。大小5つのサウナがある。下の写真は男子更衣室から出てきて窓から湖を眺めるの図。

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上の写真の左側にあるのが大きなサウナで、15人は軽く入れそう。ただし大きいだけあってロウリュしても熱波がなんだかマイルドで、物足りなくて水をかけまくったらサウナストーンの温度が下がって若干悲しかった。

写真は撮らなかったが、女子更衣室出入り口の近くに高さ1.2m、直径60センチほどの円柱状にサウナストーンが並べられている3人しか入れない小さなサウナがあり、そこでロウリュすると小さなサ室に物凄い水蒸気が上がるのでめちゃくちゃととのいます。
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そしてこの大きなサ室を出たところに例の超大きな桶から冷水かぶる、というのがあるのだ!

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冷水かぶった後はここのドアから外に走り出して目の前の湖にザッパーンと飛び込むことも可能。推定水温16度。

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最初は湖に飛び込むかどうしようか外気浴しながら悩んでいたのだが、二十歳ぐらいのビキニ姿の女の子がサウナから飛び出してきて湖に飛び込んでキャッキャ言っているのを見て、おっさんでも照れずに飛び込まないと、と思い人生初めてのサウナキメてからの湖ドッボーン体験ぶちかましました。

微妙にドヤ顔しているおっさんのセルフィー画像がこちらになります。水風呂と違って羽衣ができないので短時間でめちゃくちゃ身体が冷やされてととのうのが早い。

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交互浴がすんだら屋内外にベッドもあってうとうとできるし、二階に行くと無料でハチミツ入りの紅茶が飲めたりブドウが食べられたりする。もちろんビールも(有料)飲める。天気が良かったこともあり一日いてもぜんぜん飽きない。

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家族連れで楽しんでいる人たちがたくさんいた。自分で薪ストーブ焚くのとかはめんどくさいし、リゾート楽しみたいわ、という人はヘルシンキから足を延ばして是非どうぞ。下の記事のリンナサーリ国立公園に行くボートはこのスパリゾートから出ております。

 

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ちなみにフィンランド帝政ロシア時代にロシアの属国だった歴史もあり、ウイスキーというよりウォッカ文化圏であまりモルトバーがない。もちろんリベットとかモーレンジとかのオフィシャルボトルはバーに行けば置いてありますが。

ビールはみんなやたらと飲む。高速道路横のサービスエリア的なABCというチェーン店でピザ頼んだら、ピザ一枚にサラダバー、ドリンクバーがついてきて12ユーロぐらい。ドリンクバーではなんと自家醸造した黒ビールと普通のビールが飲み放題。普通ドリンクバーでビール出すか?それも高速道路のインターチェンジ降りたところで。

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まあみんなそれぐらいビール飲むし、お酒も強いということなのだろう。ちなみに長くて暗い冬のせいかアルコール中毒が社会問題になっているらしく酒屋で酒を買える時間が法律によって決められていて夜や日曜日には買えないし、酒税も高いそうだ。


せっかくフィンランドに行ってもヘルシンキだけではもったいないのでぜひ足を延ばすよう強くお勧めしておきます。

 

 

 

 

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エストニアの熱海? パルヌでサウナの巻

ヘルシンキからフィンランド湾をフェリーで渡ったところにあるエストニアの首都タリン。そこからバスで2時間ほどまっすぐ南下するとビーチとスパで有名なリゾート地、パルヌがある。
東京でたとえると海もあれば温泉もある熱海もしくは伊東に行くイメージ。

遠浅の海、青い空、いいところだ。夏至の頃から7月終わりまでは混みあうそうだが、最低気温が10℃台前半にもなる8月終わりはご覧のように人はまばら。気温は晴れて23℃程度。
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街の中心部からまっすぐ海に向かってタクシーで1000円ぐらい、歩いても15分ぐらいのところ、迎賓館のように立派なアプローチのHedon Spa and Hotelがありそちらに2泊お世話になった。

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今回の旅の中で最もゴージャスなサウナ。どうやらロシアやドイツなどから裕福な夫婦が夏休みに来るようなリゾートらしい。

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写真のクリーム色の建物がスパ棟。この中に屋外・屋内プール、サウナがある。ホテルの部屋から水着の上にバスローブはおってスパへ。その恰好でホテルのロビーを通ってもスパホテルなのでOK。サンハトヤのようだ。大分違うけど。

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綺麗なジャグジーでは若いカップルからおばあちゃんの集団、お年を召したご夫婦など様々な方がのんびりぬるま湯につかっている。
こちらはちびっ子プール。

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この扉の奥にサウナがある。用を足しているようなピクトグラムがちょっとおかしい。

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恐らく温度は85-90℃程度、電気ストーブ。2段に分かれていて上段に8人も入ればいっぱいになりそうだ。サウナ好きの小学生のいる我が家チームと他の家族が鉢合わせることはあったが基本空いている。

サウナストーブに近づき、自分の好きなだけロウリュしたあと急いで最も湿度と温度が高くなる入り口近くのサウナ室の角に移動、熱波が頭の上から耳たぶをいたぶりつつ襲ってくるのを楽しむ。ここはマットではなく外側においてあるタオルを敷くのがマナー。
あまりに耳たぶが熱いと耳を手で覆う。サウナハットをかぶっている人はフィンランドでもエストニアでもついぞ見かけなかった。

そして体中の毛穴から汗が出てきて小さな玉を作り、それが大きくなって重力に耐え切れず滴り落ちていく。耐えきれなくなったらサウナを出てすぐ横にあるシャワーブースに向かい、白い縄を引っ張って巨大な桶に入っている冷水を頭からかぶるのが最高に気持ちいいのだ!

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縦型の洗濯機のドラムぐらいの大きさの木桶の中に、キンキンに冷えた水が入っていて、白い縄を勢いよく引っ張ればそれが塊のように頭の上に降り注ぐ。0.5秒ぐらいの滝行体験。でも水圧と冷たさで一瞬息ができなくなる。

初めの頃は一気に縄を引いて一気に水をかぶっていたのだが、ゆっくり縄を引いて冷水をちょろちょろと少量ずつ長い時間かぶって体を冷やすのも悪くないことに気が付いた。

問題は桶が大きいために前の人がザブーンとかぶった後で水が溜まるまで時間がかかること。水風呂がないのでこの桶の水をかぶるのが必須で、「もうそろそろ限界だー」というところまで引っ張ってサウナ出ようと思ったらさっと他の人が先に出てしまい桶の水を使われてしまった時の絶望感たるや半端ない。特にフィンランドエストニアでは水風呂がないので、この滝行をしないとととのわない。

日本でも恵比寿や五反田みたいな水風呂のないサウナはシャワーだけじゃなくて桶もつければいいのに、と思う。

でも水をかぶっている自分を想像して、昭和の話で申し訳ないが「オレたちひょうきん族」のひょうきん懺悔室みたいだな、と可笑しくなった。昔のビートたけしはカッコいいね。

ひょうきん懺悔室

冷水を浴びた後は屋外のプールに行き、外気に当たってととのう。湿度の低い風がゆるゆると吹いてきてとても気持ちがいい。ちなみにプールの水温は28度。

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サウナと屋外プールの間には簡単なカフェがあり、外気浴しながらアイスクリーム食べたりビール飲んだりカクテル飲んだりできる。レストランからハンバーガーを持ってきてもらってビール飲みながらプールサイドでくつろぐ、などもできてリゾートホテルならでは。

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そしていい感じにととのえば部屋に戻って昼寝しても良し、さらに徒歩3分の海まで行って海水浴しても良し。いいところでした。

以下おまけ。


タリンからパルヌに行くバスはいまどきの飛行機のイケてるエコノミークラスのように快適で、トイレやwifiはもちろんUSB端子、モニター画面までついている。

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タリンのバスターミナルは街の中心部からちょっと離れたところにある。バスターミナルは治安の悪そうなイメージだけど、タリンもパルヌもめちゃ綺麗で安全。ベンチで横になっていたらガードマンみたいな人が注意して回っていた。

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窓口のおばちゃんは英語が通じる。パルヌはPärnuと書くのだが、「パルヌ」行のバスのチケットを、というと「ペルヌ?」と聞き返されたので「ア」と「エ」の中間ぐらいの発音で「パエルヌ」というとエストニアの人に通じやすいのかもしれない。  

 

こちらが英語でも表示の出る自動券売機。私は使わなかった。事前にHPで予約しておくのがお勧め。1時間に1本ぐらいパルヌ行きのバスが出ているが、朝早い便は満席になっていた。

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バスは自由席ではなく、チケットにさりげなく座席番号が書いてあり、バス車内にもさりげなく座席番号が書いてあるのに注意。

タリンのバスターミナルには昔のバスがぴかぴかに磨かれて飾ってあった。ナンバーもついているし内装もきれいなので、そのまま走れるのかもしれない。濃厚なソビエト社会主義共和国連邦風味がエモすぎる。
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エストニアは1991年までソビエト連邦の一部だったこともあり、建物もロシア風味が強い。

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小樽とか弘前で見る洋館って、実はロシア風味だったことに今更ながら気が付いた。

リゾート地の割に物価は比較的安く(東京の8割ぐらいのイメージ)、食べ物もおいしいし、レストランもとてもおしゃれだし、のんびりするにはいいところでした。冬は人がいないそうなので念のため。



 

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サ道

サ道

 

 

 

ヘルシンキ中心部のサウナ Allas Sea Pool

フィンランドエストニアのサウナを紹介していこうと思いますがまずは初級編、ヘルシンキ

ヘルシンキ中心部からすぐ、朝からサウナ入れる素敵スポットAllas Sea Pool。パブリックなサウナは午後からもしくは夜しかやっていないところが多い中で平日は6時半、土日でも9時からやっているのは貴重。素晴らしい。

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どれぐらい中心部かを日本で喩えると、皇居のお堀や道頓堀の一部がプールになっている、とか横浜山下公園氷川丸の横がプールになっていてそこを水着でうろうろしている、ぐらいのレベル。プール出て走って行ったらヘルシンキで最も著名な観光スポットの一つヘルシンキ大聖堂まで2分で着きそう。直線距離300mぐらい。下の写真の中央の塔が大聖堂。

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上の写真の左側、鮮やかな水色のプールがちびっこプールで淡水の温水。その奥、というか下の写真で見えているプールが海水そのままのプール。透明度は絶望的に低いが汚かったり臭かったりはしない。

人が歩いている方からプールを見た風景はこちら。観光フェリー乗り場からもマーケットからもすぐなので、人通りがめちゃくちゃ多い。おっさんの水着姿なんかわざわざ見たくもないと思うが。

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水温は15度。水温計に藻が生えているのが分かる。小さな魚もプールで泳いでいるぞ。水深1.8m。海泳いでいるのと基本変わらない。まあ何のためにあるかは言うまでもない。これ冬に飛び込んだら痺れるだろうな。

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もう一つメインの大人向けの水深1.6mの淡水・温水プール、こちらは1レーンがガチスイマー用、それ以外がゆっくりスイマーやちゃぷちゃぷスイマー向け。

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世界遺産に登録されている「スオメンリンナの要塞」行のフェリーが出ている港の横でフィンランド湾が見られる。プーチン大統領がちょうどフィンランド訪問していて前日スオメンリンナの要塞にあるレストランで公式晩餐会があった模様。
f:id:KodomoGinko:20190902181327j:plainサウナはもちろん屋内にある。そもそもはこの施設はその名の通りプールがメイン。基本はメンバーシップのスイミングクラブで、そこのサウナ使わせてもらっていると思っておけば間違いない。フィンランドだと冬の間運動しにくいだろうから、温水プールとかでみんな運動不足解消するんだろうと想像。

1回利用券14ユーロを入り口で支払い、手首にリボンのようなリストバンドを付けてもらい、センサーをゲートにタッチして入場。フィンランドではよくあるが、そのリストバンドで丸いボタンを押しこんでやるとロッカーがロックされる。

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サウナは水着のままでも裸でも構わない。最初は私も裸になっていたけれど、水風呂ならぬ海水プールに浸かりに行くのに全裸で行くわけにはいかず、脱いだり着たりがめんどくさくなってきたので海パン履いていた。

この物入れの下にあるトイレットペーパーのロールみたいな、一辺40㎝ぐらいの正方形のビニールシートをお尻の下に敷いてサウナに入るのがマナー。

f:id:KodomoGinko:20190902181357j:plainサウナ内部はこんな感じ。全裸のおじさんがいないタイミングを見計らってちゃちゃっと写真撮りました。入口のほかに港と海に面した窓があり、そこから景色をぼんやりと眺めていると時間がどんどん過ぎていく。f:id:KodomoGinko:20190902181345j:plainちなみにフィンランドでもエストニアでもサウナハットをかぶっている人は全くいませんでした。その代りサンダルは必携。みんなビーサン履いてサウナに入る。

ロウリュは超適当にバサーっと水かける人もいれば、ちょろちょろ時間かけてサウナストーブの中に水流し込んでいる人もいてまちまち。まあ鍋奉行みたいなロウリュ奉行が必ずいるのでお任せするのが間違いない。「ロウリュいいですか?」みたいな断りを入れることは基本なかった。

バケツの水がなくなったら気づいた人が入れるのもマナーっぽかった。私がサウナ室出る時にバケツ持って水入れて戻ってきてまた出たら、「おおよしよし」という感じでロウリュ奉行に褒めてもらいました。

残念ながらヴィヒタ(榊みたいな葉っぱのついた木の枝で背中をパシパシ叩く)置いてあったところはフィンランドエストニア通して一か所もなし。葉っぱ散らかるからだろうか。

サウナで十分暖まった後はサンダルパタパタ言わせながら先ほどの海水プールにどぼんと浸かりに行くのだ。そしてプールの外側からの「えーマジでこの海入るのー?」みたいな観光客からの視線に耐え、ウッドデッキでととのい外気浴。

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ちなみに8月終わりで気温は多分22度ぐらい。寒くはなく日が当たっていると気持ちがいいが、意外に日焼けしてびっくり。東京帰ってきてから「夏休みハワイでも行ったの?」と聞かれて「いや北欧へ行きました」といったら怪訝な顔で見られるレベル。

カフェで水を買うと4ユーロ以上するので、受付のところで売っている水を2ユーロぐらいで買うことをお勧めします。

フィンランド来て一発目、もしくは帰国便に乗るまでの最後のサウナとしてお勧めです!

 

www.allasseapool.fi

 

 

 

 

 

 

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薪だきサウナを出たら湖にドボン! 本場フィンランドでサウナ好きの夢が叶うの巻

おっさんになって経験値上がると「死ぬまでにこれだけはやってみたい」みたいな夢がどんどん減っていってしまうのだが、久しぶりに超テンション上がってサウナ好きなら大興奮間違いなし、というのを本場フィンランドでやってきた。こんなやつ。 

サウナ小屋ひと棟借り切って自分で薪焚いてサウナストーブ暖めロウリュで湿度ととのえ、サウナで超気持ちよく汗かいてからもうこれ以上ムリーってなったところでサウナを飛び出して目の前の湖にドボン!!

その夢が叶った模様はこちらになります。

サウナ小屋を貸切にして。f:id:KodomoGinko:20190901145441j:plain

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裏の小屋からとってきた薪をサウナストーブに自分でくべて。
(ちなみに薪割り用の木と斧もありました)f:id:KodomoGinko:20190901144743j:plain

f:id:KodomoGinko:20190901144830j:plain自分好みの温度になるまでサウナ室を暖める(右下がサウナストーブ、この下に薪を入れる)。f:id:KodomoGinko:20190901144935j:plainおよそ待つこと30分、最初は50℃ぐらいだったサウナ室内の温度がストーブの上の石に湖の水を掛けるごとに上昇。最終的には90℃近くまで温度が上がるよう思う存分ロウリュし、身体を芯から暖めて、細かい玉のような汗が体中から噴き出してもうダメだーってなったらサウナ小屋から走って推定水温14度の目の前の池にドボン!!

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ってやつですよ奥様。上のGIFの最後に謎の手が写りこんでますが心霊写真ではなくうちのムスメの腕ですのであしからず。

これをやったのがフィンランドの東側、ロシアに面した湖水地方の国立公園の中の島。

湖水地方にはフィンランド最大の湖(琵琶湖の6倍)、珍しい淡水アザラシで有名なサイマー湖があり、その中にリンナサーリ国立公園がある。ヘルシンキからレンタカーで4時間ぐらい。トレッキングやカヌーなどを楽しむ人の間では超憧れの場所らしい。


そこの国立公園の玄関口のようなところにある島でサウナ小屋を貸し切りにすることができる。私の泊まっていたホテルの目の前の船着場からボートで20分ほど。一人30ユーロ。ボートは朝の11時出発で、4時に迎えに来てくれるf:id:KodomoGinko:20190901151134j:plain
フィンランドはIT大国で知られているのだが、国立公園の中の無人島にあるキャンプサイトサウナを貸し切りにするのにもウェブで予約しないといけないのだ。そんで料金25ユーロもクレジットカード決済*1

決済が終わるとサウナ小屋入り口横のキーボックスの暗証番号がメールに送られてくる。それを使って鍵を取り出しサウナ小屋のドアを開ける。したがってメール受信できるスマホも必須*2

私がその日一番初めのサウナ利用者だったこともあってキャンプサイトの管理人さんがカギを開けて予熱してくれていた。当たり前だがサウナがいきなり熱くなったりはしないので一時間前ぐらいから準備が必要。サウナ小屋を使う人は自分がその日一番初めの客かもしれないので上陸したらとりあえず船着き場を上がったところにある管理人さんのいるカフェに行くのが吉。

湖は茶色っぽい色をしているが綺麗。匂いもないし、味もない。木の葉がピート(泥炭)になってその色が出てきているように思われる。水風呂と違って体の周りの水が簡単には温まらないので水温14℃ほどに感じられるが体が冷えるのが早い。身体にすぐあまみが出て*3ベンチに座っているとめちゃくちゃととのいます。

サウナ終わった後服を着て、水分補給しながらキャンプ場のかまどで火を起こし、そこでソーセージ焼いて木の枝に突き刺して食べるのはマジ最高。サウナで汗かいて水分と塩分抜けてしまった身体にソーセージの塩分が染み込み、ビールが最高に美味い。だから事前にビールなどサウナ後に飲む飲み物とソーセージをぜひ買っておいてもらいたい。島のカフェ兼管理事務所的なところでも最低限のものは買えるが、ソーセージは売っていないことは確かだ。

11時半前に島に着き、3時間弱トレッキングをして2時から1時間サウナに入り、4時に迎えのボートが来るまで、雨宿りも兼ねて焚き火しながらソーセージ食べていた。ソーセージの本場から来たドイツ人家族の前で美味しそうに食べてしまった。言い訳するとたくさんあったらあげたのだけど我々3人家族用に4本しか買ってなかったのだった。

いつも電気で暖めるサウナストーブですでにいい感じになっているサウナ室に慣れっこになっていたが、ひと手間掛けて自分で薪をくべて暖めて自分の好みの温度と湿度に調整するサウナを初めて体験できた。そして自然の中に飛び出して身体を冷ませばマジでととのいます。控え目に言ってもサイコーってやつでした。

 

 

 

 

 

*1:ちなみにフィンランドではクレジットカードはICチップ付きのVisaかMasterしかほぼ使えないので注意

*2:フィンランドの電話番号もサウナの予約時に必要なので現地でSIMカードを買うことを強く推奨、DNAというキャリアのSIMがR-KIOSKというコンビニみたいなところで買える。5日間使い放題でたった5ユーロなので日本でなんとかWifiとか借りて出かけるのがアホらしい。日本の電話番号でかかってくる電話は受けられないが、留守番電話のメッセージでLINEやSMSでメッセージ送れ、って吹き込んでおけばいいのでは

*3:あまみとは冷熱交互浴によって血管が浮き上がって赤い網目のような模様が皮膚にできること。サウナで仕上がっている証拠とされる。

かわいい子には旅をさせよ: ラガヴーリン25年200周年ボトルを抱えてフィンランドとエストニアを行ったり来たりの巻

今年の夏休みはフィンランドエストニア。いつもはギリギリの時間にしか空港に行かないが、お盆で家族づれということで念のためフライトの3時間半前に家を出た。しかし高速も空いていて駐車場もあっけなく止められ、フライト2時間前にはラウンジで551の豚まんとビールをまた楽しんでいた

というのはもちろん嘘で、ラフロイグソーダを飲みながらのカレー。流石に誰からも声をかけられることはない。

仕事行く日と変わらない時間に起きて朝10時45分の成田からのフライトに乗ること10時間。東京時間の午後9時、ヘルシンキに午後3時着。ヘルシンキの気温は20度。そもそもお盆ど真ん中に東京を発つのに家族分の空席があるだけでもありがたいのに、時差的にも気候的にも身体に優しく、本場のサウナと美味い食べ物でリフレッシュして、基本的に英語が通じるので何か困ったことがあってもどうにかなるという安心感。消耗せずにフル充電できる夏休みにぴったり。結果的にはまさにそうなった。

ヘルシンキ市内へは空港から小一時間。ヘルシンキ中央駅前にある建物もサービスもソビエト社会主義共和国連邦風味のホテルにに夕方チェックインした後軽く市内をうろつき、一番大きなデパートでウイスキー冷やかしヘルシンキ大聖堂を見る。お上りさんが三越行って浅草寺行くようなものか。

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f:id:KodomoGinko:20190829152647j:plainオフィシャルボトルの相場に明るくないので安いか高いかわからない。いずれにせよここには最終日に戻ってこられるので本日は偵察のみ。アードベッグドラムはまた飲みたい、と思っていたので在庫があってちょっとうれしい。値段も普通だし。

店から出てきて午後9時、まだ薄明るい。

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出発前に目星をつけていたEMOというレストランに飛び込みで入ってみる。結果は大成功、めちゃクオリティ高い。ミシュランビブグルマン。東京と変わらないお値段。

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旅の2日目は午後5時過ぎのエストニアの首都タリン行きのフェリーに乗る前に朝からプールに行ってサウナ入ったりベタな観光をしたり。ヘルシンキもタリンも港が中心部にある上、船で僅か2時間ほどしかかからないので日帰りもできる。

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ホテルをチェックアウトした後独特の何となく時間を持て余した感じの1日だわい、と思っていたらいきなり激しくやらかした。

フェリーは早めに出発することもあるから1時間ほど前に着かないと、と聞かされていたので1時間半前にフェリーターミナルに行ってみた。どういう訳か人がほとんどいない。おかしい。

ふと掲示板を見ると今日のフェリーは全て出航済み、となっている。私の乗るはずだった17:15発の便はどうなったのだ?と頭がはてなマークで一杯になる。今日のEckero Line最終便は15:15発で、それが私の乗るべき便だったらしい。

どうやらフェリーの予約確認のEメールをiPhoneカレンダーが自動で読み込むときに時差を間違えたらしく、その間違ったiPhoneカレンダーの情報を私がうのみにしていたのが原因と判明。ちなみにタリンはロンドンと2時間差なのでそのせいだと思われる。アホすぎる。慌てて予約を取ったdirectferriesのウェブで調べると他の会社の便も含めもう明日の便しかない。

マジか。ショック大。そして一瞬パニック。

今晩泊まるはずだったタリンのホテルキャンセルしてヘルシンキで宿を取り直さなければ。そして明日一番早いタリン行きの便を予約しないと。

ダメもとで別のフェリー会社のカウンターまでてくてく歩いて行って今日中にタリンに行く方法はあるか?と聞くと本当の最終便、19時半の便に乗れるという。一も二もなく90ユーロを払う。

自分の馬鹿さ加減にイライラしながら2時間時間をつぶし、無事タリン行きの大型フェリーに乗り込んだ。Tallinkというオペレーター。待ちくたびれ、腹が減ったしプチヤケ酒で船内のバーでビールを2パイント飲んでクリスプス、というかポテチを食べて晩飯の代わりとする。
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自国での酒の税金が高いのでエストニアに行ってフィンランド人は酒を買うのだ、と聞いていたのでフェリー内のスーパーマーケットを冷やかしに行く。酒のバラエティーがすごい。ウイスキーはまあ普通のオフィシャルボトルが種類だけはたくさん並んでいるけれど、どれもそそられないわーと思いながら見ていると、ガラスケースの中にハイエンドのボトルが並んでいた。結構いいのあるじゃん。

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値段を見てみると、タリスカー30年339ユーロ、2017年リリースのラフロイグ25年329ユーロ、バルヴェニー25年トリプルカスク349ユーロの横にラガヴーリン25年蒸留所設立200周年記念、769ユーロというのがあった。1ユーロ120円としても9万円強。あれーもっと高くなかったっけ?と思いながら席に戻る。

席に戻ってスマホで日本での価格を調べると15-18万円ぐらいが相場。渋谷ポットスティルと新橋キャパドニックで二度飲み軽く感動した記憶も新しく、うーんこれは買うべきかも、どうしたものか、とうっすら酔いが回ってきた頭で悩む。
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そしてしばらく悩んだのちに結局後悔しないために購入。世の中に8000本しかなく、ウェブでもあまり見かけないので。フェリーの上では免税なのかと思っていたら実は24%の消費税込みで、レジに行ったら「タックスフリーショッピングの書類、受付行ったらもらえるよ」と言われてここからさらに安くなるのかと驚く。
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東京で買うと15万円だとすると税還付込みで8万円ぐらいで買えたから7万円得した!というアホな考えが湧き出してくるが多分軽く酔っ払っているせいだ。カネ使えば使うほど儲かる訳がない。
だがフェリー乗り遅れたせいで90ユーロの無駄金使ったのがチャラになった、と少し気が楽になった。

ちなみにタリンからの帰路、乗り遅れていなければ乗るはずだったフェリー会社(Eckero)の船の中ではウイスキーは売っているもののハイエンドの商品はなく、乗り遅れていなければラガヴーリン200周年記念ボトル8000本限定、というレアな一本を手に入れられなかったというのも事実。けがの功名。

EckeroのフェリーではGame of Thronesのシリーズが売られていた。

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クライヌリッシュ、タリスカーラガヴーリン、シングルトン、ジョニーウォーカーが売れ残っていてロイヤルロッホナガー、オーバン、カーデュ、ダルウィニーが売り切れているという超変態な売れ行きで笑ってしまった。日本人だと普通最初の3つから買うよね。

そして手元に高価なボトルを抱えたまま9日間旅を続けることになった。
しっかりとした紙の箱に入っているものの、エアキャップ(いわゆるプチプチ)などで保護しているわけでもなく、割ってしまえば9万円のブツがパー。荷物を預ける時に何かあっても嫌なのでボトルを持ち歩いたまま観光してかなり消耗。ラフロイグ25年のように木のめちゃくちゃごっつい重い箱だったら間違いなく爆死していたところだった。

結果的にこのラガヴーリンはタリンから車で2時間ほど南下したところにあるリゾート地パルヌに旅をし、

f:id:KodomoGinko:20190829160046j:plainまた世界遺産のタリンに戻ってきて、

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フィンランド湾を再び渡り、

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フィンランド公式訪問中のプーチン大統領の車列とニアミスし、

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そこから350kmほど離れたフィンランド北東部の湖水地方にあるフィンランド最大の湖サイマー湖まで運ばれ、

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そしてまたヘルシンキに戻ってきた。かわいい子には旅をさせよ。

10日間の旅を終えて東京に戻るときにもまた一悶着。免税手続きには実物を提示する必要がありチェックインする荷物の中に先に入れるわけにいかず、スーツケースをJALカウンターでチェックインしてから免税カウンターへ。 

ヘルシンキからアジアに向かう便が夕方に集中しているせいで中国・香港人の爆買いの人たちの長蛇の列に巻き込まれる。セルフでできるマシンにもトライしてみたのだが「この商品はセルフ手続できません」的なメッセージが出てしまうので結局長蛇の列に加わることに。みんな飛行機の時間が迫ってイライラしてくるのが分かる。

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結局小一時間ほどかかって免税手続きを終わらせ、ラガヴーリンの買値が100ユーロほど安くなった。

しかしその後またトラブル。免税品で密封されており未開封なので手荷物検査を通過して機内持ち込みできるかと思っていたら(JALのカウンターでもそう言っていた)、タリン行のフェリーで買ったものだから機内持ち込み不可、もう一度出てカウンターで荷物預けて来いと言われる。

JALのカウンターに再び行くと箱とエアキャップをくれ、こわれもの扱いをしてくれるものの箱単体では破損のリスクはそれなりにあるという。そして免責書類への署名を求められた。割れても補償ないよ、ってこと。結局プチプチでぐるぐる巻きにしたラガヴーリンの箱を段ボール箱でさらに補強し、機内に持ち込む予定だったリュックサックの中に無理やり押し込んで服でクッションを作り、しっかりFragileのタグをつけてもらったことを確認したあとは運を天に祈るだけ。

免税手続きで並び、手荷物検査で並んだら一度弾かれて再びJALカウンターへ、そしてまた手荷物検査やってその後の出国審査も大渋滞。時間に余裕を持ってきていてよかった。

こんなに手続大変なんだったら空港の免税店で酒買えばいいじゃん、というご意見もあるかとは思いますが、種類はそろっているもののあまり面白いウイスキーは売っておらず。唯一目を引いたのがマキロップスチョイスのボウモア98年というヘルシンキ空港限定ボトルがあったこと。珍しいし2万8千円ほどなので買おうかどうか一瞬悩んだが、ボウモアにはそこまで思い入れないのでパス。

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結局昼食を空港で取ろうという目論見は外れ、ぎりぎりの時間に飛行機に乗り込んだ。

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10日の旅行だったがフィンランドエストニアは本当に気持ちがよかった。やさしい人が多く、日本人に対してリスペクトがある気がする。食べ物が口に合う。トナカイ美味い。サケマス系の魚も。タリンのロシア料理レストラン「チャイコフスキー」はわざわざそのためだけに再訪してもいいくらいだった。本場のサウナも。また機会があればいろいろ書いてみたい。


手続き長引いたせいで昼食が食べられず、機上の人となってすきっ腹抱え久しぶりの和食が楽しみ。食中酒何飲むか聞かれたので「本日の日本のウイスキーってなんですか?」と聞いたら白州とのこと。久しぶりの白州もいいな、ストレートでソーダを添えて持ってきてください、とお願いした。そしたらしばらく経ってからCAさんがやってきて、せっかくのお綺麗な顔の眉根にしわを寄せて「大変申し訳ございません、本日は山﨑しかございませんでした」と詫びられる。いやそこ謝るところじゃないし。

そしてやってきたのがこちら。うーん。おそらく100㏄、あるいはもっとかも。

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これは普段ウイスキー飲まない人がついでくれる時のあるある、なのかそれとも何度もお代わり注ぎに来させられるぐらいなら最初からがっつり注いじゃえ、ということだったのか、あるいは「お店じゃないんだからそんなケチケチしないでがっつり注いでくれ」的なことを言いそうな柄の悪い乗客と思われたのか。正解はどれ?

ウエルカムドリンクのスパークリングワイン飲んで、食事の前にロゼワインを飲み、そしてこれ飲んでしまうと9時間後ぐらいに成田から自宅まで運転するんだけど大丈夫か俺?と思いながら久しぶりに飲む山崎が美味い。この量でも飲み干してしまう。その後はおとなしくアルコールの分解に励みながら、お酒の神様に「ボトルが割れないようお願いします」と祈りを捧げつつ眠りに落ちる。

普段の行いがいいせいで神様が私の願いを聞き入れてくださり、成田で無事に荷物を引き上げ、長旅を共にしたラガヴーリンが我が家にやってきた。長旅をしたかわいい子。

10年か20年かぐらい経って何かめでたいことがあった時に、この文章を見て旅の想い出を思い返しつつ味わってみることにしたい。

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551の豚まんには気をつけろ

恒例の真夏の大阪訪問。昼間外をうろうろするにはあまりに暑すぎ、マイレージで取った夕方の飛行機の予約が変更できず時間を持て余し、サウナで汗を流してこざっぱりした服に着替え、冷房の効いた梅田の居酒屋で一人昼飲み。

ようやく日も傾き、バスで伊丹空港へ。金曜日の夜から大阪にいて土曜の晩帰宅なのでさすがに家族に何か買って帰ろう、と土産を探していたら551の蓬莱があった。豚まんお土産にしよう。

そう思って並んでいたら、お土産用だけでなく蒸したての豚まんを売っているのが見えた。2個から買えるらしい。昼飲みしていたのでそこそこ大きな豚まんをさらに2個も食べられるかわからないし出発時刻まであまりなかったが、出来たて蒸したてを食べられるのも大阪だけなのだし「せっかくだから」と自分に言い訳。

ちょっとうきうきそわそわしながら赤い紙箱に入れられた蒸し器から出てきたばかりの豚まんをもって保安検査場を通り、ラウンジへ急ぐ。なんと割安に買える幸せなのだろう。

空港が民営化されたせいで新しくなったと思われるJALラウンジでは、国内4メーカーの生ビールサーバーが置かれていてそれぞれ飲み比べることができる。すごい。それぞれのサーバーから1杯ずつ、4杯飲み比べをやりたくなるぐらい喉が渇いているがさすがに目の前にグラスを4つ並べるのは照れる。

冷蔵庫で冷やされたビールグラスを台に置いてボタンを押す。金色のシュワシュワした液体がグラスを満たしていき、白い泡が上端に達する前に自動でグラスが傾き始めて最後は白い泡だけがグラスに注がれる、という一連の動きを眺める。よくできていていつも見入ってしまう。

そしてカウンター席に陣取っておもむろに赤い紙箱を開け、よく蒸されて角のあたりが薄黄色っぽく半透明になった豚まんを半分に割り、あんがギュッと詰まっているのを確かめてから口の中に放り込む。

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旨い。ほろりとした豚肉から肉汁が染み出て、胡椒のようなスパイスのわずかな辛みともちもちの皮の甘みと混然一体となって口の中に広がる。そしてキンキンに冷えたビールが炭酸の刺激とともに喉を通り過ぎていく。控えめに言っても最高以外の何物でもない。

さてもっと食べようか、と思っていたらいきなり女性に「タケヒロ?(仮名)」と声をかけられた。その呼び方をするのは高校時代の友人しかいない。???と思い顔を上げると目の前には黒いノンスリーブのワンピースから色白の腕をのぞかせる妙齢のマダムが。

一瞬誰だか分らなかったが、そこにいたのは高校の一年先輩。昔からお美しくてあこがれの存在だった。直近選挙で再選されたばかりの元アナウンサーの国会議員が同級生。お二人とも十代のころから素敵だった。

おおお、お久しぶりです。でもなんだか恥ずかしい。こっちは551の豚まんにかぶりつきながらグビグビビール飲んでいる、絵に描いたようなおっさんなのだから。
飛行機の出発時刻が迫っていたこともあって、あまり意味のある会話も出来ず、めちゃくちゃ照れると人は物凄い勢いで当たり障りのない話をし社交辞令をたくさん述べるのだ、ということが分かった。

東京に戻り、別の仲良かった先輩に偶然の再会を報告。そしたらスクリーンショットが送られてきた。先輩がたのLineグループで公開処刑済みであった。

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この年になってさらされるとツラい。ツラすぎる。


だが断言しておく。下手な居酒屋で飛行機の時間調整するより空港の551で豚まん(とシュウマイ)買って、冷えたビール飲むほうが圧倒的に大阪を満喫できる。間違いない。

JALラウンジ使える方はぜひラウンジ内にて「豚まんの匂い充満テロ」を敢行するよう強くお勧めしておきます。

 

 


 

www.osaka-airport.co.jp

 

 

 

 

 

 

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高知に行ってきた、オチは特にない

5月31日でJALのマイルが数千マイル失効することに気づき、急遽飛行機予約して日帰り一人高知の旅へ。5月31日期限の自動車税2台分と軽自動車税1台分の納税はほったらかしなので身勝手なものなのだけど。

もういい歳なのに前の晩の仕事の飲み会で煽られて変な紹興酒をさんざん一気飲みさせられた酔いが残る中、5時半に起きて7時25分の羽田からのフライト。

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9時半にははりまや橋にいた。意外と近い。街をふらふらして、本日10時発売のmotoGP日本グランプリのZ席のチケットをコンビニで買う。いまからとても楽しみだ。


それからひろめ市場に行くとすでにみんながんがん飲んでいる。
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こちとらまだ昨日の酒が残っているというのに、すでに酔い潰れてテーブルに突っ伏し、フライドポテトの入ったアルミの皿に顔を突っ込みながら寝ているおばさんもいた。いきなりマウントポジション取られた気分。高知すげえ。

ひろめ市場は、食べ物屋さんで注文して普通に食べるだけでなく、魚屋さんで売っている刺身を買ってお箸つけてもらってその場で食べてもいい、というフードコート拡大版的スタイル。私は魚屋で大好きな塩カツオのたたきを購入。「薄切りにしますか、厚切りにしますか」と聞かれ東京では確実に厚切りと超厚切りだよこれ、と思いながら薄切りをもらって食べた。めちゃくちゃうまくて腹が立つ。

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わらで炙ったことで出てくる脂の甘みと微かな香ばしさ、それを受け止めるさわやかな赤身のしっかり感のコントラストがあまりにも明確で、東京で食べる炙った皮目がふやけたカツオのたたきの解凍されたものとは比べ物にならない。そして薬味のネギやニンニクまでがいちいち旨くて腹が立つ。ポン酢掛けても塩掛けても旨すぎてマジ反則。ついでに鯛の刺身が乗った鯛めしと鯛のあらで出汁を取ったお吸い物も二日酔いの体に吸い込まれていった。大満足。

そしてはりまや橋からバスに乗ってベタに桂浜に行く。15年ほど前に明治維新というか司馬遼太郎がマイブームだったことがありその時訪問して以来かもしれない。その時のイメージは小さな綺麗な丸い石が敷き詰められた海岸、というものだったのだが今は波打ち際以外は普通の砂浜になっていた。勘違いだろうか。夏の雲が出ていて泳ぎたくなる。

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ガチで外海、太平洋なので透明感が半端ない。汚れた心が海の青さに洗われる。

そういえば以前「高知遺産」という本を買って帰ったのだった。「失う前に、もう一度」、と題された2000年ごろの街のアーカイブ。あれから時が流れ、空港からは高速道路もでき、街も随分きれいになった。この本に出てくるおばあちゃんたちも多くの方が鬼籍に入られたのだろうと思う。当時はこの世にいなかったうちの子供も大きくなっているのだからある意味当たり前なのだが、改めて時間の流れを思う。

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桂浜からはランニングではりまや橋まで戻る。およそ10㎞。打ち捨てられた民家の庭に咲き乱れているユリなど眺めながら浦戸湾沿いを走り、長浜まで出る途中で酒蔵を発見。酔鯨だった。日本酒は詳しくないが、司牡丹、酔鯨、土佐鶴が代表的な高知の酒だという程度のことなら知っている。

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ロゴはシャレオツ系だが仕込みは見学できないようだし特にビジターフレンドリーではないなあと思いながら折角なのでランニングを中断して写真を撮っていると、女性が出てきて「試飲していきせんか」と言ってくれる。気づかなかったが小さなアンテナショップみたいなのが工場の端っこにあった。
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本当はいろいろと試飲させてもらって酒の2本でも買って帰りたいところだけれど、こちとら二日酔いの上に炎天下のランで汗まみれ、飲んだらマジで使い物にならずバスで帰らないといけなくなるので2つの銘柄の味見だけさせてもらって、礼を言って辞去。4合瓶をリュックに入れて走るのは気が引けたので、季節限定の生酒を土産にはりまや橋の大丸で手に入れた。

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桟橋の通り沿いにとさでん交通チンチン電車の基地があった。中にずんずん入って行って写真撮りたかった。色々とノスタルジックでエモい。

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暑い中走ってパンツまでびしょびしょになった体をルーマプラザ高知で清める。がっつりととのったあと、携帯を充電するついでに休憩室でワカコ酒ゴールデンカムイを読み始めたら止まらなくなって結局4時過ぎまでいた。

ワカコ酒を読んでいるうちにぷしゅーっと酒が飲みたくなった。ツイッターで黒尊という居酒屋が最高だ、と教えてもらったが残念ながら予約で一杯。4時台から開いている店探すのも面倒になったので、地元の人の話でも聞かれれば、と再びひろめ市場に行ってまたカツオのたたき食べる。

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目の前で炙ってくれるだけでなんだかうれしくなってくる。バカな男は焚火とか暖炉とかカツオのたたきを炙る藁の火とかに弱い。

一人で遊び歩いている罪悪感もあり、家人に炙りたてのカツオを一本買って帰る。「どんな火でもいいので食べる前に10秒から15秒くらい軽く焙ると味が全然違います」と教えてもらった。絶対そうします、と心に誓う。
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ひろめ市場は意外と若い人が多い。たまたまデートと思しき二人連れと合コンっぽい飲み会やっている人たちがいるテーブルのはしっこに陣取ってしまったので、一人黙々と周りを観察しながら飲んで食べた。

向こうのテーブルでは綺麗なお姉さんが豪快に大ジョッキを飲み干している。目があったらちょっと恥ずかしそうにしていてそれもまたいい。まだ日も高いのに真っ赤な顔したおじさんたちもたくさんいる。

東京みたいな同調圧力の強いところから来た人間には、朝から堂々と酒が飲めて「細かいことはどうでもいいんだよ、楽しければ」、とみんな思っていそうな高知の雰囲気、悪くない。むしろ最高。また来たい。

 





 

 

 

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「聞かぬは一生の恥」をバーで学ぶ

Twitter眺めていたらこんなツイートが流れていた。ちょっと「釣り」っぽい気もするけれど。

 

えらいぞ高校生、素晴らしい。でももうちょっとリスクの低い別のやり方がある。普通のじいさんだったかもしれないお年寄りが「くそじじい」に変化するリスクも避けられ、「せっかく良かれと思ってやったのに」と自分の気分を害することにもならず、世の中にTwitterで拡散されることにもならずに同じ結果を達成できる可能性が極めて高いやり方。

それは、単純に「何も言わずに駅で降りるふりして席を立つ」というもの。


その男性がとても座りたいモードなのであれば席が空けば狙い通りに座ってもらえるはずだし、念のためあえてその人に気づかれやすいような移動の仕方をすることもできる。そうやっても座らない人は席を譲っても「年寄り扱いするな」という地雷の可能性が高い。

ダウンサイドは譲った席が他の人に取られてしまって上手くいかないこと。だが前述したように気づいてもらいやすいやり方はあるわけだし、仮に他のおばさんが座ってしまったとしてもそのおばさんも座りたくて仕方なかったわけだからあなたがいいことしたことに変わりはない。そのおばさんより疲れていない誰かに使命を託したと思えばいい。


このやり方だと地雷は回避できる。かなり高い確率で波風立てることなく誰にも気まずい思いをさせずに目的を静かに達成できる。ただしこのやり方は自分がいいことをした時には必ず相手の人から感謝してもらいたい人向きではない。私なら何も言わずに席を立ったなあ、と思いながらそっとTwitterを閉じた。

世の中で何が起きているかはぱっと見では分からないこともある。気づかない人は気づかない。気づいた人も何も言わない。そういうコミュニケーションの方がいい結果を生みやすい状況があって、そういうことができる人はトラブルを避けることもできる。そして大事なことは、こういったテクニックは意識しないと決して学習できない、ということ。だって誰にでも気づかれてしまったらそもそもの意味がないので。

例えばよく行くバーに行き、初めの一杯を飲んでいる。隣でマスターと和やかに話しているお客さんがお酒のイベントの話をしている。どうやらお酒のインポーターの営業の方らしい。

そんな時、次に何飲むか特に決まっていないのであれば、
「xxx  (そのインポーターさんから出ている酒)をお願いします、この前勧めていただいて美味しかったので」
とオーダーする。

実際にお店から以前勧めてもらったかどうかなんかまったく関係ない。むしろ勧めてもらってもいなければ店の人に与える印象はより大きくなるだろう。営業の人もお店の人も悪い気持ちがするわけがない。

そういうことをサラッとできる人は、やはりどこのお店に行っても良くしてもらえる。ただし勘違いして違うインポーターの酒をそうやって頼んでしまわないように。

こういう「世の中の知恵」は学校や会社のマナー研修などでは教えてもらえない。いわんや上司や先輩が業務時間中に教えてくれることでもない。だけどそれを知っているのと知らないのとでは時間の経過とともに凄く大きな差ができる。だから若いうちに身に着けることがとても重要になってくる。「正しい電車での席の譲り方」だけではなく、「ストリートスマート」、すなわち実際に場数を踏み、時には痛い目にも会いながら学んだ人生の知恵、を。

周りにいませんか、何かあっても全く動じず、交通機関のトラブルがあってもちゃんと着くべき時間に到着し、部下が起こした致命的なトラブルを見事にリカバリーできてしまうような人。
私にとってのストリートスマートの師匠は20代半ばの頃の上司だった。西海岸の大学に留学し、ロンドンで仕事していたこともあったおじさんで、アルファロメオ75のV6エンジン、右ハンドルという滅茶苦茶渋いクルマに乗っていた。

当時はちょっと前のビットコインバブルの頃に似たITバブルの時期で、ソフトバンク時価総額が2年で100倍になり20兆円を超えようとしていた頃だった。

そのおじさんは会社で私に向かって「本当に株が暴騰すると思うんだったらありったけ借金して会社も辞めて退職金も全部ぶち込んじまえ」と言い放ち、また当時私が好意を寄せていた女性が突然社内結婚することを聞いてショックを受けていたら、「本当に好きなんだったら今からでも引止めろ、なんでそうしないで黙っているんだ」と叱られた。

鮨屋でいつもお勘定を現金で払うので、「いつもはカードなのにどうしてですか?」と聞いたら「鮨屋仕入れは現金だから、カードだとタイミングずれたり他にも大人の事情があるんだよ、同じ魚頼んでもどこ切ってもらうかで味は全然違う、分かってない客にはそれなりのものしか出てこない」と教えてもらった。

六本木に飲みに連れて行ってくれて店の入り口ですれ違ったスーツ姿の二人組を見て、「あの二人、サラリーマンみたいに見えるだろ?G組(当時イケイケだった武闘派ヤクザ)の若いのだから。お前喧嘩っぱやいから気を付けろ」などと、なんでこの人そんなこと知っているんだ?というようなことも教えてくれた。

知らないことを教えてくれるだけでなく、既成概念というものをぶち壊して物事を考えろ、という考え方のフレームワークを教えてくれたおじさんだった。厳しい業界の荒波に揉まれ始めたばかりでまだ完全に学生気分が抜けきっていなかったその頃の私にとっては大変ありがたい学びがたくさんあった。仕事の後に食事や飲みに連れて行ってくれて仕事場では聞けない話を教えてもらい、生きていくための知恵を教わった。
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仕事は定刻でさっと帰り、会社の飲み会には原則不参加、一緒に飲むのは同年代だけ、というような今の若い人たちはこういう知恵をいつどこで誰から学ぶのだろう。

社会人になったら最近の就活塾みたいなチートは当然ない。若いうちに身に着けておかないとできる人とできない人でどんどん差が大きくなっていくし、そもそも歳をとってからだと周りから教えてもらうこともなくなる。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥というけれどバカな質問しても許されるうちにいろいろ聞く方がいいと思う。

この人の話聞いてみたいな、という人がいれば、「一杯だけでいいのでお勧めの大人のバーに連れて行っていただけませんか」と思って言ってみるのはどうだろうか。目下の人間に「大人のバー」に連れて行ってくれ、と頼まれてイヤな気分がする人はいないし、連れて行く店は当然それなりの雰囲気の店になる。そんなお店でバカ話するわけもなく、せっかくなので、ということで普段では聞くことのできない話を教えてくれる可能性が高い。

そして一杯だけ、と言っておけばどちらにとっても負担感は少ないし、最悪話がつまらなかったときには「こんな私一人では来られないようなお店(=高そうな店)ですので約束した通り一杯で結構です、とても良い経験ができましたありがとうございます」と言って帰れば全く角は立たない。

ただし頼む際に「飲みに連れて行ってください」と言ってしまうと最悪居酒屋で自慢話、とか「大人」を強調しすぎると変な店に連れていかれたりしかねないので「大人のバー」と念押しすることを忘れないように。

筋トレと一緒で、ちょっと背伸びしてこれまでやらなかったこと、やれなかったことをやってみるのが成長なのだと思う。私もまだまだ学ばなければいけないことがあるので、上手に学べるよういろいろ工夫してみようと思う。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

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祇園でウイスキーを飲みながら考えたこと

先日京都に行った際、Twitterでフォローしている方に教えていただいた祇園のバーに訪問した。ビルは比較的新しいのにお店の中は落ち着いて年季が入っている。聞いてみると3年前に銀座から移転してきて、その時内装ごと持ってきたのだそうだ。10人ほどは掛けられそうなカウンターは恐らく一枚板。巨大なマッキントッシュのアンプとこれまた巨大なJBLのスピーカー、大量のレコード。膨大なバックバーのボトル。コンクリートのスケルトンのスペースを居心地のいいウッディな空間に仕上げるのは相当お金がかかっているものと思われるが、引っ越しだけでも恐ろしく物入りだったに違いない。

奥にはおそらくテーブル席、6席ぐらいなのだろうか。カウンターからはよく見えない。普段の夜なら舞妓さんや芸妓さんを連れて飲んでいる旦那衆がいるのだろう。私がお邪魔したのはゴールデンウイーク真っただ中だったから目にしなかったけれど。

客の7、8割がたが注文するモスコミュールやハイボールを作り、出来上がったらテーブル席の客に飲み物を運び、レコードでジャズを流しながら入ってきた客を席に案内し、飲み終わった客の会計をつけるのを見ながら、この規模の店を一人で回すは経験長くないととてもじゃないが無理だろうな、と思いながらカウンターにてオーナーバーテンダーにお勧めいただいたモルトを飲む。私が入店したのは夜11時過ぎ。祝日ということもあって11時半閉店とのことで、一杯だけでも、とお願いしたところ快く受け入れていただけた。追い返されても文句の言えないところだ。ウイスキーが好きなのが伝わったのだとしたら嬉しい。

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最初のグレンオーディーを飲み終える頃には隣にいた最後のお客さんがお勘定を締めていて、私ももう失礼しますと言ったら「まだ片づけあるのでしばらく飲んでいて構いませんよ」とのこと。お言葉に甘えて追加で2杯。ブロラとタリスカーをいただいた。
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銀座時代のお話を聞いたり私の行きつけのバーの話をしたりしていい時間を過ごし、丁寧にお礼を申し上げ、オーナーの名刺を頂戴して失礼した。

翌日も花見小路の土塀のところをちょっと入ったところにある割烹で食事をしたので件のバーを再訪。昨日閉店間際に無理を言って飲ませていただいたので裏を返しに行った。

裏を返す、という言葉は最近聞かない気がするので念のため説明しておくと、客として払った値段以上に良くしてもらったり特別なサービスをしていただいた後に、その店を再訪してお店でお金を使って借りを返して帰ってくることをいう。

祇園の南側というのは京都に4年しか暮らしたことのない浅薄な私の知識からしてみてもかなり特殊な立地。路地の石畳には水が打たれ、その両側には赤い提灯を灯したお茶屋と割烹が立ち並び、舞妓さんを連れて歩くような地元の旦那衆もいれば国内外の観光客も多い。その中には「一見さんお断り」と言われても全く文句の言えない祇園の敷居の高さを理解している人はどれぐらいいるのだろうか。
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私の勝手な感覚だが京都の街中ではよそから来た新参者にとても冷たく、同じ場所で5年ぐらい商売して初めて仲間として認められる、というイメージがある。その中でもさらに祇園、それも四条通の南側の店は地元の目の肥えた厳しい客に試され、認められないと生き残っていかれないのだと想像する。

せっかく厳しい旦那衆が試しに店に来てくれて何とか寛いでもらっているところに、店のコンセプトを理解しないグループ客や、HUBみたいな飲み屋での飲み方と日本のちゃんとしたモルトバーでの飲み方の違いの分からない外国人観光客が入ってきてせっかく作り上げた店の雰囲気をぶち壊したり、一人でお店を切り盛りしているのに必要以上に世話の焼ける訳の分かっていない客が来店したりして他のお客さんへの対応に手が回らなくなったりしたら本当にシャレにならないだろうな、そういう客は裏を返してくれるわけでもないし大したお金も落としていかないだろうし、と思いながら大ぶりのバカラのカクテルグラスに満たされたマンハッタンから一杯目を飲み始める。

「銀座で有名やったバーが祇園に来たっていうから冷やかしに行ったったけど訳わかってない客ばかり入れてて雰囲気ぶち壊しや、銀座がなんぼのもんや」「さすが銀座から来てくれはったお店だけあって賑やかでいろんなお客さんが来てくれはってよろしおすな(=ここは祇園だからうるさくしない客を選べ)」などと旦那衆に吹聴されたら狭い京都では贔屓にしてくれる地元の客がつかず、内装などに恐ろしく金掛かっているのに回収できずに最悪店畳まないといけなくなるかもしれない。自分がお店を開くところを想像してちょっと震えた。

もちろんちゃんとしている一見のお客さんもいるだろう。しかし場所柄ウォークインしてくる一見客はそうでない方が確率的に高い気がして大変な土地でのご商売だと思う。そういう意味で昨日閉店間際でふらっと一人で初めて現れた私を温かく迎えてくれたのは太っ腹なことで自分の幸運にあらためて感謝した。

マンハッタンがとても口に合ったので結構な勢いで半分以上飲んでしまったら、「飲むの早いですね、うちのマンハッタンは時間とともに味が変化するので少しゆっくりと味わってみてください」とのこと。「早く飲まないとせっかく作っていただいたのに申し訳ないかと思って」というと「昔はカクテルグラスも小さかったし3口で飲め、なんて言ったものだけれど最近はグラスも大きくなったしお時間かけて飲んでいただいて構いません」と教えてもらう。まだまだ勉強すべきことはたくさんある。

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ふと気になって、外国人観光客向けのSNS(Yelp)でこのお店がどのように評価されているか観てみたら案の定だった。名の通ったホテルのコンシェルジュやそれなりの割烹からの紹介でやって来るぐらいの人であればまだしも、素性もわからない世話が焼ける可能性が高いウォークインの客を喜んで迎えたところで先ほども述べたように店にはリスクが高いだけでアップサイドはあまりない。むしろ厄除けとしてそのままの評価にしておいた方がいいのだなと思った。

ちゃんとしたバーで「フレッシュなフルーツでカクテルお願いします」という注文をする人は、それなりの鮨屋に行っても「「新鮮な」魚の握りをお願いします」というのだろうか。それは注文される方も穏やかではないだろう。自分の言った言葉の意味が自分で分かっていない人も含めて世の中にはいろんな人がいて、食べログの口コミ見ていると2chまとめサイトよりも面白い。

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前にも書いたが、居心地のいい店はその居心地を守るために大抵何かを犠牲にしているであろうことを客は忘れるべきではないと思う。席が空いているのにフリーの客に満席だと告げているバーテンダーを見ることはままあるが、彼はその客からの売上を犠牲にしてでも店の雰囲気を守っているかもしれない。そしてその客は店の悪口をどこかで言うかもしれない。そのコストよりも店の雰囲気を守るほうをそのバーテンダーは選んだことに我々は思いを巡らせるべきだ。そしてそれは彼が自分のため、自分の店のためにしているように見えても実は客である我々のためにして(くれて)いるのだということも。

そんなことを考えながらまた京都に来たらお邪魔することを約束して店を出た。実はもう一軒、裏を返しに行くべきところがあったから。寺町夷川を一本西に入ったところにある王田珈琲専門店。前日ランチを食べた後、家族連れでコーヒーだけ飲みに行ってなにも話さずそっと帰ろうとしたら、昨年末初めて訪問した際にグレンエルギン好きだ、といったのを覚えてくださっていてお勘定の際に「美味しいエルギン入れときましたからまた来てください」と言ってくださったので。京都のお店の情報を様々教えていただき、夜中まで楽しい時間を過ごすことができた。

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色々考えた結果、今回は祇園のお店の固有名詞をあげて紹介することは控えることにします。バーに対してリスペクトの念を持つウイスキー好きな人やスカイ島の蒸留所の名前を聞かれてすぐに思い浮かぶ人にとってはとても、とても素晴らしい店だと思います。二度しか訪問していない私が言うのも恐れ多いことではありますし、私が心配申し上げずともすでに地元にしっかり根を下ろして愛されるお店になっていらっしゃると思いますが。

 

 

 

 

 

 

 

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一座建立

こだわりが強すぎて生きて行きにくい、というのがどういうことか、マトモな方々にはなかなか想像できないと思うので、どれぐらい生きにくいかを少し書いてみる。

 

ランチに何かいいもの食べようと思い立つ。せっかくの一食を無駄にしないよう、いろんなツールを使って店を全力で調べる。ああでもないこうでもない、そして気がついたら午後2時。行きたかった店が閉まってしまい、空腹のピークも過ぎてもうどうでもよくなってしまう、なんてことが割とある。どうかしてるわ俺、と自分でも思う。

(流石に平日はこれだと仕事にならないので、自分の中で絶対滑らない限られたレパートリーの中からローテーションで選ぶ。仕事と車の運転の時は基本完全に別人格。)

 

レストランだけでなく、旅行先を決めるときでも本屋で本を買う時でも似たようなことになる。

 

自分の「こだわり条件」の数が多すぎて、そもそも全ての希望を満たす店を見つけるのが困難過ぎる。そして全ての希望を満たす店を諦めた後に条件a、条件b…条件xのウェイト付け、つまりどの希望をより優先させどれを諦めるべきかのロジックが自分でなかなか決められないので精神的にとても消耗する。つらい。

 

今一番食べたいと頭に浮かんだものがマンゴーのタルトだとする。食べられる店を調べたが見つからない。リンゴよりバナナ、バナナよりマンゴーが好きで、パフェよりケーキ、ケーキよりタルトが好きなのだけど、目の前にリンゴのタルトとバナナケーキとマンゴーパフェしか選択肢がない。その中で何を食べるべきか思い悩む。自己決定力の低さに自分で辟易してつらい。わかります?

 

最近になってようやく、色々試してみて少しぐらい失敗してもいいではないかと思えるようになった。それでもハズレを引いた時に(それが選んだ店のせいなのか、たまたま居合わせた客との相性のせいなのか、体調やメンタルなど自分のせいなのかは別にして)自分を責め、俺ってセンスないわーと自己肯定感を下げて精神的自傷行為をしてしまう。つらい。

 

そして具合が悪くなってくると物事を決めるのをなんでも先送りし始める。なぜかというと、具合悪い時に悩み始めると本当に疲れるからだ。つらい。その結果「やばいゴールデンウィーク目前なのにどこも宿予約してない、空いてるところもう2軒しか無くてそれならこっちでしょ」的に、先送りによって選択肢の数を減らすという(荒)技を使うようになるのだ。そしてハズレを引いた時でも「ゴールデンウイークだからどこも混んでいるので仕方ない(=ので失敗したのは俺のせいではない)」と、決定を先送りにしてベストのものを探す努力をしなかった自分を棚に上げて一見客観的に聞こえる言い訳を探すのだ。ただし念のため言っておくと、先送りにしている間は知らんぷりしているわけではなく、罪悪感に苛まれていて心は晴れない。先延ばしにしている決定力のないだらしない自分につらく当たる。つらい。

 

そういう訳で私にとっては、「たまに見つかる自分の好きなバーやレストラン」とか「満員電車で嫌な思いはするけどそれでも比較的マシな前から3両目の優先席近くのドア横のスペース」とか「10年間通ってずっと同じ人に髪を切ってもらっている理容室」とか「堀口珈琲のエチオピアのコーヒー豆、シティロースト豆のまま」とか「仕事の時に履く伊勢丹で売っているハイソックス」とかがとても、とても重要なのだ。なぜならそれらの選択は時間をかけて熟慮に熟慮を重ねた結果で、その選択に従う限り自分の心がこれ以上煩わされることはないという安全毛布、最後の砦だから。それらがないとまた一から思い悩まなければならず、心の平安が脅かされるのだ。つらい。
だからスティーブ・ジョブズマーク・ザッカーバーグがいつも同じ格好をしていることを心から理解できる(自分を彼らのような何かを成し遂げた人と一緒くたにしているわけではない)。彼らも「(しょうもない)選択に心を煩わされたくない人族」で仲間なのだ。多分。わかる。

 

こんな感じで心が擦り減っていく。そしてストレスのないどこかに逃げ込みたくなる。

 

そんな中年にも救いはある。どこのバーに行くべきか知らない土地なら悩むこともあるけれど、東京ならいつ行っても居心地の良いバーをいくつか知っている。そこでは心の平安を脅かされることはなく、何か思い煩うこともない、そんな場所。勧められるお酒は間違いなく、知らないことも教えてもらえて勉強になる。様々な経験をされていろんなことをご存じの素敵なお客さんと出会うこともある。わざわざ情報収集したり早起きして列を作ったり買い出しに行ったりしなくても、座っているだけで貴重なボトルも素晴らしいカクテルも飲むことができる。そんなバーで感謝の気持ちとともに酒を飲み、心の澱を少し落としてから家に帰る。

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そんなバーは私にとって大変貴重な隠れ家。受け入れてもらえなくなったら困る。だからお店の人が眉をひそめるようなことをする理由は私には全くない。さりとてお店に媚を売ったりもしない。酔いが回ったことを自覚したり、店が混んできたら帰り時。感謝を伝えるためと店が長く続いてくれることを祈り、できる範囲内でできるだけおカネを落とす。自分が行かれないときもあるので代わりに行ってくれる信頼できる友達を紹介する。

 

そんな気持ちでバーに来て、そんな中年のことを理解してくれている店に感謝の念を持ちながら酒を飲む。バーに行くときには心の片隅に置いている言葉、一座建立。お店のためにも、他のお客さんのためにも、自分のためにも。

 

いちざこんりゅう【一座建立】

茶道の言葉で、茶席を開く側と招かれた側のお互いが「その場をいいものにしたい」という気持ちで通じ合うこと

 

 

 

 

 

 

 

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